日常
AM.8:30
とあるおんぼろアパートの一室。
この狭い部屋があの英雄の部屋だといって、世界のどれだけの人物が納得するだろうか?
しかし、事実なのだから仕方ないのである。
「……んぐ、ふぁあ…」
ベッドの上でもぞもぞと動き、目を覚ましたのは、とある少女。
「……あ~、寝足りない。ふぁ~」
現在、高校2年生の御坂美琴である。
彼女は、服を着ていなかった。
シーツさんが鉄壁のガードをしてくれてなければ、あられもない姿になっていただろう。
美琴はパチパチと瞬きすると、服を着るのも後回しにして、隣にあったものに抱きつき、目を閉じる。
もちろんそれは、世界を何度も救った英雄だ。
「……んふくぅ」
愛しの人、上条の胸に顔をこすりつけ、マーキングする。
これは、わたしのものだと主張する。
まるで猫である。
もちろん上条もシーツさんがいなければ、Jrを見られることにおぇぇ。
つまり、昨日はナイトのフィーバーで、フェスティバルだったのだ。
「……えへー、えへへへー」
「どんだけデレデレなんですか、美琴さん」
「……………………いつから起きてたの?」
「『寝たりない』あたりから」
「さ、最初からじゃない!!」
バフン!! と美琴はシーツを頭からかぶる。
逆に足の方をカバーするシーツの面積が狭くなるが、み、見えない。
「美琴さん」
少しシーツをめくると、真っ赤な顔で、恥ずかしがってるのか、怒ってるのかわからない彼女の顔が見えた。
「……な、なによ」
「……美琴さんが可愛い過ぎるせいで、朝から我慢出来ません」
「へ? ちょ、ちょっ!! ふぁっ……♡」
AM.10:00
ガスコンロの火が消える。
「……まったく」
後は魚を焼いて、ご飯が炊き上がるのを待つだけだ。
しかし、時間的に昼食に近い。
「盛りすぎよ、犬なんか? アンタは」
ランニングシャツに短パンというお気楽な服装にエプロン姿でため息を吐く美琴。
「悪かったって」
狭いキッチンに入ってきたのは、
シャツにジーパンという、こちらもラフな格好をした上条だ。
「絶対悪いと思ってないでしょ」
「い、いや~」
「1時間も予定がずれたんだけど?」
「で、でもさ」
「なによ」
「どちらかというと、喜んでません?」
「な、なにいってんのよ!!!」
「だって、鼻歌歌いながら、ニコニコと料理してるんだもんさ」
「う、ウソ!!?」
「自覚なく、図星なんですね?」
「ぁぅ」
「……すまん」
「な、なにがよ」////////
「正面から見ると裸エプロンでして、さらに可愛いリアクションされて、自制ができません」
「ちょっ!! 待って!! ひゃっ!! お、おろしなさひぐっ、くふぅぅぅ……♡」
PM.0:15
「「いただきます」」
「……じゃないわよ、朝食の前にわたしが2度もいただかれたんだけど?」
服を着るのが面倒になった2人は、下着姿である。
「ん? おお、そうだな。ごちそうさまでした」
「お粗末さ……なんだとコラ」
「自分でいって、勝手にキレるなよ」
「誰の胸が残念だ!!」
「言ってねーし、最近大きくなってきたし。というか、オレは胸が好きなんじゃなくて、美琴が好きなの」
「…あ、ありがと」/////
「で、1時間で2ケタくらいイッちゃったミコったん」
「か、数えてんじゃないわよ!!」////////
「いかがでしたか?」
「ぴゅっ!!?…………け、結構なお手前で……」////////////////////
「うん、お粗末さ……あぁん?」
「なんでよ!!?」
「「ごちそうさまでした」」
「これからどうしましょうか?」
「ちょっと、今週……っていうか、昨晩から寝不足なのよ。一緒に昼寝しない?」
「ま、まさか美琴さんから誘っていただけるとは!!」
「へ? ち、ちがっ!! ふにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ♡」
PM.2:20
「zzz…に、にげろ…オティヌスぅ~、インデックスに食われ……zzz」
「zzzzzz……大じ、ょうぶ、げこたゃがなんとかして……zzzzzz」
「zzz……むにゃむにゃ、その幻想をぶち殺す…ぐこー」
「げこたがぁ~~~むにゃzzz」
PM.4:30
「どうしたんだよ?」
「ぐすっ、なんか、思い出せないけど、えぐっ、悲しい、夢を、ひぐっ、見た」
「大丈夫だ、お前を泣かせる奴は、オレが全力でぶっ飛ばす」
「うん、ありがと」
PM.5:00
2人はようやく服を着た。
「あれ? これなんていうんだったかな?」
「ん? チズホルムの第一法則の発展型だろ?」
「あ、そうだったそうだっ…………」
「どした?」
「当麻から勉強、教えてもらうなんて……」
「限りなく失礼だな」
「ついこの間まではかけ算も微妙だったくせに」
「バカにしすぎだろ!! ……勉強が好きになったんだよ」
「なんでまた?」
「教え方がうまい先生がいてな、その先生、好成績だすとすっごい誉めてくれんの」
「へぇー、月詠先生? 親舟先生?」
「…………秘密」
「うん? また女か!!」
「まぁな、その先生の笑顔見たさに頑張っ………帯電すんなよ、お前だよ……ってなんで火力上げてんのさ!!」
PM.6:34
「さて、帰ろ!!」
「ん、彼女が特売を使いこなすようになって、上条さんは満足ですよ」
「ハイハイ、晩御飯でも満足させてあげましょう」
「昼御飯なかったし、楽しみだ!! 今日はなにかな?」
「昼御飯は自業自得でしょ!! ったく、今日はドリアでもしようと思ってる」
「まさにミコトンドリア!!」
「……ミトコンドリアって言いたかったの?」
「…………」//////////
「フフッ、まだまだ先生は補習しなくちゃダメみたいねん」
PM.6:38
「とうっ!!」
「こ、コラッ!! 急に背中に飛び乗るな!!!」
「さぁ!! 出発進行!! イケイケ当麻号!!」
「イケイケじゃねーよ!! 重いっつーの!!」
「なによ!! レディーに重いって失礼でしょ!!」
「そうじゃなくて買い物の荷物持ってるじゃん!!……仕方ねぇ、しっかりつかまってろよ!!」
「ちょっ!! は、走るなーーー!!」
PM.7:15
「ふっふふん、ふふふん、ふっふっふーん♪」
「お~い、なんか手伝うかー?」
「うーん、じゃ、ご飯いためといて」
「おう」
「……さすが自炊してただけあってうまいわね」
「ダマにならないよう鍋振るだけだしな。ほい、終わり」
「じゃ、オーブン温めといてー」
「ほーい」
「はい、じゃあ今度はー。ん!!」
「ん?」
「んー」
「?? あぁ、はいはい」
チュッ
「はい、ありがと。座っててー」
「あいよ」
「「いっただっきまーす」」
「パクパク……明日どうしようか?」
「もぐむしゃ遊園地は先週、水族館は先月先々月いった、動物園は3日前いったしなぁ」
「プールは来週行く予定だし、映画は昨日いったわよね」
「……遊びすぎだろ、俺たち」
「……そうでもないわよ、基本的に邪魔されてばかりだし」
「……敵味方ともにってとこが悲惨だよなぁ」
「数年前から変わらないわよね」
「そういえば、この前あのスパリゾートが改装してたな」
「昨日完成したんだっけ?」
「じゃそこにしよっか」
「うん」
PM.9:00
「いい!!? 今からお風呂入るけど覗かないでよね!!」トタトタ
「あぁ、レポートもあるしな、わかったよ」ノートパソコントリダシ
「覗かない代わりに一緒に入るとかもダメだからね!!」ドアアケテハイリシメル
「はいはい」ノートパソコンカチカチ
「堂々と見るってとんちも期待してないから!!」チョットアケテカオダケダス
「へいへい」カチカチ
「……」
「……」カチカチ
「……」
「……」カチカチ
「……ね、ねぇ、ホントに来ないの?」
「……はぁ、素直に一緒に入りたいって言えよ……」ヨッコイショ
PM.10:30
「頭にあご乗っけないでよ」
「お前がどかねーんだろーが」
「ここが落ち着くんだもん」
「じゃ俺もあごが落ち着くんだよ」
「あごが落ち着くって何よ」
「しかし、お前はジャストフィットだよな」
「わたしのためにある場所だからね、予約席よん」
「すでにてめぇに購入されております」
「じゃ満喫します」
「ご自由にどうぞ―」
PM.11:25
「明日もあるし、早めに寝ますよー」
「……」
「しかし、昼寝しただけで他なんもしてないのに、今日もつかれたな」
「……」
「じゃ、お休「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「なんだどうした?」
「わたしの今の格好見て言うことないのか!!?」
「……夏とはいえ風邪ひくぞ?」
「目の前でパジャマ脱いだのにその態度!!?」
「暑かったんだr「違うわ!!」
「で、電撃は勘弁してよう……」
「こ、ここまでやってんのに、あ、アンタはスルーするのか……」
「え? い、いいの? 寝不足だとか、盛った犬だとか、午前中不満たらたらだったじゃん」
「うっ……」
「???」
「う~……」
「?????」
「う~~………………」
「……素直になってくださいよ。いいのか?」
「……しよ?」
「よくいえました」
幸福な日常