後編
「あとは美琴が中学生じゃなけりゃなあ。歳の差はいいとして、倫理観として…うーん」
上条は食事部屋に戻りながらボヤく。
「そんな事言われたって。そもそも、その倫理観って何よ」
「中学生に手を出すロリコン扱い、というのはカミジョーさんは耐えられません」
「…あのね、中学生のファーストキス奪っておいて、何言ってんのよ」
上条は食事部屋に戻りながらボヤく。
「そんな事言われたって。そもそも、その倫理観って何よ」
「中学生に手を出すロリコン扱い、というのはカミジョーさんは耐えられません」
「…あのね、中学生のファーストキス奪っておいて、何言ってんのよ」
上条の足がピタッと止まる。
「良く考えたら…俺、お前のファーストキス奪っちゃったのか」
「そうよ!こっちには一大イベントだってのに、あっさり終わらせてくれちゃって!」
美琴は真っ赤になって、そっぽを向く。
「それはそれは、勿体無いものを頂きまして…」
「極上の逸品よ!まったく!」
足の止まった上条を美琴が引っ張る。
「良く考えたら…俺、お前のファーストキス奪っちゃったのか」
「そうよ!こっちには一大イベントだってのに、あっさり終わらせてくれちゃって!」
美琴は真っ赤になって、そっぽを向く。
「それはそれは、勿体無いものを頂きまして…」
「極上の逸品よ!まったく!」
足の止まった上条を美琴が引っ張る。
「中学生との噂ってのは、もう事実なんだからあきらめなさいよ」
「そっちはしょうがないけどな。まあ一番の問題は…だな」
「え?」
「まあいわゆる…俺の理性が1年以上持つかな、という…」
「な、なに考えてんのよバカ!」
「…聞かなかった事にして下さい…」
純情な高校生と中学生は、真っ赤になりながら部屋に向かう。
「そっちはしょうがないけどな。まあ一番の問題は…だな」
「え?」
「まあいわゆる…俺の理性が1年以上持つかな、という…」
「な、なに考えてんのよバカ!」
「…聞かなかった事にして下さい…」
純情な高校生と中学生は、真っ赤になりながら部屋に向かう。
部屋に入ると、4人の大人たちは酒盛りモードに入っていた。
「あらあら~、主役が帰ってきたわね~」
「なんだー当麻。美琴ちゃんとお楽しみか?若いモンはいいねえ~」
「美琴、当麻くんを手放すな!ソイツは重要人物だぞ、ハッハッハー」
なにかもう入り込めない雰囲気である。
「あらあら~、主役が帰ってきたわね~」
「なんだー当麻。美琴ちゃんとお楽しみか?若いモンはいいねえ~」
「美琴、当麻くんを手放すな!ソイツは重要人物だぞ、ハッハッハー」
なにかもう入り込めない雰囲気である。
美鈴がスッと近づいてくる。
「あれ、美鈴さんはあまり飲んで…ない?」
「ま、一応幹事だしね。詩菜さんもダンナ見てると酔うわけにはいかないと思ってるみたい。ところでアンタ達…」
2人をジロジロ見る。
「…やっちゃった?」
「あれ、美鈴さんはあまり飲んで…ない?」
「ま、一応幹事だしね。詩菜さんもダンナ見てると酔うわけにはいかないと思ってるみたい。ところでアンタ達…」
2人をジロジロ見る。
「…やっちゃった?」
美琴の顔がボンッ!と赤くなる。
上条がかろうじて体勢を立て直し、「…何を?」
「ま、1時間あればできるわよね」
「…だから何を?」
「まあ親の前では言えないわね。中学生相手に奪っちゃったかー」
「そんなベタベタなネタに引っかかるかっ!絶対おしえねー」
「ちぇ。でも美琴ちゃんなら教えてくれるもーん。ハイ美琴ちゃんガッツポーズ!」
上条がかろうじて体勢を立て直し、「…何を?」
「ま、1時間あればできるわよね」
「…だから何を?」
「まあ親の前では言えないわね。中学生相手に奪っちゃったかー」
「そんなベタベタなネタに引っかかるかっ!絶対おしえねー」
「ちぇ。でも美琴ちゃんなら教えてくれるもーん。ハイ美琴ちゃんガッツポーズ!」
え?と上条は美琴の方を向くと。
美琴は可愛らしくガッツポーズをとり、そして人差し指を唇に指し示して、微笑んだ。
「なんだそのジェスチャーゲームは…」
この親娘、仲が良すぎる。
「なるほど、可愛い一人娘の唇は奪われたか。パパにどう報告しようかしら…」
「ごめんなさい、ユルシテクダサイ」
美琴は可愛らしくガッツポーズをとり、そして人差し指を唇に指し示して、微笑んだ。
「なんだそのジェスチャーゲームは…」
この親娘、仲が良すぎる。
「なるほど、可愛い一人娘の唇は奪われたか。パパにどう報告しようかしら…」
「ごめんなさい、ユルシテクダサイ」
美鈴はクスッと笑うと、
「やっぱりヤルときゃヤルね、当麻くん。美琴ちゃんを改めて、よろしくね」
「美琴ちゃん、パパさんの相手しといで。アンタいつでも会える当麻くんとばっかり居るじゃない」
「う…わかったわよ」
頬を赤くして、美琴は刀夜の隣に座り、2人のお酌をし始めた。
「やっぱりヤルときゃヤルね、当麻くん。美琴ちゃんを改めて、よろしくね」
「美琴ちゃん、パパさんの相手しといで。アンタいつでも会える当麻くんとばっかり居るじゃない」
「う…わかったわよ」
頬を赤くして、美琴は刀夜の隣に座り、2人のお酌をし始めた。
逆に上条は、ママさんズに捕まった。
「さてと、あらいざらい吐いて貰おうかナ。あれだけ素直じゃない子を、完全に落としちゃったとなるとね」
「あらあら~、どこでそんな女の子を凋落するテクニックを覚えたのか、母さん的にも聞いておかないとね~」
「何もしてねー!恥ずかしながら、女の子から告白させちまったし…」
「確認するけど、美琴ちゃんを公明正大に彼女と言い切れる状態まで行ってるのかしら?」
「それは言い切れます。美琴は俺の彼女であり、恋人です。」
「…母さん的には、あの銀髪のシスターちゃんが気になるんだけど」
美鈴も頷く。「あの子にも、言えるのかしら」
「さてと、あらいざらい吐いて貰おうかナ。あれだけ素直じゃない子を、完全に落としちゃったとなるとね」
「あらあら~、どこでそんな女の子を凋落するテクニックを覚えたのか、母さん的にも聞いておかないとね~」
「何もしてねー!恥ずかしながら、女の子から告白させちまったし…」
「確認するけど、美琴ちゃんを公明正大に彼女と言い切れる状態まで行ってるのかしら?」
「それは言い切れます。美琴は俺の彼女であり、恋人です。」
「…母さん的には、あの銀髪のシスターちゃんが気になるんだけど」
美鈴も頷く。「あの子にも、言えるのかしら」
「…言います。でも俺はあの子も守る。俺がやるべきことだから。」
「あの懐き方からすると、ショックでしょうねえ…」
「宣言しておきますけど…、もし、美琴とインデックスが同時に窮地に立ったとしたら」
上条は、言葉を切って、はっきり言い切った。
「俺はインデックスを助けます。」
母親たちは息を飲んだ。
「宣言しておきますけど…、もし、美琴とインデックスが同時に窮地に立ったとしたら」
上条は、言葉を切って、はっきり言い切った。
「俺はインデックスを助けます。」
母親たちは息を飲んだ。
「美鈴さんだって、旅掛さんと美琴が、そういう状況になったらどちらを助けますか?」
「…なるほどね。美琴ちゃんだわね、その話だと。あの子は娘みたいなものなのね…」
「うまく言えませんが、そういうことです。」
「…オーケー。親としては納得しちゃいけないんだろうけど、…当麻くんが真剣に考えてることは分かったわ」
(ま、普通の高校生に、本来背負わす話じゃないわよね、コレ。)
「…なるほどね。美琴ちゃんだわね、その話だと。あの子は娘みたいなものなのね…」
「うまく言えませんが、そういうことです。」
「…オーケー。親としては納得しちゃいけないんだろうけど、…当麻くんが真剣に考えてることは分かったわ」
(ま、普通の高校生に、本来背負わす話じゃないわよね、コレ。)
「あらあら、ちょっと堅苦しい話になっちゃったわね。当麻さん的には、今後美琴さんとどうしていくつもりなのかしら?」
「どうしていくと言われてもな…まあ健全なお付き合いをさせて頂きますよ、としか」
「健全ねえ…。もうリミッター外れた美琴ちゃんは、どんどん色気づいていくわよ。私のコだもん」
「母親が煽ってどーする!まだ中学生ですよ!?」
「まだ孫は困るからね?どうしても、なら女の子よろしくね」
美鈴は品の無いニヤニヤ笑いを浮かべる。
「オイタはダメですよ?」
詩菜もにっこり微笑む。
「…だめだこの母親たち…」
上条は頭を抱えた。
「どうしていくと言われてもな…まあ健全なお付き合いをさせて頂きますよ、としか」
「健全ねえ…。もうリミッター外れた美琴ちゃんは、どんどん色気づいていくわよ。私のコだもん」
「母親が煽ってどーする!まだ中学生ですよ!?」
「まだ孫は困るからね?どうしても、なら女の子よろしくね」
美鈴は品の無いニヤニヤ笑いを浮かべる。
「オイタはダメですよ?」
詩菜もにっこり微笑む。
「…だめだこの母親たち…」
上条は頭を抱えた。
興味が美琴に移ったのか、母親たちは父親たちのテーブルに移動した。
美琴からも情報を引き出すつもりだろう。
上条は少し離れたソファーに体を沈み込ませる。
(恋人…か)
母親たちの前で口に出して、改めて実感が湧いてきた。
美琴からも情報を引き出すつもりだろう。
上条は少し離れたソファーに体を沈み込ませる。
(恋人…か)
母親たちの前で口に出して、改めて実感が湧いてきた。
――先刻。眠る美琴を見ながら、熟考の末、この少女と歩む道を選んだ。
それは、インデックスとの選択ではない。これからも一人で歩むか、との選択だ。
インデックスが仮に自分を好きだとしても、それは過去の自分に対してだ。
…その事実がある以上、偽りの道を歩む訳には、いかない。
一人で歩めば、一番平等な世界。誰をも平等に救える世界。
それは、インデックスとの選択ではない。これからも一人で歩むか、との選択だ。
インデックスが仮に自分を好きだとしても、それは過去の自分に対してだ。
…その事実がある以上、偽りの道を歩む訳には、いかない。
一人で歩めば、一番平等な世界。誰をも平等に救える世界。
でも、自分が求めているものを、
他の誰もが持っておらず、美琴は持っているような気がした。
…そう考えた時、結論は出た。
他の誰もが持っておらず、美琴は持っているような気がした。
…そう考えた時、結論は出た。
色々と考え込んでいると、美琴が戻ってきた。
「逃げてきた…詮索しつこいっ!」
「相手してやれよ…そうそう会えないんだからさ」
「いいのっ!私は当麻と話すのっ!」
どっかと美琴はソファーに座り込む。
「逃げてきた…詮索しつこいっ!」
「相手してやれよ…そうそう会えないんだからさ」
「いいのっ!私は当麻と話すのっ!」
どっかと美琴はソファーに座り込む。
「何考えてたの?」
「まあ色々とな。『一体何をやれば恋人っぽく見える訳?』なーんてやってたな、とかな」
「あの恋人ごっこかあ。現実になっちゃうなんて…」
「だなー。…ちなみにその頃、俺のこと、は?」
「んっと…もう意識はしてたわよ。当麻が『海原で何の問題があるんだ』的な事言ったとき、傷ついたもん」
「うっ…」
「ああ、私のこと何とも思ってないんだ、って」
「まあ色々とな。『一体何をやれば恋人っぽく見える訳?』なーんてやってたな、とかな」
「あの恋人ごっこかあ。現実になっちゃうなんて…」
「だなー。…ちなみにその頃、俺のこと、は?」
「んっと…もう意識はしてたわよ。当麻が『海原で何の問題があるんだ』的な事言ったとき、傷ついたもん」
「うっ…」
「ああ、私のこと何とも思ってないんだ、って」
「ぐ…じゃあ、ついでに。あの大覇星祭罰ゲーム、は、実のところ…?」
「ええ、私としてはデートそのもの。なのに、あの子がペンダント買って貰う展開とか、ありえないわよねー」
「俺、最悪じゃねえか…」
「でも結局は、私が素直じゃなかったから、だし。携帯番号ゲットのためにペア契約とか、ホント馬鹿よね、我ながら」
「…外であれだけビリビリしてて、携帯番号も聞けないとか!ツンデレにも程があるだろ!」
「だって番号聞いて、もし『なんで知る必要あんだよ』とか言われたらどうすんのよ…」
「どうすんのよ…って」
なんだこの可愛い生物は。
「ええ、私としてはデートそのもの。なのに、あの子がペンダント買って貰う展開とか、ありえないわよねー」
「俺、最悪じゃねえか…」
「でも結局は、私が素直じゃなかったから、だし。携帯番号ゲットのためにペア契約とか、ホント馬鹿よね、我ながら」
「…外であれだけビリビリしてて、携帯番号も聞けないとか!ツンデレにも程があるだろ!」
「だって番号聞いて、もし『なんで知る必要あんだよ』とか言われたらどうすんのよ…」
「どうすんのよ…って」
なんだこの可愛い生物は。
「まーたイチャイチャしてる!」
美鈴がニヤニヤしながらやってくる。手にはカメラ。
「そのままそのまま。写真とるわよー」
上条と美琴は慌てて自分をチェックする。
美琴は上条のネクタイが歪んでいるのを見つけ、直そうとする…
パシャッ!
「ん~、いい絵♪」
「もう!」
美鈴がニヤニヤしながらやってくる。手にはカメラ。
「そのままそのまま。写真とるわよー」
上条と美琴は慌てて自分をチェックする。
美琴は上条のネクタイが歪んでいるのを見つけ、直そうとする…
パシャッ!
「ん~、いい絵♪」
「もう!」
その後は、ソファーを舞台に父親たちも入り乱れて、再び撮影会となった。
さっきの外での撮影会とは違い、距離感のない両家の仲の良い姿が―――
特に美琴の、ぎごちなさが完全に消えた心からの笑顔が、総てのフィルムに、写っていた。
さっきの外での撮影会とは違い、距離感のない両家の仲の良い姿が―――
特に美琴の、ぎごちなさが完全に消えた心からの笑顔が、総てのフィルムに、写っていた。
午後三時。
上条刀夜と御坂旅掛はソファーで2人ともいい気分で寝ている。
「アンタたち、初詣行ってきたら?近くに神社あったでしょ」
「母さんたち行かないの?」
「ダンナ共がアレだからね…」
上条刀夜と御坂旅掛はソファーで2人ともいい気分で寝ている。
「アンタたち、初詣行ってきたら?近くに神社あったでしょ」
「母さんたち行かないの?」
「ダンナ共がアレだからね…」
上条は美琴にどうする?と声をかける。
「うーん、行きたいけど、今日はちょっと知り合いに会いたくないなー、ってのもあるかなあ」
「お前目立つもんなあ。男連れて歩いてたら…」
「そ、そんなことないと思うけど。でも、ジャッジメントが警備していると思うとね…」
なるほど、白井か、と上条は思う。白井黒子が居たら、何が起こるか分からない。
「ま、明日明後日あたりで、いいとこ探して行くか。ちょっと色々ケリつけてから、だな」
「…うん、それがいいと思う」
「うーん、行きたいけど、今日はちょっと知り合いに会いたくないなー、ってのもあるかなあ」
「お前目立つもんなあ。男連れて歩いてたら…」
「そ、そんなことないと思うけど。でも、ジャッジメントが警備していると思うとね…」
なるほど、白井か、と上条は思う。白井黒子が居たら、何が起こるか分からない。
「ま、明日明後日あたりで、いいとこ探して行くか。ちょっと色々ケリつけてから、だな」
「…うん、それがいいと思う」
「あらあら、何か複雑な理由があるのねえ」
「人間関係が色々と、ややこしいんでござんすよ」
上条は詩菜に苦笑いしながら答える。
「じゃあ…、コレに2人でいってきなさいな」
詩菜は旅館のパンフの一部を差して、美琴に差し出す。
「! こ、これは…!」
「上条の名前で昨日から取ってあるの。というか昨晩使わせて貰ったんですけどね~。うふふふ」
「ちょ、ちょっと詩菜さん!」
「チェックアウトの夕方5時まで予約は効いてるはずよ。どーんと行ってらっしゃいな」
「で、でもこれ…!」
「人間関係が色々と、ややこしいんでござんすよ」
上条は詩菜に苦笑いしながら答える。
「じゃあ…、コレに2人でいってきなさいな」
詩菜は旅館のパンフの一部を差して、美琴に差し出す。
「! こ、これは…!」
「上条の名前で昨日から取ってあるの。というか昨晩使わせて貰ったんですけどね~。うふふふ」
「ちょ、ちょっと詩菜さん!」
「チェックアウトの夕方5時まで予約は効いてるはずよ。どーんと行ってらっしゃいな」
「で、でもこれ…!」
何を泡食ってるんだと、上条は美琴の手に持ったパンフを覗き込む。
『プライベートバス<完全予約制> 眺望抜群の露天風呂をお楽しみ下さい! 限定3組』
「…何だこれ?」
「あらあら、当麻さんったら。家族用のお風呂じゃない。十分広いし、乳白色のお湯でね、気持ち良かったわよ~」
「…それは何か?風呂入ってこいと?…美琴と?」
「よし、嫁入り前だけど、許可するわ当麻くん!いってこーい!」
「待てーい!これは流石にやりすぎだろっ!」
「あらあら、こんなチャンス滅多にないわよ~。恥ずかしいのは分かるけど、これも思い出の一つ!」
『プライベートバス<完全予約制> 眺望抜群の露天風呂をお楽しみ下さい! 限定3組』
「…何だこれ?」
「あらあら、当麻さんったら。家族用のお風呂じゃない。十分広いし、乳白色のお湯でね、気持ち良かったわよ~」
「…それは何か?風呂入ってこいと?…美琴と?」
「よし、嫁入り前だけど、許可するわ当麻くん!いってこーい!」
「待てーい!これは流石にやりすぎだろっ!」
「あらあら、こんなチャンス滅多にないわよ~。恥ずかしいのは分かるけど、これも思い出の一つ!」
こ、こんな母親たち有り得るのか?
上条は追い詰められた気分で、美琴を窺う。
美琴は予想通り真っ赤になっているが…上条を見て目をそらさない。
(その「意気地なし!」となじるような目はなんだーっ!まさか、行くと俺が言えば、行く気、か…?)
「よし、じゃあ詩菜さん、フロントに連絡して。使用する連絡とタオルセットの準備お願いしますね。
こちらはもうお風呂から出たら、美琴ちゃん制服に着替えさせたいから、準備してくるわ」
「は~い、じゃあ2人はここで待っててね~」
「ま、待て…」
上条は追い詰められた気分で、美琴を窺う。
美琴は予想通り真っ赤になっているが…上条を見て目をそらさない。
(その「意気地なし!」となじるような目はなんだーっ!まさか、行くと俺が言えば、行く気、か…?)
「よし、じゃあ詩菜さん、フロントに連絡して。使用する連絡とタオルセットの準備お願いしますね。
こちらはもうお風呂から出たら、美琴ちゃん制服に着替えさせたいから、準備してくるわ」
「は~い、じゃあ2人はここで待っててね~」
「ま、待て…」
ぽつねんと2人残される。
「あの…」
「もう今日はね、夢だと思って何でもやっちゃえって気分なのよね」
「へ?」
上条は何か吹っ切れたような顔をしている美琴を見つめる。
「あまりにあり得ない事が続きすぎてさ…今当麻の右手で私を叩いたら、現実に戻るんじゃないかな、って」
「…やってみっか?」
「やめて!せめて夢なら最後まで見させてよ。ああでも、」
言葉を切って上条をいたずらっぽく睨む。
「美琴サンのハダカを安々とは拝めさせませんからね?」
「あの…」
「もう今日はね、夢だと思って何でもやっちゃえって気分なのよね」
「へ?」
上条は何か吹っ切れたような顔をしている美琴を見つめる。
「あまりにあり得ない事が続きすぎてさ…今当麻の右手で私を叩いたら、現実に戻るんじゃないかな、って」
「…やってみっか?」
「やめて!せめて夢なら最後まで見させてよ。ああでも、」
言葉を切って上条をいたずらっぽく睨む。
「美琴サンのハダカを安々とは拝めさせませんからね?」
プライベートバスゆえに、更衣室も男女兼用である。
開き直った美琴も、まな板の鯉な上条も、タオルセットを持ちながら固まっている。
「…とりあえず、俺から着替えるから、外で待っててくれるか? ノックするから1分後に入ってくれ」
「うん…そうね。わかった」
そう言って美琴は一旦、入り口に戻って外に出た。
開き直った美琴も、まな板の鯉な上条も、タオルセットを持ちながら固まっている。
「…とりあえず、俺から着替えるから、外で待っててくれるか? ノックするから1分後に入ってくれ」
「うん…そうね。わかった」
そう言って美琴は一旦、入り口に戻って外に出た。
(しかし、えらい事になった…)
スーツを脱ぎつつ、半ば呆然としながら身軽になっていく。
(じょ、女子中学生と風呂とか…絶対に反動の不幸が来る。慎重に行動しねえと…)
タオル一枚で前を隠しつつ、戻って扉をノックする。「じゃあ1分後にな」
返事のようなものが聞こえたので、急いで浴場に向かう。
スーツを脱ぎつつ、半ば呆然としながら身軽になっていく。
(じょ、女子中学生と風呂とか…絶対に反動の不幸が来る。慎重に行動しねえと…)
タオル一枚で前を隠しつつ、戻って扉をノックする。「じゃあ1分後にな」
返事のようなものが聞こえたので、急いで浴場に向かう。
(ほー、結構思ったより大きい)
美琴は振袖から着替えるから、当分入ってこないだろう。
色々シミュレーションしてみるに…今のうちに頭と体を洗っておこうと決めた。
…最悪の場合、風呂から上がれない恥ずかしい状態が続く可能性がある。
浴室の入口から一番離れた場所で、体を石鹸で洗い始めた。目の前の鏡で、入り口は確認できる。
美琴は振袖から着替えるから、当分入ってこないだろう。
色々シミュレーションしてみるに…今のうちに頭と体を洗っておこうと決めた。
…最悪の場合、風呂から上がれない恥ずかしい状態が続く可能性がある。
浴室の入口から一番離れた場所で、体を石鹸で洗い始めた。目の前の鏡で、入り口は確認できる。
カラカラ…と扉の開く音がし、にゅっと、美琴が顔だけ出してきた。
(き、きた…)
鏡は湯気で曇りだしているが、姿はまだ確認できる。
美琴の美脚がそろそろと入って、…!
(ちょっと美琴さん!大胆すぎです!)
てっきり上条はバスタオルを巻いた、よくあるTVのレポーター状態をイメージしていたが。
巻きたくても巻けなかったのかもしれないが、バスタオルは胸と太股を隠すのみで、
背中から腰のライン、かわいいお尻は横からとはいえ丸見えだった。
(ぐああっ!煩悩退散!煩悩退散!)
すぐさま頭にシャワーをぶっかけ、見てませんよアピールをすると共に、頭をわしゃわしゃとシャンプーで洗う。
(やっぱヤベエってコレ!)
(き、きた…)
鏡は湯気で曇りだしているが、姿はまだ確認できる。
美琴の美脚がそろそろと入って、…!
(ちょっと美琴さん!大胆すぎです!)
てっきり上条はバスタオルを巻いた、よくあるTVのレポーター状態をイメージしていたが。
巻きたくても巻けなかったのかもしれないが、バスタオルは胸と太股を隠すのみで、
背中から腰のライン、かわいいお尻は横からとはいえ丸見えだった。
(ぐああっ!煩悩退散!煩悩退散!)
すぐさま頭にシャワーをぶっかけ、見てませんよアピールをすると共に、頭をわしゃわしゃとシャンプーで洗う。
(やっぱヤベエってコレ!)
『……お湯にタオルは入れない!』
美琴は、あの銀髪碧眼シスターの声を思い浮かべていた。
(うーん…)
恥ずかしいが、バスタオルは前を隠すだけにしようと決め、そろそろと浴室を窺う。
上条は先に体を洗っているらしい。
(じゃあ先に浸かってよっと)
そそくさと乳白色の世界に向かう。
昼間とはいえ1月だ。まだまだ寒い。バスタオルを畳み、桶でお湯をすくって体にかける。やや熱いが適温のようだ。
湯船に足の先をつけ、ゆっくりと肩まで浸かると、そのまま奥の方へ移動する。
(うっわー、男の人が同じ世界にいる…)
背中を壁にもたれかかせ、上条を視界に入れながら、ふーっとため息をつく。
(キンチョーするけど、なんか、幸せ…)
まどろんでいたが、上条が動きそうな気配を感じ、慌てて後ろを向く。
美琴は、あの銀髪碧眼シスターの声を思い浮かべていた。
(うーん…)
恥ずかしいが、バスタオルは前を隠すだけにしようと決め、そろそろと浴室を窺う。
上条は先に体を洗っているらしい。
(じゃあ先に浸かってよっと)
そそくさと乳白色の世界に向かう。
昼間とはいえ1月だ。まだまだ寒い。バスタオルを畳み、桶でお湯をすくって体にかける。やや熱いが適温のようだ。
湯船に足の先をつけ、ゆっくりと肩まで浸かると、そのまま奥の方へ移動する。
(うっわー、男の人が同じ世界にいる…)
背中を壁にもたれかかせ、上条を視界に入れながら、ふーっとため息をつく。
(キンチョーするけど、なんか、幸せ…)
まどろんでいたが、上条が動きそうな気配を感じ、慌てて後ろを向く。
上条の頭は、シャンプーごときでは倒されず、むしろ細かいツンツン頭、すなわちヤマアラシみたいになっている。
前を隠し、美琴の死角からそろそろと湯船につかり、そのまま動かない。タオルはヤマアラシ頭に乗せてある。
「…もういい?」
「ああ、浸かった」
2人の距離は7~8メートルといったところか。
「こっちきたら?話できないじゃない」
「…ハイ」
上条は、理性の鎖が解き放たれぬよう祈りつつ、美琴に近づいていった。
前を隠し、美琴の死角からそろそろと湯船につかり、そのまま動かない。タオルはヤマアラシ頭に乗せてある。
「…もういい?」
「ああ、浸かった」
2人の距離は7~8メートルといったところか。
「こっちきたら?話できないじゃない」
「…ハイ」
上条は、理性の鎖が解き放たれぬよう祈りつつ、美琴に近づいていった。
美琴は肩まで浸かっていたので、上条としても視線は合わせやすかった。
50センチほどの間をあけて、隣に座る。
「なんか緊張するね」
「そりゃそうだ。お前今、…素っ裸だよな?」
「そうね。早速見たいのかしら?」
「じゃなくて!バスタオルとか巻かないのか?」
「お湯にタオルは入れない!といった師匠がいてですね」
「…立派な師匠です」
50センチほどの間をあけて、隣に座る。
「なんか緊張するね」
「そりゃそうだ。お前今、…素っ裸だよな?」
「そうね。早速見たいのかしら?」
「じゃなくて!バスタオルとか巻かないのか?」
「お湯にタオルは入れない!といった師匠がいてですね」
「…立派な師匠です」
美琴は上条の頭をじっと見つめ、
「ちょっと触らせてね…うはー、固いのね」
手を伸ばしたがゆえに美琴の腋と胸のラインが微かに見えた上条は、落ち着きを失う。
「お前な、一挙手一投足気を使え!これじゃ生殺しだ!」
「なにそんなに意識してんのよー。えいっ!」
右足をざばっと斜め上に上げる。スラッとした美脚は濡れてキラキラと輝いている。
「お、お前…はー!」
「あははははは」
マズイ、完全にペースを握られている。何か、話題はないか、話題は…
「ちょっと触らせてね…うはー、固いのね」
手を伸ばしたがゆえに美琴の腋と胸のラインが微かに見えた上条は、落ち着きを失う。
「お前な、一挙手一投足気を使え!これじゃ生殺しだ!」
「なにそんなに意識してんのよー。えいっ!」
右足をざばっと斜め上に上げる。スラッとした美脚は濡れてキラキラと輝いている。
「お、お前…はー!」
「あははははは」
マズイ、完全にペースを握られている。何か、話題はないか、話題は…
「そうだ!そういや一番知りたいこと、お前に聞いてなかった」
「な、なによ」
「どうして俺の記憶喪失見破れたんだ?どっかでボロ出したか?俺」
「…ま、そういう意味じゃ、当麻ほんと凄いわ。よく隠しきれるもんだわ、って」
「親にすら見破られてねえのに…」
「! ちょっと待ってよ! あのご両親も知らないの!?」
「…知らねえはずだ。知ってたらもう少し態度も違うと思う。色々カマかけて試そうとするだろう」
「あっきれた…」
「だからこそ、何でお前が見破れたのか知りたいんですが…」
美琴はちょっと口元をお湯に沈め、ブクブクと泡を立てながら少し考え込んだ。
「な、なによ」
「どうして俺の記憶喪失見破れたんだ?どっかでボロ出したか?俺」
「…ま、そういう意味じゃ、当麻ほんと凄いわ。よく隠しきれるもんだわ、って」
「親にすら見破られてねえのに…」
「! ちょっと待ってよ! あのご両親も知らないの!?」
「…知らねえはずだ。知ってたらもう少し態度も違うと思う。色々カマかけて試そうとするだろう」
「あっきれた…」
「だからこそ、何でお前が見破れたのか知りたいんですが…」
美琴はちょっと口元をお湯に沈め、ブクブクと泡を立てながら少し考え込んだ。
「見破ったんじゃなくて、知ったのよ」
美琴は上条がアビニョンから問い合わせてきたとき、携帯がずっとつながっていたことを話した。
「びっくりしたわよもう。急に黙り込んだと思ったら、激しい戦いの音の嵐で。気が気じゃ無かったわよ」
「あの状態で壊れてなかった…か」
「で、相手の記憶喪失の指摘に、当麻否定しないんだもん。」
「…そうか、それで。…サンキュ、わかった。」
「どうでもいいけど、ペア契約の無料通話で良かったわね。してなかったら、国際電話の長時間通話で、チーン」
上条は、美琴のペア契約大作戦を、心から感謝した。
美琴は上条がアビニョンから問い合わせてきたとき、携帯がずっとつながっていたことを話した。
「びっくりしたわよもう。急に黙り込んだと思ったら、激しい戦いの音の嵐で。気が気じゃ無かったわよ」
「あの状態で壊れてなかった…か」
「で、相手の記憶喪失の指摘に、当麻否定しないんだもん。」
「…そうか、それで。…サンキュ、わかった。」
「どうでもいいけど、ペア契約の無料通話で良かったわね。してなかったら、国際電話の長時間通話で、チーン」
上条は、美琴のペア契約大作戦を、心から感謝した。
「さてと、ちょっとのぼせそうだから、一旦体洗ってくるね」
「あいよ」
「…ちょっと!後ろ向いててよ!」
「さっき、あれだけからかっておいて…」
「いいわよ!じゃあじっくり見てなさい」
「…ゴメンナサイ」
上条は後ろを向く。ちょっと間をおいてちらっと後ろを見ると、ちょうど湯船から美琴が出ようとした所であり…
「こらーーーーっ!」
目が合って怒られ、慌てて後ろを向き直す上条の脳裏には、一糸まとわぬ美琴の後ろ姿が焼き付いていた。
「あいよ」
「…ちょっと!後ろ向いててよ!」
「さっき、あれだけからかっておいて…」
「いいわよ!じゃあじっくり見てなさい」
「…ゴメンナサイ」
上条は後ろを向く。ちょっと間をおいてちらっと後ろを見ると、ちょうど湯船から美琴が出ようとした所であり…
「こらーーーーっ!」
目が合って怒られ、慌てて後ろを向き直す上条の脳裏には、一糸まとわぬ美琴の後ろ姿が焼き付いていた。