とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

02章-1

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集


第2章 帰省1日目 二つの再会


 1月2日 AM10:55 晴れ


刀夜「おお当麻、よく来たな」

 学園都市から外へと繋がる特別列車を降り、改札から出た上条当麻はすぐ刀夜に発見された。
 帰省ラッシュのピークは過ぎたとは言え駅は酷く混雑していたが、その中からでもすぐに見つけられるのはさすが父親といった
ところだろうか。
 その駅の記憶が全く無く若干不安だった上条はそのことに安堵する。

当麻「あれ、父さん帰ってたのか?」
刀夜「ああ、正月にせっかく息子が帰ってくるというのに仕事なんかするわけないだろう。 車はあっちだ。 歩きながら話そう」

 人混みをかき分けるように刀夜は歩き出した。 上条当麻はそれに着いていく。

刀夜「しかし当麻、たった二泊なのに随分と荷物を持ってきたんだな」

 上条はカバンを後ろ手に持っていた。 仕事などで旅慣れた人から見れば、それは二泊用にしては一回り大きいと感じる
かもしれない。

当麻「え? えーっと、まあ。 遠出とかあまりしないからそこら辺の加減が分からなくてさ。 あと冬休みの宿題とかがあって
    かさばっちまって」
刀夜「ああ確かにそれはあるな。 父さんも初めての海外出張の時なんかは勝手が分からず大変だった」
当麻「へえー」

 というのはもちろん盛大に嘘である。 上条当麻ほど頻繁に世界中を飛び回っている高校一年生はそうそう居ないだろう。
 実はカバンの中には何故か美琴から借りた大きなゲコ太のぬいぐるみが入っていて、それがかなりの体積を占めていた。
 自分でそれを詰めたはずなのに、そのことに対し上条は正直困惑している。

当麻(妙に寝付けないと思って何となくアレを抱いて寝てみたら快眠できた……って何がどうなってんだ意味分からねえ。 俺は
    一体いくつのお子様なんだよ。 そして何で持ってきたんだよ。 実家でアレ抱いて寝る気かよ、本気かよ上条当麻嘘だろ
    嘘だと言えハイ嘘ですー!!)

 脳内は酷く混乱していたが、理由は分かっていた。
 あのぬいぐるみを抱くと美琴を抱いているようにやけに落ち着くのだ。 確か美琴はアレを『先代』と呼んでいた。 もしか
したら夜アレを抱いて寝ていたのかもしれない。
 『先代』がアレなら『当代』は何だろうという疑問があるが、それ以上の問題がある。

当麻(てことは何か? 俺は美琴を抱いて寝たら快眠できるってことですか? アイツは俺にとって快眠グッズなんですか??)

 だから俺は幼稚園児かよ、と記憶ではなく知識の方で自分にツッコミを入れてみる。
 付き合っているからといってここまで依存しきってしまって良いのだろうか?

刀夜「……聞いてるか?」
当麻「え、ああわりい聞こえなかった。 何?」
刀夜「乙姫ちゃんも来てるぞって。 前回は色々ありすぎて結局まともに話してなかっただろ?」
当麻「………そうだな」

 上条は夏休み後半、海での出来事を思い出す。
 結局、御坂美琴の姿になっていた乙姫が元に戻る前に上条は病院へ担ぎ込まれたわけで、乙姫の実際の姿はあの時見ていない。
 一応刀夜に携帯で写真を送ってもらったため顔は把握しているが、きちんとした姿で会うのはこれが初めてである。

当麻「他の親戚の人も来てるの?」
刀夜「いや、今は乙姫ちゃんだけだ。そう心配するな」
当麻「そっか」

 帰る日取りを決めるにあたって上条はあからさまに親戚と会うのを避けたわけだが、刀夜はそのことについて特別何も言及して
こなかった。
 後になってその理由を推測してみたのだが、記憶喪失であることがばれていないとすると、恐らく親戚の中に上条当麻の不幸
体質を快く思っていない人でも居るのだろう。 海で聞いた上条当麻のこれまでの話を聞けば大体想像は付く。
 その人も、上条家を根っから嫌っているわけではないかもしれないが、もしかしたら上条当麻自身が過去に萎縮してしまった
出来事でもあるのではないだろうか。 例えば相手方に多大な迷惑を掛けたとか、色々と要らぬ心配を掛けすぎているとか――――
 それが当たっているかどうかは分からないが、いずれにせよ今の上条としては好都合である

刀夜「まあせっかく帰ってきたんだ。 ゆっくり羽根を伸ばすと良い」
当麻「そうさせてもらうよ」

 その後数分歩いてようやく混雑した駅を抜ける。
 この間、二人は当然の如く数えるのも面倒なほどのフラグを立てまくったわけだが、その話はここでは割愛する。
 ちなみに両者の感想はというと、

刀夜(はは…は。 母さんを連れてこなくて良かった)
当麻(はは…は。 美琴がそばに居なくて良かった)

 何とも親子らしい同じ思考である。
 二人は少し体を震わせつつ、実家へ向かうため駐車場に停めてあった刀夜の車へと乗り込んだ。


 ◆


 ところで、上条当麻は丈の短い厚手のジャケットを羽織っている。
 寒さに我慢出来なかったからとか、たまたま立ち寄った店に安くて気に入ったのがあったからとか、大体はそう言う理由
なのだが、決してお年玉を見越して買った訳ではないと上条は心の中で弁明する。
 それよりも大きな理由に、寒そうな格好で帰省すれば恐らくコートを買い与えられるのではないかという心配があった。
 入院や家の爆破など、上条が原因できっと実家の家計を圧迫しているであろうことは想像に難くない。 だから上条としては
そういう贅沢面で気を使われるのは息子ながら心苦しいのである。
 とは言っても、お年玉を期待していないと言ったらもちろん嘘であるのだが。

当麻(つうわけで一週間……いやできれば一ヶ月くらい持ってくれねえかな)

 と考えてみて、直後それが既に後ろ向きすぎる願いであることに気付いて憂鬱になる。
 いっそ美琴が直せる範疇の物を、とも考えたが、どんな趣向のコートやジャケットが仕上がるか想像するだけで冷や汗が出て
くるので脳内会議の結果、反対派過半数で却下された。 ついでに微妙に賛成派が居た事にショックを受けた。
 というかマフラーについているTOMA(はぁと)は巻き方で隠したから良いが、猫の刺繍が付いた手袋にいつツッコミが入るか
が怖い上条当麻である。 今はポケットに無理矢理突っ込んでいるので大丈夫だが、自分の体質を鑑みれば持ってこなかった方が
無難だったかもしれない。

当麻(ん、ここか?)

 刀夜といかにも父子的な当たり障り無い話をしているうちに、車は一軒の民家の前に止まった。 そしてその駐車スペースへ
とゆっくりバックしていく。 たぶんそこが上条の実家なのだろう。

当麻(なんつうか…………予想以上に普通だな)

 家は敢えて特筆する気も起きないようなやや古い二階建ての一軒家であった。
 冬であるためか若干寒々しい小さい庭の横、日本の住宅事情を端的に表しているような駐車スペースへと乗用車が収まる。
 二人が降りると早速その音を聞きつけたのか、玄関から暗い赤系のストールを身につけお嬢様然とした詩菜が近づいてきた。

詩菜「あらあら。 お帰りなさい当麻さん。 待ってたわ」
当麻「ただいま母さん」

 上条は記憶にないはずのその家と微笑む家族を改めて眺める。
 普通の、何の思い出もない人からすれば何の感慨も湧かないであろうその景色は、しかし全ての思い出を失ったはずの上条
当麻の心には安らぎを与えるのだった。

当麻(心のどこかで覚えてんのかもな………、まあ気のせいかもしれねえけど)

 と、しんみり感傷に浸る上条だったが、それはすぐに後ろから発せられた黄色い声と共に一気に潰される。

乙姫「おッ兄ちゃん久しぶりー!!」
当麻「ッぐああああああああああ!! てぇ、乙姫かぁ!?」

 ついでに体も潰される。
 乙姫は上条に気付かれないように背後から忍び寄り、いきなりほぼ真上と言って良いほどの高さから上条の背中に抱き付いた。
 不意を突かれた上条は一瞬重力が倍増したのかと錯覚したが、その黄色い声とテンションの高さ、それに『お兄ちゃん』ワード
で乙姫であると気付く。

当麻「お、降りろーーーーー!! 重たいーーーーー!!」
当麻(そしてわずかな膨らみがあたるー!!)

 リアル乙姫は美琴よりもっと幼いと踏んでいた上条は、そのわずかばかりの膨らみに動揺を隠せず思わず叫んでしまう。
この程度のぶら下がりならインデックスで慣れているため上条には大したダメージではないはずなのであるが。

乙姫「ぶー!お兄ちゃん女に対してそのワードは禁句ー!」
当麻「分かった、分かったから首を絞めるなそして背中から降りろー!!」
乙姫「んや? 何これ………TOMAはぁとー?」
当麻「(やべっ)」

 上条は全力で乙姫の首絞めぶら下がり攻撃を振り払うとマフラーを結び直す。

乙姫「んー??」

 小豆色のマフラーを巻いた小さな竜神乙姫は、クリクリとした瞳で訝しげに上条を見つめた。
 彼女は本当に自分の従妹かと疑ってしまう程愛嬌のある可愛い女の子であったが、そのベリーショートの髪は上条に少し似た癖っ毛
であり、そんなところに上条は妙な親近感を覚えてしまう。 もっとも、上条の髪の毛は彼女のものよりずっと固いのだが。

乙姫「お兄ちゃん、そのマフラー」
当麻「さぁ寒いし中に入ろうぜー」

 上条はとりあえず観察はほどほどにして乙姫の鋭い視線をのらりくらりと避け、皆を家へ入るよう促した。
 しかしどうにか誤魔化そうとする上条は、乙姫よりやや低い声と共にまたしても一気に潰される。

??「お兄ちゃんひっさしぶりー♪♪♪」
当麻「ッぐえええあああああああ!!?? 誰?? え、誰???」

 さっきの乙姫より高く飛んだのか、上条はその衝撃に本気で地面に倒れかかる。
 どこかで聞いたことがある声が耳に入り、どこかで見たことあるような茶髪が上条の肩へ掛かる。 だが顔を見ようとすると
ヒョイヒョイッと右へ左へと避けてしまうので一向に誰か分からない。

当麻「誰か分からないけどとりあえず降りろ、って酒臭っ!? え、本気で誰ですか酒飲むような御方に上条さんがお兄ちゃん
    呼ばわりされるわけねーだろ!??」

 全力で振り払ってみるが、相手はそこそこ腕力もあるらしく一向に離れる気配がない。

当麻「つか今度はマジで重いんですが!! ……ッぐあ! いってー!!」

 試しに心情を正直に吐露してみたところ、思い切り頭突きされてしまい涙目になる。

??「このプロポーションでまらふまんがあるというのかーっ!!」
当麻「だから見えねーってば!! しかもベロベロじゃねーか誰だよもー!!」

 しかしそれよりも何よりも一番問題だったのが――――――

当麻(む、胸……胸が、胸があたるんですけど! 胸があたるデカイ、デカイ胸、バスト、おっぱい!)

 相手は相当巨乳なのか、体を少し離すように負ぶさっていたにも関わらず、時より上条の背中に二つの柔らかいものが
ムニュッムニュッと押しつけられるのを感じる。
 上条の脳内では痛みとか焦りとかが徐々に片隅に追いやられ、そのほとんどが『デカイおっぱい』というイメージで満た
されていく。 一瞬『まぁいいやこのままで』とか不埒なことを思いかけてしまいそうになる。

当麻「た、助け……」

 頼みの綱である家族の方を見やると、母親は「あらあら。 誰に似たのかしらデジャビュだわ」とか言いつつ恐ろしい笑顔で
刀夜を見ているだけだし、父親はその母に若干脅えて何やら言い訳しつつ、どうしたものかとこちらをチラチラ窺っているだけ
だし、いつも元気な乙姫は何故かジト目で上条を観察しているだけだった。

当麻(ま、マズイ。 このままじゃ、このままじゃ……………………顔がニヤケるぅーッ!)

 これから数日共に過ごす家族の前でその失態だけは避けなければならない。
 上条は奥歯を噛みしめる。

当麻(よし、奥の手だ……………たすけて御坂美琴大センセー!!)

 説明しよう! 上条当麻は日頃から超電磁砲の異名を持つ御坂美琴大センセーから致死レベルの攻撃を受けているため、彼女を
想像する事により己の内から恐怖《トラウマ》を呼び起こし、それによってどれだけリビドーが抑えきれない状況でも賢者に戻る
事が可能なのだ!!(今発明)
 つまり本人が聞いたら確実に怒り出しそうな方法であるのだが、現状上条当麻の息子としての尊厳がどうしようもなくピンチ
なのでしょうがない。
 上条は目を閉じ精神を集中させると、目の前にぼんやりと御坂美琴の姿を作り出した。
 一瞬その姿を見て穏やかな気持ちになりかけるが、想像の中の彼女は上条の姿を発見すると怒りに震え始めた。 そして体の
周りをバッチンバッチンと青白い電撃が舞う。

当麻(こ、こえぇ!! 殺される死ぬこえぇ!!)

 想像の中の美琴は唸りだす。

美琴「ア~~~ン~~~タ~~~は~~~!!!」
当麻(まるで本物みてえだ、幻聴まで聞こえてきた。 いけるんじゃないかこの方法!?)

 美琴の怒りに合わせて空からゴロゴロと雷雲の音まで聞こえ出す。

当麻「…………………は!? ちょっと待て、ゴロゴロ??」

 慌てて上条は目を開ける。
 そこには想像通りの美琴の姿があった。 しかし上条が想像した物ではない。 上条が想像しようとしたのは雷撃の槍を放とう
とする御坂美琴であるが、何やらいつもと様子が違う。

当麻「…………………えーっと」

 再び空がゴロゴロと言う。
 上条はチラッと上空を見ると、さっきまで晴れていたはずの空に真っ黒な雷雲が不自然に出来ていた。
 上条の全身から気持ちの悪い汗がダラダラと流れ出す。

美琴「ひとの母親と、何イチャイチャ抱き合ってんのよ………」

 上条はその言葉でようやく後ろの人物が誰か理解する。

当麻「チョットマッテ、ミコトサン。 オチツイテ。 オチツイテ。 ミコトサン。 ハハオヤ、カミナリ、ヨクナイ!!」
美琴「うっさい黙りなさい!!!」

 恐怖で片言になった上条の言葉を美琴が一蹴する。
 その時、上条の体がフッと軽くなった。
 思わず後ろを振り返る。

美鈴「まっずー退散」

 美鈴はそそくさといった感じで上条宅の方に居る乙姫のもとへと向かい、上条のことなどどうでもいいとばかりに何やら
こそこそと話し始めた。

当麻「そこー!! 何だよ、何ハイタッチしてんだよ!! アンタの娘のやり場の無い怒りはどーすんだよ!?」
美鈴「うーん、そうね、やっぱ大きい方が好きらのかしらねえ」
乙姫「じゃないかなあ、美鈴お姉ちゃんの時はお兄ちゃん完全にデレデレしてたし、目ー瞑って感じ入ってたし」
当麻「聞けよ! つーかいつ知り合ったんだよ二人とも! んで何の話してんだ俺を放っといて、ってわーこっち睨んでるお願い
    します後生ですから助けて下さいほんと頼むからさー!!」

 美琴にツッコミを入れるのが怖くて事の元凶へと矛先を向けてみたが何もかも無意味なようだった。

美琴「ア・ン・タはこんな時にでも私だけスルーかそんなに巨乳が好きかニヤケ面してんじゃないわよこのエロ馬鹿当麻ー!!」
当麻「ちょっまっ!」

 美琴は挙げていた腕を振り下ろした。
 次の瞬間、

 ビリビリドカーン!!! ――――――――とはならない。

 一応名誉のために言っておくと、そもそも美琴は雷を落すつもりなど無かった。
 いくら上条が自分の母親とイチャ付いているところを目撃したところで、そして上条がそれにニヤニヤしていたところで、
さすがに落雷は行きすぎである。
 せいぜい『雷撃の槍十発の刑』程度で十分だろう。
 しかし上条の家族の目があるのでそれも厳しい。 普段からこんな調子で喧嘩してますよとばかりに一発食らえば即死しかねない
『ように見える』雷撃を上条に向けて飛ばしまくるのは心象が最悪であるし、それを見られることに妙な気恥ずかしさもあった。
 なのでこの雷雲は上条を精神的に殺るためのハッタリなのだ。 上条がビビればそれでオーケーである。
 そしてそれは実際に効いた。 いや、効きすぎたようだった。

当麻「…………………」
美琴「…………………」

 場がシーンとする。
 落雷という恐ろしい攻撃を前にも、普段の上条なら超反応で対処できたであろう。
 でもこのとき周りには善良な(?)一般市民が居たのだ。
 美琴を信頼していないわけではなかったが、さすがに落雷は危ない。 これは雷を落される前に止めなければならない。
などと思った上条はやや錯乱気味に思い切って前に踏み出したのだった。
 その結果が今の状態である。
 二人は色んなことが頭を巡って体が固まってしまっていた。

詩菜「あらあら。 私ったら息子の育て方を間違ったかしら。 いくら衝撃的な再会だったからと言って年端もいかない女の子の
    怒りをなだめるのに往来でいきなり抱きしめるという行為に及ぶのはいかがなものかしら。 ねえ刀夜さん? あらあら。
    あらいやだ、私ったら今ので似た状況を少なくとも4シーン分は思い出しちゃったわ、これは遺伝なのかしら刀夜さん?」
刀夜「母さんお願いだからその思いだし怒りは勘弁して頂けないだろうかいえ何でもないですごめんなさいでしたー!!」
乙姫「お兄ちゃん……」
美鈴「あらーん? いつまで抱かれたまんまでいるつもりなの美琴ちゃぁん♪ 実はあまりの嬉しさに意識飛びそうなのーん?」

 ひとしきり皆の意見を聞いたところで、ようやく二人の頭は正常な思考を取り戻しズバァァッ!! と勢いよく離れる。
 そして家族の方へ向いて仲良く金魚のように口をパクパクとさせてどうにか言い訳し始めた。

当麻「………ちちちちが、違うんですほんと皆様これは違うんです誤解です!」
美琴「そそそそうそう違うのよ勘違いなのよそういうのじゃないのよ!」
当麻「つまり雷が危ないので俺の幻想殺しが咄嗟に右手で頭へゴーなのです。 詳しく話すと長くなるのですがとにかく信じて
    下さいお願いします!」
美琴「別に嬉しくて固まってたとかとかじゃないわよ? だだだ、大体コイツとは何もないわけで………」
当麻「(あ、おい違うぞ御坂怒れ、抱き付いたんだからここは怒るところだ!)」
美琴「(え? ……あ、ああそうねそうよね)」
美琴「えと………、ていうかアンタは何いきなり抱き付いてきてんのよ馬鹿~」
当麻「ぎゃーあぶないー。 マイリマシター」

 美琴のおでこあたりからピリピリパチパチ~と弱いスタンガン並の電気が放たれ、それが上条の右手に吸い込まれて消える。
 自分達でも笑えないほど酷い演技であった。

当麻「ということです。 いつも会うたびビリビリしてくるコイツへの対処方という訳です」
美琴「ん? ちょっと待ちなさい。 アンタがいつもいつもムカツク状況になってんのが悪いんでしょ?」
当麻「うぐ……いやそれでも『とりあえず』でいつも電撃浴びせられる身にもなってみろよ! 実際恐怖なんだぞ? 右手以外に
    当たったら死ぬっつの!」
美琴「うっさい! そんなこと言ってアンタ結局いつも避けるじゃないのよ。 一回くらい当たれ! そしたら考え直すわよ!!」
当麻「当たったら病院かあの世行き決定だっつの。 今まで当たらなかったからって今度も当たらないとは限らないんだからな!!」

 ぎゃーぎゃーと何やら二人にしか分からない痴話喧嘩を始める。

美鈴「まあ……、よく分からないけど何というか大変仲が良いわね。 当てつけられちゃった感じ?」

 約四名はその様子に呆れつつも、何やらこれで一段落付いたのだろうとばかりに二人を無視して各々勝手に話しつつ上条宅へと
入っていくことにした。

詩菜「それにしても随分と早く来たんですね御坂さん。 あ、乙姫ちゃんお餅食べるかしら」
乙姫「食べる食べるー!」
美鈴「いやまぁ、こちらも色々ありまして」
刀夜「おーい二人ともー、先に入ってるぞー………って聞いてないな。 まぁ飽きたら入ってくるか」

 バタン、と扉が閉まった。

当麻「っつーかそもそも根本的な疑問があんだけど!」
美琴「何よ!」
当麻「何でお前がここにいるんだよ?」
美琴「……………………………さぁ?」
当麻「さぁあ??」
美琴「なに、私じゃ不満だった? 悪かったわね大きくなくて!」
当麻「何の話だよ!?」

 二人が既に家の前には自分達しか居ないことに気付くのは、さらにこの三分程後である。


ウィキ募集バナー