とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

08章-2

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第8章 帰省1日目 情報屋


 『久しぶり』という言葉を投げ掛けられた上条は表情を強張らせた。 が、それも一瞬で、すぐに口角を上げて眼を細め、男の
言葉に適当な誤魔化しで応じようとする。

美琴「コイツの知り合いなの?」

 しかし美琴がそれをさせなかった。
 通常ならこの状況で美琴が尋ねるべきは上条の方だろうが、もちろん今は通常ではない。
 だから男の方に聞く。

 男「ええ、当麻君が小学校に上がる前に色々と。 忘れられているかもしれませんが」
美琴「そんな前なら忘れてると思うわよ? コイツったら記憶力悪いの。 そうでしょ?」

 上条は美琴の突飛な行動に愕然とした。
 この話の流れで誤魔化すのは相当厳しい。
 まるで知っているなら具体的に何か喋ってみろとでも言われているかのようだ。
 男の年齢は恐らく上条の父と同じくらい。 パリッとした紺色のスーツに地味なネクタイを締め、染めていない短髪に黒縁眼鏡
といった出で立ちで、お固い商社にでも勤めているサラリーマンのような風貌である。 身長は上条よりも高く、体格も良い。
 学園都市内で同年代の人に声を掛けられた場合とは違い、当てずっぽうで関係を言い当てられるわけもない。 親戚、幼稚園の
先生、またはただの御近所さんという可能性だってある。
 上条は極力記憶喪失前の彼を知っている人に悲しい思いをさせたくない。 極力自分がウソを付くことで穏便に済ませたいのだ。
 だったら出来る限り覚えている振りをするべきである。
 それが解らない美琴ではないだろう。
 だから彼は半ば睨むような勢いで美琴の顔を見やった。

当麻「……ッ!?」

 そしてもう一度衝撃を受けてしまう。
 美琴の口元は薄い笑みを湛えていた。 しかし逆に瞳は悲しそうで、眉は困惑のカーブを描いている。
 鈍感な上条でも、瞬時に彼女の気持ちに気付くことが出来る。
 ついでに今すぐ自分を思い切り殴りたくなる。
 美琴は上条に、ひたすら一人でウソを重ね続けるような事をさせたくない。 ウソを重ねる事で彼の心の奥底が孤立していくの
を黙ってみていられなかっただけなのだ。
 だからそれを絶った。
 彼に恨まれることを承知で。

当麻(ったく、テメェは馬鹿か上条当麻。 大切な人に辛い思いさせてんじゃねえよ!)

 幸い相手は忘れられている事を想定している。
 二つを天秤に掛けること自体躊躇われるが、今はその選択以上のものは見あたらない。

当麻「………あ、ああ。 悪い、ちょっと思い出せないみたいだ」

 ゆっくりと喋ったはずなのに、自分でも驚くほど声がかすれていた。

 男「あっはは。 いいですいいです、だろうと思いました。 えーっと私はこう言うものです」

 男は責めるわけでもなく、人懐っこい笑顔のまま胸の内ポケットから白い名刺ケースを取り出し、二人へと手渡した。
 美琴はそこに書かれている文字を見て一瞬手が止まるが、上条の知り合いならば邪険にもできないと思い受け取ることにする。

当麻「学園広識社、編集長の文津知誠《ふみつちせい》さん?」
知誠「月刊学園都市って知らないですか? 主に外向けの雑誌でそこそこ有名なんですが」
当麻「俺はちょっと…………って、そんな人が何でまた? 俺との関係もさっぱりだし」

 上条はチラッと美琴の方を見る。 編集長自らが出張ってくる理由は分からないが、用事があるとしたら恐らくそちらだろう。

知誠「ははは。 そうですか? 君の元へ記者が来たとしても不思議ではないと思いますがね。 私だって『学園都市最強の第一位
    を退けた無能力者、今度は戦争の原因を絶つ』なーんて記事、書けるものなら書いてみたいですよ」
当麻「ッ!? 知ってるのか?」
知誠「まあその事は当麻君との関係も含めおいおい。 お察ししてらっしゃるかもしれませんが、今日はそちらのレベル5の
    お嬢様が帰省されるとの情報を得まして、恐縮ですがご実家に伺ったんです。 そしたら誰もいらっしゃらなくてです
    ねぇ、相当慌てました」

 知誠は傘を畳み、二人に倣って庇の中へと入る。

知誠「ところが休暇中の部下から写真付きメールが送られてきましてね。 ああ、勝手に撮影したことはお詫びします。 部下も
    普段自分が編集している記事の主役を見て興奮したようで……………それで、驚いたんですよ。 隣りに写っているのが
    当麻君で……………いや、お二人を記事にするなんて馬鹿な真似は致しません。 一応弊社は統括理事会の認可を受けて
    いるまともな部類の組織でして、どちらにせよ検閲で弾かれてしまいますからご心配なく」

 そう言って明るく笑うと、ハンカチで顔に飛び散った雨の雫を拭う。
 上条は『雑誌のインタビューを受けるなんてやっぱり美琴は有名人だなー』と自分の事は放って置いて素直な感想を抱いたが、
当の美琴は20センチメートルくらい上にある知誠の顔を呆れ顔で眺めた。

美琴「つくならもうちょいマシなウソ付きなさいよ。 いくら統括理事会の認可を受けてる会社だからって、レベル5にそんな簡単
    にインタビュー出来るわけ無いでしょーが。 これでも一応最高軍事機密なのよ? それを記事にしようだなんて馬鹿か自殺
    志願者しか居ないわよ。 まぁ例えホントだとしても、悪いけど今そういう気分じゃ無いの。 分かったら帰ってもらえる?」
当麻(……ああ、そっか)

 適当に聞いていた上条もようやく気付く。
 大体にしてこのタイミングでこんな場所までレベル5の取材に来るというのは不自然極まりない。
 それに統括理事会が許可した取材なら堂々と学園都市内に入って出来るはずだ。 わざわざ帰省を狙う必要は無い。

知誠「ははは。 手厳しいですね」

 それでも知誠は柔らかい表情を崩さない。

知誠「いや、半分は本当なんですよ? 個人的に超能力者がどういうものか興味ありますしね。 もちろん仰るとおり記事にはなり
    ませんが」

 言いながら胸の内ポケットから今度は黒い名刺ケースを取り出し、二人へ渡す。
 二枚目の四角い紙に書かれた文字は、上条までもを呆れさせた。

当麻「……………探偵ぇ? 何か一気に胡散臭くなったんすけど」
知誠「ははは。 正確には情報屋なんですがね、理解できない人には本当に理解できないみたいで、便宜上探偵って事にしている
    んです。 あ、裏家業とかではなく単なる副業ですよ? リスク管理さえきちんとできれば割の良い仕事です」
当麻「………んで、その情報屋さんが何の用なんだ?」
知誠「ああすいません。 お二人も寒いでしょうしさっそく本題に入りたいのですが、実は要件が二つあります。 一つは依頼人
    から美琴さん宛への伝言、もう一つは当麻君に対して、私の個人的な要件です。 別々にお話ししたいので日にちを分け
    たいのですが、確か美琴さんは明後日までこちらに滞在するご予定でしたよね?」
美琴「その前に、初対面の相手に私がハイそうですかって素直に従うと思う? こう見えても今休暇中なのよね。 はっきり言っ
    てアンタ邪魔なんだけど?」
当麻(………………美琴さんってば、もしかして相当怒ってません?)

 先刻より美琴の全身からドロドロした『早く消えろオーラ』が出ている。
 原因はさすがに上条にも分かるが敢えて触れないでおく。

知誠「ははは。 嫌われちゃいましたか。 しかしこちらも引くわけには参りません」

 そこでようやく柔和な笑顔を真面目な無表情へと変える。

知誠「依頼人のお名前は御坂旅掛。 お話はご家族全員の未来に関わります」
美琴「………………」
知誠「恐らく旅掛さんからお母様にご連絡がいっているかと思います。 それを確認されてから明日、もしくは明後日でも全然
    構いません。 ですがこの件は必須です。 必ず『学園都市に帰られる前』までにお願いします。 あ、場合にも依ります
    が、お時間はさほど取らせないと思いますよ」
美琴「もしそれを無視したら? 正月ですら娘に顔を見せない仕事馬鹿の言うことを思春期の女の子が素直に聞くと思う?」

 その言葉と美琴の無関心そうな表情に、知誠は苦い顔を見せる。

知誠「お言葉ですが、美琴さんは現在、学園都市内での立場が相当悪い事を認識しておられますよね? 」
美琴「……………それが?」

 一度は最悪な方法で学園都市を無理矢理抜けだし、戻ってからも学園都市の闇に踏み込んできたのだ。 学園都市内で立場が
不安定になっているのは当然の結果であった。
 それでも大してあからさまな攻撃が加えられないのはレベル5を処理するリスクの問題か、はたまた利用価値がまだあるのか、
誰かが未然に防いでいるのか。
 ただいずれにせよ、彼女自身にとってはそれ自体が些末な問題でしかないのもまた事実である。
 何故なら美琴自身よりも上条当麻の立場の方がさらに危険である事を知っているからだ。

知誠「そんな状況の美琴さんが何故正月に約一週間もの帰省を許されたか、不思議に思われませんでしたか?」

 確かに美琴は正直かなり駄目元で帰省の申請をした。
 約一週間という期間も適当に設定した物だ。
 だから、やけにあっさり通った時は驚いた。

美琴(何か裏があると思ってたけど…………アイツか)

 世界に足りないものを提案する事で、暴力に頼らずに世界をより良い方向へ導いていく事を生業とする男、御坂旅掛。
 彼ならば学園都市内部に働きかけて娘の帰省を促すくらい可能かもしれない。

知誠「お父様のお気持ちも少しは察してあげて下さい。 ……………なーんて、はは、駄目ですね。 これでは学園都市に居る
    自分の娘へ言いたいことを他人の娘さんに押しつけているようなものです。 すみません忘れて下さい」
当麻「娘?」
知誠「ええ、美琴さんと同じエレクトロマスターなんですよ。 うちの出版社の上層部の子供は全員学園都市に預けてましてね、
    まあ悪く言えば人質です。 っと話が逸れました。 美琴さんにはご納得して頂いた後、明後日までにご連絡して頂きく
    として、できれば当麻君には今日中に少しお話ししておきたい事があるのですが、よろしいですか? 時間は20分程度
    だと思います」
当麻「っつーか、俺への話って何だよ」
知誠「全然大した話ではないですよ。 ええ、まあその………………『疫病神』についてね」
当麻「……………………」
美琴「なに??」

 ほとんど表情には出さないが、上条当麻は覚えている。
 『疫病神』という単語を聞いたのは、エンゼルフォールの最中、上条刀夜の口からだった。
 小学校へ入る前、上条当麻が世間から付けられたあだ名。 記憶のない本人とは違い、父にとっては最悪のワードだろう。
 知誠の思惑は計れない。 口からそれまでにない不穏な単語が出た後も表情に変化はなかった。

当麻「………………良いですよ」
美琴「ちょ、アンタ何言ってんのよ!?」

 美琴は突然現れたお邪魔虫に当然上条も怒り心頭だろうと思っていたので、その言葉に驚いてしまう。
 しかし上条は取り合わない。

当麻「ただその代わり、一個お願いを聞いてくれねえか?」
知誠「何でしょう?」
当麻「傘を、買ってきて欲しい」

 まるでお願いのようではなく、取引でもしているかのように表情から色を消して無機質な声を放つ。

知誠「……なるほど。 お安い御用です」

 そう言うと知誠は再び傘を差し、やや小降りになった雨の中へ消えていった。
 見送った後、美琴が早速噛付く。

美琴「…………どういうつもり?」
当麻「どういうって、傘があればお前だけでも先に帰れるだろ? 顔も隠しやすいしな」
美琴「そういう話じゃなくて!」
当麻「何だよ。 昔の知り合いと話に花咲かせちゃ駄目なのか? どうせもう帰る予定なんだし」
美琴「…………なら、疫病神って何なの?」
当麻「さぁ? 神社の異能グッズでもぶっ壊して欲しい………とかじゃねーかな」

 上条は目は笑わずに、口調だけ戯けて言う。
 そんな話じゃないのは分かっているのでこれは冗談と言うよりウソだ。

美琴「アンタ、また一人で事件に巻き込まれるつもり? どうしてもって言うなら私も連れて行きなさいよね」
当麻「二人で話したいっつってただろ? いいから風邪引きそうなお前はとりあえず母さん達と合流して早めに帰りなさい!
    そしてパンツ穿きなさい!!」
美琴「なっ、ばっ、そそ、それは言うな!!」

 美琴はもじもじと上条から体の一部を隠すような体勢を取る。
 そんなポーズをすると上条的には余計意識してしまうから逆効果としか思えない。
 どうせレギンスか何か穿いているだろうし、例え穿いていないとしても着物は冬用の物だ。 濡れたところで透けて見えるわけ
もない。
 もちろん意識していること自体を気取られるようなリアクションはしないよう気をつける。

当麻「心配なら途中で電話してくれば良いだろ? 上条さんはお前が風邪引いたりなんかしたら情けなくて泣いちゃいますぞ?」
美琴「………………………」

 美琴としてはそれ以上追及することも出来るが、それはそれで上条がまた何も言ってくれなくなりそうで怖い。
 ここら辺が引き際かもしれない。

当麻「つーか、お前の方は何なんだ? 親父さんがどうかしたのか? お前の立場が危ういって初耳だぞ」
美琴「知らないわよあんなヤツの事なんか。 それに立場が危ういってのはアンタの方が遥かに上だからこっちの事なんて心配
    すんなっての」
当麻「………………………」
美琴「………………………」

 何となく、二人はほとんど同時に溜息を付いてしまう。
 先程『自分の方が素直に話せる』と言い合っていたばかりだったのを思いだして、情けなくなったのだ。

当麻(これのどこが素直だ)
美琴(人の事言えないわね)

 ただし自覚したからと言って全てを話せるわけではもちろん無い。
 相手の悩みは知りたいのに、自分の悩みは言いたくないという矛盾が二人を苦悩させる。
 何でも言い合える間柄、いやむしろ性格になれる日はいつか来るのだろうか。
 二人はそれ以上話すと、また隠していることが露呈しそうなのが少し怖くて押し黙ってしまった。


 ◆


 数分後、知誠はビニール製ではない普通の傘を二本携えて戻ってきた。
 代金は奢りでいいとのこと。

美琴「それじゃ、アンタが言うから『し・か・た・な・く』帰るけど、電話掛けるからちゃんと出なさいよ?」
当麻「分かってるって」

 美琴は一度だけ知誠を睨むと、上条達に背を向けて下り階段の方へ歩き出す。 場所は知誠から聞いていた。
 上条はその背中を黙って見送る。
 というかむしろ途中で妙な動きを見せないか注視した。

 結局美琴は素直に階段を下りていき、その薄暗い場所には上条と知誠だけが残される。

当麻「話すんなら、どっか座れるところにでも行くか?」
知誠「いや、ここで良い」

 知誠は改めて軒下に入り、傘を畳むため前に倒す。 と、その状態でふと動きが止まった。
 上条からは傘によって彼の体がほとんど隠れる。

知誠「ところで、もう一度確認なんだが、君は本当に僕を覚えていないのか?」
当麻「あ、えっと、はい。 何というか、申し訳なさでいっぱいです」

 今更ウソを付く事も不可能なので素直に答える。
 しかし知誠としてはどうにか思いだして欲しいようだ。

知誠「本当に? ほら、君が小学校に上がる1年くらい前、ここからもそれほど離れていない学園都市銀行の支店で会ったんだが」
当麻「…………ホント、ごめんなさい」
知誠「そうか。 残念だな」

 知誠は改めて動き出し、傘を完全に畳む。
 余りにも緩慢な日常的動作だったので、上条は数秒の間、知誠の手に握られた物が何であるか分からなかった。

知誠「動かない方が良い。 脅しではない」

 そう言うと知誠は大股で一歩前へ踏み出し、上条を突き飛ばす。
 体が木造の壁へと叩きつけられる。

当麻「がァッ!?」

 さらに右足を踏まれ、右腕を押さえられ、その金属を腹に押し当てられる。
 知誠は明らかにその動きに慣れていた。

知誠「なぁ、テメェは」

 更にそのままスライドさせ上条の顎まで持ってくる。
 金属のひんやりした感触に急激に現実を突きつけられる。
 上条の戦闘モードにスイッチが入るが、既に遅い。

知誠「命の恩人の事も、そいつの妻を殺したことも忘れたってのか? 疫病神にとってはその程度なのか? ア゛ァ!?」
当麻「ッ??!!」

 見下ろす憤怒の形相から出たその言葉に、上条は顎に銃を突きつけられている事も忘れるほどの衝撃を受ける。

当麻(恩人……妻……殺!?)

 混乱と不安と恐怖と冷静が同時に押し寄せ頭が爆発しそうになる。

当麻(だって、会ったのは、小学校前って………。 それに俺…………人を殺…………)

 しかし思い浮かんだ推測や主張を、すぐに別の自分が全否定する。
 上条は記憶喪失だ。
 自分がどういう人間だったのかも分からない。
 自分が他人にどれだけ迷惑をかけたのかも分からない。
 自分が誰を何回殴ったのかも分からない。
 自分が人を何人殺したのかだって―――――
 結局全てに確証は持てない。
 それに心のどこかで恐れていた。
 いつか過去の自分を恨む人間が現れるのではないかと。
 覚えてもいないのに、自分がやった責任をまざまざと突きつけられるのではないかと。

当麻(それでも、だからって………、これはねーだろ!?)

 上条の心の全てを不安という闇が覆う。
 彼は『上条当麻』が分からなくなる。
 知誠はそれを生気のない目で見下していた。

知誠「ははは。 何か、言えよ。 善人面して詫びるとか、悪人面して開き直るとかよぉ!? どうせ幻想殺しにこの状況を打開
    する手立てはねぇだろ? こんな場所じゃ助けも入らねぇ」
当麻「…………………」

 図星だった。
 異能が絡まず、上条より二回りも体格の良い人間に押さえつけられ、銃を突きつけられる。 さらに誰の助けも入る要素が無く、
守る者もなく、心の弱い所を突かれる。 この状況は幻想殺しにとって一つの最悪パターンを意味する。
 口ぶりから察するにそれを見越しての事なのだろう。

当麻「…………覚えて…………無い」

 それは単なる事実。
 なのに、上条の胸は己の言葉にズキンと痛む。
 今自分に銃口を向けている相手をおもんばかってではない。
 『俺には昔の自分は関係無い』と言っているようで、今までの行動が全てウソに思えてきて、どうしようもないのだ。

知誠「ははは………………………………、死ね」

 引き金を引こうとする。

当麻「ッ!?」

 上条は咄嗟に空いている左手で銃口を逸らした。
 しかしそれは間違いだったらしい。
 わざわざ空けている左手の攻撃が避けられないわけがない。
 グラッと視界が揺れた数瞬後、顎と鳩尾に一発ずつ入れられた事にようやく気付く。
 朦朧とする意識の中、先程の冷たい感触が今度は額へ押しつけられる。

知誠「地獄で詫びろ」

 唸るような低い声と共に、引き金が引かれた。


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