第8章 帰省1日目 情報屋
1月2日 PM6:44 雨
上条は散々走った。
両手に美琴を抱えているなんて忘れさせるような足の速さで、雨の中を散々駆けずり回った。
そして器用にも、走りながら幾度となく火に油を注ぎまくったらしい。 上条がよく理解しない内に、追跡者の怒りのボルテージ
はどんどん増していった。
結果、携帯で情報をやり取りする集団に囲い込まれたり、人混みの中自転車を持ち出す馬鹿に説教しながら逃げたり、何故か異常
に足が速いツインテールの女子小学生(先程フラグを立てたらしい)に執拗に追跡されたりしたわけだが、全てをその逃げ足の速さ
で振り切り続けた。
やがて体力が限界に差し掛かった上条は、一か八か追っ手の裏をかき、急斜面の林を死ぬ気で登った挙げ句、どことも分からない
神社の境内へと飛び込こむ。
まさか女の子一人抱き抱える状態で、キツイ坂道を選択するとは誰も思うまい。 と言う発想だ。
とは言っても登った先にも参拝客は大量に居た。
雨は未だ止みそうにないが、今日は新年2日目である。 白い布が敷かれた大きな賽銭箱の前には未だ長い列が出来ていた。
上条は仕方なく人気の少ない場所を縫い、コソコソと境内の奥へ進む。
奥は正面からはほぼ死角になる上、そのまま進んでも柵と数メートルの崖しか無い袋小路であり、誰も寄りつかないようだった。
さらにその周辺は砂利が敷かれていて、近づく者があれば音で分かるなど、隠れるには色々都合が良い。
上条は慎重を期すため、そこからより一層人気のない、本殿と少し離れた建物へと忍び足で近寄る。
二回りほど小さい小屋のような建物は本殿と同じくらいの古さであるようだが、庇が長く、二人くらいなら余裕で雨宿りする事
が可能であった。
上条は美琴の体を足からゆっくり下ろしてやり、周囲をキョロキョロと見渡す。 そして追ってくる者が居ないのを確認すると、
ようやく全身の力を抜いて少し湿った石畳の上にへたり込んだ。
土埃が付いて汚れそうだったがもはやどうでもいい。
ゼーゼーと肩で息をすることで精一杯である。
両手に美琴を抱えているなんて忘れさせるような足の速さで、雨の中を散々駆けずり回った。
そして器用にも、走りながら幾度となく火に油を注ぎまくったらしい。 上条がよく理解しない内に、追跡者の怒りのボルテージ
はどんどん増していった。
結果、携帯で情報をやり取りする集団に囲い込まれたり、人混みの中自転車を持ち出す馬鹿に説教しながら逃げたり、何故か異常
に足が速いツインテールの女子小学生(先程フラグを立てたらしい)に執拗に追跡されたりしたわけだが、全てをその逃げ足の速さ
で振り切り続けた。
やがて体力が限界に差し掛かった上条は、一か八か追っ手の裏をかき、急斜面の林を死ぬ気で登った挙げ句、どことも分からない
神社の境内へと飛び込こむ。
まさか女の子一人抱き抱える状態で、キツイ坂道を選択するとは誰も思うまい。 と言う発想だ。
とは言っても登った先にも参拝客は大量に居た。
雨は未だ止みそうにないが、今日は新年2日目である。 白い布が敷かれた大きな賽銭箱の前には未だ長い列が出来ていた。
上条は仕方なく人気の少ない場所を縫い、コソコソと境内の奥へ進む。
奥は正面からはほぼ死角になる上、そのまま進んでも柵と数メートルの崖しか無い袋小路であり、誰も寄りつかないようだった。
さらにその周辺は砂利が敷かれていて、近づく者があれば音で分かるなど、隠れるには色々都合が良い。
上条は慎重を期すため、そこからより一層人気のない、本殿と少し離れた建物へと忍び足で近寄る。
二回りほど小さい小屋のような建物は本殿と同じくらいの古さであるようだが、庇が長く、二人くらいなら余裕で雨宿りする事
が可能であった。
上条は美琴の体を足からゆっくり下ろしてやり、周囲をキョロキョロと見渡す。 そして追ってくる者が居ないのを確認すると、
ようやく全身の力を抜いて少し湿った石畳の上にへたり込んだ。
土埃が付いて汚れそうだったがもはやどうでもいい。
ゼーゼーと肩で息をすることで精一杯である。
当麻「うだー! も、もう駄目だ、走れねー」
美琴「ホントお疲れ様。 何とか撒いたみたいね。 まだ油断は禁物だけど」
美琴「ホントお疲れ様。 何とか撒いたみたいね。 まだ油断は禁物だけど」
美琴は立ったまま木造の壁に身を預けると、長い振袖やマフラーを絞った。
よく吸った雨水がボタボタと石畳に降り注ぎ染み込んでいくが、その音は雨音によって掻き消される。
もちろん幻想殺しは既に美琴から離れている。
お姫様抱っこで一度は完全にふにゃふにゃになったが、必死の形相で逃げる上条を見て『これではいけない』と思い、どうにか
こうにか立ち直ったのだった。
よく吸った雨水がボタボタと石畳に降り注ぎ染み込んでいくが、その音は雨音によって掻き消される。
もちろん幻想殺しは既に美琴から離れている。
お姫様抱っこで一度は完全にふにゃふにゃになったが、必死の形相で逃げる上条を見て『これではいけない』と思い、どうにか
こうにか立ち直ったのだった。
当麻「ハァ、ハァ……………はぁ、あーあー。 着物、結局汚れちまったな」
大雨の中を走ってきたおかげで二人は全身ずぶ濡れであった。
バケツで思い切り水を被ってもここまでは濡れないだろう。
何度頭を振っても髪の先から雫がポタポタと垂れてくる。
バケツで思い切り水を被ってもここまでは濡れないだろう。
何度頭を振っても髪の先から雫がポタポタと垂れてくる。
美琴「アンタね、自分の方が酷い有様なのに他人の心配、なんか、してん………ックシュッ!!」
当麻「………風邪引いちまいそうだな。 お前の能力って直接体を温めるとかできないんだっけ?」
当麻「………風邪引いちまいそうだな。 お前の能力って直接体を温めるとかできないんだっけ?」
上条は適当に思いついた事を尋ねながら気だるそうに立ち上がる。
水を吸って随分と重くなった自分のジャケットを脱ぎ、水分を追い出そうとバサバサと振ってみる。
しかしそこから発生した風が体を撫でて余計に冷える事が分かると、身をすくめ手を止めてしまった。
水を吸って随分と重くなった自分のジャケットを脱ぎ、水分を追い出そうとバサバサと振ってみる。
しかしそこから発生した風が体を撫でて余計に冷える事が分かると、身をすくめ手を止めてしまった。
美琴「ちょっと、もう少し向こうでやりなさいよ」
当麻「あ、かかったか? 悪ぃ」
美琴「直接体内の電気を操るとか、それで熱を発生させるとかって普通の学校じゃほとんど禁止されてるでしょ? いくら私だって
そんなに慣れてないわよ。 生死に関わる緊急事態だとかならともかく、このくらいならお勧めはしない。 アンタの右手に
触れて誤作動しても良いって言うならやってもいいけどね」
当麻「あ、かかったか? 悪ぃ」
美琴「直接体内の電気を操るとか、それで熱を発生させるとかって普通の学校じゃほとんど禁止されてるでしょ? いくら私だって
そんなに慣れてないわよ。 生死に関わる緊急事態だとかならともかく、このくらいならお勧めはしない。 アンタの右手に
触れて誤作動しても良いって言うならやってもいいけどね」
実際は美琴自身の体限定でなら難なくこなせるのだが、それは敢えて言わない。
自分だけ暖まるなんて出来そうにないし、嘘偽りなく緊急事態以外はやるべきではないと考えているのだ。
人間は感覚や感情などを含め、様々な制御を電気信号によって行っている。
それを自在に操るということは、学園都市で密かに流通している強力なドラッグに手を染める以上に危険な意味を持つ。
いくらパーソナルリアリティを極めた美琴とは言え、進んでその堕落の一端に触れるような真似はしたくない。
自分だけ暖まるなんて出来そうにないし、嘘偽りなく緊急事態以外はやるべきではないと考えているのだ。
人間は感覚や感情などを含め、様々な制御を電気信号によって行っている。
それを自在に操るということは、学園都市で密かに流通している強力なドラッグに手を染める以上に危険な意味を持つ。
いくらパーソナルリアリティを極めた美琴とは言え、進んでその堕落の一端に触れるような真似はしたくない。
当麻「だよなー。 じゃあ昼やってたように乾かすしかねーか」
美琴「そうなんだけど、これだけ濡れてたらさすがに時間掛かるわね。 水を分解させて高速乾燥する事も出来るには出来るけど、
バチバチ言わせてまたばれたら面倒だし」
美琴「そうなんだけど、これだけ濡れてたらさすがに時間掛かるわね。 水を分解させて高速乾燥する事も出来るには出来るけど、
バチバチ言わせてまたばれたら面倒だし」
美琴は困ったように首を振る。
先程のような事になると、またこの雨の中走るはめになるかもしれない(主に上条が)。
体力的にも精神的にもそんな余裕はないだろうし、乾かした意味もなくなってしまうので本末転倒である。
先程のような事になると、またこの雨の中走るはめになるかもしれない(主に上条が)。
体力的にも精神的にもそんな余裕はないだろうし、乾かした意味もなくなってしまうので本末転倒である。
美琴「ま、でもゆっくりやるわよ。 何より寒いしね」
二人とも先程から歯の根が合っていない。 それほど冬の雨は冷たかった。
傘がないのでそもそもそこから出て行くことも躊躇われる。
詳細な場所が分かれば美鈴達に迎えに来てもらう事も出来るが、今すぐ動くとまた見つかるかもしれない。
結局ゆっくり服を乾かして、雨が弱まるのを待ってから行動するのが一番得策だろう。
そう結論づけると、美琴はまず携帯で美鈴達に雨宿りをしている旨などをメールで伝えた。
傘がないのでそもそもそこから出て行くことも躊躇われる。
詳細な場所が分かれば美鈴達に迎えに来てもらう事も出来るが、今すぐ動くとまた見つかるかもしれない。
結局ゆっくり服を乾かして、雨が弱まるのを待ってから行動するのが一番得策だろう。
そう結論づけると、美琴はまず携帯で美鈴達に雨宿りをしている旨などをメールで伝えた。
美琴「ちょろっと、アンタこっち。 そう、そこに立ってて」
その後上条を自分の右側に誘導し、幻想殺しや体に能力が触れないよう注意して丁寧に服の水を蒸発させ始める。
当麻「ん、何かピリピリするな。 電気マッサージみたい」
美琴「制御を間違うとビリビリするわよ? 出来るだけじっとしてなさい」
当麻「……はい」
美琴「制御を間違うとビリビリするわよ? 出来るだけじっとしてなさい」
当麻「……はい」
シューという音と共に、徐々に二人の体から湯気が立ちのぼり始める。
見た目はまるで温泉にでも入っているような感じだが、能力を極力抑えている上に、水が気化する際に熱を奪うのでそれほど
温かくはない。
見た目はまるで温泉にでも入っているような感じだが、能力を極力抑えている上に、水が気化する際に熱を奪うのでそれほど
温かくはない。
美琴「クシュッ!! ……ックシュッ!! ……うぅ」
当麻「………………」
当麻「………………」
美琴はおもむろに小さいバッグから可愛らしい猫柄のポケットティッシュケースを取り出してみる。 しかし中のティッシュが
完全に湿ってグチョグチョになっている事が分かると、静かにそれを戻し、ズズッと鼻をすすった。
上条の上着ポケットに入っているティッシュが同じ運命なのは言うまでもないだろう。
寒いのか、なんて訊くまでもない。 今は1月で、日は既に落ち、天気は雨、服はびしょ濡れである。
このままじっとしていたら凍死できそうなくらいに寒い。
現に美琴は相変わらず歯をカチカチと鳴らしながら体を震わせている。
上条はどうにか美琴を暖める方法は無いものかと考えたが、暖かい場所を求め彷徨う案は先程却下した。
それが無かったとしても、そもそも皆考える事は同じだろう。 そういった温かい場所が空いているとも思えない。
何よりこの場所は屋台から遠く離れているに違いなかった。
発想を変えて自分のジャケットを掛けてやる事も考えたが、そのジャケット自体がまだ濡れているから効果は余り期待できない。
完全に湿ってグチョグチョになっている事が分かると、静かにそれを戻し、ズズッと鼻をすすった。
上条の上着ポケットに入っているティッシュが同じ運命なのは言うまでもないだろう。
寒いのか、なんて訊くまでもない。 今は1月で、日は既に落ち、天気は雨、服はびしょ濡れである。
このままじっとしていたら凍死できそうなくらいに寒い。
現に美琴は相変わらず歯をカチカチと鳴らしながら体を震わせている。
上条はどうにか美琴を暖める方法は無いものかと考えたが、暖かい場所を求め彷徨う案は先程却下した。
それが無かったとしても、そもそも皆考える事は同じだろう。 そういった温かい場所が空いているとも思えない。
何よりこの場所は屋台から遠く離れているに違いなかった。
発想を変えて自分のジャケットを掛けてやる事も考えたが、そのジャケット自体がまだ濡れているから効果は余り期待できない。
当麻(つーことは、残る選択肢は一つ……だよな?)
上条は心の中で一度言い訳すると、ジリジリと美琴の方へにじり寄る。
そーっと左腕を美琴の背中から回し、肩を抱こうとした―――――が、
そーっと左腕を美琴の背中から回し、肩を抱こうとした―――――が、
当麻「痛っつ!!」
美琴「ん?」
美琴「ん?」
左手から電気がビリッと流れ、驚いて手を離してしまう。
美琴「何馬鹿なことやってんの? 服に電気流してるんだから当たり前でしょ」
当麻「ぐ……………そうだった」
当麻「ぐ……………そうだった」
感電してビリビリ痺れる左手をブラブラと振って反省する。
下心は無かったつもりなのに、おいたをした罰を受けたようで何だか非常に悔しい。
右手ならば肩を抱くことは出来るだろうが、そうすると乾燥作業が止まってしまう。
結局、上条に美琴の寒さを和らげる術はもう残されていないようだ。
下心は無かったつもりなのに、おいたをした罰を受けたようで何だか非常に悔しい。
右手ならば肩を抱くことは出来るだろうが、そうすると乾燥作業が止まってしまう。
結局、上条に美琴の寒さを和らげる術はもう残されていないようだ。
美琴「さ、寒いなら素直にそう言いなさいよね! まったく」
ところが、今度は美琴の方から寄り添い手を繋いできた。
若干残念な気分でいた上条は少し驚く。
肌と肌、服と服は触れてもオーケーなのか、それとも調節でもしているのかもしれない。
若干残念な気分でいた上条は少し驚く。
肌と肌、服と服は触れてもオーケーなのか、それとも調節でもしているのかもしれない。
当麻「いや、あのぅ……………………………えーっと、はい」
結果オーライなので出かけた言い訳を悔しさと共に飲み込む。
それに実際上条の方もかなり楽になった。
接しているのはせいぜい体の側面と手のひらだけであるのだが、全身冷え切っているためかそれくらいの小さな温もりでも断然
の違いがある。
二人の体温で徐々に熱を帯びた血液が全身をくまなく廻るのが分かる。
まるで相手から少しずつエネルギーを注入されているかのようだ。
気のせいか、体の中心からもポカポカと沸き上がるものを感じる。
それに実際上条の方もかなり楽になった。
接しているのはせいぜい体の側面と手のひらだけであるのだが、全身冷え切っているためかそれくらいの小さな温もりでも断然
の違いがある。
二人の体温で徐々に熱を帯びた血液が全身をくまなく廻るのが分かる。
まるで相手から少しずつエネルギーを注入されているかのようだ。
気のせいか、体の中心からもポカポカと沸き上がるものを感じる。
当麻(ったく、さっきは近づくだけで嫌がってたのに)
お姫様抱っこで慣れたのだろうか。
あるいは寒そうにしている上条のため我慢しているのだろうか。
あるいは寒そうにしている上条のため我慢しているのだろうか。
当麻(まさかとは思うが誰にも見られてませんよねえ?)
上条はキョロキョロと辺りを見渡す。
彼は先程酷い失態を演じてしまったせいで、こういう所を誰かに目撃される事を恐れていた。
とは言っても幸いその場所は薄暗く、ライトアップされている本殿の正面付近に居る者達は例えこちらを見ているようでも
二人に気付いている様子は全く無かった。
まるで二つの世界が切り離されたかのようだ。
それを再度確認して安堵する。
彼は先程酷い失態を演じてしまったせいで、こういう所を誰かに目撃される事を恐れていた。
とは言っても幸いその場所は薄暗く、ライトアップされている本殿の正面付近に居る者達は例えこちらを見ているようでも
二人に気付いている様子は全く無かった。
まるで二つの世界が切り離されたかのようだ。
それを再度確認して安堵する。
当麻(気付かれてはいないようだけど、たまに見られてる感じがして落ち着かないんだよなあ)
距離が近くなって機微を察することが出来るようになったからか、美琴もそんな上条の様子に気が付いた。
美琴(何脅えてんだか。 相変わらずコイツは色んな自覚が足りないんじゃないかしらね)
最強の電撃使いたる彼女は、体から常に出ている微弱な電磁波の反射によって周囲の物を察知するレーダー能力を持っている。
言うなればそれは全方位を見渡す高性能な第三の眼のようなもので、近づく者が居たら足音を聞く前に気付くことも可能である。
だから隣のツンツン馬鹿のように脅える必要は全く無い。
それを上条に説明してやって不安を取り除くことも出来る。 が、彼女としては、何となく優位に立っているこの状況がちょっ
とだけ愉快なものに思えた。
敢えて教えない方が面白いかもしれない。
徐々に上条をからかってみたいという、小さな悪戯心が芽生え始める。
言うなればそれは全方位を見渡す高性能な第三の眼のようなもので、近づく者が居たら足音を聞く前に気付くことも可能である。
だから隣のツンツン馬鹿のように脅える必要は全く無い。
それを上条に説明してやって不安を取り除くことも出来る。 が、彼女としては、何となく優位に立っているこの状況がちょっ
とだけ愉快なものに思えた。
敢えて教えない方が面白いかもしれない。
徐々に上条をからかってみたいという、小さな悪戯心が芽生え始める。
美琴「ねえ、さっきから何ビクビクしてんのよ。 心配事でもあるわけ?」
心配しているようでいて、その目は明らかに笑っている。
当麻「へ? そ、そりゃお前、さっきの二の舞だけは避けたいだろ」
美琴「あーあー。 そっかそっか、そりゃそうよね。 アンタ物凄い事言ってたしね。 確かにあれをもう一度叫ぶとなると当分心
に深い傷を負いかねないわね」
美琴「あーあー。 そっかそっか、そりゃそうよね。 アンタ物凄い事言ってたしね。 確かにあれをもう一度叫ぶとなると当分心
に深い傷を負いかねないわね」
美琴は一人納得したように頷く。
当麻「…………な、なな、ななな何のことでせう? か、上条さんにはさっぱりですが、とりあえずこの話は止めた方が良い気が
しますよ?」
しますよ?」
とぼけた言葉とは裏腹に、顔面にはダラダラと汗が流れる。
体感温度が一瞬で2、3度下がった。
体感温度が一瞬で2、3度下がった。
美琴「んふ。 『俺の美琴に気安く触ってんじゃねー』だっけ? うぷぷっ、何それもしかして独占欲?」
当麻「~~~~ッ!!??」
当麻「~~~~ッ!!??」
上条は叫び出したいのを必死に抑えて身悶えする。
暗くて見えにくいが、立ちのぼる湯気のうちのいくらかはツンツン頭から出ているのではないかと思わせるほど、上条の顔は
真っ赤に染まっていた。
顔から火が出るという表現は決して誇張されたものではないと今なら主張できそうである。
何か反論しようとするが中々上手く口が回らない。 あうあう……と言葉にならない言葉ばかりが出てくる。
まったくトラウマになりそうな台詞を吐いてしまったとつくづく後悔するが、もう大分遅い。
暗くて見えにくいが、立ちのぼる湯気のうちのいくらかはツンツン頭から出ているのではないかと思わせるほど、上条の顔は
真っ赤に染まっていた。
顔から火が出るという表現は決して誇張されたものではないと今なら主張できそうである。
何か反論しようとするが中々上手く口が回らない。 あうあう……と言葉にならない言葉ばかりが出てくる。
まったくトラウマになりそうな台詞を吐いてしまったとつくづく後悔するが、もう大分遅い。
美琴(な、何コイツ……………かわいいッ)
そのからかい攻撃だけで十分上条の心は大ダメージを負っているのに、その様子が逆に美琴を調子づかせてしまう。
死ぬほど照れている上条を見るのはぶっちゃけ楽しいし、あの台詞は上条と同じくらいに美琴のテンションを上げているのだ。
美琴は顔のニヤケが止められないのを何とか隠しながら続ける。
死ぬほど照れている上条を見るのはぶっちゃけ楽しいし、あの台詞は上条と同じくらいに美琴のテンションを上げているのだ。
美琴は顔のニヤケが止められないのを何とか隠しながら続ける。
美琴「大体アンタねぇ、自分では大勢の女の子にちょっかい出しておいて、私の体は誰にも触らせたくないっていくら何でも虫
が良すぎるんじゃないかしら?」
当麻「ちょ、ちょっと待て! そうじゃねーって………ほら、あ、あああ、あの時は痴漢が出たんだと思っただけであってですね」
美琴「アレがそんな時に吐く台詞? 『俺の美琴に…』」
当麻「わー馬鹿復唱すんな!! ………あ、慌てたんだよ!! もしかしたらお前がキレて攻撃するかと思って」
美琴「ふーん。 何だ、そっか」
当麻「そ、そうそう」
美琴「じゃあ、実際に私がアンタ以外の男と手を繋いだり並んで歩いてるくらいじゃ文句ないわけね?」
当麻「うぐッ…………………………………と、時と場合に依る、かも?」
が良すぎるんじゃないかしら?」
当麻「ちょ、ちょっと待て! そうじゃねーって………ほら、あ、あああ、あの時は痴漢が出たんだと思っただけであってですね」
美琴「アレがそんな時に吐く台詞? 『俺の美琴に…』」
当麻「わー馬鹿復唱すんな!! ………あ、慌てたんだよ!! もしかしたらお前がキレて攻撃するかと思って」
美琴「ふーん。 何だ、そっか」
当麻「そ、そうそう」
美琴「じゃあ、実際に私がアンタ以外の男と手を繋いだり並んで歩いてるくらいじゃ文句ないわけね?」
当麻「うぐッ…………………………………と、時と場合に依る、かも?」
上条だってこれまで自分の意志にかかわらず色んな女性と手は繋いだ気がする。
なら自分だけそこで文句を言うのはおかしいと言うのにも納得せざるを得ないのかもしれない。
なら自分だけそこで文句を言うのはおかしいと言うのにも納得せざるを得ないのかもしれない。
美琴「ふーん」
美琴にとってその回答はつまらない。
妙に物分かりが良いより、がむしゃらに否定して欲しかった。
だからもう少し過激な事を言ってみたくなる。
妙に物分かりが良いより、がむしゃらに否定して欲しかった。
だからもう少し過激な事を言ってみたくなる。
美琴「それじゃあ私が過去に誰かと付き合ってたとか、何度かキスしていたとしても大した問題じゃ…」
当麻「したことあんのか!!?」
当麻「したことあんのか!!?」
上条は表情を豹変させ、右手で美琴の肩を掴み顔を真っ直ぐに見る。
幻想殺しに触れられたことで服の乾燥が止まる。 遠くの喧噪がよく聞こえてきた。
幻想殺しに触れられたことで服の乾燥が止まる。 遠くの喧噪がよく聞こえてきた。
美琴「ちょ、ジョークよジョーク! いくら何でもそこまで絶望的な顔しなくてもいいでしょ!!」
やりすぎた、と思い慌てて取り繕う。
上条は右手は離したものの、未だ心配顔であった。
上条は右手は離したものの、未だ心配顔であった。
当麻「無い、のか?」
美琴「無いわよ!!」
当麻「っつーことは……」
美琴「そうよ、クリスマスイブのアレが私のファーストキスよ!! そんな安いもんじゃないんだからそこんところをちゃんと理解
しておきなさいよねコラ!?」
当麻「……そっか。 同じか、俺と」
美琴「って、え、アンタも?」
美琴「無いわよ!!」
当麻「っつーことは……」
美琴「そうよ、クリスマスイブのアレが私のファーストキスよ!! そんな安いもんじゃないんだからそこんところをちゃんと理解
しておきなさいよねコラ!?」
当麻「……そっか。 同じか、俺と」
美琴「って、え、アンタも?」
照れを怒りで包み隠した美琴の言葉に、上条はただただホッとする。 その表情は歓喜と言うより苦笑に近い。 何故自分はそん
な顔をしているのだろう?
彼はふと、一定間隔で吐息が漏れる美琴の唇を見つめてしまう。
それは暗がりでも判るほど朱く、さっき食べた綿あめみたいに柔らかで、未だ寒そうに僅かに震えていた。
ずっと見つめていると思わず吸い込まれそうになりそうなその唇が、別の唇を受け入れたのは生涯で二回。 いずれもが上条当麻
のものであるらしい。
その純然さは大きな安堵と同時に、言いようもない不安も運んでくることに彼は気付く。
その理由には彼にもおおよその見当が付いた。
な顔をしているのだろう?
彼はふと、一定間隔で吐息が漏れる美琴の唇を見つめてしまう。
それは暗がりでも判るほど朱く、さっき食べた綿あめみたいに柔らかで、未だ寒そうに僅かに震えていた。
ずっと見つめていると思わず吸い込まれそうになりそうなその唇が、別の唇を受け入れたのは生涯で二回。 いずれもが上条当麻
のものであるらしい。
その純然さは大きな安堵と同時に、言いようもない不安も運んでくることに彼は気付く。
その理由には彼にもおおよその見当が付いた。
当麻「……はは、やっぱ駄目だ。 さっきは思わず死ぬほど恥ずかしいセリフを吐いちまったけど、今でもアレは撤回できる気が
しねえ。 最低だって軽蔑されるかもしれないけど、そこはどうやったって変えられないみたいだ」
美琴「だーかーらー、さっきのは冗談だっつってんでしょ。 その程度で軽蔑だなんてしないわよ。 別に独占欲を抱くことが必ず
しも悪い事ばかりじゃない…………っていうか、むしろ私の方が……………その………………」
しねえ。 最低だって軽蔑されるかもしれないけど、そこはどうやったって変えられないみたいだ」
美琴「だーかーらー、さっきのは冗談だっつってんでしょ。 その程度で軽蔑だなんてしないわよ。 別に独占欲を抱くことが必ず
しも悪い事ばかりじゃない…………っていうか、むしろ私の方が……………その………………」
唇を尖らせながらモゴモゴと何か言いつつ視線を逸らす。
美琴「あ、アンタはそんなくだらない自己嫌悪するよりなら、私に似たような感情を日々抱かせてることを反省してればいーの!」
当麻「ああ悪い悪い悪かった。 それについては何度でも謝りますからお許しくだせぇ、っつーかホントどうにか治せないんで
しょーかこれ!? 愉快なイベントに繋がるわけじゃない駄フラグばっかり起こるし上条さん的にはそこまで楽しい物で
もないんですよ?」
美琴「ホント、さっさと治しなさいよ。 私だって疲れるんだから」
当麻「……………」
当麻「ああ悪い悪い悪かった。 それについては何度でも謝りますからお許しくだせぇ、っつーかホントどうにか治せないんで
しょーかこれ!? 愉快なイベントに繋がるわけじゃない駄フラグばっかり起こるし上条さん的にはそこまで楽しい物で
もないんですよ?」
美琴「ホント、さっさと治しなさいよ。 私だって疲れるんだから」
当麻「……………」
じゃあ電撃なんて撃ってくるなよ。 と言ってみたかったが、逆のパターンを考えてみたら上条だって確かに美琴や相手の男性
に腹を立てるだろう。
に腹を立てるだろう。
当麻(そう考えてみると雷撃の槍やレールガンで攻撃してくるのだってちょっとくらいは理解………………いや、できねぇけど)
それとこれとは話の次元が幾つか違う気がする。
当たらないからと言ってあんな過激なツッコミをする彼女が世界のどこに居るというのだろうか。
上条じゃなかったらもう軽く百回くらいは死んでいる気がする。
当たらないからと言ってあんな過激なツッコミをする彼女が世界のどこに居るというのだろうか。
上条じゃなかったらもう軽く百回くらいは死んでいる気がする。
当麻(でも、逆に考えれば俺以外とは付き合えない、ってことになるのか?)
そう考えて内心喜んだり安心している自分を、他方でもう一人の自分が不思議そうな目で見ている。 そんな感覚に襲われる。
理由ははっきりしないが、もしかしたら上条にとって美琴を手放す事はすでに恐怖にまでなっているのかもしれない。
無意識に握った手に力が籠もる。
理由ははっきりしないが、もしかしたら上条にとって美琴を手放す事はすでに恐怖にまでなっているのかもしれない。
無意識に握った手に力が籠もる。
美琴「?」
それは微弱な変化だったが、握られた方は敏感に反応する。
上条の顔を窺うと、たまに見る、何か考え事をしているような顔をしていた。
彼は普段からヘラヘラしていたり、焦っていたり、怒っていたりと感情を表に出しているようでいて、実際には心の奥底が滅多
に読めないヤツだと美琴は思っている。 そしてこう言う時の上条はより一層読めない。
結局彼の根底にある本心が垣間見えるのは、たまに彼を襲う危機的状況下くらいである。 例えば夏の橋の上や、秋のあの夜の
ように。
美琴はその事にときどき不安になる。
上条の顔を窺うと、たまに見る、何か考え事をしているような顔をしていた。
彼は普段からヘラヘラしていたり、焦っていたり、怒っていたりと感情を表に出しているようでいて、実際には心の奥底が滅多
に読めないヤツだと美琴は思っている。 そしてこう言う時の上条はより一層読めない。
結局彼の根底にある本心が垣間見えるのは、たまに彼を襲う危機的状況下くらいである。 例えば夏の橋の上や、秋のあの夜の
ように。
美琴はその事にときどき不安になる。
美琴「えっと……さっきはからかったりしたけどさ、アンタはもっと普段からあんな風に開けっ広げに話した方がいいんじゃない
かしら? せめて私にだけは」
当麻「ん? 俺は大概本心で話してるつもりだけど? どちらかっつーと普段本音を出さないのはお前の方じゃねーのか?」
美琴「……はあ? 何よそれ」
かしら? せめて私にだけは」
当麻「ん? 俺は大概本心で話してるつもりだけど? どちらかっつーと普段本音を出さないのはお前の方じゃねーのか?」
美琴「……はあ? 何よそれ」
意外な切り返しに困惑する。
当麻「ある人が言ってたんだけどな。 お前の本心を見たこと無いとか、素直なようでいて照れとか演技が混じってるって。
その時は解らなかったけど、最近になって確かにそんな感じもするなーって思えてきたわけで」
美琴「誰が言ってたのよそんなこと。 まあ少しくらい取り繕ってる部分があるのは否定しないけど、アンタよりは素直だと
思っ…………………あ、良いこと思いついた、じゃあこうしない?」
その時は解らなかったけど、最近になって確かにそんな感じもするなーって思えてきたわけで」
美琴「誰が言ってたのよそんなこと。 まあ少しくらい取り繕ってる部分があるのは否定しないけど、アンタよりは素直だと
思っ…………………あ、良いこと思いついた、じゃあこうしない?」
美琴は不敵な笑みを浮かべて上条の顔を覗き込む。
美琴「試しに今から二人で素直になって、お互い思ったこと全て口に出す。 どちらかがギブアップした方の負け。 もちろん
罰ゲーム有り。 どう?」
当麻「どうって…………………多分後悔するだろうからやめた方が良いと思うぞ」
美琴「ふーん。 何だ結局負ける気満々って事じゃない。 さっきも何か考え込んでたみたいだし」
当麻「いや、それとこれとは別だろ? 素直ってのにも限度があるわけでして、世の中には隠した方が良い物もあるんだよ。 凄惨
な事件の内容とか食肉処理場で何が行われているかとか男子高校生の脳内とか!! ウソ発見器の時より酷い事になるのが
見え見えじゃねーか」
美琴「別に私は構わないけど?」
罰ゲーム有り。 どう?」
当麻「どうって…………………多分後悔するだろうからやめた方が良いと思うぞ」
美琴「ふーん。 何だ結局負ける気満々って事じゃない。 さっきも何か考え込んでたみたいだし」
当麻「いや、それとこれとは別だろ? 素直ってのにも限度があるわけでして、世の中には隠した方が良い物もあるんだよ。 凄惨
な事件の内容とか食肉処理場で何が行われているかとか男子高校生の脳内とか!! ウソ発見器の時より酷い事になるのが
見え見えじゃねーか」
美琴「別に私は構わないけど?」
同級生や友人には取り繕っている面があるかもしれない。 とは言っても常盤台の生徒の中では『竹を割ったような性格』だと
言われているし、現状の上条に対してなら親に対してと同等かそれ以上に素直になっていると自負している。
そもそも美琴はことあるごとに上条へ素直に色々喋るよう言っているわけで、もちろんそれは自分にも同様の事を課している
つもりだった。
相手にだけ何でも喋ろと強要するのは対等な関係とは言えないだろう。
さらに上条の方が気後れしているのを見てさらに自信を高める。
これは彼の悩みや不安を聞き出すチャンスだ。 同時に、もっと内心を話す事に慣れてくれたら、などとまで考えていた。
言われているし、現状の上条に対してなら親に対してと同等かそれ以上に素直になっていると自負している。
そもそも美琴はことあるごとに上条へ素直に色々喋るよう言っているわけで、もちろんそれは自分にも同様の事を課している
つもりだった。
相手にだけ何でも喋ろと強要するのは対等な関係とは言えないだろう。
さらに上条の方が気後れしているのを見てさらに自信を高める。
これは彼の悩みや不安を聞き出すチャンスだ。 同時に、もっと内心を話す事に慣れてくれたら、などとまで考えていた。
当麻「どうなっても知らないからな」
美琴「んじゃぁいい訳ね。 行くわよ? ハイよーいスタート!!」
当麻「………ったく、それで何が聞きたいんだ?」
美琴「ん、私からでいいわけ? ならとりあえず、さっきぼーっと考えてたことでも美琴センセーに話してみなさいな。 スッキリ
するかもよ?」
当麻「…………………お言葉ですがセンセー、いきなりパンドラの箱開けるつもりかよ?」
美琴「あらーん? 早くもギブアップ?」
美琴「んじゃぁいい訳ね。 行くわよ? ハイよーいスタート!!」
当麻「………ったく、それで何が聞きたいんだ?」
美琴「ん、私からでいいわけ? ならとりあえず、さっきぼーっと考えてたことでも美琴センセーに話してみなさいな。 スッキリ
するかもよ?」
当麻「…………………お言葉ですがセンセー、いきなりパンドラの箱開けるつもりかよ?」
美琴「あらーん? 早くもギブアップ?」
ちなみに美琴はギブアップして罰ゲームをゲットしたら『思ったこと全て口に出す』ということを強要するつもりである。
どちらにせよ上条に逃げ場はない。
どちらにせよ上条に逃げ場はない。
当麻「『俺は』良いんだけどな。 ……えーっと、さっき考えてたことだろ? 俺がどっかの女子と絡むように、お前がどっかの
男子と絡むのは確かに癪だよなーって思って反省したのが一つ」
美琴「気付くのが遅いわよ」
当麻「でも普段のアノ攻撃はさすがにあんまりだ、って思ったのが一つだな」
美琴「基本的にアンタが悪いんでしょ。 まあちょっと癖になってる感じもするけど、止められる気もしないのよね」
当麻「………前言撤回。 お前ってやっぱ俺に対しては素直すぎ!! ………えー、あと、怒る度に致死的な攻撃するようなら俺
としか付き合えないんじゃねーかなーって心の中でニヤニヤしたのが一つ」
美琴「あ…………………」
男子と絡むのは確かに癪だよなーって思って反省したのが一つ」
美琴「気付くのが遅いわよ」
当麻「でも普段のアノ攻撃はさすがにあんまりだ、って思ったのが一つだな」
美琴「基本的にアンタが悪いんでしょ。 まあちょっと癖になってる感じもするけど、止められる気もしないのよね」
当麻「………前言撤回。 お前ってやっぱ俺に対しては素直すぎ!! ………えー、あと、怒る度に致死的な攻撃するようなら俺
としか付き合えないんじゃねーかなーって心の中でニヤニヤしたのが一つ」
美琴「あ…………………」
美琴は何か言おうとして躊躇うように口を噤んだ。
当麻「ん、ギブアップか?」
美琴「しないわよ! あ………アンタ以外と付き合うなんて、絶対有り得ないって、思っただけ」
当麻「……うわー、すげえ嬉しい。 あと照れて視線泳がす美琴センセー萌えー。 たまにチラチラこちらを見る所なんか高得点
ですぞ。 あ、何か手が熱くなってきた。 もしかして顔も赤い? 漏電だけは勘弁してくださいお願いします」
美琴「…………………確かに素直すぎるのも問題だわ」
当麻「だろ? それで、あとさっき思った事は………………………」
美琴「ん?」
美琴「しないわよ! あ………アンタ以外と付き合うなんて、絶対有り得ないって、思っただけ」
当麻「……うわー、すげえ嬉しい。 あと照れて視線泳がす美琴センセー萌えー。 たまにチラチラこちらを見る所なんか高得点
ですぞ。 あ、何か手が熱くなってきた。 もしかして顔も赤い? 漏電だけは勘弁してくださいお願いします」
美琴「…………………確かに素直すぎるのも問題だわ」
当麻「だろ? それで、あとさっき思った事は………………………」
美琴「ん?」
上条は美琴の顔を見つめる。
当麻「これ、ホントに言っていいのか?」
美琴「な、何よ。 言いなさいよ」
美琴「な、何よ。 言いなさいよ」
美琴は自分の顔の一点を見つめるその瞳にたじろぐ。
当麻「えーっと…………………………まぁ、そうだな」
上条は頭を掻きながら数秒悩むが、やがて意を決する。
当麻「キス、したい」
美琴「んなっ!!?」
当麻「うわー唇が少し青ざめて震えてる寒そうだなー上条さんの唇で温めて差し上げたいなープニプニしてて柔らかそうだなー
今キスしたらラムネ味かなーしかし美琴のヤツ可愛いなチクショーどうやったらキスする流れに持っていけるんだーこん
な場所でなんて嫌がるかもしれねえなーそれにどうせまた邪魔が入るんだろうなー最後にしたのは学生寮だったなー今度
する時は美琴が多少抵抗しても濃厚接吻してやるぞーふへへへへ、ってぎゃー上条さんったら中二女子に何て嫌らしい事
考えてるんだしかも今逃亡中じゃねーか最低野郎だー犬以下だー以下略」
美琴「なななななななななななななあッ!! 何馬鹿なこと考えてんのよ変態じゃないのよ!!」
美琴「んなっ!!?」
当麻「うわー唇が少し青ざめて震えてる寒そうだなー上条さんの唇で温めて差し上げたいなープニプニしてて柔らかそうだなー
今キスしたらラムネ味かなーしかし美琴のヤツ可愛いなチクショーどうやったらキスする流れに持っていけるんだーこん
な場所でなんて嫌がるかもしれねえなーそれにどうせまた邪魔が入るんだろうなー最後にしたのは学生寮だったなー今度
する時は美琴が多少抵抗しても濃厚接吻してやるぞーふへへへへ、ってぎゃー上条さんったら中二女子に何て嫌らしい事
考えてるんだしかも今逃亡中じゃねーか最低野郎だー犬以下だー以下略」
美琴「なななななななななななななあッ!! 何馬鹿なこと考えてんのよ変態じゃないのよ!!」
上条は真面目くさった顔で声も平坦な物であったが、それでも喋っている内に全身の汗腺が開くようにカーッと熱くなるのを
感じた。
暗くて良かったと思える。 顔の色がとんでもないことになっていそうだ。
もちろん美琴の表情については言わずもがなである。
感じた。
暗くて良かったと思える。 顔の色がとんでもないことになっていそうだ。
もちろん美琴の表情については言わずもがなである。
当麻「どうだ! こんな状況でそんなこと考えてるなんてキモいだろ、軽蔑したくなるだろ!? しかしてこれが男子高校生の脳内
なわけです思い知ったか後悔したか!! はいでは今の心境をどうぞー」
美琴「………ッ!?」
なわけです思い知ったか後悔したか!! はいでは今の心境をどうぞー」
美琴「………ッ!?」
誰も気付いていないとは言っても、すぐ近くで大勢の人が行き交っているのがそこからでも十分見える。
しかも先程のことがあるのだ。 普通ならばタイミングを考えない馬鹿と罵るところであろう。
でも駄目だった。
間近で上条に見つめられてそんなことを言われては、抗いようもない不思議な力で自然と彼の体に吸い寄せられるのだ。
しかも先程のことがあるのだ。 普通ならばタイミングを考えない馬鹿と罵るところであろう。
でも駄目だった。
間近で上条に見つめられてそんなことを言われては、抗いようもない不思議な力で自然と彼の体に吸い寄せられるのだ。
美琴「わ、わたわた、私…………………私は………………」
当麻「おい、無理して言わなくても良いんだぞ? 心の広い上条さんは罰ゲームなんて課さないからさ」
当麻「おい、無理して言わなくても良いんだぞ? 心の広い上条さんは罰ゲームなんて課さないからさ」
それでも美琴は続ける。
単純に今の気持ちを伝えたかった。
単純に今の気持ちを伝えたかった。
美琴「軽蔑なんて、できないわよ。 私だって…………アンタの、柔らかい唇が、忘れられなくて…………間近で聞いた、アンタ
の吐息を、何度も何度も思いだして」
の吐息を、何度も何度も思いだして」
美琴の体がフラフラと上条へ近づいていく。
美琴「その………アンタの体に抱き付いて、アンタに強く抱きしめられて…………そのまま、キス…………したくて、したくて、
したくて、したくてしたくてしたくてしたくて」
当麻「わ、分かった。 もう全部分かったから。 全部俺の負けで良いから」
美琴「うん」
したくて、したくてしたくてしたくてしたくて」
当麻「わ、分かった。 もう全部分かったから。 全部俺の負けで良いから」
美琴「うん」
伝わったことに満足すると、それ以上は言わず、ただ瞼を閉じ、全てを受け入れるサインを送る。
人々が発する雑音が雨音に混じってそう遠くない距離に感じる。
まるでその人達に見られているような独特な緊張感や背徳感が体中を走り暴れる。
それでも二人は止まらない。
互いを求め、ただ触れるために近づく。
コツン、と二人が被ったピョン子のお面がぶつかる。
人々が発する雑音が雨音に混じってそう遠くない距離に感じる。
まるでその人達に見られているような独特な緊張感や背徳感が体中を走り暴れる。
それでも二人は止まらない。
互いを求め、ただ触れるために近づく。
コツン、と二人が被ったピョン子のお面がぶつかる。
―――――残り2センチメートル
美琴のレーダーがそう告げた。
しかし同時に当たり前の如く邪魔が入ることを感知する。
彼女は唇を引き、おでこを前に出して上条のおでこにくっつけると、静かに重く息を吐いた。
彼女は唇を引き、おでこを前に出して上条のおでこにくっつけると、静かに重く息を吐いた。
当麻「みこ……ッうあ!?」
美琴は上条の体を、彼が転ばないくらいに抑えた強さで突き飛ばす。
上条は何が何だか分からなくて酷く混乱したが、その数秒後、美琴の背後に一人の男が近づいてくるのに気付き、同じように
溜息を付いた。
二人はその大きめの傘を差した男が通り過ぎるのを祈る。
しかし二人を通り越したところであるのは崖のみである。
男は当然のように真っ直ぐ向かってくると、ようやく目が慣れて二人の姿を確認できたのか笑顔になった。
それでも二人は、まあ物珍しさで寄ってきたファン一人が相手ならば軽くあしらえるだろう、最悪暴れたら美琴の能力で気絶
させてしまえばいい、くらいに物騒な事を考えていた。
しかし男は予想に反して奇妙な事を言い放つ。
上条は何が何だか分からなくて酷く混乱したが、その数秒後、美琴の背後に一人の男が近づいてくるのに気付き、同じように
溜息を付いた。
二人はその大きめの傘を差した男が通り過ぎるのを祈る。
しかし二人を通り越したところであるのは崖のみである。
男は当然のように真っ直ぐ向かってくると、ようやく目が慣れて二人の姿を確認できたのか笑顔になった。
それでも二人は、まあ物珍しさで寄ってきたファン一人が相手ならば軽くあしらえるだろう、最悪暴れたら美琴の能力で気絶
させてしまえばいい、くらいに物騒な事を考えていた。
しかし男は予想に反して奇妙な事を言い放つ。
男「いやいや良かった、やっと見つけることが出来ました。 お久しぶりですね当麻君。 それと初めまして美琴さん」