とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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3月25日




カタン、とカップが置かれた。
窓から射し込む光に、そっと目を細める。

「あぁ、いい天気……」

全ての駒を握る彼女は、
今日も己が思うままに世界を回す。
























「いや、ボスの雰囲気出してるけど、それはお前の仕事じゃねーだろ」

ここはいつものファミレス。
テーブルを挟んで上条の前に座るのは、
いまだ自分だけの現実を纏う佐天だ。
そんなボスキャラの雰囲気はローラ辺りにでも任せて欲しい。

「そろそろ本題に入ってくんないか?」

かれこれ10分放置だ。
心優しい上条さんも、そろそろここにいる理由が知りたい。
目の前の女子はコーヒー、こっちは水。
ドリンクバーなんかに使う金はねーのである。

「…………わかりました」

「おう」

「質問です。御坂さんとはいつデートするんですか?」

「??? はい?」

「だって、彼女さんを放置しすぎですよ」

「…………アイツがオレの彼女? 初耳なんですけど?」

「なぬ? …………あ、ほんとだ、まだだった」

「なにこれ? どういう状況?」

佐天さんは上琴病末期患者。
そろそろ公式になりつつある。

「わかりました。じゃあ御坂さんとデートしてください」

「わかってねーじゃねぇか」

上条さん、ジト目。

「強情ですね。じゃあ御坂さんのことどう思います?」

「あからさまだなぁ。かわいいと思うけど、オレとアイツが付き合うことはまずないぞ?」

「えー、なんでですかーー!!」

「アイツがオレを選ぶ訳がないって話。この前なんて睨み付けてきたし、真っ赤な顔で怒鳴られて…………なんだそのダメな子どもを見るような生暖かい目は」

「まぁ、いいです。つまり上条さんは、御坂さんをかわいいと思っていて、性格も申し分なくて、ムギュムギュペロペロチュッチュッしたいくらいで、向こうが付き合いたいってんならルパンダイブしちゃうんですよね?」

「最初のフレーズしかオレいってないじゃん!!」

「上条さんは、御坂さんをかわいいと思っていて、性格も申し分なくて、ムギュムギュペロペロチュッチュッしたいくらいで、向こうが付き合いたいってんならルパンダイブしちゃうんですよね?」

「退く気なしかよ。めんどいし、もうそれでいいや」

「わかりました。さて、上条さん、ゲームしましょう」

「???」

「この席に座りっぱなしで、しゃべったら負けです!!」

「やるとはいってないぞ?」

「負けたら罰ゲームで、勝った方はなんでも1つ命令できます!!」

「いや、だから…………」

「よーい、スタート!!」

(ホント退かないなぁ、この子……)


メッセージが表示された。
計画【プラン】は順調に進んでいるらしい。
その人間は、ただ静かに目を閉じる。
口の歪みは、微笑んでいるようにも、苦しんでいるようにも見えた。













「いや、今からラスボス昇格はさすがに無理よ?」

ここはとあるスイーツ店。
テーブルを挟んで美琴の前に座るのは、
いまだ怪しい表情のままの初春。
そんなうさんくさい雰囲気は☆辺りにでも任せて欲しい。

「で、これからどうするの?」

10分くらい前に連絡があり、初春と合流。
スイーツは嫌いじゃないが、いつもの場所じゃない理由が知りたい。
目の前の女子はパフェ(650円)、こっちはアップルパイ(850円)。
食べきれそうにないので残す予定である。

「……3月25日は電気記念日らしいです」

「うん、今日は電気記念日じゃないけどね」

「と、いうことで御坂さん」

「???」

「あの人とデートに行ってはいかがですか?」

どんでんがらごしょがっしゃーーーん

「な、なにいってんのよ!! あの馬鹿とは、別になんの関係もないのであって!! ゆえにデ……との必要なんてないわけで!!」

「あの馬鹿って誰ですっけ?」

「ぐぬっ!!」

「……そのキャラ疲れません??」

「きゃ、キャラってなに? わたしはいつも素直な応答をしておりまするが何か!!?」

「…………はぁ、わかりました。さて、御坂さんの周りの状況を確認しましょう」

「周りの状況?」

「もし今後御坂さんに好きな人ができたら、という前提です」

「そ、そうね。い、いつかの話ね!! もしもの話ね!!」

「…………えぇ、もしもの話です。もし、好きな人ができたら、周りに味方はほぼいません!!!!」

「ひどい!!」

「婚后さんは秘密を作れません。すぐに周囲に情報が流出します」

「それは、あの人の美徳でもあるけどねぇ」

「土御門さんや佐天さんはこの点において、一切信用できません」

「あぁ、それはもう、まったくもう、ホントにもうです」

「あとは敵ばかり」

「…………」

「ですよね」

「…………はい」

紅茶を口に運ぶ初春。
美琴はアップルパイを口に運ぶ。
なんかしょっぱい。

「だから、私が話を聞きます」

「初春さんが?」

「私が御坂さんの恋愛相談を請け負います。もちろん、いいアドバイスなんてできないかもしれませんが…………」

申し訳なく笑う初春の背後から、
窓を通して、太陽の光が降り注いだ。

「私は、絶対にほかの人に話しません。御坂さんが、想いを自力で好きな人に伝えたとき、そのときくらいは、私も御坂さんをいじりたいと思います」

悔しいが、少し涙腺が緩んだ。
今までの苦痛が回想される。
基本、このネタはヤツが狂うかヤツが弄るかの二者択一だった。
そこに救いの手が差し伸べられたのだ。

「私の前でなら、ちょっと素直になってもいいんですよ?」

「……でも…………」

「すぐにじゃなくて、いいんです。話せるようになったらで……」

「まって!!」

花飾りが揺れた。

「ありがとう、初春さん。わたし、少し素直になるね」

パフェのグラスに、美琴と初春の笑顔が映る。


「実は、いままで秘密にしてたけど……わたし、好きな人がいるの」

周知の事実だ!!
と、心で叫びながら、
初春は無言で先を促す。

「……………………」

「……………………」

「…………」

「…………」

いえよ!!
と、心で叫びながら、
初春はついに口を動かした。

「どなたなんですか?」

美琴はみるみる顔を赤くして、うつむく。
パフェを一口。

「…………ま」

「え?」

「なんでもない!!」

蚊の羽音よりも小さい声だった。
また美琴が黙った。
その間もくもくとパフェを食べる。
美味しい。

ガバッと顔をあげる美琴。
目を合わせたら、しおしおとまた縮んだ。
すみません、パフェおかわり。

もうダメかなー、と思ったときだった。
テーブルに突っ伏した美琴から、ボソボソと音が聞こえる。

「なんですか?」

声をかけると、美琴が起き上がった。
あ、顔を真っ赤にして泣きそうだ。
いや、もう泣いてると言っていいかもしれない。
いつもの頼もしい先輩はいない。
ひぐひぐ小さく嗚咽をあげながら、
ようやく、美琴は口を動かした。

「ひぐっ、わ、私の…………好きな、えぐっ……人は……」

初春は、静かに目を細める。

「えぐっ、ぐしゅっ…………か、みじょ……う、当麻…………でしゅ」

このときを待っていた。


『なんだってーーーーーー!!!!!!????』

どこからか、あまりにも聞き慣れた声が聞こえた。

「ふぇ?」

涙が引っ込む。
何がおこっているのかわからない。
すると、目の前の黒幕の1人は、パソコンの画面をこちらに向けた。

画面はどこかのファミレスの監視カメラ。
佐天の向かい側に座る「アイツ」が、パソコンの画面を覗き込んでいる。
画面の中には、今この瞬間の自分の泣き顔。

バッ、と初春の後方の監視カメラを見る。
気づいていないようだが、
上条と美琴はこの瞬間、機械越しに見つめ合っていた。

少しずつ、現状を把握しだした。
ただでさえ赤かったのに、さらに赤くなる美琴。
引っ込んだ涙がまた溢れてきた。

テーブルの上に、なにかが置かれた音が聞こえた。
ゆっくり、ゆっくり視線を向ける。
案の定、

「流石ですね、御坂さん」

通話状態の携帯がテーブルの上に置かれていた。
話が、違う!!

「そんな…………う、らぎり……」

美琴は、その存在を知らなかった。
そう、これこそが、

「なにいってるんですか」

黒春の真骨頂である。

「私から誰かに話す前に、御坂さんが自分の想いを自力で好きな人に伝えたんですよ」

目を見開く。
最初から奴らの術中だったのだ。
ここにきて、美琴の頭は真っ白になり、
再び彼女はテーブルに突っ伏した。

ここまできて、ようやく佐天はパソコンの電源を落とした。
目の前には、真っ赤になって頭を抱え、テーブルに突っ伏しているツンツン頭。
彼女の想い人である。

「さて、上条さん、知ってますか? 3月25日は電気記念日らしいですよ」

ニヤリ、と佐天の口が歪んだ。

「さて、約束通り罰ゲームです」

全ての駒を握る彼女は、
今日も己が思うままに世界を回す。

「つい先程上条さんのことが好きだと発覚した御坂美琴さんと、3月25日にデートしてあげてくださいね!!」










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