とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

02章-2

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第2章 帰省1日目 二つの再会


当麻「(それじゃ、とりあえず関係は隠すってことで)」
美琴「(分かってるわよ。 ていうか実のところそっちの方がやりやすい気がする美琴さんなのよねー。 要はアンタへの対応を
    秋くらいまでのリアクションに戻せばいいって事でしょ?)」
当麻「(………ビリビリはすんなよな)」
美琴「(さあてね、アンタ次第じゃないの?)」
当麻「(問答無用でやる気満々かよ! 外での能力使用はそもそも厳禁だろ!?)」
美琴「(その程度私なら誤魔化せるわよーだ。 ってリビングどっち?)」
当麻「(さあ、こっち……じゃないな和室だ。こっちかな)」

 二人でこそこそ話すのを止めて一室のドアを開く。 リビングの暖かな空気が二人を包んだ。
 先に入っていた四人は中央に設えられた長方形のローテーブルの周りに座っていた。 近くにある薄型テレビには正月の
特別番組が映し出されている。
 リビングは和洋折衷。 上条の寮のリビングよりはもちろん広く、倍以上あった。 特徴と言えばそこかしこに刀夜が買って
きたらしいお土産といくつかの観葉植物が置いてあることくらいだろうか。 上条は部屋に入るや思わず美琴と一緒になって
キョロキョロと部屋を見回してしまう。

刀夜「心配か? お土産はただ適当に並べてるだけだ。 前みたいなことはない」
当麻「へっ!? あー、………そっかなら安心だなーははは」

 どうやら都合良く勘違いしてくれたらしい。
 二人は詩菜が用意してくれた座布団に座ろうとする。

美鈴「ああっ、ごめんごめん。 私こっち行くわね。 はいどうぞ」

 何故か美鈴がよく分からない気を回してくれた結果位置は隣同士にさせられた。 美琴は数秒何か言いたそうな顔をしていたが、
酔っぱらいを相手にするのは諦めたのか大人しく座る。
 テーブルには既に詩菜が作ったのであろう正月らしい料理が並んでいた。

刀夜「とりあえず改めて、明けましておめでとう。 皆今年もよろしく頼む」

 刀夜が口火を切ると皆もそれにつづいて新年の挨拶をする。

詩菜「この中で面識がないのは、乙姫ちゃんと美琴さんだけかしら?」
乙姫「え、そうなの?」

 乙姫と美琴が目を合わせる。

乙姫「……えっと、竜神乙姫って言います。 当麻お兄ちゃんの妹です。 どうぞよろしくおねがいします美琴さん」
当麻「だから従妹だろ?」
乙姫「心の中では妹なのー!」
美琴「はじめまして乙姫ちゃん。 私の名前は御坂美琴。で、えっと…………」

 美琴はチラッと上条の方を窺うが、別に上条との関係を敢えて紹介する必要もないだろうと思いスルーしようとする。

乙姫「美琴さんってお兄ちゃんのかの―――ンー!ンー!」

 何か言いかけた乙姫の口を何故か美鈴がガシッと掴み、さらに自分の口に人差し指を当てシーッ! と言って制した。

乙姫「ぷはっ」
美琴「………で、乙姫ちゃんは何でうちの母と知り合いなのかしら?」

 美琴は先程から色々と怪しい美鈴をジロッと横目で見つつ乙姫に尋ねる。

乙姫「ん? 母って、誰?」
美琴「………コイツ」
乙姫「美鈴お姉ちゃん?」
美鈴「そうよ? お姉ちゃんは美琴ちゃんのママよ?」
乙姫「………えー!? ウソ見えなーい!! ……で、でも詩菜さんもおばさんって呼びにくい感じだし、有り……なのかな?」

 上条家の男性メンバーは『その反応は正しい』とばかりにウンウンと頷く。

美鈴「乙姫ちゃんとはこの前知り合ったのよねー」
刀夜「そういえば私が海外出張から帰ってくる前日あたりだったか」
詩菜「丁度乙姫ちゃんが泊まりに来た時に美鈴さんが遊びにいらして、二人で意気投合したんだったわね」
乙姫「そんな感じそんな感じ。 アレ………もしかして美鈴さんって呼んだ方が良かったのかな?」
美鈴「え~、お姉ちゃんの方がいーいー」

 年甲斐も無く()変に甘えた声を出しながら体を揺する。
 相当酔ってるらしいことはそれだけでも分かった。
 上条はその姿を見て小さく溜息を付いた。 正直酔っている美鈴が苦手である。

当麻「ていうか一体どれだけ家近いんだよ。 そんでいつの間に母親同士で仲良くなってんだよ」
詩菜「通ってるプールで偶然会っちゃってねえ」
美鈴「実はそれ以前にそもそも詩菜さんってちょっとした有名人だから近いってのは知ってたわけだけど」
詩菜「あらあら。 そんなこと言ったら美鈴さんだってちょっとした有名人ですよ?」
当麻「んじゃあ結局今日も遊びに来たってことで良いのか? 全くどれだけ自然にサプライズするんだよ………」

 世の中狭すぎにも程があるだろうと今度は大きな溜息を漏らした。

詩菜「あら違うわ。 言ってなかったかしら」
当麻「ん?」
美鈴「今日はお泊まりに来たのよ」

 その言葉に息子と娘は凍り付く。

当琴「「はあ!?」」
当麻「……、って何でお前まで驚くんだ?」
美琴「だ、だって私は………父が帰ってこない帰ってこないって嘆いて飲んだくれてたコイツが『暇だから上条さんちまで新年
    の御挨拶に行きましょう』って言うから付いてきただけで………」
美鈴「あらーん? 美琴ちゃんそういうこと言っちゃっていいのかなーん? ここがうちと余り距離がないと知った時の美琴ちゃん
    と言ったらん♪ ぶっちゃけこっちが恥ずかしくなるような感じだったわよーん? 隠そう隠そうと必死になってるのに
    嬉しさが滲み出て来るみたいな感じ? そわそわしちゃって『ねえママまだ行かないの? ねえママあと何秒? ねえママ
    ところでこの香水どう思う? ねえママ…』」
美琴「わーわーわーバカバカうっさい! 変な誤解を招くようなこと言うなこの酔っぱらい!!」
美鈴「んふーん♪ 無理しなくていいって。 大丈夫大丈夫。 ママは分かってる。 本当は美琴ちゃん死ぬほど嬉しくて今にも誰か
    さんに抱き付いてしまいそうなほど舞い上がってるんでしょーん?」
美琴「だ、だだだ誰が、べべ別に私は今冷静よ。 何で私がコイツに抱き付かなきゃならないってのよ……」
美鈴「あらーん? 私は誰とは言ってないわよーん? 美琴ちゃんったら一体誰に抱き付きたいのかなーん?」
美琴「ッ!? は、はめたわね!?」
美鈴「この程度ではめたなんて言わないわよ。 美琴ちゃんがテンパってるだ・け」

 美琴は悔しそうに赤くなる。 頭や肩から微量の電気が漏れた。

当麻「どわっ!! な、なんか知らないけどこちらに被害がー!」
美琴「ってか泊まるっていきなり何よ!? 何で言わないわけ??」
美鈴「言ったら怖じ気づくでしょーん? 本心は別でも」
美琴「おじ…………って、まあそりゃ、当たり前じゃん! 泊まるって………」

 美琴は思わず上条の方をチラッと見てしまい目が合う。 そのおかげで抑えていたものが臨界点を超えたのかボシュッ!
と音が出そうなほど一気に顔が赤くなり、遂には大人しくなってしまった。

詩菜「確か旦那さんが帰ってこなかったら遊びに行きたいって、前回来た時に。 あ、乙姫ちゃん今お餅持ってくるわね」
乙姫「私自分で持ってくるよ。 もう覚えたし」
詩菜「あらそう?」

 乙姫はタタターと台所のある方へ小走りで駆けてゆく。

刀夜「そういえば旦那さんは何されてるんですか? あ、どうぞ召し上がって下さい」
美鈴「ん、ああすいません頂きます。 実はお腹空いてて………うちのパパの仕事ですか? うーん……何かしらねぇ美琴ちゃん?
    …………うわ、美味しー」
詩菜「お口に合います?」
美鈴「全然バッチリですよ。 うちの味付けとはちょっと違いますけど」
美琴「………総合コンサルタントでしょ。 アンタ娘に聞いてどうすんのよ。 御坂旅掛って言えばその筋の人には有名だって
    自慢してたことあったけど、仕事の内容をいくら聞いても一貫性無くて理解しがたいのよね。 ほんと今どこで何やって
    んのかしら」

 刀夜はその名前にピクリと眉を数ミリほど動かした。
 もちろんその程度の変化に周りの者は気付かない――――

美鈴「お金は通帳に入ってくるけどねー。 あ、今度うちのおせちも持ってきますね。 そのパパのせいで余っちゃって」
刀夜「ほう。 しかし私の仕事からすると何となく分からないでもない内容ですね」
美鈴「へえ、そうなんですか?」
詩菜「あらあら。 あらあらあらあら。 刀夜さんは旅掛さんとお知り合いなのかしら。 ほんとに世の中って狭いのね」

 ――――ただし詩菜を除く。
 浮気(本人は全力で否定)を速攻で見抜くために鍛えられた観察眼の前には、刀夜に隠し事は不可能であった。

刀夜「…………母さん、表情を読んでネタバレはしないでくれ」
美鈴「ん、旅掛と知り合いなんですか?」
刀夜「ま、まあちょっとロンドンの酒場で偶然出会っただけですよ。 その時は苗字が御坂なのは偶然だと思ってたけど」
詩菜「あーらあらあら。 随分と大きな事件に巻き込まれたようねえ。 後でその話はじっくり聞こうかしら」
刀夜「………………」

 刀夜はダラダラと汗を流しながらそれをスルーして「さぁおせち食べるかー」と言いつつ箸を伸ばした。

美琴「(……ねえ、アンタの母親って読心能力者かなんか?)」
当麻「(さあ?)」

 二人ももはや早すぎる展開に付いていくのを諦め、「いただきます」と言って刀夜と同じようにおせち料理をつつき始める。
 上条の記憶としては初めて食べる母親お手製のおせち料理であり、なかなか感慨深い。
 美琴もその味を気に入ったようだが、何故か素直には喜んではいないようだった。 対抗意識でも芽生えたのだろうか。

美鈴「あ、お二人とも飲みます?」

 美鈴は持参した瓶を持ち上げる。

刀夜「私は遠慮しておきます。 緊急の仕事が入るかもしれないので。 まあ大体は断るつもりですが」
詩菜「あらあら。 じゃぁ私が少しだけ頂きましょうかしら」

 詩菜は台所へコップを取りに行く。

当琴((真っ昼間から片手に酒瓶って……) )
美鈴「ん~? 美琴ちゃんも飲む?」
当麻「うッ!?」
美琴「お願いだから人様の前で14歳の娘にお酒勧めないでもらえるかしら」
当麻「そ、そうそうそうだよ駄目だよな未成年がお酒飲むのは。 ナイス判断!特にお前は飲むべきじゃないと思うぞ永遠に!!」
美琴「……いきなり何? どういう意味それ」

 上条はこの展開に少し焦る。
 美琴が酒を飲んで悪酔いし、電撃を(主に上条に向けて)撒き散らす様子がありありと想像できるからだ。
 一滴も飲ますわけにはいかない。

美鈴「何で当麻君まで?? つーか美琴ちゃん、ママのお酒が飲めないっていうの?」
美琴「はいはい飲めないし飲まないわよ、だからオヤジみたいな発言は自重しなさい。 そもそも中身何よ、いつものワイン?」
美鈴「御・神・酒☆」
美琴「………………あっそ」

 美鈴はウインクしてみたが、娘はそれをシッシッと手で払う。

刀夜「ん? どうした当麻、正月は子供のお酒解禁デーだー! とか言っていつも積極的に飲んでなかったか?」
当麻「へっ!? えーっと、いやその、……うん。 まぁ俺は飲むよ飲めば良いんだろ…………はあ」
刀夜「いや勧めてるわけではないんだが。 褒められたことでもないしな」

 記憶喪失である上条は極度に以前の自分と違う点があることを嫌う。
 というわけでどうやら飲まざるを得ないらしい。

詩菜「あら、当麻さんはジュースじゃなくて良いの?」
当麻「や、それで良いよ。 御神酒(?)は少しだけ」
乙姫「あー私も飲むー!!」

 焼いて柔らかくなった餅を持ってきた乙姫は帰ってくるや否や叫んだ。

美鈴「えっと、乙姫ちゃんはさすがに……」
乙姫「えー!! お兄ちゃんも飲むのにー? 私も飲みたいー、少しなら良いでしょお姉ちゃん」

 座り直し上目遣いに甘えてきた乙姫に美鈴はやや困って詩菜と刀夜を見やる。

刀夜「まぁ少しだけなら………ってほんとに中身は何ですか?」
美鈴「白ワインです」
詩菜「あらあら。 乙姫ちゃんには多分苦いと思うわ。 甘酒もあるわよ?」
乙姫「そんなこと無いよー。 だから少しだけっ、ね?」

 大人達はまあ少しなら良いだろうという結論に至り、乙姫には大体小さい御猪口一杯くらい、上条にはその二倍くらいを注ぐ。
上条のコップに注ぐ時に美鈴が「おっと」とか言いつつ注ぎすぎたのは十中八九わざとに違い無い。 その時美鈴の顔がニヤッ
としていたのを上条は見逃さなかった。

乙姫「おー。 お酒の匂い」

 乙姫は少しだけ匂いを嗅ぐと、早速それをジュース感覚でグイッと一気に飲み干す。

乙姫「ん~……」
刀夜「大丈夫か?」
乙姫「美味しいけど、やっぱ甘酒の方が好きかも」
美鈴「あらら、それでも飲めるんだ。 将来は酒飲みかしら」

 美鈴がケタケタと笑った。
 乙姫は再びタタッと台所へ行くと、缶の甘酒を持ってきて今度はそれをチビチビ飲み出す。

詩菜「美琴さんはオレンジジュースでいいかしら?」
美琴「あっ、はい。 あ、自分でやるんで大丈夫です」
当麻(……………美琴がうちの親に丁寧語を使っている)

 何だか右から聞こえてくる違和感にムズムズしながらも上条は仕方なしにワインに口を付ける。
 どの程度飲んだらどの程度酔うのか分からないので正直かなり怖かったりする上条当麻であるのだが、

当麻「あれ、美味しい」

 ワインは随分と飲みやすく、簡単に全て飲めてしまった。

詩菜「あら本当」
美鈴「皆いい飲みっぷりねえ。 一応そこそこ良いの持ってきた甲斐があったわー」
刀夜「ほう。 年代物ですか?」

 大人達は子供達にはイマイチよく分らないお酒談義に花を咲かせ始めた。
 子供達は子供達で話せばいいのかもしれないが、上条と美琴の会話は本音トーク厳禁なので盛り上がる要素がない。 自ずと
乙姫が会話の中心になる。

乙姫「ふあ、何か変な気分」
当麻「さすがに飲み過ぎじゃないのか、っていつの間に甘酒三本目!?」
乙姫「おにーちゃん!!」
当麻「な、何だ?」
乙姫「これ美味しい。 はい、あーん」
当麻「………ちょい、あの、さすがにそれは何と言いますか恥ずいんですけど」
当麻(そして右側から無言のプレッシャーを受けるんですけど)
乙姫「あれ? このくらい妹として普通じゃないの? おっかしいなー、良いから食べなよ。 つか食べろ、うりゃー!!」

 乙姫が上条に擦り寄りつつ箸を危なげに顔へと近づける。

当麻「あぐ……う、美味い美味い。 つかお前完全に酔ってるだろ?」
乙姫「あによー。 全然酔ってなんからいわよー」

 と言いつつ上条の胸へグデーともたれ掛かる。 少し堅めの髪の毛が胸のあたりでモゾモゾしてくすぐったい。

当麻「うっ……」

 上条は右側から刺すような視線を感じた。

美琴「アンタって、親族に対してもそうなわけ?」
当麻「……………盛大な誤解ですから蔑むような目をやめてください」
乙姫「おにーいちゃん!!!」
当麻「あーはいはい今度は何でせうか?」
乙姫「そう言えば何で美琴さん中学生なのに知り合いなの? しかも常盤台中学って外の私でも知ってるくらいの超超ちょーう
    お嬢様学校じゃん? 正直お兄ちゃんと接点無い気がするんだけど」
当麻「……………えーっと」

 上条は美琴と目を合わせる。 お互いの顔はまるで『マズイ』とでも書いているかのように分かりやすい表情であった。 その
部分の設定くらいは打ち合わせしておくべきだったかもしれない。
 しかも最悪なことにその発言に大人達まで反応し出す。

刀夜「そうだぞ当麻。 散々はぐらかされてきた気がするが、何で常盤台のお嬢さんと知り合いなんだ? きっちり教えなさい」
美鈴「んふ♪ 私も興味あるわねえ。 美琴ちゃんは全く話してくれないし」
詩菜「あらあら。 私は大体予想できるけど、そう言えば大覇星祭の時には既に仲が良さそうだったかしら?」
乙姫「そーだよお兄ちゃん。 大覇星祭の借り物競走の時二人がテレビに映ってたよ!? 私見たモン! 美琴さんが飲みかけの
    スポーツドリンクをお兄ちゃんにあげるの!!」
美琴「ウ゛ッ!!」
詩菜「あらあら。 そんなこともあったのね」
美鈴「そういえば大覇星祭の少し後、当麻君とメールアドレスを交換した時に美琴ちゃんのアドレスは既にあったわよねえ。
    一体どういう経緯で交換したのかしらーん?」
詩菜「あらあら。 実は想像以上に親密なのかしら。 余り追及することじゃないかもしれないけど、母さんちょっと心配だわ」
刀夜「ん? というかあの後また美鈴さんと会ったのか当麻?」

 四人の質問と視線が突き刺さり、二人は逃げ場のない状況に本気で焦る。 しかし打ち合わせをしていないので適当なことは
言えない。 こう言う場合は本当のことを柔らかく表現するしかないだろう。
 そこら辺の息を合わせるためチラチラと視線を合わせつつ話し出す。

当麻「いや、なんつーか皆様が考えておられるような楽しげなイベントは全くもって皆無でしてほんと大変申し訳ありませんが。
    夏前に色々あっただけで、な!」

 実は詳細は覚えていないので美琴に振る。

美琴「そうそう、夏前に、ちょっと不良数人に絡まれてるところを助けてもらったってだけで」
美鈴「レベル5の美琴ちゃんがー??」
美琴「そ、そう言うことにしておいてよ! それで、何やかんやあって、学校がどちらも第七学区ってこともあって会う機会が
    多かったというか」
当麻「腐れ縁というか、一方的な攻撃対象…痛っつ! ………じゃなくて友人というか」

 途中でテーブルの下で足に小さい電撃を食らう。 『攻撃対象』はNGだったらしい。

美琴「まぁそんな感じ……」
美鈴「………あらーん?? 美琴ちゃん、何かそこリアクション間違えてるんじゃなーい?」
美琴「へっ? 何が?」
美鈴(『腐れ縁』や『友人』と言われて全く落ち込んでない?? んーさては何かあったわね)
美鈴「まーいいわ」
美琴「??」
乙姫「あれ~? なんだじゃぁ当麻お兄ちゃんの彼女じゃないの?」
美琴「ち、違う違う違う違う! 誰がこんなヘッポ……えっと、もとい……乙姫ちゃん? 一応この誰にでも女とあらばイチャ付き
    まくる当麻お兄ちゃんでも色々都合が…」
当麻「っふぐあああああああああああああああああ!!!」
美琴「って、アンタはいきなり何よ!?」
当麻「…………イエ、ナンデモゴザイマセン」
美琴「?? ……そ、そうそう。 そうなのよ。 というわけで何でもないのよ」

 四人はどうにも納得できないという表情だったが二人が否定してる以上追及しても仕方ないと思い諦める。
 まああと二日あるのだからいくらでも聞き出す機会はあるだろう。

乙姫「何だ~、じゃあこのままでいいやー。 ちょっと眠い」
当麻「お、おい。 重い」

 乙姫はさらに上条に密着する。 あぐらを掻いた上条の上で猫のように丸まって寝る気満々である。

美鈴「美琴ちゃん、気持ちが顔に出ててるわよーん?」
美琴「ッ!?」

 美琴は右手で自分の顔をムギュッ!と掴む。

美鈴「ふふ、なーんちゃって」
美琴「ぐッ!」

 母にツッコミを入れようと手を振ってみたのだが、美鈴はヒョイッと避けてしまう。
 位置的に斜め前なのでそれ以上追うことはできなくて、我慢して座り直した。
 改めて酔っぱらいは相手にするべきじゃないと自分に言い聞かせ、美琴は無理矢理話題を変える。

美琴「あ、あの。 詩菜さんって料理お上手ですね」
詩菜「あらあら。 常盤台の女の子にお世辞でもそう言ってもらえると何だか嬉しくなっちゃうわ。 ありがと」

 と言いつつ本当に嬉しそうな顔で微笑む。

美琴「いえいえお世辞なんかじゃないです。 それで、良かったら後で味付けを教えて欲しいなーなんて思いまして」
美鈴「ぶふふっ。 ちょっ、ねえねえ当麻君、美琴ちゃんが遂に親御さんへアタック開始したわよ!?」
当麻「へ? って乙姫ちょっと、その年で寝酒はやめろよ」
美琴「……………そこ、私の視界の隅でゴチャゴチャしないでもらえる?」
美鈴「さーて何のことかしらーん」

 美鈴は今にも爆笑しそうな顔を背ける。 笑い上戸なのだろうか。

詩菜「私は全然構わないけど、でも常盤台って家庭科も凄いんでしょう? 教えられる箇所ってあるかしら。 大体いつも目分量で
    作ってしまうし。 ちょっと心配だわ……」
美琴「そんなこと無いですよ。 うちの家庭科なんて所詮教科書通りで基本しか教えないですから。 それに私って基本的に何でも
    食べるんで、是非参考にしたくて」
美鈴「『美琴ちゃんが』じゃないでしょーん? い、一体誰に、誰に食べさせてあげたくて……お袋の味を……ブフーッアッハハ!!
    も、もうだめ。 美琴ちゃん可愛すぎ!! アッハハハ、ウッゲホゲホッ!!」
当麻「うわ、何だこの人いきなり! てか乙姫寝るんならここで寝るな風邪引くぞ」
乙姫「んー、もう駄目食べらんないし飲めない」
詩菜「あらあら、大丈夫ですか美鈴さん」
美琴「あー、うちのバカは放っておいて良いんで」
刀夜「当麻、乙姫ちゃん寝ちゃったなら二階のいつもの和室に布団敷いてあげなさい」
当麻「ああ。 分かった。 だってさ乙姫、行くぞ」
乙姫「んやーだー。 お兄ちゃんと寝るー」
美鈴「ゲッホゲホ。 き、気管に……ゲホゲホ」

 ガタン! と美鈴がテーブルに肘をぶつける。
 その揺れで美琴の前にあったコップが倒れた。
 美琴が気付いてそれを押さえた頃には数瞬遅く、バチャッと少しだけ入っていたオレンジジュースが制服のスカートに掛かる。

美琴「ってうわ! ……あーあー」
詩菜「あら大変! 替えは持ってきてるかしら?」
美琴「泊まるなんて聞いてなかったから持ってきてません。 悪いですけど洗濯機貸してもらえますか?」
詩菜「それは良いけど、今乾燥機が丁度故障中なのよ。 冬だから明日まででも乾くかどうか……」
美琴「乾かすのは自分でやるので」
詩菜「自分で??」
美琴「能力使って」
詩菜「あら、なるほど便利なのね。 でもその間どうしましょう。 私の服合うかしら」
美鈴「ゴホン。 ッアーアー。 苦しかった。 ごめんね美琴ちゃん」
美琴「良いわよもう。 あ、私下に短パン穿いてるんで………ってすいません、短パンもちょっと濡れてるみたいです」
詩菜「あらあら。 風邪引いちゃうわ」
美鈴「服なら、丁度良いのがあるわよ」
美琴「持ってきたの?」
美鈴「うん、振り袖だけど」
美琴「………………はい?」
美鈴「初詣、行くでしょ」
美琴「ああ……でも乙姫ちゃんが起きてからでしょ? 何時になるか分からないわよ」
美鈴「そっか、それもそうね」
詩菜「どうしましょう。 フリーサイズの方が良いわよね」
刀夜「パジャマで良いんじゃないか? 何なら当麻のでも」
詩菜「そうね、とにかく早く洗わないとシミになっちゃうかもしれないし」
刀夜「おい当麻まだ行くな!」
当麻「んえ?」

 刀夜はどうにか乙姫をおんぶした上条当麻を止める。

刀夜「ついでに二階の隣の部屋もエアコン付けて、美琴さんを案内してやってくれ。 あとパジャマの下の方貸してやりなさい」
当麻「母さんのがいいんじゃ……ってまあ良いか、了解ー」
美鈴「んじゃ私はちょっくら美琴ちゃんの制服の替え取ってこようかしら。 どうせ一旦戻るつもりだったし。 えっとすいません
    がちょっと娘をよろしくお願いしますね」
詩菜「あらそうですか、それじゃぁ私はその間に洗濯機を準備しようかしら。 うちのお洗濯がまだ途中で……。 ところで刀夜
    さんはどうします?」
刀夜「私は、部下とちょっと電話のようだ」

 刀夜は携帯を振った。

当麻「よいしょっと。 んじゃ行くぞ」
美琴「うん」
美鈴「あ、美琴ちゃん何か持ってきて欲しいものある?」
美琴「えーっと………」
当麻「美琴ー?」
美琴「やっぱいい、適当に持ってきて」
美鈴「おっけー」
当麻「あ、悪い。 カバン持ってきてくんねえか。 アレ」
美琴「はいはい」
乙姫「わーいお兄ちゃんの背中~」
当麻「おい引っ付くな!」
美琴「……………………」
当麻「痛い痛いカバンでブツな!」

 そして六人はそれぞれバラバラと移動し始める。


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