小ネタ 占いなんて
上条は占いを信じていない。神のご加護すら打ち消してしまう幻想殺しを持つ彼は、
どれだけ占いで良い結果が出たとしても、結局の所は不幸だから。
なので朝のワイドショーの占いコーナーで、キャスターのお姉さんが
『今日の最も良い運勢は水瓶座のあなた!
恋愛運が急上昇! もしかしたら運命の出会いが待ってるかも!
ラッキーアイテムは鞄に付けたカエルのキャラクターグッズ!』
とか言ってきても、上条は絶対に信じないのだ。
上条は「ふっ…」と薄く笑い、テレビを消してそのまま学校へと向かう。
「いってらっしゃいとうま! …って、あれ?
そのカエルっていつもとうまがけーたいでんわーに付けてる物だよね?
どうして今日は、鞄に付けてるのかな?」
「いいいいや別に深い意味は全然これっぽっちもありませんですことよ!!?
ただちょっと気分転換したいだけだから! そ、それじゃあ、いってきまーす!!!」
占いは全く信じないが、気分転換くらいはするのである。
◇
美琴は占いを信じていない。自他共に認めるガッチガチの科学脳である彼女は、
そんなオカルトめいたモノに対して冷ややかなのだ。なので雑誌の占いコーナーに書かれている、
『今週の運勢第一位は牡牛座
10年に一度のラブ運! 気になるあの人と急接近する大チャンスかも!?
ラッキーカラー:赤 ラッキーパーソン:ツンツン頭の高校生』
という記事を読んでも、絶対に信じないのだ。
美琴は「はっ…」と鼻で笑い、雑誌を閉じてそのまま学校へと向かう。
「ではお姉様、そろそろ登校したしませんと…ってあら?
今日はいつもの水玉のハンカチではなく、真っ赤なハンカチをお持ちですのね。
というか、他の小物も全て赤で統一されているような…?」
「いいいいや別に深い意味は全然これっぽっちもないのよ!!?
ただちょろっと心機一転したいだけだから! ほ、ほらもう部屋出ないと遅刻するわよ!!!」
占いは全く信じないが、心機一転くらいはするのである。
◇
佐天は占いを信じている。学園都市に来る前に母親から貰ったお守りを今でも大事にしているし、
そもそも彼女は都市伝説収集を趣味としている。
基本的に、面白そうな事は何でも食いつく性格なのだ。
なので占い系のアプリを起動させながら、一緒に登校している初春に話しかける。
「ねぇ、初春。御坂さんって牡牛座だよね」
「あ、はい。誕生日が5月2日の人は牡牛座だったと思いますけど…
っていうか歩きながら携帯電話を弄るの止めてくださいよ」
「まぁまぁ、今いい所だから。それで…上条さんって何座だか知ってる?」
「えっとぉ……以前、書庫で調べた時に水瓶座って書いてあったような…?」
「ほっほ~う? なるほどなるほど」
「…? 何だか佐天さん、もの凄く悪い顔をしてますよ」
「いやいや。ちょっとこのアプリで、今日の牡牛座と水瓶座の運勢を調べてみたんだよね。
そしたらこんな結果が♪」
「またこんな物を信じて…アプリの占いなんて信憑性が無ぬっふぇっ!!!?」
あまりの具体的すぎる結果に、初春は顔を真っ赤にしてしまった。
『本日の 牡牛座 と 水瓶座 の相性は100%
二人の共通アイテムであるカエルのグッズについて思い出話に花が咲き、
良い雰囲気になった所でクレープ屋で一休憩。
しかもそのクレープ屋では、「本日赤いアイテムを持っているカップルにはトッピング無料」
というキャンペーンをやっており、二人はカップルを装う事に。
しかしカップルである事を証明する為に店の前で「あ~ん」して食べさせ合う。
その後なんやかんやあって抱き合ったりキスしたりして、二人は付き合う事になる』
この日、占いを信じていない上条と美琴が一体どうなったのか…敢えて言う必要もないだろう。