とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

352

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集

ある日の事



御坂美琴は迷っていた。

ここは常盤台中学の学生寮。学園都市の中でも5本の指に入る名門校で、
同時に世界有数のお嬢様学校でもある中学校の学生寮で美琴は唸っていた。
「うーん。これ、ど、どうしようかしら」
これとは映画館のチケットのことであり、元々は黒子自身が勝手に用意してたのだが、
急遽ジャッチメントの仕事が入って用意していた日に行けなくなり

「あ゛ー!!黒子は黒子は、こんなにも楽しみにしていたお姉さまとのサプライズデートが行けなくなるなんて!?」
「何言っているのよ!!そもそもまだ行くとは言ってないし、デートじゃないでしょうが!!」

てなことをしている間に美琴の手に渡った映画のチケットの事である。


映画のチケットには映画館の名前と日時と放映場所が載っていた。どうやら明日やるらしい。
(明日・・・。うーん、このままじゃもったいないわよね。誰を誘お・・・あ!アイツを誘ってみようかしら?あれ?で、でもどうやって!?)
美琴は上条をどうやって誘うかでいろんな思考を巡らせ、おもむろにスカートのポケットに入っている自分の携帯を触ってみる。
(け、携帯でメールを打てばっ!?いや、だめだ!!メールだと緊張してアイツに送れない!!)
しかし連絡を取らなければ誘えない。一人でわなわなしている美琴だったが、意を決したように
「そ、そうよね。たしかアイツは私のメールをスパム扱いしてたし、電話でないと伝わらないこともあるわよね!!」
と彼女はワザと声に出し、自分自身を納得させる。
震える指を制御しながら、彼、あのツンツン頭に電話を掛ける。

プルル、プルル、

電話に耳を当て、自分の心臓の音を聞きながら待つこと数秒。
「んー?御坂か?」
ビクゥと若干飛び跳ねて
「そ、そうよ私よ。ちょっとアンタに用があるんだけど」

「なんだ?御坂が俺に用って?」
携帯を握っている汗ばむ手を握り直し、声を振り絞る。


「あ、っあ、あ、明日アンタ開いてる!?」


美琴はいってしまったことの後悔よりも、言ってしまったことの恥ずかしさで爆発しそうになる。


「そんな大声出さなくても・・・。ん、まあ明日は暇だなー」

うれしい返事に思わず携帯を強く握り締める。舞い上がってしまっている美琴はかなり速めのテンポで
「じ、じゃあ明日はいつもの公園で朝9時ね!!」
「ちょt」
と、さっさと約束を取り付け、目にもとまらぬ高速の早さで電話を切る。

携帯を握っている自分の手を見てみると随分と汗ばんでいた。


美琴はしばらくぼーっとした後、さっきの事を思い出す。
(ちょっと早く切り過ぎたかしら?で、でも明日よね・・・明日私はアイツとっ!!)
思い出したらハイテンションになりすぎて、顔がにやけてしまう。
真っ赤にした顔をブンブンと振り、にやけてしまっている自分の顔を両手で必死に抑える。
顔を真っ赤にしすぎてまるで燃えているように熱い。落ち着こうと頑張るがしばらくしてもにやけている顔が収まる気配はなかった。

美琴は開き直って明日のことを考えると、一瞬で頭の中は明日のことで一杯になっていった。

ツー、ツー、
携帯は無機質な音を繰り返す。上条は持っている携帯の通話を切る。

どこにでもいる平凡な高校生、上条当麻はとある学生寮の1室にいた。

(うーん?御坂から電話が来るとは・・・。それにしても明日だって?)
上条にとって美琴は知り合いというか、腐れ縁というか、ともかく自分の中の大切な人間の一人である。
いつもはバッタリ会って美琴がビリビリをかまし、上条が逃げるというのが普通である。
たまにとある事件に巻き込まれたり、恋人ごっこをさせられたり、罰ゲームを賭けて勝負したり、
ということもあったが基本的に、約束を取り付けて合うなんてことはほとんど無い。
前に罰ゲームで待ち合わせということもあったが、それでも今まで、急に美琴から会う約束を取り付けてくるということはなかった。

上条は美琴の身に何かあったのかと一瞬緊張するが、電話越しに聞いた声ではそんな気配はなかったことを思い出す。
(なんなんだ?また大変な事件でもあったのか?いや、声の感じからして、そうでもなかったよな・・・。
あ゛ー!!もう訳わかんなくなってきた!!)
上条は混乱した頭を整理するために大の字になって寝そべる。とりあえず今の状況を声に出して確認してみる。
「えーと、俺は明日御坂と朝9時に例の公園で会う約束をしていて、とりあえず御坂が事件に巻き込まれている可能性は少ないと」
「とうま、独り言を言う癖は少し怖いかも」
間髪いれずに、つっこんできた居候大食いシスターさんは腹が減っているのか、力なくベットに倒れこんでいる。
上条は明日はとりあえず行ってみようかなと思う。どんな用件かは明日聞き出そう。


「そういえば、いつからいつまで付き合わされるのか聞いてなかったな。 ・・・うーん、インデックスさん明日の昼と夜のメシは作り置きでいいでせうか」
「あー!!また私を無視するんだね!?しかも作り置きとは聞き捨てならないかもー!!」
無視されたことと食事のことで怒ったシスターさんの口が少し開き、歯が見え隠れする。
上条は身の危険を感じ逃げようとするが、あえなく噛み付かれる。上条は痛む頭を抱えながら

「ううっ、明日はなんかありそうだし、今は今で噛み付かれちゃってるし!!なんだかもう、不幸だー!!」

8時29分、美琴は待ち合わせ場所の公園にいた。

公園には美琴が一人ベンチに座っている。他には誰も見当たらない。
昨日から黒子の目を盗んで少ない時間でいろいろ準備したことを確認する。すると自然と目が服の方へ動く。
実は服の方までは手が回っていなかったので、結局校則どおりの制服で来ていたのだ。
(いくら校則といったって、これじゃ可愛くないわよね。)

指で制服の端を引っ張り確認してみる。さっきから何度も繰り返しているが、なかなか落ち着けない。
(ダメ、ダメ!!こんな服ごときでドキドキしてんじゃないわよ私!!アイツが来るまでに落ち着かなきゃならないんだから、もう)
よし、おちつこう!深呼吸をしようと息を吸おうとする。
がその時、

「あれー?御坂もう来てたのか?」

ドキィー!!いきなり上条の声を聞いて、美琴は心臓が止まりそうになる。
(なんでアンタはもういるのよ!?)
返事をしようと言葉を発するが、落ち着いていないためか、うまくいかない。

「な、な、んあで!!あ、アンタが、っここに!!」
よく意味の取りずらい言葉を聞いて、上条は億劫そうに美琴の疑問に答える。
「あのなー、ここに来いって言ったのはお前じゃねーか。まーあ罰ゲームの時みたいに遅れないため、上条さんは30分早く来たんですけどね。」

上条からの意外な言葉に、美琴は少し驚く。
(は、早く来てくれたんだ。少しうれしいかも・・・)
すこし赤みが増した美琴はなにか言葉を発しようとしたが


「そ、そう。そういうことなの。そうね、そんぐらいしてもらうのは当然の事よね。」


美琴は心の準備をしていなかったことと、元々の自分のテレ隠しの癖で、言いたいことと反対のことを言ってしまった。
(な、なんでっ、あー!!(泣)、本当はこんなこと言うつもり無かったのに。普通に話したかったのに。なによ、私のバカっ!!)
もちろん上条はそんな美琴の心情模様など気づきもしない。
「呼び出しといてそりゃねえだろ!!・・・まあ、ともかくいつもどうりで安心した。」
上条の意味ありげな言葉に、美琴は顔を真っ赤にして慌てる。
「な、何言ってんのよ!!私はべ、別に心配してもらわなくても大丈夫に決まってんでしょう!!」

(っ!ま、また私は・・・。あ゛ーもー!!)
美琴はおもわず意地の方がででしまう。何度も何度も、反省しては失敗の繰り返し、これはどうにかしなければいけないと思う。
だったら今日こそは素直になろう。今日は一日中上条を引っ張り回せる。チャンスだ。
(ならこのチャンスは逃せない。素直にならなくちゃ。今日はできるだけアイツに接近しないと。)


「うーん?どうした御坂?ボーっとしているが大丈夫か?」
上条が声をかけてきた。


今度は美琴はあせらない。美琴は自分の胸に手を当てる。ドキドキはしているが大丈夫。絶対に言える、言ってみせる。

「ご、ゴメン。さっきのは嘘なの!!本当は早く来てもらってよかったと思っているし、それに心配してくれて・・・うれしかった・・わよ。」

な・・・んだって?

上条は混乱していた。いつも通りだと思っていた美琴は、実際はそうでなかったからだ。
なにか困っているとか、苦しんでいるとか、助けを求めているとかまでは予想できたが、こんなことは予想していなかった。

(なにが、どうなっていやがる!?)
上条はいつもの癖で魔術の可能性を考える。
しかし目の前にいるのは間違いなく美琴で、御坂妹とか別の人物という違和感は無い。
上条自身それくらいわかると思っている。だから、余計に混乱する。

(右手で触ってみるか・・・。いや、御坂にどうやって触ればいいんだ!!それに本物の御坂だったらどうする!!)
うがーと上条は頭を掻き毟るが、いい案は思いつかない。
上条は自分がバカであったことにとてつもなく後悔する。

そこに、変な状態である上条を見て不思議に思った美琴が覗き込んでくる。
「アンタ、なにしてんのよ?・・・・・・あ!!べ、別にさっきのはそういう意味じゃないんだかね?わかってる!?」
混乱状態の上条に美琴の言葉は届かない。しかし、覗き込んだせいで美琴の顔はとても近い位置にきていた。
おもわず美琴の顔を直視してしまい、上条は混乱状態だったためか、思わずドキドキする。


上条は自分の理性の限界に来ていた。


(げ!!やばい、早くこの危ない迷宮から抜け出さなくては!!もう、手段うんぬん考えている場合ではないぞ!!)
上条はドキドキしてしまっている心を落ち書かせようとする。もう手段は選ばない。

「あ、あの!!御坂さん。ちょっと右手で触れてもいいでせうか・・・」
よし、言えた。恥ずかしかったし今後のことも怖いがソフトにせよ強引にせよ、右手で触るチャンスを得た。
これで安心できると、上条は胸をなでおろしたが、


「あ、アンタが手を繋ぎたいっていうんなら、い、い、いいわよ!!」


作戦は失敗した。これではソフトではない。それにやばい。とにかくやばい。
上条は必死に軌道修正をしようとする。
「いや、そうではなくてですね!!右手でえーと・・・そう、突然来るビリビリを抑えようとしてたわけでして」
「じ、じゃあさっきのは私の勘違いだったと・・・」

ビリビリと美琴の周りが騒がしくなる。顔は俯いていて読み取れない。でもとりあえずとても怒っているようだ。
これは来る!!と思い、右手を前に出す。防御体制は万全。どこからも攻撃はできない、はず、だった。


パシッ!!上条の右手は美琴の左手に握られてしまった。


「だったら!!罰として、ほ、本当に私と手つなぎなさい!!」
美琴の顔は真っ赤だった。いくら上条といっても恥ずかしがっているのはわかった。
しかしなぜこんなことをするのかはわからない。なぜ真っ赤になってまで自分と手を繋ぐのか。


(な!!上条さんにとっては嬉し恥ずかしのこの状況は、貴方にとって何の意味があるというのです!?)


上条当麻は不幸な人間である。

(握っている。あ、アイツの手握っちゃてる!!)
勢いとはいえ、あの時自分から「手を繋ごう!」なんて言えるとは思ってなかった。
いや、どちらかと言うと上条と手を繋げることが信じられなかった。

頭がボーっとする。顔が熱くなる。ダメだダメだ、落ち着け私!!
美琴は幸せな気持ちに浸り過ぎないように、力をこめる。

すると、上条の手を握っている手に力が入ってしまった。

「ちょ、ちょっと手が苦しんですが御坂さん?」
「あ、ゴメン(ヤバ、なにやってのよ私!?)」
余計にドキドキしながら、ほんの少しだけ握る手を緩める。
緩めた後で、上条の手の温もりを感じる。

(手繋ぐってこういうことなんだ・・・)
ドキドキしながら好きな人と繋ぐ手のことを考える。
考えたら考えたらで、顔が真っ赤になるが、幸せ状態の美琴は気づかない。

ふと顔を上げると、上条の顔があった。きのせいか顔が赤い気がする。
(あれ、もしかして恥ずかしがってくれてる?)
上条は急にあわてて、
「み!御坂さん!?ところで今日は一体何の用で呼んだんですか?」
左手で顔を拭い、こっちを直視してきた。
「わ!え、えーと言ってなかったけ?」
美琴は顔が直視できなくて、目を泳がせる。
「確かなにもきいていないのですが・・・」

あれ、言っていなかったけ?と美琴は首をかしげる。そういえばさっさと電話を切ってしまったか。
面倒臭いので黒子のことを省き説明する。
「うんとね、実は映画のチケットが余っちゃったの。だから誰か誘おうと思って、アンタをね」
上条のほうはフーンと納得している。なにかわざとらしく感じるのは気のせいだろう。

よしじゃあと、美琴は昨日計画したことを実行に移す。
「え、映画には結構時間が余っているのよ。映画館はショッピングモールの中だし、ついでに買い物につ、付き合ってくれない?」
「そもそも御坂のために空けていた時間だし問題ねーよ。でも、そんなに時間あるならもっと遅い時間で待ち合わせしといた方がよかったような・・・」
計画の一部が見破られて、美琴はドキッとする。
「もうここにいるんだからいいでしょう!!さっさといくわよ!!」



計画は成功した。美琴は思惑がばれないように、強引に上条の手を引っ張る。
向かうは買い物(デート)。まだまだ計画は始まったばかりだ。

(今度こそ振り向かせてやるんだから。)
(さっきはヤバかった。危うくチュウガクセイに欲情してしまうところだった。・・・しっかしドキドキは治まらんな)

今、上条と美琴は手を繋いで歩いている。気づかれていないが実は上条はかなりドキドキしていた。
先ほど美琴と手を繋いだ辺りから、ドキドキが治まらない。男としては仕方ないことだと思う。
それに上条自身、女の子と手を繋いで歩くなんて記憶上初めてだし(実は何度もあるが)、
相手はビリビリでも常盤台のお嬢様である。ドキドキしないほうがおかしい。

とりあえず理性を保つため、上条は心で我流の念仏を唱える。
(なむあみーほうれんそう、なむあみーほうれんそう・・・)
我流念仏は効果があったのか、だんだんドキドキは小さくなっていく。
うん、もう大丈夫だろう。上条は確認のため美琴を見る。
美琴は、上条の手を引っ張り前を進んでいた。若干足取りが速い。
まあ激しくドキドキすることはなかった。よかった、よかった。


と安心した時、ふと上条は美琴の手の感触で美琴が女の子であることを思い出す。

上条は美琴を女の子として見ていなかったわけではないが、どっちかと言うと美琴は美琴として見ていた。
だから今まで変に意識はしなかった。美琴はあの御坂であのビリビリだった。
が女の子という属性が付くと話は変わってくる。


”ドキドキ”


(やば、俺またドキドキしてる!)
急に意識しだしてしまい慌てるが、意識しだすと止まらない。
美琴の微かな匂いとか、しぐさとか、手の感触とかでも意識してしてしまう。
ヤバイと思った上条は、自分を落ち着かせるために立ち止まって小さく深呼吸をする。
必然的に手を繋いでる美琴も立ち止まる。

「アンタ、なに立ち止まってんのよ。・・・もしかして行きたくなくなった?・・・」
何故かいきなり美琴が暗い顔になる。今度、上条はそんな顔をさせたことに慌てる。
「いやいや!そうじゃなくてですね、ちょっと歩くのが速いかなーと思いまして」
「なーんだ、そっちね。じゃあもうちょっとゆっくり歩けばいい?」
上条の返事に美琴の顔が明るくなる。
「ああ、そうしてもらうと助かる」
とりあず上条は、美琴が楽しそうなのでよしとする。無理に落ち着くのは諦めよう。

「別にいいわよ私が誘ったんだし」
美琴はなんか幸せそうな顔をしていた。


(あれ?でもなんで御坂は楽しそうなんだ?)


上条は変なことに気づく。たしか美琴は顔を真っ赤にしてまで手を繋ぐのを恥ずかしがってたはずだ。
しかし、今の美琴は楽しそうどころか幸せそうな顔をしている。なにか俺は勘違いをしているのだろうか。


上条がそんなことを考えていると、楽しそうな美琴が足を緩めて話しかけてきた。
「・・・あ、そういえばアンタいつも不幸なのよね?」
突然の不幸体質の話題。美琴からそんなことを気にかけてくるとは思っていなかった。
「え?いつもではないですが、確かにわたくし上条当麻は不幸人間ですよ。・・・一体何をお考えで?」

確かに上条は不幸体質でいつも不幸な目に会っている。もしかしたら、今向かっている映画館で何かあるかもしれない。
そんぐらいの不幸体質である。

「ちょっとね」
「もしかして、不幸な目に会いたくないからなにかしようとしてる?」
上条がそう聞くと、なぜか美琴は慌てる。
「違う、違う。いや、違わないか?・・・・・・んー?、もー、ともかくっ!はい、これ!」
美琴は右側のポケットから二つのものを取り出した。

一つはとてもご利益がありそうなちゃんとしたお守り。書いてある字は・・・読めない。
もう一つは、手作り感一杯の可愛いお守り。なぜかあのカエルと一緒に「幸」の字が入っている。

「なんだこれ?・・・もしかして俺に?」
お守り、幸、上条は驚く。
「だって今日、私だけ楽しんじゃ悪いでしょ。だからアンタも幸せにって、
有名な所のお守りと・・・んーと・・・その・・・わ、私が作ったお、お・・・守り」

「・・・俺を幸せに?」
「い、いいでしょ!?アンタが不幸、不幸言ってるから・・・アンタの幸せを願っちゃいけないの?」
美琴が自分の幸福を願ってくれてたことに驚く。


「いや、すごく嬉しい
・・・・・・ありがとう」

ただ嬉しかった。不幸な自分の幸せを願ってくれる人がいるだけで、上条は嬉しかった。それだけで幸せな気持ちになれた。
(不幸、不幸ばっか言ってらんないな)





上条は思う。

「どういたしまして」

自分の幸せを願ってくれる少女を、今自分に笑顔を向けてくれる少女を。

上条は繋いでいない左手で、落とさないよう大切に、お守り二つをポケットにしまう。

心はもう抑えられないほどにドキドキしていた。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆


「ついたわよっ」

ここは学園都市のそこそこ大きいショッピングモール。
さすが学園都市の大きなショッピングモールだけあって、中には人型ロボットが歩いていたり、
セグヴェイの最新型が貸し出されてたり、宣伝がホログラムだったりして、いかにも最新型っていう感じである。

そんなところで二人、美琴と上条は手を繋いで歩いていた。

「御坂さん?映画館はたしかこの中だよな」
上条はキョロキョロしている。ホログラムを見たり、店を見たり、
美琴はちょっと、自分に関心がないのか!と感じて、むくれる。

「そうよ。でも時間余ってるから、店を回ろうと思ってんだけど・・・
ほら、あんまりキョロキョロしすぎない!バカに見えるわよっ」
私と手を繋いでんだから・・・と最後の言葉は誰にも聞こえない声でしゃべる。
すると上条はこっちを向き、
「うーん、じゃあ姫の護衛役として、姫から目を離さぬよう姫を凝視します」
「ば、バカ言ってんじゃないわよ!!」
美琴は顔を逸らして、赤くなる。しかし逸らした先に通行がいて、慌てて顔を元に戻す。


戻した先には上条の顔。なんとその距離わずか数センチ。


「「!!!!!」」
美琴はビックリして上条から離れようとするが手をしっかり繋いでいるため、離れられない。いや、正しくは手を離したくないから離れられない。
上条の方も同様に離れようとしていたが手が繋がっていたので、二人の距離は腕二つ分になっていた。

しばらくの沈黙のうち
「え、えーと、この状態では人様に迷惑を掛けるし、これから買い物するんだったら一応今は手を離さないか?」
上条がもっともな理由で提案してきた。美琴は手を離したくはないが、理由は理由だし、買い物もあるのでとりあえず納得する。
「そうね、そうしましょう」
美琴は手を上条から離す。離した手は微妙に温かく、その温かさがちょっと寂しさを感じさせる。思わず手をニギニギしてしまう。

(ちょ、ちょっと落ち着け私!!)
ナイーブな気持ちを振り払い、次のことを考える。
(そういえばここには服の店もあったわよね。そうだ!!)
あらかじめ事前調査した知識を使い、ある妙案を思いつく。





「ねえ、私行ってみたい所あるんだけど」
「ん?どこだ?」


「洋服屋さん。アンタに見てもらいたいの」

今、上条”達”がいるのは有名ブランドの洋服屋。美琴は服を取ったり置いたりを繰り返している。
上条はおもむろに近くにある服の値札を見ると、とんでもない値段だった。さすがお嬢様だけあって我々庶民とは違う。上条はしみじみ思う。

そう、そうは思うのだが・・・

「・・・これどうかしら。アンタはどう思う?」
今の美琴は、まぎれもなく、庶民・お嬢様とは無関係な、レベルなど関係ない、ただの洋服を選んでいる可愛い少女だった。
少なくとも上条はそう思う。

(な、なんなんだ。さっきから、御坂が可愛く見える!?か、上条さんの鉄壁の理性がっ!!)
上条はお守りの件以来、美琴を意識しまっくているのだが、上条には自覚が無い。
自覚がない分だけ、どんどん美琴を意識していく。

「ねえ、アンタ聞いてる?」
上条はボーっとしていたことに気づく。
「な、なんだっけ?」
「聞いてなさいよっ!・・・あ、アンタはこれをどう思うかって話してたの!」

上条は「お、おおう」と答えて、美琴の持っている服を見る。見て思ったことを口にする。
「い、いいんじゃねえか?」
上条は、美琴が持っている服を見てそう思った。美琴がその服を着ているのを想像してそう思った。
今、上条自慢の鉄壁の理性は崩落寸前まで来ていた。

(か、かわいい・・・)

「うん、わかった♪」
美琴は一通り選んだのか、試着室へと消えていく。

上条は美琴が消えた後、まったく動かない。
上条が理性と本能との葛藤のせいで、なにもできず立ち尽くしていたからだ。パソコンに例えるなら”CPU使用率200%”的な感じになるだろう。
頭の中では、
『ここは理性を保って、紳士的な上条を維持すべきです!!』
『意義あり!!女の子を可愛いと思ってないが悪いのだ』
『相手は中学生だぞ!?』
『いやいや御坂だって可愛いところはあるんだから中学生と言っても、致し方あるまい』
『その意見には賛成だな』
と終わりの見えない戦いが繰り広げられ、決着はつかない。そんな状況だった。
オバーヒートするのも、そろそろといった感じである。

するとそこに、服の試着をして美琴が戻ってきた。

上条は振り返って、彼女、御坂美琴を見た。上条の瞳に美琴が写る。
「ねえ、アンタ、ど、どう思う?」


ここで決着のつかなかった脳内会議は満場一致で議決された。


元々服のセンスが上条よりに美琴が選んだこともあるが、美琴が無意識に発する女の子オーラ、それが卑怯すぎた。
上条は思ったことを素直に、ありのままの感想を言う。

「か、カワイイと思います!」



最強の鉄壁は今、音もなくきれいに崩れ落ちる。

(か、かわいいって言われた!!)
美琴は今、幸せの絶頂にいる。

今まで、そして今でも片思いの美琴は、思い人、上条とまるでデートのようなひと時を過ごしている。
そしてここは洋服屋で、服を試着して上条に見せたら”カワイイ”と言われたのだ。
もう、たまらない。顔は真っ赤どころか、ドキドキしすぎて汗も出てるわ、胸は痛いわ、嬉しすぎるわで、いろいろな限界値をこえていた。

「ふ、ふ、ふにゃーーーーーーーーーぁ」

漏電。
レベル5で超電磁砲の御坂美琴は、その大きすぎる能力ため、能力の制御法は前々から叩き込まれている。だから大抵は能力の暴走なんてありえない。
しかし、何事にも例外というものはある。美琴の場合は感情の一定量を越えると、能力の制御が利かなくなる、
というより一つのことで一杯でなんにも考えられなくなる。
その一定量を越える条件こそ、上条当麻である。

「うわ!!お、お前、体中からビリビリいってるぞ!!」
その当事者は自分が原因とも知らず、近づいてくる。
普通はここで美琴のビリビリにやられてお陀仏なのだが、

『パキィン』

彼の右手はイマジンブレイカー、幻想殺しを宿していて、簡単に美琴の頭を撫でることができる。
「ふ!ふにゃ!!」
美琴は頭を撫でられたことに気づき、さらに感情が高ぶる。しかし美琴の頭に上条の右手があるため、さっきみたいに漏電はしない。
上条が美琴を見下ろす形で、頭を撫でている。撫でていることには気づいてないのだろうか?

「お前・・・だからあの時、手を繋ごうっていったのか?」
「ち、違うわよ!!私だってレベル5だし、そんな弱気で街歩けないわよ!!・・・あ、あの時とは関係ないわ!!」
お前のせいだ!と言いたいが、言えない。言えるわけけない。今日、絶好調の美琴でも告白まがいのことは、まだ、できない。
したいけど。
「そ、そうか」
上条は一応納得してくれたようだ。どう納得したかわからないが。

「じ、じゃあ、これ買ってくる!」
美琴は冷静になる為と、今上条の前にいるのは恥ずかしいので、とりあえず上条から離れようとする。
でも、美琴は上条から離れられなかった。

上条の手が美琴の腕を掴んでいたから。

「な、な、アンタ!なにやってんのよ・・・(な、なんで私の腕を!)」
美琴は顔が赤くなってしまい、俯いて上条の顔が見れない。でも、声だけは聞こえてきた。
「え、え、えーと・・・お前ビリビリしちまうみたいだから、こ、こうやって俺の右手でお前を触っておかないといけねーだろ」

ドキドキ、

「け、結局、手を繋いでないといけないんじゃない!」

ドキドキ、

「仕方ねーだろ、お前がビリビリするんだから!」

ドキドキ、

美琴と上条の間に妙な空気が流れる。
そこで上条はどうしたのか、美琴の腕を掴んでいる手を離した。
「あ、アンタ!?」
美琴は、いきなり手を離されたことに驚く。そして、ちょっと寂しくなる。
でも、驚いていたら、上条が美琴の左側の手を握ってきた。
「ほ、ほら、こうしないと歩きにくいだろ」
美琴は、なんだそういうことかと思うと同時に、なんだかさっきよりも恥ずかしくて顔が熱くなってきた。
(なんでさっきよりも恥ずかしがってのよ私!でも、なんか嬉しい・・・)
真っ赤になっているだろう顔を上条に見られたくないが、手を繋いでいる相手を確認したくて、左手にいる上条の顔をみる。

あれ、顔が赤い?

上条の顔を見たら、顔が美琴は反対の方向を見ていたのだが、ちょっぴり見える頬のあたりが若干赤い気がする。
(あ、あれ?なんでアイツの顔が赤いんだろう?・・・ん、あかい?・・・)

もしかして、もしかして、

自分を意識して、 くれているのだろうか?いつもスルーばっかしてきたアイツが。あの上条が。
美琴は鎌をかけてみる。ちょっとドキドキしながら。

「も、もしかして恥ずかしがってる?」
「いやいやいやいやいいや!!この上条当麻、天地天命にかけて御坂様に手を出すことはありません!!」

真っ赤っか。振り向いた上条の顔は耳まで赤かった。



(う、うわ!アイツが、アイツが、!?私のこと意識してるーーーーーー!?)

上条当麻と御坂美琴は今、映画を見るために”手を繋いで”歩いている。

「・・・・・・・・(う、うわー・・・)」

しかし、上条はげんなりしていた。それというのも、
先ほど、上条は赤い顔を美琴に見られてから、ずーっと、美琴にいじられていているからである。
美琴としては楽しいだろうが、上条にとっては黒歴史にランクインするほど恥ずかしい出来事だった。
でも、美琴は容赦なくその部分をつついてくる。
「ねえ、ねえ、さっき顔、赤かったでしょ。なんで赤かったのかなー?」
このように美琴は、さっきから同じような質問ばかりしてくる。し、執拗に・・・

「み、御坂さん!!だからさっきの話は、女の子と手を繋ぐイベントなんて、上条さんには刺激が強すぎたんです!!」
「お、おn!・・・・ふ、ふーん、なんか嘘っぽいなー」
そして美琴は、上条の言い訳を無効化する攻撃を放ってきて、上条に逃げ場を塞ぐ。
まさにパターンで壁ハメをされている気分である。”パーフェクトKO”そんな文字が上条の頭に浮かぶ。

(く、上条当麻この程度でやられはせんぞ!!)
「と、ともかく!!早く映画を見に行こう!だぁーーーー!!」
上条は強引に、早くこの状態から脱出しようとする。勝てないのなら、負ける前に席を立てばよい。
「ちょっ、ちょっと!?」
美琴は驚いているが、手が繋がっているのでビリビリもできないし、ついてこなければいけない。
上条は作戦がうまくいきそうなことに、歓喜する。

(ハッ、ハッ、ハッ、御坂!俺の勝ちだー!)

――――――――――――――

(何故だ、何故こうなった)
上条は急いで映画館に向かい、見事30分前に入場できたのだが、

何故か館内は恋人一杯で、その恋人達が醸し出す空気が、上条と美琴との間に恋人同士のような空気を作り出していた。

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
さっきから美琴は喋らないし、上条も喋りだせない。気まずいと言うか、すごく恥ずかしい。
(だ、ダメだ!?この状況から早く脱出しないと!!)
館内なので無駄に騒げないし、ここから出るというのも何かしずらい。
では、喋るしか逃げ道はない。上条は気力を振り絞り、話題を出す。
「え、えーと、御坂さんはこれから何の映画を見るつもりだったんでしょうか?」
「じ、実はこの映画のチケットは黒子が用意したもので、チケットには何も書いてないから私も知らないのよ・・・」

(黒子?ああ、あの変態さんか。あれ変態さん?)

上条は嫌な予感が頭をよぎる。しかし、変態さんといっても中学生。買えるチケットはハードなものではないだろう。そう願う。
とすると、残る選択肢は、

ラブストーリー

ビー、30分も前にいたはずなのだか、いつのまにか映画は始まろうとしていた。

◆         ◇         ◆         ◇         ◆


「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
二人は映画館を出てから一言も喋らなかった。喋れなかった。でも、手は繋いでいた。
一緒に歩いていたらいつの間にかあの公園。ここでやっと上条が喋りだす。
「ひ、昼飯はどうすっか」
「ど、どっかで食べる?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
続かない。気まずーい雰囲気が上条と美琴の間を流れる。
すると、そこにサッカーボールがいきなり上条めがけて飛んできた。軌道は完璧に上条の顔を捕らえ、当たるはずだった。

しかし、奇跡が起きた。違う方向から飛んできた野球ボールがサッカーボールに当たり、その軌道を変えたのだ。

上条は驚きながら、謝ってきたサッカー少年と野球少年に答える。
しばらく、上条はボーっとしてたが、ポケットを弄りさらに驚く。
そして、上条は顔を美琴に振り向き、喋りだした。
「いやー、ありがとうな美琴」
「み、み!い、今なんて!?」
「いやな、いつもだったらあのサッカーボールは俺の顔にダイレクトヒットした後、野球ボールがさらに追い討ちをかけてるとこだった。
でも、きっと御坂のお守りのお陰で無事に済んだからさ、ありがとう、って」
「あ、当たり前でしょ、そのお守りはかんなーり有名なとこからお嬢様のつてを使って手に入れたものなんだから」
美琴がそう答えると、上条は否定する。
「いや、いや、実は真に申し訳ないことに、そのお守りをなくしてしまってね。きっと、そのお守りでも俺の不幸に敵わなかったんじゃないかな」
「ちょっと、どういうことよ!?」
「でもな、一つだけ残ってたんだよ」
「え?」
美琴は驚いた顔をする。上条はポケットから美琴の手作りのお守りの取り出す。
「お前の作ってくれたお守り。お前の気持ちがこもってたから、俺の不幸体質でも敵わなかったんだろうよ。今日もなんだかんだいって不幸なかったしな」
「べ、別に気持ちなんか・・・・」
「ありがとう」
「ふ、ふん、この美琴センセーに感謝することね」
なんだか二人ともいつもの調子が戻ってきた。上条は美琴から手を離す。

「じゃあ飯、食いにいくか」
「ちょっとまって!?」
「?」
「さ、さっき美琴って」
「あ、そうだいい店知ってるんだ。そこいこう、そこ」
「ちょっ、ごまかすな!そして逃げるなー!!」
ビリビリー!!
「待ったら死にますけどね俺!」
「まてー!!」



二人はいつもの二人に戻り、いつものように走る。
でも、今日はとても楽しかったなと思いながら。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー