とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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勝手に終わりを想像してみた



「ふう………。後は、『力』を解放するだけか」

上条は全ての準備を終えた。
あとは『力』解放するだけだ。
上条はゆっくりと右手を上に上げていく。
手を開き、手の平を空へと向ける。
そしてそのまま『力』を―――――

「ま……待って!」

背後から声が聞こえたので、上条は行動を中断する。
声で誰なのかはわかっていた。
御坂美琴だ。
だけど、その制服はボロボロになっている箇所がいくつかあった。
右手を下ろしながら上条は背後を振り向く。

「行か、ないで………行かないで!!」

悲痛な顔で訴えてくる美琴の顔を見てられなくて、上条は目を逸らす。
だけど、言わなければならない。

「俺は、神様を殺したんだ。だから―――」
「わかってる!! わかってるわよそれくらい!! でも、でもっ!! 行って欲しくない。消えて欲しくない!!!!」

美琴は無我夢中になって叫んでいた。
その目から流れる涙なんて気にしてなどいない。

「全部、聞いたわよ。アンタが、神様を殺して、それで、このまま放っておくと、世界は崩壊してしまうから。だから―――!」
「だから、俺が神になるしかない」

美琴の言葉を遮って、上条は続きの言葉を言った。
そして、そのまま続ける。

「だから、諦めてくれ」

突き放す。

「あ、諦められるわけないじゃない!! 私は、アンタが好きなの!! これ以上ないくらい、アンタのことが好きなのよ!! 私は、アンタと一緒にいたい。アンタと一緒にいろいろなことがやりたいのにっ!!」

だけど、美琴はくらいつく。諦めない。何があろうとも、絶対に。
上条は、聞く。

「俺が神にならなかったら世界は崩壊するんだぞ?」
「世界のことなんかどうでもいい!! 私は、それ以上にアンタといたい!! 自分勝手だって、わがままだって、そんなことはわかってる!! でも、それでもアンタと一緒にいたいこの気持ちは、この気持ちだけは変えられないの!!!!」

その言葉を聞いた上条は愕然とした。
世界よりも上条を選ぶ程までに思われていることに。
だが。

「無理、だ。それだと、俺は約束を破ることになる。お前と、お前の周りの世界を守るっていう、約束を」
「……私の周りの世界の中にはアンタも加わってるのよ?」
「ああ。結局破ることになっちまうが、大丈夫だ」
「だ、大丈夫って、どういうことよ!?」

上条は、少し逡巡してから、言う。

「俺が神になったら、俺の存在は消えるから」
「…………………………………………………………ぇ?」

今度は美琴が愕然とした。
言葉の意味がわからない。
いや、実際は理解できているはずなのに、理解しようとしていない。理解したくない。
だけど、上条は全てを言い放つ。

「俺に関する記憶、物は全て、全ての人間から忘れ去られるんだ。完全記憶能力だって例外じゃない。そして、思い出すことは絶対にない」

美琴は愕然としたまま動かない。
少しして、回復した美琴はポツリと言った。

「…………………………………………………ぃ、ゃ」

一度でも言葉が出ると、もう美琴の口は止まらなかった。

「ぃ、ゃ。ぃゃっ。いや。いやっ。いや! いやっ! いや!! そんなのいや!!!!」

同時に、涙も止まらない。
もう、ブレザーはグチョグチョに濡れていた。
もう、美琴は正常に考えることができなかった。
考えたことがただ口から漏れていく。

「なんで? なんで当麻がそんな目に遭わなくちゃいけないのよ!? なんで!!?? なんでなのよ!!!???」

その後も数分間ずっと言い続けていたが、次第に美琴は落ち着いてきたのか、言葉を止める。
それを見計らって、上条は答えた。

「不幸だから、じゃねえのかな……?」
「ッ!!??」

神裂が聞いていたらどんな反応をしていただろうか。
想像もつかないが、上条の言葉には続きがあった。

「けどな。俺は、不幸でよかったと思ってる」
「……………………………………………ぇ?」

美琴は再び愕然とする。
理由がわからない。
何故?という言葉だけが頭の中に響き渡る。

「俺が不幸にも巻き込まれたから、御坂美琴は死ななかった。俺が不幸だったから、他の人の不幸が減った。俺が不幸だったから、他の人にこんな役目を渡さずに済んだ」

それは、かつて、父親の上条刀夜にも言ったこと。
もし逆に幸運だったら?
もし幸運にも巻き込まれなかったら?関わらなかったら?
御坂美琴は死んでいただろう。他の人が神を殺して、神の座に付かなくてはならなかったろう。
だけどそれは、幸運と呼べるのだろうか。

「だから俺は、世界で一番不幸(しあわせ)なんだよ」
「ッ!!!! で、でも。でもっ!!!!」
「御坂。―――いや、美琴」
「……………な、に?」
「だから、俺のことは忘れて、幸せになってくれ」

上条はそう言って、右手を上に上げる。
手を開く。空を乗っけることができるくらい。

「っや!! やめてっ!!!!」

上条の言葉の意味を理解した美琴は、気づいたときには上条に抱きついていた。
上条の胸に顔を埋めて。
上条の行動を止めるために。
絶対に離さない、とココロに決めて。

「………美琴」

上条は、子どもをあやす親のような声で名前を呼ぶ。
美琴は答えない。その態度で意思を示していた。

「離してくれ」
「いや!! 絶対にいや!!!!」

それはわがままな子どものようだった。
上条は一つため息を吐く。
恐らく、このまま『力』を発動しても美琴に危険はない。
なのに、発動できない。発動したくない。
そう考えてしまう。

(まだ、未練があったのかよ………。断ち切ったつもりでいたのに)

違う、本当は未練しかなかった。
生きていたい。神になんてならずに、みんなといつも通りに過ごしたい。
美琴と一緒にいたい。
けれど、神様を殺したその時点でもう決まっていた。
だから、考えないようにしてきた。
それが、今になって溢れてきている。
ただ、それだけだった。
だから。

「美琴。顔、上げてくれるか?」
「ん……ッ!!!???」

美琴はそれぐらいなら構わないと思ったのか、顔を上げる。
その瞬間、上条は力任せに美琴の唇を奪った。
強引だったため、外された美琴の腕が痛い。
だけど、腕の痛みなど気にならない。
美琴は何をされているのかを理解して、顔を赤くさせながら、上条を受け入れていた。
長い、長いキス。
ようやく解放された美琴は力が抜けて座ってしまった。
何故だか、力が入らない。
上条はそれを見ると、再び右手を空にかざした。

「ッ!!!!」

美琴はそれを見てまた遮ろうと、足に力を込めるが、立てない。
そして。



「本当、不幸(しあわせ)な人生だったよ」



上条はそう言って、『力』を解放させた。
上条の右手を中心に光が溢れ出し、上条の姿が見えなくなる。

「―――ッ!!!!」

美琴が何か叫んでいるのが聞こえる。
恐らく、自分の名前だろうと上条は推測する。
それに応えるように、きっと聞こえないだろうと思いながら、上条は言った。

「ごめん。でも、ありがとう―――――美琴」

上条を包む輝きは一層激しくなったと思うと、光は遥か空へと飛んでいった。





美琴は、呆然とそれを見守ることしか、見送ることしかできなかった。
未だ上条がいた場所が光ったままだったが、そんなものは美琴の目に入ってなどいなかった。
ただ、上条はもういない。その事実だけが美琴の身に重く圧し掛かる。
また、涙が溢れ出してくる。

「当麻………。と、うま………。とぅまぁ………」

気づけば、下を向いて、名前を呼び続けていた。
涙が地面を濡らす。
上条のいた場所にあった光が収まっていく。
だけど美琴は気づかない。気づくはずがない。
大切な者を失った美琴が気づけるはずもなかった。





――――――――――その場所に、上条当麻が立っていることになど。





「……………アレ? なんも変わってない?」
「…………………………………………………………………………………………………………ぇ?」

最初、美琴は幻聴かと思った。
次に、聞き間違いなのかと思った。
美琴は恐る恐る声が聞こえた方を向く。
そこには、頭をポリポリと掻いた状態の上条当麻が立っていて。
声も、顔も、体形も、上条当麻その人で。
それでも信じられない美琴は思わず呟いていた。

「な、んで……?」
「い、いや。なんでって言われても。上条さんにもさっぱり訳がわからんのですよ」

よくよく考えればおかしかった。
全ての人間から忘れられるハズなのに、美琴は上条のことを覚えていたのだから。
何故こうなったのか。
原因は、不明。
もしかしたら、上条が無意識にやめてしまったのかもしれない。
もしかしたら、幻想殺しが意思をもって、やめさせたのかもしれない。
もしかしたら、神は必要なかったのかもしれない。
もしかしたら、既に他の誰かが神になったのかもしれない。
もしかしたら、美琴の願いが叶ったのかもしれない。
もしかしたら、神は死ななかったのかもしれない。
もしかしたら、その可能性は考えればいくらでも存在した。
けれど、そんな原因などどうでもよかった。
上条当麻がそこにいたから。

「仕方ない。もう一度………なんてできるかぁ!! せっかく人が覚悟を決めてお別れしたっつうのに粉砕しやがって。もう頼まれても神なんてやってやんねえぞ!! なんかのアホー!!!!」
「……………………………ぷっ。あははははははははははは!!!!!!」

上条のいつも通りの様子を見て、美琴は思わず吹き出してしまった。
それを見た上条が「なっ!?」と驚いて。

「美琴サンに笑われたーっ!? や、やっぱり許さんどっかの何か!! ふっ、不幸だぁぁぁぁぁぁー!!!!」

美琴は大笑いをした後、少し笑いで涙目になりながらも、上条を見る。
そして、ポツリと。

「よかった。………本当に、ホントによかった」

上条の動きが止まる。
それこそ、石化したように。
美琴は力の戻った足で立ち上がって、上条に再び抱きついた。

「うおあっ!? み、みみ御坂さん??」
「よかった、よかった。当麻がいてくれて。本当によかった」

最初は慌てた上条だったが、美琴が僅かに震えていることがわかると、上条は優しく美琴を抱いた。
美琴はそれに驚いたのか一瞬肩をビクッと震わせたが、すぐに抱きつく力を少し強めた。
いつの間にか、体の震えは止まっていた。

「美琴」
「………何?」

上条が優しく呼びかけてくる。
美琴はそれに顔を上げずに返す。
先程のことがあるから、というわけではない。と思う。多分。

「好きだ。付き合ってくれませんか」
「ッ!!!???」

上条の発言に美琴は驚いて顔を上げた。
上条は至って真面目な顔で言っている。
美琴は、満面の笑みを浮かべて。

「んっ!!!???」

上条の唇を奪った。
先程よりかは短いキスだった。
美琴は自分からしておいて力が抜けかけていたが、言う。

「うんっ!!」
「そっか。ありがとう。美琴」

もしかしたら、数分後には世界が崩壊してしまうかもしれないけれど。
その時は、この右手で必ず美琴を守り抜くと誓って。
だけど、なんとなく、上条には世界の崩壊は自分達がもういない時代に起きるような気がしていた。

「当麻、今は幸せ?」
「ああ、これ以上ないくらいに幸せだぞ」
「違うでしょ。これからはそれ以上に幸せになるんだから」
「それなら、そっちだってこれからはそれ以上に俺を好きになるんじゃないか?」
「あははっ。そうだね。当麻っ」
「ああ、そうだな。美琴」

そう言って2人は、もう一度、唇を重ね合わせた―――――




終。


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