とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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ミコトラプソディー 2 狂想曲2 [禁書目録]



上条当麻の家には居候がいる。
男ならともかく年頃の女の子である。
御坂美琴はその事を知らない。
だからこそ、問題なのである。

「――――へぇ、ここの七階にアンタ住んでるんだ」
「あ、ああ……」
「じゃあさっそくエレベーターで上がっていきましょうかね」

まるまる膨らんだ袋を持つ美琴が急かすように先へと歩いていく。
逆に同じく袋を持つ上条の歩みは遅い。それはもう亀のように。ナマケモノのように。
なぜって、この先に起こるであろう事態が予想できるからである。

「(どうしようどうしましょうどうしたらいいんでしょう?! このままだと俺の命と家の中が滅茶苦茶になっちまう。なんとしても美琴とインデックスを会わせないようにしなければ)」

さっきからいろいろ頭の中で考えるも、良い案は浮かばず。
そもそも他人頼り程危ないものはない。

「ほら、どうしたの当麻。そんなゆっくり歩いて」
「な、なんでもありませんの事よ?」
「そう? じゃあ、七階っと」

美琴が七階のボタンを押すと、エレベーターは上下の振動と共に動き始めた。
いよいよその瞬間がやってくる……。

チーン、と言う音がしてエレベーターのドアが開いた。
右に曲がって二つ三つ先のドアが上条家だ。
ふと目に入る一つ手前のドア。
もはや一刻の猶予もない。
上条は一縷の望みを賭けて隣の家――土御門の住む家――の呼び鈴を押した。

「え? なんでアンタ自分の家に呼び出したりなんかしてんの?」
「へっ? あー、いっけねいけね。間違えた。ハハハハ……」
「…………?」
「俺の家はこの隣だ(クソッ。土御門の野郎肝心な時に留守にしやがって)」

一縷の望みを絶たれた今、上条ができることは祈るのみ。
そう、インデックスが出かけている、と言う一点に全てを賭ける。
これで駄目なら……またその時考えればいい。
謝り倒すもよし、事情を話して納得してもらうもよし。
そもそもやましい理由があって隠していたわけじゃないから、堂々としてればいいのだ。
そうだそうだ。なんだ、まだ方法はあるじゃん。
そう考えると少し気分が楽になった。

「あ、みさ……美琴。わりぃんだけど、ここで少し待っててもらえるか? 部屋片してくる」
「いいけど、別にそんなの気にしないわよ」
「俺が気にするの! つーわけで、すぐ片付けてくるから」

ガチャッ

『あ、とうまだ。おかえりー。もうお腹ペコペコなんだよ。わたしもスフィンクスもお腹と背中がくっ付きそうなんだよ。とうまー』
「………………」
『……とうま?』

……ガチャン

無言でドアを閉める。
インデックスは出かけてなかったし、まるで待っていたかのようにドアの前にいた。
まず、いるかいないかの賭けには敗れた。
そして……

「………………」
「………………」

“いる” なにかが上条の背後に“いる”。
身体が金縛りにあったかのように硬直して後ろを向く事ができない。
それはもう、神の右席なんか恐るるに足らないくらいの威圧感が背後からビシビシ伝わってくる。
漫画なんかだと、きっと『ゴゴゴゴゴ……』なんて効果音とどす黒い背景が入っている事だろう。
そうでなくても、バチバチと言った音が聞こえてきている。
振り向かなくても、姿を見なくても結果は明らか。
即ち、謝り倒す方法も、事情を話す事も効果はない。
だからもう、諦める他ないのである。最初から。

「なんでアンタの家にあのシスターがいるかはこの際置いておくとして……一つ、いい?」
「……な、なんでございましょうか。姫」
「死ぬ前に何か言い残すことはあるかしら?」
「……不幸だ」

直後、上条家玄関前を中心に雷が落ちたかのような轟音と衝撃波が観測されたそうな。

カッチコッチカッチコッチ……
部屋の時計だけがやけに響いて聞こえる。
幸いな事に先ほどの電撃を受けても何の被害も受けなかった。
なんてことはない。間一髪右手が間に合ったのだ。
でも、間に合ったのは周りへの被害を防ぐのみ。
今、部屋の中で正座させられている上条は満身創痍だ。
右手を封じられた上での美琴による容赦ない打撃(電気属性つき)と、インデックスによる頭部への噛み付き攻撃(出血効果つき)、更に驚いたスフィンクスによる引っかき攻撃(これも出血効果あり)と言うスリープラトン・ジェットストリームアタックにより、見事にボロボロな姿になっていた。
まさに『もうやめて! 上条さんのHPはもうゼロを通り越してマイナスよ!』である。

そして、さっきから第二ラウンドが本人を差し置いて行われている。
お互い無言のままの一触即発状態。
美琴は周囲にパチパチと電気を散らして、インデックスは齧るとばかりに歯をカチカチさせて。
それぞれ『なんでアンタ(短髪)がここにいるの?』と言う言葉を胸に睨み合っていた。
上条が何か言おうものならば、たちまち二人によるツープラトンが襲い掛かるので何もできない。
数々の幻想を打ち砕いてきた上条でも、この幻想だけはぶっ壊せる気がしなかった。
ちなみにスリープラトン最後の一角であるスフィンクスは、やる事やったら満足した、と言う感じでベットで丸くなっていたりして。

とにかく、しばらく睨み合った状態から先に動いたのはインデックスの方だった。

「ねえ、もうこんな時間だけど短髪は帰らなくてもいいの? モンゲンって言うのがあるんじゃないのかな?」
「その言葉をそっくりアンタにお返しするわ。何処に住んでるんだか知らないけど、門限過ぎる前に帰ったら?」
「わたしはここに住んでるからいいんだよ。それにモンゲンなんてないもーん」
「な!?」
「だから短髪は早く帰るんだよー」

ふふん、と言った感じで無い胸を張るインデックス。
そこには確かに『勝った!』と言う言葉が表情に出ていた。
だけど、美琴だって負けてない。
何せ自分は上条の彼女だから。さっき付き合い始めたばかりだけど、そんな事は関係ない。
勢いだけは絶好調な美琴に怖いものなど無いのだ。
そこに壁があれば乗り越えるまで! 門限があれば超電磁砲で打ち抜くまで!

「私だって、今日は“当麻”の家に泊まるんだから、帰るのはここなのよ! 文句ある?」
「えぇーっ!」
「ええーっ?!」

……ギロリ。

「な、なんでもありません……上条さんお口にチャックしてますのでどうぞ続けてくださいませ」

「短髪泊まるの?! それに今“とうま”って……」
「ふん。いい? 私と当麻は付き合い始めたの。つまり彼氏と彼女の関係って事。だから私が“当麻”の家に泊まりに来る事になんの不思議も無い。むしろ自然な事なのよ。おわかり?」
「そんな、とうまが、短髪と……?」

キッとインデックスが睨み付ける。
その先にいるのはもちろん本日の下手人、上条当麻その人だ。

「とうま! 短髪の言ってることは本当なの?! ちゃんと説明してほしいかも!」
「当麻、ちゃんと説明、できるわよね?」

美琴はニッコリ笑って問いかけた。
でもその笑いは悪魔の笑みだ。
『ヘンな事言ったら承知しないからね』と言う意味を含んでいる。
ここで言うヘンな事とは、上条と美琴の関係だとは言うまでもないだろう。
すでにボロボロな上条に反抗する力は残されてない。
ただ事実をありのまま述べるのみ。

「インデックス。あのな、よく聞いてくれ。今日……み、美琴と付き合い始めた。だから今言った事は全部間違いない。本当だ」
「と、とうま……」
「ね? 言ったとおりでしょう。だからこの場合むしろ帰るのはアンタの方。そもそも、さっきここに住んでるって言ってたけど、どういう事なの?」
「それについても俺から離す。だから美琴も聞いてくれ。ちゃんと、話すから」

上条はこれまでの経緯を簡単にではあるが説明した。
もちろん全てを話したわけではない。当たり障りのないところだけ話して、魔術などの肝心な部分は伏せてある。
けれど、ちゃんと事情があってインデックスと同居しているということは伝わったらしく、なんとか怒りを静めることに成功……

「それなら、どうして最初からそう言ってくれなかったのよ。やっぱりなんかやましい事があるとか?」
「ありません!!」

……成功?

「……とまあ、こう言う事情があるんだ。だからインデックスは今後も俺の家に住むし、そこは変えられない」
「とうま……」
「まあ、正式に依頼されて住んでるって事なら私がとやかく言える立場じゃないわね。……そりゃ、ちょっとは気にするけどさ」
「スマン、美琴」
「いいわ。この件についてはもう何も言わない。……にしても、アンタってば私が知らない間にそんなことに巻き込まれてたの? あと、結構いろんなところに行ってるみたいだけど、そもそもそんな頻繁に外って出れたっけ?」
「い、いやーその、あははははは」

無理やり拉致されたり、超音速航空機に積み込まれたりして不法出入国してます! なんて口が裂けてもいえない。

「上条さんにも、いろいろあるんですよ」
「それはもう諦めてるからいいわよ。でも、入院とか酷い怪我とか、私はそっちが心配。この間の事もそうだし、気が気でないんだからね」
「ぜ、善処します」
「……ねえ、とうま」
「ん? どうしたインデックス。そういやさっきから随分と大人しかったけど」

ぐうぅぅぅ~、と音が部屋に響く。
こんな音出すのは一人しかいない。
訴えかけるようにもう一度鳴ったお腹を押さえながら、インデックスは涙目で訴えた。

「お腹空いたんだよー。短髪の事は“どうでもいいから”とにかくお腹空いたんだよおなかー!」
「ど、どうでもいいって何よ!」
「とーうーまーぁ」
「ああ、もう! わかったわかったよ。今夕飯作ってくるから、ちっと待ってろ。どうせだから、美琴も食べてくだろ?」
「あ、うん。えぇでも、私作ろうか?」
「任せとけって。これでも伊達に一人暮らししてません」

今日買ってきた材料が早速役に立つ。
と言うかこの為に安い品を大量に買い込んでいるのだが。
上条が夕飯を作っている間、美琴とインデックスは言葉も無く二人きり。
唯一の癒しキャラである三毛猫スフィンクスは、上条の足元をカリカリしながら『なあなあアンちゃん。オイラのご飯は~?』とアピールしていた。

「………………」
「………………」
「(ど、どうしよう。会話が無いわ。あの子ずっとこっち睨んだままだし)」
「………(ぐうぅぅ~)………」
「(それにさっきからお腹鳴りすぎ! もう少し羞恥心とか持てないのこの子は!)」
「ねえ、短髪」
「……あのさ、前から言おうと思ってたんだけどその短髪って呼ぶの止めてくれない? 私には御坂美琴って名前があんの」
「短髪は短髪だよ」
「ホントムカつくわねアンタ」
「短髪も、わたしの事アンタって呼ぶの止めてほしいかも。わたしにはインデックスって名前があるんだよ」
「アンタはアンタよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「すっごくムカッときたかも」

睨み合ったまま戦況に変化はない。
台所の方から何やらいい匂いが漂ってくる。
インデックスはそちらに目を奪われがちになるが、首をブンブン振って意識を回復させ、目の前の脅威を改めて見据えた。
でも、先ほどまでの威勢はない。
やっぱりお腹が空いて力が出ないのか、それとも別の問題か。

やがて、はぁと大きなため息を吐いた。
若干すねたような口調で、そっぽを向きながら呟く。

「……どうして短髪がとうまと付き合えたのか不思議でしょうがないよ」
「私は当麻が好き、当麻は私が好き。他に理由はいるかしら?」
「い、いらないけど! いらないけど、でも……」

しゅん、と急にインデックスが大人しくなった。
どうやら、まだ納得がいってないようだ。
そりゃあ、何の前触れも無く突然『付き合い始めたから』なんて言われて納得できるほうが難しい。
ましてや、インデックスはこの家で当麻と一緒に住んでいた。
毎日顔を合わせ、ご飯を食べ、お風呂上りの姿や寝起きの着衣が乱れた姿を見られた事もある。
なのに何の関係にも至ってないのだから、無理も無い。

美琴は、インデックスが上条のことを好きなのだと言うことを知った。
時より見かける頭部への噛み付き攻撃も、愛情の裏返しなのだと。
なんだか自分が振り向いてもらおうと電撃を打ちまくっていた事と被るような気がする。
そして改めて、美琴は自分の恋敵を認識した。
全てはタイミングの問題……もしも、今日自分が告白をしなかったら、次に自分が上条と会った時に隣に寄り添っていたのはこの子だったのかもしれない。

ぽん、と美琴はインデックスの頭に手を載せた。

「短髪?」
「ゴメンね。アンタからすれば、急に現れた女が横から奪っていったように見えるかもしれないけど、でも、これだけは譲れない。私にとって何よりも大切なものだから」
「………………」
「別に嫌いでもいい。恨んでくれてても構わない。でも、私はアンタに……インデックスにも認めてほしい。勝手なお願いかもしれないけど、そう思ってるの」
「……まだ、諦めたわけじゃないもん」
「うん。それでもいい」
「……まだ、認めてあげないもん」
「うん。今はまだそれでもいい」
「……わたしがとうまと先に“きせーじじつ”を作っちゃうもん」
「それは困るわ」
「……しないよ。できないよそんなこと。とうまの悲しい顔、見たくないもん」
「私はいいのかしら」
「だってライバルだもん……みことは敵なんだよ」
「あらあら、手厳しいこと」

それでも、美琴はインデックスの頭を撫でたまま。
インデックスも、嫌がりもせず撫でられたまま。
その表情にさっきまでの険悪さは残っていない。
むしろ、なんだか心地よさそうにしている。
美琴は思った。すぐには無理かもしれないけれど、でもこの子とは仲良くやっていけそうな気がする。
根拠も確証も無いけれど、そんな気がした。

「ほい、お待ちどうさんでした……って、お前ら何やってんだ?」
「ん? 別になんでもないわよ。ね、インデックス」
「うん。ね、みこと」
『ねー』
「そ、そうか?(なんだか急に仲良くなった気がするが……まあ、そっちの方が平和でありがたい)」
「それよりもとうま! お腹空いたんだよ!」
「わぁってるって。今ご飯よそうから」
「ようやくお夕飯なんだよ。待ちくだびれたんだよ」
「へいへい。ほら。美琴はこの位でいいか?」
「あ、うん。ありがとう……」
「んでは、頂きましょうかね」
「ずいぶん量が多いけど……こんなにたくさん食べられるの?」
「ま、見てろって」
「???」
「それでは……」
『いただきます』

がつがつがつがつ……!

「ほらな?」
「うわ……すごい食べっぷり。一体この小さい身体のどこに入ってるのよ」
「おかわりなんだよ!」
「おまえ、ちょっと落ち着いて食えって。夕飯は逃げないから」
「量は減るんだよ!」
「……アンタが特売を気にする理由がよく分かったわ」

こりゃあ食費がいくらあっても足りないわね、と美琴は実感した。
元々上条一人分の生活費でやり繰りする分しか仕送りはないはずだ。
そこにもう一人、それも大食らいが増えたとしたら、まずこうなるだろう。
今度自分がご飯を作りに来る時は食材を持ってこようかな、なんて考える。

そして、文字通りあっという間に夕飯は終了して……。
ご飯粒一粒レベルまで食べ残しゼロの食器の洗い物をしている最中に、上条家の電話が鳴った。

pririririririri!

「っと、電話電話。ハイ、もしもし……あれ、小萌先生? どうしたんスかこんな時間に……え、インデックス? はい、いますが……おーいインデックス、小萌先生からだ」
「こもえから? ……もしもし? うん。うん……えぇ?! それは是非お呼ばれされるんだよ! 超特急で向かうんだよ!」

電話を切った途端に何やら出かける準備をするインデックス。

「お、おいインデックス。どうしたんだ急に。小萌先生がどうかしたのか?」
「こもえが、全国美味いもの巡りツアーに誘ってくれたんだよ! これは行くしかないかも。と言うわけだからとうま、日曜日の夜まで出かけてくるね!」
「えっ? あ、おい! インデックス!!」
「スフィンクスもつれていくからねー」

ガチャン、とまるでひと時の嵐のようにインデックスは去っていった。
残されたのは何がなんだか分からないまま放置された上条と美琴。
少なくとも分かったのは……

「インデックスが……」
「日曜日の夜まで帰らない?」
「え、えーと……」
「ど、どうしましょうか」
「とりあえず、茶でも飲むか?」
「うん。頂くわ……」

計ったような、なんとも絶妙なタイミングで“二人っきり”と言う空間は完成してしまったのである。

「な、なあ。美琴。さっきの話なんだが」
「さっきって?」
「その、美琴さんは本当に今日泊まっていくおつもりなのでせうか?」
「えっ?! あ、あれは……そ、そそそうよ! なんて言ったって私はアンタの彼女になったんだから、彼氏の家に泊まったって何の問題も無いわけで!」
「フツーに考えたって、中学生が男の家に寝泊りなんてまずいだろ。さっきの話じゃねえけど、何かあったら責任が」
「それは私が言ったでしょう。アンタがそこまで考えてるなら問題ないって」
「そ、それに! お前ン所白井と一緒の部屋だろ? 何も言わずに帰らなかったらむしろマズいんじゃねえのか?」
「あ、それもそうね。ちょっと黒子に電話してくる」

美琴はスカートのポケットからゲコゲコ電話を取り出すと、黒子の番号を呼び出してコールボタンを押した。
1コール目が終わらないうちに電話に出るのは、ある意味才能としか言いようが無い。
最も、これは美琴限定なのかもしれないが。

「あ、もしもし黒子? 今日ちょっと帰らないから寮監誤魔化しといてくれる?」
『―――?! ―――――!!』
「だからそんなんじゃないって。ちょっと……きゅ、急に親戚がこっちに来たものだから、私はそっちのホテルに泊まるのよ。うんうん!」
『――――? ――――。―、――――!』
「そそ、そう言う訳だからあとよろしくね!」
『――――! ――』

ゲコッと言う音と共に通話が切れる。
何を言ってるのか声までは聞き取れなかったが、電話越しに大きな声を出していたのは上条にも分かった。
肯定的でない? そりゃそうだ。

「と、言う訳だから! 私は今日ここに泊まるわよ。もう黒子にも言っちゃったし、門限も過ぎてるから寮に戻れないんだからね」
「……はあ。お前のその行動力には頭が下がるよ」
「褒め言葉として受け取っておくわ♪」
「んでも、着替えとかどうするんだ? 当然ながら、ここには女物の服なんかないぞ」
「あの子のはないの? と言ってもサイズ違うから着れそうも無いけれど」
「インデックスの? あいつはいつもあの格好だからな。寝るときも俺のワイシャツだけだし」
「じゃ、じゃあ……それで」
「はい?」
「と、当麻の……ワイシャツ、着る」
「?!」

一瞬、ワイシャツ一枚だけの格好をした美琴が頭に浮かんだ。
うん。アウト。上条さんの理性的にもトリプルプレーでアウト!

「美琴サン?! そんな、しし下着とかはどうなさるおつもりなんですか?!」
「短パン穿くから大丈夫よ。それとも何、穿いてほしくないとかそう言った事考えちゃってる? この変態」
「変態?! この紳士・上条が変態ですとな? ならばいいでしょう、上条さんがステキ紳士だという事を分かってもらうためにも、どうぞ泊まっていってもらおうじゃありませんかええどうぞ!」
「そう? んじゃ遠慮なく~。お風呂って入っていいのかな?」
「どうぞどうぞ。そっちの奥入ったところだから。あと俺のシャツ着るなら置いてあるぞ」
「サンキュー」

パタパタと歩いていって、直後にドアの閉まる音。
しばらくして、シャワーの流れる音が聞こえてきたところで上条は我に返った。

「(な、なんて事を口走ってやがるんですかこのバ上条はー?! やっぱアレですか、男は皆例外なく狼ですかそうですか! 結局上条さんも紳士じゃなくて変態さんだったんですね?!)」

上条は知らないが、今の姿は夏に黒子が地面やファミレスのテーブルでやっていた事と同じであった。
連打してぶつけたおでこから、シューっと煙が上がっている。

「(落ち着け、上条当麻。冷静になるんだ。心頭滅却すれば美琴もまた無害ナリ! 相手は中学生・相手は中学生・相手は中学……駄目だ、さっきのイメージがまた! バカ、上条さんのバカバカバカ!)」

一人で斜め上へ向けてエキサイティングしてる上条当麻。
だが忘れてはいけない。夜はまだ始まったばかり。
美琴の姿だってまだ見てないし、一体寝るときはどうすれば?
そして上条は見事変態紳士から紳士へとランクアップすることはできるのか。

「(あぁもう、幸せ……じゃなくて、不幸だあぁぁぁぁぁ!!)」


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