とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある乙女のバレンタインデイ・キス




第01話


私は忘れていた。
記憶から抜け落ちていた。恋する乙女にとって最も重要なあの日を

これは、明らかなチョコレートメーカーの戦略に出遅れたうぶな、恥ずかしがりの少女の
決死の告白とそれに伴う大騒動を書き残したものである。

2月13日(月) 午前7時

(正直眠い・・)

私は、寮生の前であくびを噛み殺しながら、急いで朝食を食べる。

12月の熱波事件、クリスマスの最後の審判事件で壊滅的な大損害を
受けた学園都市。その傷跡は決して浅くはなかった。

幸い学びの園は、熱波事件の教訓で私と食蜂が防備を固め、クリスマスの最後の
審判事件での打撃を受けず、年明けに授業を再開することができた。

私は、上条当麻と命を懸けた果し合いの末、彼の説得に応じ、AAAを手放したが、空白
部門を除き、AAAの単なるAIM拡散力場の投射装置としての機能を利用した駆動鎧と
して建設工事に活用する装置へ改良し、9割以上破壊された学園都市の再建事業のお手伝いを行った。アレイスターの隠し遺産約100兆円を利用し、数万もの土木用駆動鎧を効率的に運用することで、急ピッチに再建工事は進み、10年かかると言われた再建工事は
2月10日(金)に無事完了した。

ローラの原型制御崩しによる暴露戦術により、アレイスターの過去の非人道的な実験のほぼすべてが明らかになり、魔術師、反科学原理主義者の特攻攻撃を受けた最後の審判事件。

その中で唯一生き残った学び舎の園。私は多少なりともそこへ避難した
200万人を守り抜くことに貢献できた・・とは思う。

だが・・上条当麻の最後の決戦に、彼一人を生かせたこと。あの子とともに、見守ることしかできなかったことが、釈然としないわだかまりを作ったことは事実。

もう周回遅れではなかったとは思う。原型制御を外され、この世の真の姿は分かって
いたとは思う。だが・・AAAの空白部分は理解できても、結局彼の心を私は理解できて
いたのだろうか?そんな空虚な気持ちを補うように必死に働いたのだろうか?

私は、多くの学び舎の園の学生とともに、まるで何かにとりつかれたように再建工事を
成し遂げた。・

だが・・なぜか・・いや・・意図的にか・・彼の事を・・忘れていた。

無力な自分に触れる事を恐れていたのだろうか?
それとも、彼の真の姿に向き合うことができなかったのか?
それは私にはわからない。だが、約40日本当に忘れていたのだ。

・・・・

食後、疲れの溜まった私は5分ほど食堂でうとうと眠っていた。

疲労というよりは、成し遂げた達成感による、安心感なのか心地のよい疲労感。
張りつめた糸がまるでぷっつり切れた、安ど感なのだろう。昨日は16時間以上
寝ていた。それでも・・まだ眠気は取れない。

意思の力で起きようとするが、体がそれを拒否している感じだ。
(はあ・・こんなことなら、生体電流を操作して無理やり疲労を取ればよかった・・)
私は、ここ2日の選択を悔やむ

私は生体電流を操作することで、強引に疲労を解消することはできる。
現に正月以降の復興工事では、ほぼ2時間程度の睡眠を40日続けていた。
それを強引に生体電流操作という力技で乗り切った。

でもすべてが終わった今それをする気にならなかった。私は自分の体力には過信というべきほどの自信があり学校では化け物級の体力と呼ばれるほどだから、普通に乗り切れると思っていた。だが体の隅々までたまった疲労は想像以上だった。

結局丸2日休んでも全く体調が回復しない。
(所詮は・・生身の女子中学生か・・ああ・・能力使えばよかった・・)
(本当・・今日は休みたいけど・・いっそ風邪ひいたことにして休むか・・?)
私は、ずる休みを思案し始める。


(だけどな・・今日は復興式典だったしな・・一応学生代表なんて大役を
しなきゃないし・・)

結局は、周囲の期待や要望に流される私は、ずる休みという選択を拒否し、のろのろと
朝の支度を始める。
(ああ・・面倒くせ・・・食蜂に押し付ければ・・な・・)
私は、式典で生徒代表を拒否し私に押し付けたあの女の顔を思い出し苦笑いを浮かべる。

確かに、学園都市復興事業で、事業計画、施工管理、駆動鎧の作成・制御・運営に貢献したことは自分でも達成感はあるし、誇りには思っている。

自分は多くの学生の先頭には立ってはいた。だけどそれは電子制御系の最高の
能力者として当然のことをしただけにすぎないのでは?なんて自分では思っている。

あの上条当麻は、右手ひとつで、プランを破壊されたことに逆上し、「すべて」を壊そう
とした独裁者を完全にぶち壊した。そんなことは彼一人にしかできない。

( はあ‥結局は蚊帳の外か・・)
負の感情に包まれそうになる。

最後の審判事件の流れ弾の襲来から学び舎の園へ避難した約200万人の
避難民を守ることくらいしかできない。それ以上の事は・・私にはできなかった。

だけど・・無力感にさいなまされる必要なんてない
そんなことは分かっている。私は一生懸命自分にできることはしたつもりだ。

誰にも後ろ指刺されることもない。市民を暴虐から守り抜き、そして灰燼に帰した学園都市
を再建した。これ以上、14歳の女の子に無慈悲な神は何を望むのか?

そんなとりとめもない非生産的な後悔の念を頭に抱いていた私は、縦ロールが似合う
知り合いの問いかけによって目を覚まされた。

「御坂さん、どうかされましたか?」
「え?ああ・・最後の審判事件を思い出していた」
「まだうなされますか・・?」
「ええ・・でも私は無我夢中だったけど、他の子のほうがつらいんじゃないの?」
縦ロールさんが首をかしげる
「でも御坂さんと食蜂さんのおかげでこうして生きています」
「は・・本当ね・今もこうして自分が生きていることが信じられないわ」

私は、誰にも知られることなく、一人でこの宇宙そのものを崩壊から救った上条当麻を
思い浮かべる。だが・・そのことを知っているのは、数人くらいしかいない。
「でも・・御坂さんはすごいですね・・本当、200万人を生物兵器や隕石の襲来から
守り抜き、再建工事の陣頭指揮をとられて・・」

上条当麻の功績は・・すべて伏せられており学園都市でも限られたものしか知らない。
(私なんてたいしたことはしてないけど、・・でもアレは知られない方がいいだろうな)
私は一般人の無責任な会話に適当に話を合わせる。

「まあ、でもみんなの協力のおかげよ・本当」
縦ロールさんは、にこやかに話しを続ける
「御坂さん、明日のバレンタインデーに女王が御坂さんの慰労会を開くのでぜひ出席していただけませんか?」

私は、すっかり仲良くなった食蜂の側近に、肯定の合図をする。
「え?ああそうね。じゃ・・あとで食蜂によろしくね」
目もすっかり覚めたが・・私はある単語を思い出す・・
「バレンタインデー?」
「え?御坂さんまさかお忘れでした?」
「ああ・・そうか・・」

私はすっかり忘れていた。あの男とともにチョコレート会社の策略で始まった
行事の事を・・
(くそ・・出遅れた・・なんの準備もしていない・・)
私は、慌てて部屋に戻ろうとする縦ロールさんを呼び止める
「悪い・・急用を思い出した・・慰労会はパスするわ・・」
縦ロールさんが悲しそうな顔をする。
「え?ですが・・主賓の御坂さんが来ていただかないと・・」

正直悩ましい・・少し前ならともかく、今は食蜂とは良好な関係を構築している。
あの木原唯一の乱以降、盟友のような関係になりつつある。そんな食蜂の顔に泥をぬる
事態は避けたいところだ。


(はあ・・なまじ立場とか、目立つとつらいものね・・公的な立場を持つという事は)

正直フットワークのよさを維持するために帰宅部や孤高を維持していたが、一人で対処
できない異常事態に対処するために、派閥のようなものを作り、食蜂と手を組みかなり濃密なネットワークを形成した自分には無視できないしがらみがある。
(はあ・・・めんどくさ・・)
(しょうがない・・狙いは見え透いているがあんな奴でも今は「親友」だ)

私は、折衷案を提示する。
「そうね・じゃ・・途中で抜けると伝えて」
縦ロールさんが明らかにほっとした顔をする。
「御坂さん本当ありがとうございます。では女王に伝えますので、
明日は宣しくお願いします」

( ああ・・中途半端にえらくなると大変だな・・)
学園都市を救ったヒロインなんて実体に合わない過大な肩書が独り歩きを始め、身動きが
とれなくなりつつある自分。公的な立場を今まで嫌ってきたがそれが自分を縛る。

(昔のように気楽になりたいなんて・・無理だろうな・・)

本当憂鬱な気分になる。自分が望みもしない、
学生のトップに祭り上げられ、食蜂とともに権威が失墜し、親御さんの信頼を失った学園都市の最後の希望としてコテコテに飾りつけられる。アレイスターの負の遺産が、その呪縛が私の進路をふさぐ。
(はあ・・たかが客寄せパンダならよかったけど・・正直救世主扱いはつらいわ・・)

だけど・・この崩壊した街がなければ、能力者は生きられない
だから・・私は彼との約束を守る・・「御坂美琴とその周りの世界は自分で守る」という
約束を

私は気を取り直し、背筋を伸ばし、顔を叩く。
「さあ・・御坂美琴・・自分の勤めを果たすのよ」

なんとか、学生たちの生存本能だけでかろうじて生き残っているこの街を支えるために
私は微力を尽くす。

・・・・・・・

親船統括理事長代行と学園都市の最高幹部が列席する中の復興式典はしめやかに
執り行われた、灰燼に帰した学園都市・・だがわずか40日で復興させた
ボランティア・・殊にその中心で尽力した私は最大限の賞賛を浴びた。

だが、本当に賞賛を浴びるべき存在の彼は賞賛を浴びることがない。
その現実に私の心は揺れ動く。

だが、公式には自殺したアレイスター・クロウリーが
実際には宇宙ごとこの世界を抹殺しようとした事実とそれを防ぐため右腕一つで特攻
した彼の功績は永久に表には出ない。

私は叫びたい・・本当に祝福されるべきは上条当麻だ・・
だが・・彼は・・その彼は・・

私は不意に思い出した。なぜ・・上条当麻を愛していた私が、莫大な感情で闇落ち
すらしかけた私が彼を忘れていたか・・

上条当麻は・・・昏睡状態になったことを・・その事実に耐えられず、私が彼を忘れた
事を・・

・・・・・・・・

私と命を懸けた果し合いの末、私を黙らせ完全に覚醒した上条当麻は
アレイスターとの最終決戦の後、身も心もボロボロになり、昏睡状態になった。

まるでHPを使い果たしたように。シスターインデックスの回復呪文も全く効力を示さず、蛙顔の医師の治療も徒労に追わり、すべてを終えた彼はすやすやと笑顔を浮かべ眠っている。

その光景をフラッシュバックのように思い出し、あのシスターが泣き崩れた
光景がまざまざと脳裏によみがえる。なぜか・・いやその光景に耐えられなかった
私は、地獄のような、隕石や異形の化け物どもが、学園都市を蹂躙するそんな
状態に耐えた、雷神になり、身をもって盾になったそんな私が、上条当麻の凄惨な
その姿に耐えられず、気絶したことを今思い出す。

(アイツはどうしているだろう?・・)


常盤台の仲間達と表彰を受けながら、私はアイツの顔を思い浮かべる。
傷つき、しかも賞賛されることもない、アイツ。
75億人類のすべての業をしょって神降ろしの術式を飲みつくした上条当麻
その真相を唯一見た私がなぜかその事実を失念していた。
なぜだろう?本当に40日前の自分が理解できない。

まあいい・・しでかしたことはしかたない。私は、ひな壇の学園都市のお偉方を
眺めながら、挽回計画を立て始めた。ほかの子達に勝つために・・

・・・・・・・・・・・・

式典がつつがなく終わり、常盤台の理事長や校長、教職員の賞賛を受けつつ
私は式場を去り、忘れてしまった上条当麻へ会う準備をする。

だが・・上条当麻は信じ難いことにまだ昏睡しながら昏睡中だった。

昔の、12月以前の私と違うことは手段を選ばなくなったことだ。
学園都市復興ボランティアの長のような地位に祭り上げられた私は、書庫や
軍事クラウドへのフルアクセス権を有している。そんな私にとって一学生の
所在を掴むことなどたやすい。書庫にアクセスし、上条当麻の居場所を掴む。

同時に病院のサーバーにアクセスし、電子カルテも読み込む。
(いまだに・・原因も不明?あのヘブンス・キャンセラーが?)
私は信じがたいアイツの惨状に吐き気を覚える。

正直昏睡状態なら彼に会ってもしょうがない。だが・・
( やっぱり顔を見たい・・)数少ない真相を知る、もっとも彼に
近い人間として・・

・・・・・・・・・・・・
私は、あらかじめ掴んでいたアイツの病室へ急ぎ足で進む。

アイツは病床へ横たえ相変わらずスヤスヤ眠っている。蛙顔の医師の話では、いろいろ覚醒措置を試すが、カルテに書かれている通り起きない。ということだ・・

まるで上条当麻の魂が現世への復帰を拒否しているかのようだ。
心電図、血圧、脈動にはなんら問題なく、意識だけが現世への復帰を拒んでいる
そんな感じだろうか?
(ふふ・・だらしない顔・・)
まるで安ど感に包まれた彼は本当にすこやかに、すやすや眠っている。
(不幸な彼を現実へたたきおこす権利は私にあるのだろうか?)

私は反問する。アイツは本当に起きて幸せになれるだろうか?
不幸しかしらない上条当麻、その苛烈な人生にアイツは、アイツの魂はもはや
耐えられなくなっているのではないか?

だとしたら・・そのままアイツが自分の意思で起きようとするのを待つのが正しい
選択じゃないか?そう思う。

私はアイツの見舞いに持ってきた日持ちのきくチョコ・クッキーを机の上におき、そろそろ
完全下校時間も近いので帰ろうとする。

だが・・思わぬ声を聴き足を止める
「御坂美琴ちゃんですか?」
「あれ・・月詠先生?今日は・・」
身長135cmの小さな博識の教師を私は見つめる。
「上条ちゃんは私の大事な生徒です、なので毎日通っています」

「そうですか・・」
「上条ちゃんは、御坂ちゃんを大変気に言っていました。アイツはずごい、アイツには
何度も助けられたと」
(へえ?アイツがねえ・・私の事をそんなに評価していたんだ・・意外だな・・)
思わぬアイツの高評価に私は顔にほっこり笑顔を浮かべる。
だが、その後の月詠先生が語った思わぬ事態が私を動揺させる。
「正直・・上条ちゃんは今微妙な状況です」
「へ?」
「上条ちゃんは今留年の危機です」

「へ?・・でも彼は最後の晩餐事件の被害者では・・」
「ええ他の真面目に通っていた子には何ら問題はありません」
「ですが、上条ちゃんはもともと熱波事件の前から留年の危機でした・・」
「私は、上条ちゃんを守るためにいろいろやっていました。ですが・・今のままでは
、もうかばいきれません」
私はおかしくなる。75億人を3度も救った彼がたかが出席不足だけで断罪される。


そのしょうもなさに、呆れる。正当に評価できない大人とはいったいなんだろう・・
「ですが・・上条当麻は多くの事件で人類を・・・」
言いかけて私は口噤む・・人類を抹殺しようとしたアレイスターの所業は触れる事さえタブー私はそのことを改めて思い出す。
月詠先生はさらに痛いところ突いてくる。
「御坂ちゃんは、学業成績はどうですか?」
「まあ・・悪くはないとは思いますが・・」

「奥ゆかしいですね・・御坂ちゃんは・・ものすごく良いの間違いではないですか?」
「御坂ちゃんは人助けと自分の立場をちゃんと両立させています。しかも文句のつけようがないレベルで」

「ですが・・」
「ええ・・、ですからここからは私のお願いです」

「御坂ちゃんに上条ちゃんを託したいのです・・」
月詠先生がロリ顔に真剣な表情を浮かべる。
「少し具体的な話をしましょう・・正直期末試験で80%以上の評点がないと
留年させるしかありません」
「まず・・上条ちゃんを叩き起こし、しかも後2週間で80%の評点を取らせる
そんなことが可能なのは学園都市で御坂美琴しかいない・・とそう思ったわけです」

「ですが・・」
「御坂ちゃんは上条ちゃん大好きですか?」
まるで私の恋心などお見通しなようにみかけ10歳のロリ教師は話を続ける。
「私は残念ながらクラスの担当にしかすぎません・・ですが・・御坂ちゃんはどうですか?」
月詠先生が深々とお辞儀をする
「今上条ちゃんを救えるのは御坂ちゃんしかいません」

「月詠先生顔を上げてください」
「私は上条当麻に何度も命を救われました。ですから先生に頼まれなくても、私は上条
当麻を助けるためになんでもします・・ですが・・・」
「正直、あのシスターがいては・・無理ではないですか?」

「御坂ちゃんはなかなかするどいですね」
「そういうと思っていました。上条ちゃんが危機状態を脱するまで私が預かります」
(もう受けるしかないだろうな・・アイツは私の命の恩人だ)
「分かりました、微力を尽くします」

私は月詠先生に深々とお辞儀をして退室する。
まずはアイツを叩き起こす、そんな決意を秘めながら

私は、冥土返しの医師から上条当麻の症状を聞き、すべきことを頭に描き始める。
恐らく生半可ことでは起きないだろう。

普通の医学的な方法では無理だ。
しかもインデックスさえ方法を思いつかないとなると・・

(食蜂でも使うか・・それでだめなら・・・)

私は、アイツを、アイツの留年回避のためになんでもすると誓う
そして、・・その手段は選ばないと・・
まるでこの世を捨てたアイツを、この世へ戻すために・・私は走り始める。

2話へ続く









とある乙女のバレンタインデイ・キス




第02話


2月13日(月) 夕刻17時

私は、食蜂に会う前に大丁の提案を纏める。
あの女にはノープランで会うのは危険で誘導されるのも嫌なので
こっちペースで進めることにする。
正直食蜂の力を借りるのは癪だが、他に手段もない以上
選択も余地もない。そもそも上条当麻はなぜ昏睡しているのか?
心電図にも脳波も異常もない、つまり自分の意思で起きることを拒否している。
そういう結論になる。

だとすると、叩き起こすというよりは、アイツがこの世へ復帰する意思を促すよりほかに
ないという結論になる。クリスマスの最後の審判事件とそれ以降の学園都市の復興事業
で気が付いたことだが、アイツのアレイスターによって作られた不幸と、オティヌスとの
対峙で無限ともいえる期間繰り返された一方的な虐殺、アイツはその不条理に耐えた。

私は怒りがふつふつ沸いてくる。何がこの世の基準点だ。何がこの世の審判者だ。
だけど、それは自分にも突き刺さる。自分も含めて誰もアイツの苦悩を理解できていな
かった。アイツの右手を過度に信頼し、知らないうちにアイツなら何があっても大丈夫
と思っていなかったか?

そんな周囲の過度の、過信とも言うべき信頼が知らず知らずのうちにアイツを追い詰めて
いたのではないか?後悔の念が私の脳裏をよぎる。もっとアイツに触れ、アイツの悩みに
アイツの立場に立って考えることはできなかったか?

だけど、覆水盆に返らず、起きてしまったことはどうにもならない。
これから、自分の本当の気持ちを伝えて行こう。そのためにはどんな手を使う。たとえ
自分が苦手な奴だろうが、そんなことは関係ないのだと、自分を納得させる。

・・・・・・・・・・・

私は再建された常盤台中学の生徒会室にいる。食蜂が副会長で私が会長だ。
あの女は、私を焚き付け、「この非常時には御坂さんの野蛮力が必要なの」
なんていい半ば強引に生徒会長に据えた。
(まあそのおかげで金集めもボランティア集めをはかどったのは事実だけど・・)

私は、この女が苦手だ。どちらかと言えば余り関わりたくない。ドッペルゲンガー事件
以来腐れ縁になりつつあるがその関係性にはさほど変わりがないと思っている。
だが、・・上条当麻の事なら話は別
それに、これはおそらく私だけでもダメ、食蜂だけでもダメだろうから・・

私は、会長席に座りながら対面の女に話かける。ほかの委員は席を外している。
「慰労会の件、ありがとうね」
私はとりとめもない世間話から話を始める。
「で、今日はどうゆう風の吹き回し、御坂さんからわざわざ私に依頼ごとなんて・・意外力
一杯ね」
私は席が立ち上がり、防弾仕様の窓から外を眺める。改装時に、木原唯一襲撃や熱波事件
の教訓から、学園の主要部分は核戦争を想定した作りへ私が改装した。

「アンタの事だから知っているだろうけど、上条当麻が昏睡状態なのよ」
食蜂は笑い始める。
「え・・まさかァ知らなかった?」
「意外?正直必死だったのよ・・200万人の家を失った学生や教師のためにこの街の日常
を取り戻す活動でそれ以外の周りが見えていなかった」

「そう?・・」
私は自分の古傷をえぐりそうな食蜂に待ったをかける。
「それ以上は言わないで。ええ・・私は彼の悲惨な姿に心を閉ざしていたかもしれない」

それまでいたずらっ子のようにクスクス笑いをかみ殺していたあの女の表情が真剣なものに変わるのを私は見逃さない。

「それでエ・・御坂さんは今さらどうしたいの?」
「彼は科学力的な方法では覚醒しないわよ。もちろんオカルト力でさえもね・・」
私は溜息をつく。まったくこの女の情報網には適わない。いつも私が知らない情報を
どこからかかき集めて私を焚き付ける。
(それでも・・コイツも結局常識の範囲を超えない・・)

「ええ・・普通の方法ならね・・」
私は、低音で少しドスを効かした声に変える。
「だけど・・アイツを殺す気でやればどうかな・・」
食蜂がぶるぶる震え始める
「正気?」
「このままでは・・アイツは、人生を踏み外すわ・・人助けの末にアイツが人生をふみはずすような事は絶対あってはならない」
「だから私がアイツを叩き起こす」

食蜂が驚いたような半ば呆けた顔で私を見つめる
「本気なのね・・」
「ええ、大嫌いなアンタに頭を下げるほどには・・ね」
私は食蜂へ深々と頭を下げる。

「残念ながら今回も微力な私の力では、上条当麻を正気に戻すことができない」
「だから今回も食蜂操祈の全力を貸してほしい」
2人の間には微音の空調音のみしか聞こえない。

沈黙を破り食蜂が声を発し始める。
「御坂さん・・頭をあげて・・御坂さんは簡単に頭を下げてはいけないわ・・」
「私を変えた彼のことだもの、私も微力を尽くすわ・・」

あの飄々とした食蜂の目から涙が零れ落ちていることを私は確認する。
(食蜂も・・私と同じように彼に救われた一人だから・・)
「ありがとう」
食蜂は目から流した液体をさりげなく、ハンカチで拭き私に囁きかける
「で、・・具体的にはどうする気?」
「科学もオカルトを見逃した彼をどうやって救う気?」

私は、食蜂の服越しでもはっきりわかる豊かな胸を眺めながら口を開く
「ね・・なんで上条当麻は覚醒を拒否しているのかな・・」

「それは・・・・」

「脈動も呼吸も脳波も正常、普通なら8時間も睡眠すれば起床する」
「これは、医学の問題ではないと思うわよ。」
「だから・・これはどっちかというと食蜂の領域だと思うわ・・」
食蜂は慌てて、否定し始める。あらゆる幻想をぶち壊す幻想殺しに洗脳などできない
とでも言いたいように。

「だけど・・御坂さんも知っているように彼の洗脳はできないわよ・・」
「ええ・・全身に効果が及ぶ能力は彼に効き目はない。だけど、確かテレパスなら
私と同じく、貴方の能力も上条当麻へ届くはずよ・・」
「え?・・」
「ダメ元とも言う・・諦めることを確定する前にやれることは全部やろう」

「分かっているわよ・・」

・・・・・・・・・・・・・

病院 2月13日 20時

アイツは、上条当麻は本当に幸せそうな顔で目を覚まさない。
(本当に幸せそう・・正直・・コイツにとって何が幸せか・・私にはわからない・・だけど
私は幸せになるためにコイツに起きてほしい)
それは、私のエゴかもしれない。だけど・・コイツには笑って生きてもらいたい。
それは隣にいる食蜂も同じだろう。それだけでなく、コイツに救われた多くの
不幸な運命をコイツに救われた女の子達の願いだろう。

私はコイツの左手を握る。
「さて始めるわよ」
私は頭に紫電を蓄え、数億Vに達する静電気を作り出す。
「まずは・・これを左手に流す・・」
私は右手でアイツの左手を掴み、左手で頭を触り電流の回路を作る。
青白い眩い輝きが当たりを包む。

「そろそろいいかな・・」
私は夏休みのレベルアッパー事件を思い出す。木山春生を電撃で気絶させた後で
偶然つながった電気回路ごしに、伝わった彼女の記憶。

もちろんそれだけでは、上条当麻の心のドアを開ける事はできない。
だから、
「食蜂・・今回路がつながっている・・私の心の声を彼につなげてくれる・・?」
食蜂が、ち密な操作で私の心の声を上条当麻へ繋ぐ。

食蜂には足りない電気的な出力を私がこじ開け、私ではできないち密な精神回路制御を
食蜂が行うことで、上条当麻の強固な精神に風穴を開ける事に成功する。
とはいえ、強大な電流でまだ心をこじ開けただけにしかすぎない。
私は精神を研ぎ澄まし、繋いだ回路で呼びかけを始める。


「よし・・」
莫大な情報が彼の心の声が聞こえる。

多くの不幸な少女を救った記憶。
何度も強大な力に蹂躙され、それに抗い生き残った記憶。
魔神オティヌスに幾万回と殺された記憶。そして、あらゆる時空・次元を
破壊しようとしたアレイスターの狂気。彼の狂気のような経験が奔流のように流れ込んでくる。

分かっていたつもりだった。彼の置かれた理解しがたい異様な環境。彼が立ち向かってきた
この世のあらゆる悪意。その重苦しさに私の心は壊されそうになる。彼が最終局面で私の
参戦を拒否した本当の理由を始めて悟る。直接触れたわけでないのに、少し触っただけで
押しつぶされそうになる。

だけど・・ここで私が折れるわけにはいかない。全人類のため?
いいや、そんな御大層な物じゃない。
救ってくれた幾万の不幸な少女なため・・それは違う。
そう・・全部自分の為だ。だから私はそのすべてをかけて今度こそ彼を救い出す。

・・・・・・・・・・・

正直楽じゃなかった。私は自分の心を侵食する悪意にくじけそうになる。
「くそ・・このままじゃ飲み込まれる」
彼の引き籠った心を邪悪な心が包み込んでいるのがはっきりわかる。
「食蜂・・私の脳を刺激して」
私は生体電流を操作し、私への精神攻撃を物理的に破壊する。

電圧・電流を精緻に操作し、彼の心へ悪意を植え付けている回路を特定し、超電磁砲の
イメージを形作り攻撃を加える。細胞と神経細胞の単位で超電磁砲に見立てたナノ単位の
電磁パルスを使い外科手術的に粉砕する。

だが・・破壊しても破壊してもまるでガン細胞にように再生され、一向に減る気配はない。
(AIMバーストやドッペルゲンガーと同じ・・再生の核を壊さない限り何度も復活する)
私は、食蜂にサインを送り、微細に回路情報から彼に負のイメージを送る核をサーチさせる。
私はその情報を読み取り、素粒子の単位で位置を特定する。
(魂とは言ったところで、脳細胞なしに心は成り立たない。私はそのエネルギーの核を
叩く)
正直私の脳細胞もきつい、普段しないような、数百億を超す脳細胞とその脳細胞から
張り巡らされたニューロン、小さな宇宙とさえ呼ばれる複雑極まりない世界を、慎重に
なおかつ、私の脳への精神攻撃を防ぎつつコアをサーチする作業は目もくらむ作業だ。

雨あられのように悪意の塊が高速回転する電磁シールドに見立てた防壁に突き刺さり
まるで精神内とは思えない程の衝撃を感じる。だけど・・

食蜂だけなら出力が足りない、私では細かな操作ができない。不足するものを補い合った
2人の少女の協業は、ついに・・悪意のコアを見つけ出す。

「みいつけた」
「これがコアね・・」

電圧・電流をち密に調整し、周りに被害を与えずかつ完全に破壊する超電磁砲に見立てた
電磁パルスを形成する。
「アンタを追い詰めている悪意を粉砕する」
「いけえ・・」

閃光が辺りを包みコアの破壊を確認する。
「終わったわね・・」
すべてが終わった私は、精力を使い果たしへたり込む。
(久しぶりの電池切れね・・)

だけど・・本当に良かった・・
(今の自分でやれることはすべてやった)

・・・・・・・・・・・・・・・

2月13日 23時30分 病室

時間にして20分くらいだろうか・・へたり込んだ私は意識を取り戻す。
彼は・・どうなったんだろうか・・

まだはっきりしない意識の中・・私の目は彼を捉える。
あ・・私は兆候を見逃さない。生き物のように瞳孔が動いている。
(よかった・・)


「御坂か・・」
「おはよう・」

「ふ・・しばらく・・寝てたな・・生まれて初めて・・ここちよく寝れた」
陰惨な感情から解放された彼はとてもまばゆく見える。

「ところで、御坂・・俺は何日寝ていた・・?」
「えーと51日になると思うわ・・」
「は?・御坂今なんて言った」
「アンタは51日寝ていたのよ・・」
「嘘だろう・・そんなバカな・・」
つやつやとしていた上条当麻の顔色が変わる。
「御坂今何月何日だ・・?」
「え・ああ‥2月13日 のもう後25分で2月14日になるわ」

上条当麻の顔に落胆の表情が浮かぶ
「うそ・・」
「まじで?」
「そうか・・」
上条当麻が血相を変える。
「はあ・・とうとう・・ダメか・・」

世界を3度も救った英雄がたかが日常のそれも底辺校の期末試験で
思い悩むそのギャップに可笑しさを隠し切れない。

「ふ・・はははは・・」

「へ?」

「ふふ・・感謝してほしいわね・・」
「上条当麻の顔が驚きに包まれる・・」

「それは・・」
「まあ・・世の中には知らないことがいいこともあるんじゃないかな・・」
「まさか・・」
「ふふ・・細かいことは気にしないの・・」
私は、彼の学校のサーバーを改竄し、出席日数の記録をごまかそうとした。
(だけど・・そんなことは上条当麻が喜ばない)

「いや・・御坂の能力のすごさはよく知っているし、絶対それがバレないこともわかる
けどさ・・」
「だけど・・不正はよくないと思う・・」
「もちろん、俺の留年を回避するために御坂がそんな事をしたことは感謝する」

「だけど・・俺のために御坂に犯罪に手を染めさせるわけにはいかない」

「ありがとう。だけどね。・・」
「正直アンタは日本とか学園都市の基準で何か誇れる実績がある?」
「アンタが学園都市はおろか世界を3度救ったなんてさ・・誰が評価するの?」
「それを評価すべきアレイスター・クロウリーはもうこの世にいないのよ」

「それは・・」
「もちろん私にとってアンタは命の恩人よ。それにイギリス清教とか・・アンタを慕う
人間は少なく無いでしょう・・」
「だけどそれがアンタの・・」
私は敢えて核心はつかない。またトラウマをこじらせても困る。
「まあ・・ここから先は言うまでもないわね・・」

「ああ・・御坂の言う通りだよ」
「俺は確かに自分自身が見えてねえ・・いくら魔神や最強の魔術師に勝とうが
俺の成績不振や出席日数不足の事実は消えしねえ・・」
「つまんねえよな・・ライトノベルの主人公なら全部チャラになってさ・・なんとなく
出席不足も成績不振も全部うやむやになってさ・・」

「安心して私もアンタの悩みは分かっているつもり」
「ちゃんと・・後づけだけど統括理事会の特別公休に振り替えているわ」
「まあ・・やろうと思えば成績だって下駄をはかせるわよ。」

「御坂・・」

「約束したでしょ・・」
「私は、必死で御坂美琴と周りの世界を守り切ったわよ」
「その中にはアンタの世界を守ることも含まれるのよ」


「御坂にはかなわねえな・・ありがとう」

上条当麻にとって特に11月以降、御坂美琴の存在は多きなものになりつつある。
その事実は、12月の頃には第3者には見え見えの事実だが、以外に鈍感な美琴は
気が付くことはなかった。だけど・・3度目の命を懸けたやり取りで美琴も上条の
自分に対する思いを感じ取ったのだろうか・・初めて美琴は自分の心を伝える覚悟
を固める。

「いいのよ・・」
「私はいつでもアンタの味方になる。」
私は、気分が高揚していたのだろう・・それに・・正直アイツは、上条当麻は
いつみても危なかったしい。最後の審判事件のあの時だって、結局自分の命を投げ出した。
そんなアイツに単純に明日は明日の風が吹くなんて予定調和はあり得ない。
そのことに気が付かされた私は、いつもなら絶対しない選択を選んだ。

(もっと・・いい雰囲気で言いたかったわね・・)
(だけど・・今この場で言わなければ後悔する)

一言いえば結果は出る。だけど、臆病な自分は10月のある日にそれを意識して以来
何度も言う機会があったにも関わらず最初の一歩を踏み出す事が出来なかった。
(だけど・・今しかない。)

「ね・・」
正直、一言言うのがつらい。鼓動が高まり、脈動が早くなる。
バクバクと効果音のような心臓の鼓動。美琴は入学試験もレベル5に初めて認定された
システムスキャンもいつも驚くほどの平常心で乗り越えてきた。

だけど、この恋愛感情だけは、うまくコントールできない。自分だけの現実を侵食され
レベル5には恥ずかしい能力の暴発する引き起こすほどの、管理できない感覚。
(だけど・・それは決して恥ずかしいことではない)
(そして、・・分かってもらえるなんて・・そんな他力本願では通じない)

自分が思うなら、自分が抱えきれない思いを抱えるなら、それを伝えなければならない。
だから・・私はこの思いをはっきりと誤解のしようがない、あの鈍感野郎にも分かる言葉
で伝える。

「ね・・上条さん・・当麻の傍に私の居場所はあるのかな」

言い方を変えたせいなのか、上条当麻の目に驚きが浮かぶ
「え?御坂何を」

「これは一人の女の子の話よ・・」
「8月の夜、その子は、化け物に蹂躙され、1万人の血を分けた親族を嬲り殺しに
された。助けを求めようにも敵はこの街そのもの」
「アンタはその絶望した女を右手ひとつで救いだした。」
「でも素直になれないその子は、自分の気持ちを気が付くこともなく、その想いを伝える
こともできなかった。」
「でもその子は、アックアという化け物に、アンタが立ち向かったときに自分の莫大な感情にようやく気が付いた」
「それが、恋という固有名詞で書かれる感情であることにようやく気が付いた」

いつもはおちゃらけた上条当麻の顔色が真剣な表情へ変わる。
「本当に・・不器用だったわ・・御坂美琴という女は」
「でももう私は自分の心を偽らない」
(もう言ったことに後悔しない)
「上条当麻さん、私は貴方の事が、大好きです。私は貴方のためになんでもやりますので
どうか、私を傍においてください」

「御坂・・」
上条当麻の顔が驚きに包まれる
ふう・・
上条当麻はよろよろと長期の入院で弱り切った体力を振り絞り立ち上げる。
「本当に・・いいのか?」

「え?」
(いったい何を言いたいんだ・・この男は・・まさか・・)
「俺は・・美琴が知っている通り、不幸な男だ」
「しかも・・成績も良くない」
「金銭的にも恵まれない」
「まあ・・そんなことは御坂美琴ほどの人物が全部承知な事は分かっている」
「正直・・美琴の気持ちはうれしい」


「だけど、美琴は、常盤台いや学園都市の顔と言ってもいい存在」
「そんな美琴に俺は釣り合うのか・・?」
「底辺の高校で、進級さえままならないそんな男に」
「学園都市でも最高レベルの学校でトップの成績を誇る御坂美琴がな」

(私はおかしくなる・・魔神さえ、学園都市の独裁者さえ右腕でぶっ飛ばした人智を超えた
存在そんな人物がたかがレベル5くらいで何をためらうのだ)

(だけど・・そこまで真面目に考えてくれるのは嬉しい)
私は、少し変化球を投げ返す
「ふふ・・当麻ありがとう。そこまで私の事をちゃんと考えてくれて」

「美琴・・」
「だけど・・当麻・・私は当麻を愛する気持ちに嘘はつけない」
私ははやる気持ちを抑えて呼吸を整える

「ごめんね当麻」
「いつも素直になれなくて私は、自分の思いをきちんと伝えなかった」
「だけど、不器用な女の子の告白は本心よ・・嘘偽りもない。それに・・」
「私が、上条当麻とその周りの世界を守る。どんな手を使ってもね」

「美琴・・」

「だから答えを聞かせて、こんな可愛げもない御坂美琴は上条当麻の傍に居ていいの?」

「え・・それは」
「まだ答えを聞いていないわ。」
何かを悟ったのか当麻が訥々としゃべり始める。

「正直突然の事で、本当に俺が美琴を幸せにできる自信もない」
「だけど、俺は美琴を大事に思っているし、とても頼りにしている」
「だから、美琴の俺を思う気持ちは大事したい」

当麻は、背筋を伸ばし惚れ惚れするほど真摯な顔で、私を見つめる。
「俺は、正直一人の女の子の人生を保証できるほどの甲斐性もない」
「だけど・・」
当麻は私の手を病み上がりとは思えない意外としっかりとした握力で握る。
「美琴は自分の気持ちを偽らずに答えてくれた」

「俺も、自分の気持ちに偽らずに答える。」
「美琴を幸せにすることは多分俺にはできない」
「だけど、俺は美琴が傍にいれば幸せになれると思う」
「だから俺が美琴の傍に居させてほしい」

「本当に・・本当にいいの・・?」
私は当麻の手を握り返す。
そして、私は当麻にはっきりと伝える
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
当麻は笑い始める。

「そうだな・・」

「まずは・・期末試験から頑張ろうか」
「そうね。しばらく人助けは忘れてね・・」
「ああ」
「それと」
病室のデジタル時計が2月14日の午前0時を確認し、私は病室の冷蔵庫から、
病院内のコンビニで買ったショートケーキと缶コーヒを当麻に渡す

「これは私の気持ち」
「え?」
「御免、最近までボランティア活動でバレンタインデーのこと
すっかり忘れていた」
「だから」
私は、無防備な当麻の頬へ軽く接吻する。
その頬の感触が甘酸っぱくとても暖かい

「明日からまず勉強頑張ろう」
「そして当麻の失った日常を取り戻そう」
「ああ」
やっと届いた片思いの恋
これでやっと自分に素直になれたそんな気がした。

続く










とある乙女のバレンタインデイ・キス




第03話


3月1日(水) 19時

「当麻できたわよ」
私は、作り終えたブランド豚とキャベツの生姜焼きを机の上に並べ終える。
適度にカットしたレタスとオニオンと大根とプチトマトとキュウリに胡麻をあえた
サラダと、カブと油揚げとオニオンを赤みそで煮た味噌汁を添える。

少量の麦と雑穀を混ぜた栄養バランスを考慮した無洗米をどんぶりに盛る。
16歳の高校生の食欲を考慮し、溢れんばかりに盛り付ける。

宿題を終えた当麻は目を輝かせ、食卓に着席する。

「ありがとう。でも本当飯くらい俺が作るぞ。美琴の分を含めて」
「いいのよ。もう少し基礎力がつくまでは私にさせて」
当麻が苦笑いを始める。
「はは、ありがとう。でもさ期末試験も無事終わったしもういいよ」

「まだ油断するのは早いわよ。でもよく8割取れたわね」
私は、全科目赤点回避どころか8割を達成した当麻の偉業を称える
「全部・・美琴先生のおかげです」
「何言ってるの?私はお膳立てしただけよ。全部当麻の実力よ」

バレンタインデーの電撃告白から約3週間、当麻の学寮へ通いほぼ毎日勉強を
付き合っている。炊飯・洗濯・買い物、いわば雑事をすべて私が引き受け、通い妻のような
日々を続けている。犬も歩けば不幸にあたる少年に机に向かせる作業は困難を極める。

私は12月の熱波事件以来築き上げた人脈をフル稼働させ、問題へ向き合った。

出席日数不足は、当麻の記憶をもとに魔術関連や暗部関連の欠席日数をすべて統括理事会へ掛け合い、
特別公休へ振り替えさせた。これで期末試験で8割突破の必要はなくなったが、ほとんど
授業に出ていない当麻に可を取らせること自体が難しい。

そこで、月詠先生経由で入手した指導要領と過去の期末試験をAIで解析し、分かりやすい
レジュメと解説集を作成した。それの徹底した反復学習だけをしてもらった
夕刻4時から7時まで、時間缶詰めにして、勉強に集中してもらった。
(それにしても・・)
私は笑いたくなる。本当に想定問題集してやっていない。だが
上条当麻は、知識はないが異様な集中力発揮し、とんでもない高得点をマークする。

(へえ・BIG DATAのAI解析の想定問答集だけやっていきなり全科目8割突破?)
当麻がにこやかに、食事を終えてしゃべり始める
「本当に美琴先生には感謝しかありません」
私は、当麻の幸せそうな顔を見て満足する。
「ありがとうでも、まだ油断しないでね。アレは出る問題を予想しただけだから」
「まあ今は贅沢言えないけど、基礎なんて無視よ・・そんな時間もないしね」
「だからそうね3月いっぱいは付き合うわ・・基礎をやり直すまで」

「え?」
「えじゃないわよ」

「いや・・もうしばらく休んでもいいんじゃない?」
「まったく・・基礎なんか全然できてないわよ」
私は少々声を荒げる。喉元過ぎれば熱さを忘れる?いい加減にしろと言いかけるが
当麻は申し訳なさそうに話を続ける
「いや・・」
「美琴に何から何までやってもらって申し訳ない」
私は当麻からの意外な答えに当惑する
「え?」
私は、留年回避の緊急事態とはいえ当麻を拘束しすぎていたのか不安になる。
「ごめん拘束して迷惑だった?」

「とんでもない、美琴が一生懸命俺の留年回避のために骨を折ってくれたことは
本当に感謝する。」
「今回こんないい点が取れたのも全部美琴のおかげだ」

「そう?じゃ・・まだそばにいてもいいわよね?」
当麻が溜息をつき始める
「いや・・不安与えたら御免・・そんなつもりじゃないんだ」
「せっかく美琴が告白してくれたのに、デートもできなくてさ・・」
私は鈍感だと思っていた当麻からの思わぬ提案に単純だが嬉しくなる
「え?それって」

「美琴もそそかしいな・・今のところは何にもできない俺の感謝の気持ちよ」

「そんな・・何もできないなんて、私は当麻に何度も助けてもらって」
「助けてもらった大恩を返していないわ」

当麻がにこやかに笑いかける。
「なあ美琴・・もう美琴は十二分の俺を助けてくれた。それこそ何度も何度も
危ないところを・・しかも自分の命を懸けて、だからもう8月の件なんて
とっくに返済済みじゃねえのかな」

「本当にそう?」
「ありがとう、ふふデートなんて楽しみね・・」
「いつ行く?」

「2日早いけどさ 3月12日なんてどうかな?」
私は目を丸くする。
「へえ・・いいじゃない?日曜日だし・・まさか・・?」
「ああそのまさか」

「ふふ・・当麻て気が利くのね、うれしいわ」
「ありがとう」

期末試験の乗り切りが忙しく、せっかく告白したのに全然甘い時間を過ごしていない。
そんな中での当麻からの申し出に心を躍らせる。

「デートプランはお任せするわね・・楽しみにしているわ」
私は、食器を洗い終え、当麻の手を握る。彼はこの謎の手ひとつで世界を救った。
その熱い想いがじんわりと伝わる。
「当麻の手が気持ちいい」
「美琴の手もな・・」

「じゃそろそろ帰るわね」
「ああ門限だったな・・」

「本当は泊まりたいけど、当麻を浴室に寝せるわけにもいかないしね」
私は、うきうきと心を弾ませながら、玄関で当麻に軽く接吻する。

「じゃ・・また明日ね」

・・・・・・・・・・・・・・・・

3月12日 (日)午前9時

俺は、生まれて初めてのデートでどきどきしている。
(まあ・・今にして思えば・・9月30日のアレはデートだったんだろうな)

さすがに鈍感な俺でも、ここバレンタインデー以来素直な美琴を見ればあれが
照れ隠しのオブラートに包んだデートであるのは分かる。
(まあ美琴らしいちゃらしいけどそれに気がつかない俺も大概だな)
(紆余曲折の末こうして、晴れて恋人になったわけだけどな)

俺は、学寮で朝食を美琴と一緒に食べた後、美琴が呼んだタクシーの後部座席で
美琴の腰に手をあてながら目的の遊園地へ向かう車内で他愛のない会話を始める。

美琴が少し申し訳なさそうにしゃべり始める。
「本当はこんな時くらい、おしゃれしたいけど」
「え?」
「まあ、校則で外出も制服着用義務があるからね」
「私が無名ならいいんだけど、さすがに最近は少しばかり顔が売れちゃったし」

「少しばかりか?」
「ただのボランティアよ」

「そんな有名人を1月も拘束してすまねえなあ」
「美琴本当にありがとうな」

「え?」
「留年回避と奨学金増額に奔走してくれて」
「まあ多少はね だけど基本は全部当麻の頑張りよ」
俺は、美琴のサラサラの茶髪を撫でる。ほのかなリンスの香りが漂ってくる。

(本当、柑橘系か美琴はいつもいい匂いがするな・・)
俺の美琴のイメージはこの匂いの記憶がバック・グラウンドにある。

柔らかなでも弾力のある太ももの感触、小さなだけど、形のいい胸、引き締まり少し
割れた腹筋、服越しに伝わる感触がすべて健康的で艶めかしい。
(今更だけど美琴は綺麗だな)
(それに・・前より随分大人になったな)

夏休みの頃はまだ子供のような顔だった。素材のよさはあれど、まだ粗削りの
面はぬぐえなかった。だが11月以降の戦いと学園都市崩壊の危機は彼女の
精神を研ぎ澄まし、その鍛錬が彼女の顔を研ぎ澄まされた美しい大人の女性へ変えている。
(こんないい女を恋人にして不幸なんて言ったら罰当たりだな)

俺は、美琴の綺麗な顔を撫でながら今は自分の恋人になった女性を眺める。
「今日は、楽しもうな・・」
美琴がまばゆいばかりの笑顔で答える
「うん・・」

・・・・・・・・・・・・・・・

遊園地で、ひととおり絶叫系マシンを試し、おなかもすいたので少々遅めの
昼食を取る日替わりランチを注文し、水を飲みながら会話を始める

美琴が楽しそうに会話を始める

「久しぶりに楽しかったわ」
「そうか?美琴には物足らないんじゃないか?」
「は・まあ高所の飛行は慣れているけど、これはこれで楽しいわよ」
「それに当麻の気持ちがとても嬉しい。バレンタインデーの返礼に
ホワイトデーの前にこうゆう場を設定してくれたことがね」
「ちょっとありふれていたかなて反省しているけど」
「いいのよ・・こうゆうのは気持ちが大事だから」
「ありがとうな」
美琴は、本当に心の底から楽しそうに笑うのを見て俺は楽しくなる。

そしてウエイターが、日替わりランチのハンバーグ定食を2人分机上へ置き
伝票をおく。ウエイターが美琴の顔を見て顔が微笑むのに俺は気がつく。

結構イケメンのウエイターが、超電磁砲の御坂美琴と気がついたのか声をかける
「御坂美琴さんですか」
美琴が、目をぱちくりさせる
「え?」

「やっぱりそうですか・・うちの学校を再建されているときにお会いしました」
「え?ああ××さんですか・・」
「うそ・・覚えていました?・・さすが記憶力もレベル5ですね、感激です」
「そろそろバイト時間終わるので後でサインもらっていいですか、着替えたら来ますので」

(やっぱ・・美琴は凄いな・・)
分かってはいた。能力開発で教育の成果と言われていた美琴。そしてクリスマス以降
崩壊した学園都市再建を主導した美琴。それに多くのファンがいて、美琴が広告塔
のような役割をはたしている事も。そんな学園都市で誰もが名前を知っているような
女が彼女な事も。

少し悩んでいる間にいつも間にかバイトのウエイターが着替えを終え、サインペンと
Tシャツのようなものを持ってくる。
「御坂さんここにサインしてもらってよろしいですか?」

「どうぞ、でもこそばゆいわね。私なんかのサインでいいの?」
「学園都市の住民は、御坂さんがあの日体を張って学園都市住民の避難民を守り
その後の再建工事の陣頭指揮に立っていたことをよく覚えいます」
「私には芸能人なんかより御坂さんのほうがよっぽど素晴らしい人です」

「なんか照れるわね・・私は皆のちょっと前に立っていただけで、大したことは
してないわ。本当皆で力を合わせたおかげよ。」

美琴は照れながらも、サインは書き終えた。
「御坂さん、本当ありがとうございました、うちの生徒会長も今度、御坂さんに
講演を開いてほしいと言ってましたので後日常盤台の生徒会へご連絡するとおもい
ますのでよろしくお願いします」

「え?ああ**さん?よろしくお願いしますね。副会長の食蜂にも伝えておきます」

俺が寝ている間に、少女だった美琴はすでに深く学園都市に根を張り
独自の世界を構築していることに驚きを感じる。

それは誇らしい。自分は、こんな素晴らしい女を彼女にしているんだ・・だけど、

胸がもやもやする。嫌・・はっきり言えば面白くない。

(俺てこんな嫉妬深かったのか?)

俺がそんな負の感情に包まれているとき、突然耳元で声がひびく
「ね・・当麻・・なんか悩んでる?」
「え?」

「あの子のこと?」
美琴には全部バレていたらしい。下に恐ろしくは女の直感
「ふふ・・うれしいな・・あのフラグ男に嫉妬されるなんてね・・」
「え?」
「私も当麻にいつも嫉妬していたの」
「だからよくわかるわ、当麻の気持ち」
「でも・・私には当麻しか見えないから安心して」

「そうか?」
「当麻て女の子にモテモテだったじゃない正直私はいつもいらいらしていた。それが
嫉妬という感情だという事に気が付いたのは後の事だった」
俺は美琴の言葉に驚く、俺がモテモテ?誰が?いつ?

「はは・・そうか?」
「今にして思えば、私がAAAに手を出したのも当麻に、もて男の上条当麻に
捨てられたくない一心だったかもね」

俺は美琴の衝撃の韜晦に驚く
「俺がもて男?いや・・そんな」

「不思議よね・・あれほどいろんな子に好かれていたのに
最初に告白したのが私なんてね」

「でも私が最初で本当によかった」
「え?」
突然美琴が小言でささやく
「ALLis fair in love and war」
「何?」
俺には美琴の早口の無駄に発音のいい英文らしき
言葉の意味が全く理解できない
「恋する乙女のひとりごとよ」
「そのうちわかるわ」
「だから今日は楽しみましょう」

素直になった美琴は好意をはっきりとぶつけてくる
手を握り、無防備の健康的な太ももを見せつける。
(ほんとう、コイツはいいやつだな)
いるだけで周りを照らし、生きる勇気を与える存在。
匂い、雰囲気、そして実力に裏付けされた自信

そしてとびっきりの笑顔が眩しい。この笑顔が見たくて
デートをしているんだから

・・・・・・・・・・・・

3月12日 17時

楽しい時間ほどすぐに終わる。そんな経験はないだろうか
今日の俺がまさにその状態だ。美琴はいつも以上に素直に俺に好意をぶつけ、その
笑顔に俺の全身が活性化する。いつまでもそんな時間が続いてほしい。本当に
そう思う。だけど・・楽しいひと時はあっという間に終わり、俺たち2人は観覧車で
最後のひと時を過ごす。まだ肌寒いが順調に伸びた早春の残照が明々と照らす。

その残照で美琴の顔が赤く染まる。だがその赤さに俺への気持ちが混じっている
事を俺は見逃さない。

俺は、可憐な少女の顔が俺への意識で赤く染まるのが素直にうれしい。
(今日は本当に楽しかった)
ファンシー・グッツの店できゃきゃと少女らしくはしゃぐ少女の素顔、そんな少女
が超電磁砲という御大層な2つ名を持ち、学園都市の再建の陣頭に立っていたギャップ
に驚かされる。そんな素顔を知っていることがうれしい。

「なあ、美琴」
「ん?どうしたの当麻」

「俺は、美琴から告白されたときうれしかった
「え?」

「美琴は、さっきの子みたいに、多くの子に慕われている。常盤台でも、学び舎
の園でもそして、学園都市全体でも」
「そんな御坂美琴に俺は釣り合うのかなんてな」

美琴が何か言いたそうだったが、俺が目で止める

「だけど、美琴の鼻歌を歌いながら夕食を作るときの
生き生きとした表情や、毎日学校へ出るときの笑顔を見るうちに、そんな
小さなことに事にこだわった自分が
恥ずかしくなった」

「今は美琴の気持ちに誠実に答えることが大事だと思うようになった」

俺は、内ポケットから小さな宝石箱を取り出す、そこから安物のリングを2つ
取り出す。

「正直まだ俺は高校生で、美琴のようなお嬢様を一生ささえるだけの甲斐性も
ない」
「それに美琴も知っている通り俺は目の前の困った女の子をいつも助けようとすること
をやめるつもりもない」

「だけど・・美琴を思う気持ちは本物だ」
「エンゲージリングなんてそんな大層なものじゃなく安物だけど」

「これを一緒にしよう」

小さな、ささやかなリングを美琴の指にはめる
何をしゃべるかわからずどきどきしていた美琴の顔がぱあーと明るくなる。

「本当に、はめていいの?」
「ああ」

「ありがとう」
「これからは一緒に生きていこう」

「私も精一杯努力するわ」

俺は美琴を抱き寄せる
「美琴、・・今まで美琴の気持ちに気が付かなくて御免」
「だけど、これからは何があっても一緒だ」

俺は美琴を強く抱きしめる
「今はこんなことしかできなくて御免な」
美琴がそっとよせた頬に想いを籠めて接吻をする
む・・むちゅう・・

ぶは・・
美琴が開口一番しゃべり始める
「いままで私はいつ当麻に捨てられるか、置き去りにされるか不安でしょうがなかった」
「でも、今日やっと言える。私は本当に当麻と一緒に同じ目線で歩いていける」
「だから・・」

「当麻は今まで通り、自分の信じる道を歩いてほしい」
「私は、当麻を信じるから」

観覧車は、1回転を終え、入口へ戻る

俺は美琴をエスコートして、出口から出る
「今日は、1日ありがとう」
「残念ね、でも・・当麻本当ありがとう」

美琴がどこか遠いところを見るような表情を見せる
「正直私悩んでいた」
「え?」
「当麻が信じられなくてね、実は飛び級を申請しようかと思っていたのよ」
「はあ?」
「少しでも当麻の傍に居たかった、離れたくなかった」

「でも、常盤台の生徒会長なんてしてるし、こんな学園都市や学び舎の園が
混乱している時期にそれも無責任だと思ってね」
「でも今日リングをもらって本当当麻と一緒になれると確信できてうれしかった」
「ありがとう」

「美琴・・」
「ね。この前の約束覚えている?」

美琴が今度は、満面の笑みで俺を見る

こんな笑顔が素敵な女の子の一番になれたことが本当にうれしく、そして
誇らしい

俺は、忘れもしない、その言葉こそ美琴が一番のぞんでいるものだから
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
「もう、何があっても美琴を離さない」

「ね・・今日はホテルへ行かない?」
俺に断る理由もなかった、もちろんすることはちゃんとした上だが、その晩は
俺と美琴にとって、特別な一夜になった

・・・・・・・・・・・・・

その4年後 2月14日 (日)

今日は私にとって、特別な日になる。そう女性にとって一番特別な日
を迎えている。結婚し姓が変わることになった。もちろん上条へ変わる。

激動の4年を乗り越え、ようやくこの日を迎えられた。死にかけたことも1度や2度じゃない。その間に私は駆け足に高校と大学の学部を飛ばし、大学院も先日卒業した。
忙しくも充実した日々だった。まだ妹達問題を含めて、解決していない問題は多い。
だけど、一歩一歩2人・・いや常盤台の関係者それに多くの人の協力を得て一度は地の底へ落ちた学園都市の再建進めている。

今日の式は身内だけのささやかなものだが、披露宴には何人参列するんだろうか?
招待状は約1万枚出したが・・

神父さんの声を聴きながら私はこの4年ですっかり精悍になった当麻を見つめる。
いよいよ、当麻の宣誓も終わり、私ははっきり、腹の底から声を出す
「誓います」
女として、自分の信じる者守るために、そして愛した人間を必死で守る喜び
を噛みしめる。
安物でない、本物の結婚指輪を眺めながら、
私は誓う、何があろうと当麻を守る
私は誓う、何があろうとこの街を守る

そして2人で絶対幸せな家庭を築くと


終わり











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