とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある乙女の恋事情 3 私とアイツと時々・・・



今、美琴と美鈴はとあるファミレスに来ている。
ここで昼食も取り終え美琴はレモンティー、美鈴はコーヒーを飲んで口直ししているといったところだ。
一見姉妹に見えても可笑しくない御坂母娘は何故こんなところで食事を取っているのか?しかもここは学園都市内である。
それは昨日、つまり上条に寮まで見送ってもらった後まで遡る。

美琴は高鳴る胸をギュッと押さえながら寮の玄関をくぐる。
門限までまだ時間があるので寮監の姿はまだ見えない。
ある意味ありがたいかも知れない、今の美琴の顔は赤く染まって息が荒い。
その姿だけ見たらまるで風邪でも引いているかのようである。
実際ついさっきまで風邪を引いていたようなものだからあながち外れではないが。
208号室、美琴兼白井黒子の部屋の前に来て深呼吸をして心を落ち着かせる。
同居人である白井の姿は無かった。
(そういえば今日は一端覧祭の準備で遅くなるとか言ってたわね・・・)
午前中にそう言われたことをふと思い出した。
そう分かると自然に安堵した。
そうしてベッドにダイブする。
制服のままであるが今はそんなこと全然気にならない。
数時間前にあった出来事は美琴にとってとても重大な出来事であったから、
一生一度の初恋が叶ったのだから・・・
結論、彼女は枕をこれでもか!とばかりに抱きしめている。
そして周りから見たら正直病気でなかろうか?と疑問に思っても可笑しくないくらいに悶えている。

(・・・アイツ私のこと好きって言ってくれた、夢じゃないよね?)
自分の頬を軽く抓り夢で無いと確認してまた枕を抱きしめる。
これを幾度と繰り返す、普段白井といる時とは打って変わって乙女に変わる美琴であった。
それから枕にも飽きてきて愛しの彼に電話でもしようかと携帯を取り出す。
履歴には『母』という表示がある。
今日そういえば電話かかってきたっけ、と用件を聞けずにいたことを思い出した。
用件が無ければ電話なんてかけないだろうしあっちも忘れているのだろうと推測し履歴から母こと美鈴にかける。
思ったより美鈴は早く出た。
『もしもしー、美琴ちゃん?』
「さっきのことなんだけど、何か用があったんじゃないの?」
あぁー、という適当な声が聞こえてくる。
『そうだった~、美琴ちゃんが早くも大人になってたことに驚いちゃって忘れてた』
テヘっ☆とか聞こえる。周りから見たら若いかもしれないけど美琴からしてみたら正直歳を考えて欲しいと懇願したいのである。
「な、何よ大人になるとか、それよりも用はなんなのよ!」
美琴は話がまたズレそうだったので軌道修正する。
『ごめんごめん、いや明日ね大学の講習が学園都市であるのよ。それで午前中で終わるから一緒にお昼でもどうかな~?って
美琴ちゃんも今午前授業だって言ってたから』
でも、と小悪魔的な嫌らしい声で美鈴は話しを続ける。
『上条くんとのラヴラヴライフが待っているのに私がお邪魔できないモンね~、今日は二人の愛の巣を邪魔しちゃったみたいだしー』
ぶはッと不覚にも吹いてしまった。今はそういうことを聞くだけで妄想してしまい、ふにゃふにゃになりかねないため
強気で美鈴にぶつかる。
「なななんあ、ゴホっ、な、何を言ってんのよ!わた、っわ、私がアイツと・・ら、らぶらヴ・・」
作戦は失敗に終わり、顔から火が出るとはまさにこういうことを言うのではないだろうか?
美琴は顔を真っ赤にして、ぷしゅーっという音まで上げている。
『もぉー、美琴ちゃんってお・ま・せ・さん♪』
「そ、そんなんじゃないっ!いいわよ、明日のお昼一緒に食べましょ!時間と場所はこっちで決めるから
詳しいことはメールで送るから、じゃーねっ!」
あぁん、とエロい声を上げる美鈴を無視して通話を切る。
(明日はアイツと一緒に買い物でもしたかったのにぃー)
美琴の心の声も虚しく天まで届かなかった・・・。
でもこれからは追いかけなくても、上条を捕まえられることが何より嬉しかった。
他の誰のでもない、美琴だけの彼を。

時間は現在に戻りファミレス、昨日約束したとおり昼食を二人で取ったのだった。
美鈴の大学の愚痴やら、美琴の愚痴やら何とも姉妹の会話にも思えなくない感じだった。
「ところでどうなのよん、彼とは?」
はぁー、と溜め息を付く美琴いつもなら恥ずかしがるところだが実はこの話題はもう三回目さすがの美琴も慣れた。
「だから彼じゃないってさっきから何回言わせんのよ」
昨日めでたく付き合うことになったので、これは嘘である。
「うそだー、だって上条くん料理してったっぽいし~梅干どうのこうの言ってたし~」
「あ、あれはアイツが余ったコンビニのおにぎり渡してきただけで・・・その、何ていうか・・
べ、別に私に料理してた訳じゃないんだからっ」
これも嘘である、美鈴は分かってますといわんばかりに腕を組んで大きく頷いている。
「ふぅん。じゃ本人に確認とってみようかな~」
ここは窓際の席なので外の様子は丸分かりである。
美鈴はガラス窓を指差す、その先には!?
「な、なんで?」
アイツこと上条当麻がいる。何やら誰かととても楽しそうに電話している。
「あら、誰かと電話しているみたいね。他の女の子かもよ~?」
美鈴は顔は上条の方に向いていて横目で美琴を実に楽しそうに眺めている。
美琴は上条のことに夢中で見られていることに気づいてはいない。
「あ、アイツが他の女の子と・・?そんなこと、そんなこと・・」
ついに心の声が外に駄々漏れしている。
(やっぱ美琴ちゃんは上条くんに夢中か、素直じゃないんだから)
美鈴はフフッと微笑む。

そして上条は電話で誰かと待ち合わせていたのか、少し離れたところにいるらしい通話相手に手を振っている。
(誰なんだろ?アイツやっぱり女の子となのかな)
そうあって欲しくない、そうでないと信じたい。
でもいつだって願ったことは裏切ってくる。
その相手は
上条の待ち合わせの相手らしき電話片手に走ってきた人は、長い黒髪で白梅の花の形をした髪飾りをつけている
明るそうなとても可愛らしい女の子であった。
そして美琴の良く知る女の子であった。
「佐天さん・・?」
「美琴ちゃん知り合いなの?」
「・・・うん、友達なんだ、けど」
(うぁー美琴ちゃんの凹みっぷりが半端じゃないわね・・・。まさかここまでとは)
美鈴も予想外の美琴の上条に対する想いの一片を見て少し驚く。
(美琴ちゃんをここまで虜にするなんて上条くんやるわねっ)
だが美琴はそれどころではないのである。
それもそのはず既に想い通じあった二人であるのに上条は他の女の子といるのだ。
(何でアイツは佐天さんと・・。分け隔てなく誰とでも付き合うからって)
そう考えたとき美琴の頭の中で『分け隔てなく誰とでも付き合う』というところに引っかかった。
そうなると上条は美琴に対する愛情を他の誰かにも同じ愛情を注ぐのでは?
そんな考えが心を占める。
何度も考えているうちに二人は楽しそうに話しながらファミレスに向かってきている。
立ち話もなんだから、みたいなシチュエーションから来るものだろうと美琴は考えなくてもわかる答えを出した。

しかし今はそれよりも二人がこの場所へ入ってくることだ、何とも気まずいし上条が他の女の子と付き合っているところなんて見たくも無かった。
だけど真相も聞きたい、そういうのがぐるぐる回って結局動けずにいた。
心の準備もできないまま上条と佐天は入ってきた。
佐天はすぐに美琴の存在に気づく。
「あれっ、御坂さんじゃないですかー!」
「御坂?おう御坂じゃん!」
二人は嬉しそうに美琴に近づく。
「ってか上条さんは御坂さんのお知り合いなんですか?」
「俺も佐天さんが知り合いのことに驚いた」
そんな楽しそうな二人を見て美琴は下唇を噛みぐっと堪えつつ問う。
「なんでアンタは佐天さんと一緒にいるの?」
少し寂しそうな顔をする美琴を見て上条は美琴が大体思っていることを理解したのか
小さく微笑んで答える。
「佐天さんに俺の財布を拾ってもらったんだよ。交番にいたらちょうど佐天さんが俺の財布を持って来てくれて
それで着替えた後お礼がしたいからここのファミレスに来たって訳」
「あたしは最初断ったんですけどね」
「今月の食費が入ってたから本当に助かったよ。もう少しで上条さんの家計は火の車でしたっ!」
上条はそういって土下座しながら佐天に感謝している。
佐天はそこまでしなくてもっ!とちょっと焦りながら止めてくださいと言っている。
「そうだったんだ・・・」
「あれぇ、美琴ちゃんなんで安心しているのかなぁ??」
「あ、安心なんてしてないわよ!」
とそこで美鈴の存在に気づいたのか佐天が
「あのー、そちらの方は御坂さんのお姉さんですか?」
素通の人が見たらそう思っても可笑しくないだろう、逆にそれが普通。
「お姉さんだってー、うれしーな。私は美琴ちゃんのママでーす」
「えぇー!!お母さんですか?若い過ぎますよっ、あたしのお母さんと大違いなんですけど・・・」
そこで上条は
「まぁ誰もは最初はそう信じたいよな」
うんうん、と頷いている。
「立たせたままで悪いから、上条くん達もここに座っちゃって」
美琴達が座っているのは4人掛けの席である。

美琴の隣に上条、美鈴の隣に佐天という形で座った。
上条はコーヒー、佐天はオレンジジュースを注文した。

「ところで御坂はなんで佐天さんと友達になったんだ?」
「それは黒子が風紀委員の友達の初春さんって子が佐天さんと友達で、佐天さんも私もよく風紀委員の部署に
遊びにいったりしてたからそれでみんな友達になったってこと」
「そうなんですよ~、でもあたしが一番気になるのは御坂さんと上条さんの関係なんですけどっ!
お二人は恋人同士だったりするんですか!?」
興味津々というオーラが身体全体から出ている佐天、満面の笑みでテーブルに身を乗り出して聞かせて下さい!と懇願している。
「あぁ~、それはきの---」
そこまで言いかけて美琴が上条の口を塞いだ。
上条にしか聞こえない声で
「お願いっ、昨日のことは黙ってて。私も言いたいけど、今はまだ心の準備ができてないっていうか・・・」
少し俯く美琴を見て美琴の手を掴んで自分の口から離しこれも美琴にしか聞こえない声で
「わかった。今はまだ、な」
美琴は小さく頷く。
佐天はそれを見て二人が普通の関係でないことを悟る。
(やっぱり。なんかあるよねコレ)
「で?どうなんですか。上条さん」
そこで待ちに待った答えが
「友達だよ。俺らも」
「そ、そうよ。ただの友達」
上条はなんら変わりないが美琴の顔は明らかに引きつっている。
これを見逃す美鈴ではない。
「美琴ちゃんそれは本当の気持ちなのかな?ただの友達ってことは例えば佐天さんと上条くんが付き合っても良いっていうのかしらん?」
不敵な笑みで美琴の弱点を攻める。
「ぇぇええっっ?!?」
美鈴の攻撃は一撃必殺だった。
美琴はそこで意識が途絶える。
倒れる美琴を上条が何とか支える。
「あらら、気絶しちゃったか」
「御坂さん!大丈夫ですか?」
流石の美鈴も驚いているようだ。
「美琴ちゃんはホントに素直じゃないのね~」
「ってことはやっぱり御坂さんと上条さんは・・?」
「そこら辺はどうなの?上条くん」
そこで少し言うべきか考えたがこの人は全てお見通しだろうと思い素直に言うことにした。
「・・・はい、実は俺コイツと付き合ってます」
「やっぱりね~、今日の様子でなんとなく分かってたわ」
「えっ!?本当に付き合ってたんですか?」
佐天はまさかその通りだとは思いもせず普通に驚く。
「で、それはいつからなのかしら?」
「昨日御坂、いや美琴が熱を出して街中で倒れたので俺の部屋で看病して、その後色々話していたら俺も美琴も
お互いのことを想っていることに気づいてって感じです」
「倒れた美琴ちゃんをお持ち帰りとは、やるわねっ上条くん!流石の美鈴さんもその話を聞いて仰天の一言だわ」
「お、お持ち帰りっ!?ちゃんと門限前に美琴の寮に送っていきましたよ!」
ふふふっと美鈴は笑って
「冗談よ、上条くんは美琴ちゃんが気を許した男の子だもんねー。そんなことしないのは分かっているわよん♪」
「からかわないで下さいよ」
佐天は脇で
(御坂さんは既にそんなところまで行ってたなんて、中学一年と二年ではこんなにも大人の階段が上がるのか。
ってことはあたしも二年になったら誰かと・・?)
などと思い美琴のことを改めて先輩であると自覚する。

「そういえばどうして俺達が付き合っていることが分かったんですか?」
と上条が聞くと、美鈴は何でそんな分かりきったことを聞くのかというような顔で
「美琴ちゃんが上条くんと佐天さんが一緒にいるのを見ていた時。いつもだったらイライラするはずなのに今日は何か裏切られたみたいな顔をしてたのよ。
それでこれは二人に何か大きな変化があったな、って思ったわけよ」
「・・・ははっ、凄いっすね・・」
上条は美鈴の観察眼に驚きを隠せない反面、自分はこのスキルは一生つかないだろうなと冷静に思った。
そして美鈴はふっと席を立つ。
「じゃあ私はこれで失礼するわね」
「えっもう行くんですか?」
「今日午後四時までしかここにいられないのよ」
気づくと今は午後の三時になるところだ。
「じゃ、上条くん佐天さんまたね。美琴ちゃんをよろしくねん、特に上条くん美琴ちゃんを泣かせないでよー」
「わかってます。俺もコイツの泣き顔は見たくないです」
「でも基本的に私は上条くん達を応援しているから」
そう言って美鈴はファミレスを後にした。
そしていつのまにか支払いも済ませてあった。
(美鈴さん大人だなぁ、借りもできちゃったし今度返さなきゃだな)
支払いのことを気にするだけで上条も大人っぽいのだが特に自覚はない。

上条は向かい合った佐天がいきなり携帯を取り出し此方に向けているのに気づく。
「・・・あのー佐天サン、何をしているんでせうか?」
「未だに信じられないので写真取らせてくださいっ」
今、美琴は寝ている(気絶による)。上条の肩に寄り添って。
これは第三者から見たらどう考えても彼氏彼女の中としか見えない。
そんな中この状態で写真を取られたら一溜まりも無いだろう。
身動きが取れないのでほぼされるがままだが一応抵抗してみる
「それは俺は別にいいけど、コイツがなんていうか・・・」
「いいじゃないですかー。じゃああたしが言いふらすのと、ここで写真取られるのどっちがいいですか?
ちなみに写真取った場合は誰にも見せませんし言いませんよ」
上条は少し考えたが
「言わないんだったら写真くらい良いか。佐天さん一思いにやってくれっ!」
「では心置きなく行きますよー」
パシャッと携帯カメラがデフォルトのシャッター音を放った。
「おおっ!綺麗に写ってますよ」
「どれどれー?おっいいじゃん!佐天さん俺にも送ってくれ」
どうぞー、と言って赤外線で送信した。
上条は特に美琴との関係を隠したいようでも無かった。
むしろ本人としては見られても全然いいと思っている、不幸にならなければ。

その後美琴が起きた後三人はそれぞれの帰路についた。
ちなみに美琴が寝ている間の出来事全ては何も言っていない。
言ったらまた気絶してしまうところだっただろう。
上条はそれも見据えて敢えて言わなかった。


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