とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03-1

最終更新:

NwQ12Pw0Fw

- view
だれでも歓迎! 編集


8月16日 彼は幻想を愛でる Sweet Nightmare Prologue


 イギリス、とある教会。只今、深夜1:30過ぎ。4人の人物が輪を作って何かを話している。

「すているはちゃんとあの手紙とうまに渡してくれたかな。ね、かおり?」
「そうですね。私はちゃんと読んでくれてると思いますよ?」
「でも、今頃は不幸に見舞われてその手紙も送れないでいるのかにゃー?」
「そんなこといわないでくださいよぉ」
「んー?そんな五和はあのフラグ男に恋してるんかにゃー?でも、そんなに消極的じゃ何もおきないんだぜい!」
「つちみかどはとうまのこと、そう思ってたんだね。いつわもいつわなんだよ」
「ハハッ!かみやんはかみやんだしな。いつもあいつはフラグ立ててるからにゃー」
「私は…その一人だというのですか?土御門」
「ねーちんは助けてもらっているのにもかかわらず、あんなことやってしまったからな」

 土御門はイギリスに飛んでいた。天草式のメンバーもイギリスにいる。学園都市ではすでに任務もないため、帰ってきている。
とある教会の中で話している4人は、あの不幸男のことで話の花を咲かせている。インデックスの仕事上、本部に行くことになったのがちょうど4か月前。
23学区の国際空港から超音速旅客機で上条が一人で手を振る中別れたのである。その際に、神裂やステイルも同伴して帰国の途についた。
イギリスについてインデックスは数週間眠れないことが続いた。よく眠りよく食べるという印象から遠くかけ離れた彼女の様子に周りが騒然となった。
ある時、インデックスの所属する協会あてに手紙が送られてきた。送り主は、空港で手を振ってくれた人物であった。宛先は『インデックスはじめ、周りの皆さま』。
その手紙には、外国へのメールが規制されているため、手紙で出したと旨が書いてあった。便箋は少しくたびれていて、デザインもいまいちのものであった。
送り主を知るものであればこのような手紙をほほえましく見ているだろう。それ以外の人間では失礼なくらいよれよれで、小汚いものになっていたのだから。
その手紙を読んだインデックスは驚異の食欲を発揮して今はイギリス清教の財政を圧迫している。

 話の中に出てきた不良神父ことステイルはいま、飛行機のなかでお休み中だ。彼がヒースロー空港に着くのは後、13時間後。この時点で上条の変化に知っているのは誰もいない。
ただ、強いて言えば、最大主教(アークビショップ)ローラ=スチュアートと、学園都市の中心アレイスター=クロウリーの2人だけである。

 ほぼ同時刻…学園都市、第7学区。窓のないビル。
「あぁ。始まったようだな。上条当麻。お前の幻想を殺す時が来たようだな」
老若男女聖人囚人何ににも見える風体を持つ逆さになっている人間は口だけに頬笑みを浮かべている。
「あの右手によって魔術と科学のバランスが崩れたのだ。あいつには面白いものを見せてもらった半面、少しがっかりだが――」
静かに、そのビルの中でたたずんでいる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 上条が美琴の鉄壁の防御を授かり、風呂場から戻ってきた。上条が美琴を見たときに変化が起こっていたことに気づく。
美琴は朝、急いで上条の家に来たため、常盤台のときの癖がそのまま高校生になっても抜けていなかった。つまり、ずっと制服でいたのだ。
お嬢様に似合わず髪型はぼさぼさで少し制服も少し崩れた感じ。いつもの美琴だとこういうことはないのだが。
上条のこの一件のおかげで彼女はいま、上条の家のたんすにこっそりとかくしておいた私服に着替えていた。
その彼は美琴の私服を見て驚いたが、その前に自分の体の異変のほうがインパクトが大きいためか冷静にいられた。
上条と入れ替わりに美琴は洗面所に入って鏡を見る。そして、鏡の中の自分に今の思いをぶつけながら髪を整える。


「私って、なんでこんなにいやな奴なんだろう。もう少しやさしくできないの?」
「アンタのためならなんでもしようって決めてたのに。素直になろうと思ってたのに」
「すべてアンタのせい。アンタのせいよ。素直になれないのも、全部全部」
「私はっ!アンタのために、アンタに好きになってもらえるように努力してるのに。なんでわかってくれないのよ」
「確かに、…びりびりしてるのは私。八つ当たりしてるのも私。正直になれないのも全部私なの」
「ねぇ?貴女はわかってくれるでしょ?私があの人を好きな理由を…」


 美琴は、せっかくメイクした顔をぐちゃぐちゃにした。自分に対する悲しみ、不満、かなえられない思いに。
鏡の中の自分に触れようと鏡に左手の中指を近づける。そして、顔を近付ける。自分だけの世界を構築していた。
悲しみの世界…彼女のあこがれた人、守りたい大切な人、傷つけたくない、傷ついてほしくないという思いが詰まった。
一通り自分の言いたいことを言いきった美琴は崩れたメイクを直して、もう一度”一人の女性”に戻って行った。
今の自分にマイナスになるものはそこですべて水に流してしまおうと。 鏡の前でもう一度笑顔を作る。
御坂美琴は一人の女性として、上条当麻という人間に接しようとしていた。決心をして洗面所から出た。


「おっ。遅かったな。どうしたんだ?」
「少しね…考え事してたの」
「珍しいな、お前にしては。相談事なら上条さんにつべこべ考えずに相談しろよ。聞いてやるよ。理由も聞かない。それを俺は聞くだけだからさ」
「考え事ったって大したことないのよ。だから、気にしないでよ」
「だからよ、気になるんだっつの」


 上条は美琴の額を指で軽くつつくとその体を抱き寄せる。といっても上条の体は美琴よりも少し小さい。そのため、彼女の頭だけを自分の体に寄せる形になった。
それでも、精一杯抱き寄せる。その胸の中では、安心しきったような顔で泣いている。上条は美琴が泣き虫であることは知っていた。案外、もろいことも知っている。
何も言わないでおこう。上条はそう思って黙って受け入れる彼女の要求。自分のことを嫌っているような人間にこんなことをやってくるのかと疑問もわいている。
高校生になった彼女の変わらないところ、つまり、彼女の本当の部分は上条しかみたことない。似た者同士が引き合った結果。上条は優しすぎた。そのつけがこのような結果を招いている。
悲しみのラプソディ。二人の間には静かな時の流れしかない。上条は、自分の胸の中に埋もれているお姫様を起こそうとする。ただ普通に起こそうとしても反応はしないだろうと思いながら。

「おーい。」
「…」
「おーい。」
「…」ピクッ。
「起きませんねぇ、これは王子様がキスして起こすパターンですかね」
「…」コクッ。
「しょうがないな…それはないけどな」
「…」ムッ!
「てか、お前もう起きてるんだろ?」
「…」ピクッ!
「もういいや、上条さんは限界ですよ。…おーい。朝だぞ。起きろよ」
「…うん。おきる。ありがとね」
「やっと起きたか…上条さんのTシャツはぐしょぐしょですよ。どうするんですかね、」
「別にいいじゃない。どうせあんたの部屋にいるんだし。あんた、ほかにTシャツあるんでしょ?」
「ありますけど、上条さんはあまり洗いものを増やしたくないのですが。」
「いいわよ。私が何でもあんたの世話するんだから。」
「え?みこ…とさん?あなた何かいいました?」
「あんたの面倒みてやる!っつってんのよ。ばか。」
「さいですか。それなら遠慮なく頼むわ。」
「あたりまえでしょ?そしたらあんたのそのTシャツ取り替えておいで。今からファミレスと Seventh Mistいくから。」
「わかった。わかった。そんなにせかさんでくれよ。受験生はただでさえ疲れるというのに。(笑)」
「じじくさいこというなぁ!」

 上条は美琴のいう通りタンスから新しいTシャツを取り出し取り替えて選択かごの中に入れる。そして、外に出る用意をした。
私服でいる彼女が、今日はホテルでもとって泊まりますかと言い出したため、高級じゃなくてもいいと上条は返す。
今日は家がとんでもない状況のため、家を修理してもらう用に業者を呼んで直してもらうことにして、上条はそのためにものを片付けることにした。
これから待ちに待った昼ご飯の時間である。上条は少しだけ心を躍らせた。そして、財布と携帯電話を持って外に出る。鍵をかけることも忘れない。

――――――――――――――――――――――――――――――
 とあるファミレスにて。

「あっついねーー。初春ぅ。」
「そうですね。佐天さん。なんか最近うちにくる確率高くないですか?」
「だって、家にずっといたくないしさ。つまんないじゃん。」
「それでも、こっちにもいろいろとやんなきゃならないことがあるんですから、ジャッジメントとかジャッジメントとかジャッジメントとか。」
「いいじゃん。最近滅多に仕事こないんでしょ?それにしても、御坂さんとは最近連絡とってないですね。白井さん?ねぇ、白井さん?」
「え?あ?何か呼びましたでしょうか?」
「白井さん大丈夫ですか?最近ちょっと変ですよ?いつも変ですけど。」
「うーいーはーるぅ?あなた、何か仰いました?」
「いいえ、なにもないですよ。えへへへへへへへへへ。」
「なんか、すごい変な空気だなぁ。」

 佐天は窓側の席でその隣に初春、その迎えに白井黒子がいる。白井と初春はなんだかんだで口喧嘩をしている。その空気から逃げようと窓の外を眺めている。
そこに初春が注文していたジャンボ抹茶小倉スペシャルが運ばれてきた。その上についているウエハースをこっそり盗み食いしている。
それがばれてしまった佐天は初春にいろいろいわれているがそんなことに耳を向けることはない。そんなところに久々に懐かしいものをみることができた。

「あれれれれぇー?白井さん!あれって御坂さんじゃないですか?」
「ぼ?ぼねえざまがぁ(お、お姉様がぁ)?」
「あ、こっちにきますよ?」
「そうですね。って隣にいるのは誰なんでしょうかね。白井さん。」
「どうせ、いつもの殿方とご一緒なのでしょ?」
「なんだか、今回は違いますね。ね、初春?」
「そうですね…。それよりも、これを片づけなければ…。」

 一方、ファミレスの外では外から見ると高校生のお嬢様につれられた黒いつんつん頭のガキが手を連れられて歩いているという構図がある。まるできょうだいである。
しかもそのお嬢様はレベル5の超電磁砲である。その彼女の肩にはSeventh Mistの紙袋が提げられている。隣の子どもも少なからずものを持っている。

「あんたさ、いまはいいけど人前では私のことを呼び捨てにするのはやめてよ。恥ずかしいんだから。」
「とりあえず、お前の弟とか、いとことかそういう感じでいけばいいのか?」
「わかればいいのよ、わかれば。でも、これだけ買ってれば困ることはないでしょ?」
「ああ。助かりましたよ。御坂さんは神様ですか?」
「美琴センセーにとっては昼飯前よ。」
「それでさ、ファミレス入ったら私のことをお姉ちゃんっていいなさいよ。いいわね。」
「わかったよ。美琴。」
「いま、呼び捨てにしたでしょ?」
「はいはい。わかりましたですよ。美琴お姉さま。」
「…なんだか黒子みたいな呼び方だと背中がむずむずするわ。」

 とりあえず昼ごはんがまだだった二人は足を速める。いつものファミレスに直行する。ファミレスについたころにはすでに13:30を過ぎていた。
二人は、仲良く店の中に入った。そして、ウェイトレスに禁煙席まで案内された。二人は、仲良く同じサイドに座ることはなかった。
二人は向かい合って座っている。美琴は完全にお姉さま然としている。上条はそれにのっかっている。完全に弟のふりをしている。
ウェイトレスに水をもらってメニューに目を落として一生懸命食べたいものを絞っている上条がかわいいと思ってしまった美琴。
今は、上条の一つ一つの仕草に夢中になっている。美琴はそれを見てとてもホッとしている。知らずに笑顔がこぼれる。

「アンタ、決まったの?」
「ああ。俺はこれにする。」
「そう。そしたらよぶわよ?」
「いいぞ。上条さんはとても腹ペコなのですから」

 その様子を覗いている人間の姿があった。ちょうど上条たちの座る席の2つ奥にその姿があった。ひとりは校則で制服着用を義務付けられているので身分はばればれである。
残り二人も私服であったが、つるんでいるメンバーから想定はできた。しかし、この時点では二人は何も気づいていない。ちょうど良く、美琴の背後に彼女たちのボックスがある。
つまり、美琴からは死角になっていた。上条はメニューに夢中になっていてあちらのほうには気づいていない。そういうことなので美琴の後輩たちは偵察を続けている。

「やっぱり、あんな御坂さんなんてレアですよね。」
「おねえさぁ。おねえざばぁぁぁぁぁぁ。」
「白井さぁーん!しっかりしてください。」
「しらいさぁーん?だーいじょぶですかぁ?」
「初春!白井さんはもうダメみたい。私たちだけで見守ってよ?ね?」
「わかりました。今日の私は本気ですから。そんなこと朝飯前です!」

 上条たちは、何も知らずにウェイトレスを呼んで注文をするのであった。これから起こることも知らずに。上条が少しだけ幸福な日々を送る…きっかけになるものがそこにはある。

「ご注文をどうぞ」
「えーと、このマーボハンバーグセット一つ。それと、このぺペロンチーノ一つ。あと、アンタなんか頼む?」
「ん…そうだな。いらないかな。」
「わかった。…これで以上です」
「かしこまりました。マーボのほうにはライスかパンが付きますがどちらにいたしますか?」
「んー。ライスお願いします」
「両方にドリンクバーが付きますが、どうなされますか?」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました」

 手際の悪いウェイトレスは注文をした美琴にもう一度確認して、カウンターのほうに歩いて行った。すると、美琴は周囲を見渡した。
自分の知り合いがここにいると気まずいと思ったらしいが、すでに注文したばかりである。今になって後悔している美琴。ひとりで頭を抱えてゆらゆらしている。
それを見た上条は大丈夫かと気にはしたが持ち前のスルースキルを発揮して、見ないふりをしていた。そして、スタイルのいいウェイトレスに見とれていった。
上条の鼻の下が伸びる瞬間を見てしまった美琴は『あんたって私というものがありながらよくもそんなことできるわよね?』とジト目で上条を見る。つまり、上条の不戦敗。
 そんなこんなしているうちに、新入りらしきウェイトレスがやってきてドリンクバーのグラスとフォーク・ナイフ・スプーンが入った箱をよこしてきた。彼女は淡々と業務をこなしていた。
美琴は、上条がウェイトレスに見とれているときにたまにこっちの様子を見てくることに気づく。それを利用する手はないと思い、ある作戦に出た。
おもむろにテーブルに肘を乗っけて手を組み、上条のほうに上目づかいでしかも少し頬を膨らませて、いかにも『不満です。かまってよ。』というオーラを出す。
上条はこういう設置系トラップには弱いと分析していたため、勝負は美琴のほうに軍配が上がった。しばらくして、上条がドリンクバーに行こうと美琴を誘った。
美琴は、反対する意味はない。むしろ歓迎されるべき答えだと思っている。そして、カウンターのほうにあるドリンクバーに向かった。

「―――――っ!」

 美琴は絶句する。ドリンクバーに行く途中に少し茶色がかった癖のついた髪をツインテールにした少女の姿が見えた。その少女はしっかりと美琴を目でとらえる。
全て目に入るものを除外してだが、あるひとりだけをフォーカスして。しかし、白井の視界の中に黒いツンツン少年がどうしても消えてくれない。
白井は“お姉さま”に向かって全力で近づくというより、能力でその場にテレポートしようとした。しかし、ターゲットに見られている間は我慢している。
 ターゲットにされている方はとりあえず自分たちのやることを優先した。だが、ドリンクバーには3,4人の列ができている。そこに並ぶ。二人仲良く並んでとはいかない。
距離が若干離れている。二人ともウブである。2年もあっているのに。2年も知っているのに、お世話しているのに。2年も電撃を打ち消してきているのに。
こういうときだけは二人とも黙ってしまう。片方は相手の思っていることに興味があるのだが、なかなか聞き出せない。
もう一方は相手が自分に八つ当たりしてくるとか、電撃をやってくるとか追いかけまわしてくるとかで自分が嫌いなのではないかと思っている。
上条は、今困っている。自分の嫌いな相手なのに彼女はよく世話を焼いてくれて、それに自分のために何でもやってくれるとか言ってくれて。
自分は相手に何かしてやったろうか。と上条は最近思うようになってきた。ちょうど今年のバレンタインデーの時に起きたことからこの思いは強くなった。
二人とも自分の気持ちには素直じゃないのは公認である。ひとりは自認しているが、ひとりは鈍感過ぎて周りに呆れられている。
そんなことしている間に二人はドリンクバーのサーバーの前にやってきた。美琴がグラスをサーバーに近づけようとした時に誰かが割って入ってくる。

「ちょっと!あんた何すんのよ。」
「…」
「何か答えなさいよ。」
「…」
「ねえってば!」

 割り込んできた客に怒りを向ける美琴であったが、相手が自分の出た学校の制服であると気づく。それと同時に懐かしい感じがする。
だが、それは危険を感知した。その相手はかつてのルームメイトである白井黒子。変態淑女である。美琴は思わず叫んでしまった。
「くっ!黒子ぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「まあまあ!お姉さま!そんなに騒いでは追い出されてしまいますわよ?」
「そうだったわ。わるかったわね。」
「そ・れ・よ・り・も!この黒子に運命を感じませんこと?」
「運命も何も感じないわよ。なんであんたがここにいるのよ。もしかして、佐天さんも初春さんもいるの?」
「えぇ。」

 白井の後ろから花飾りの少女と黒いロングの少女がやってきた。

「「こんにちは」」
「久しぶりよね。げんきしてた?」
「はい!んでも、御坂さんがこんな男の子を連れてここに来るなんてどうしたんですか?」
「あっ!こいつね。私のいとこなの。」
(((こいつ?……いとこ?……えぇ!?)))
 白井は完全にしらけていた。お姉さまとの感動の再会が一気に中止の方向へ。美琴の隣のツンツン頭をにらむ。それを見た美琴は彼をかばうようにした。
佐天と初春は不穏な空気を感じ取り、この空気をなんとかしなければと口を開いた。

「とりあえず、みなさん。ドリンク入れたら席戻りません?」
「さあさあさあさあ!さっさとやってくださいね。白井さーん!」

 ちょうど、店内にはすこし人が減っていたので、白井たちは、美琴たちのボックスに移る。テーブルを囲むようにコの字型ソファに座る。
美琴と上条は同じ側に座り、向かい側に佐天、初春。黒子はその間に入る形で、ちょうど美琴は上条いや、下條と黒子に挟まれていた。

「あの御坂さん…その子の名前なんて言うんですか?」
「そうね、名前いってなかったわね、この子の名前はね…『真登(まと)』っていうの」
「あ、下條真登っていいます。いま、お姉ちゃんの寮に泊めてもらってるんだ」
「よろしくね。真登くん!そのツンツン頭いかしてるよ?」
「ありがとう」ニコッ!
「あんたはこんな風にいろんな女の子を手玉にしてんでしょー?」
「え?そんなことないってば。お姉ちゃんは意地悪ですね。と下條さんはつぶやきます」
「なに妹たちみたいな話かたしてんのよ」
「その、真登さんでしたっけ、あの2年前のお姉さまの事件をご存じで?」
「しってるもなにm…ゴフッ!」
「こいつはテレビとか何かで知ってるのよ。ね―?」
「むうhktrdんkmzgx……(何口ふさいでんだよ。苦しいじゃねえか!)」
「結構うっかりサンだったりするから変なこと言ったらぶん殴ってもいいから。あはははははは…」
(こいつ、いつかぶっ殺してやる。お前の幻想がぶっ壊れるくらい上条さんはカンカンですよ!!)
(てか、こいつの唇さわっちゃった!キャハっ♪このままずっといたいな☆)
(ねえ、初春ぅ?ジャンボパフェ食べてるひまないよ?あの二人なんだか変じゃない?御坂さんとても顔真っ赤じゃん?)
(あ!今は邪魔しないでくださいよ。もしかして、佐天さんはうらやましいんですか!)
(そんなわけないけどさ、そういうならさっさとそれ片づけてよね)
(いいじゃないですか。私だってゆっくり食べたいんですから)
(でも、仲いいきょうだいみたいじゃん!……弟元気かなぁ。最近なんも連絡してないなぁ)
(なんか、自分に投影してませんか?佐天さん?)
(…うん。うちにも弟がいるから…最近会ってないけどね…って白井さんの様子がすごくない?)
(おねえざばぁぁぁぁっぁああぁ!私ととても情熱的なベーゼがしたくてここに来たわけじゃないのですね。ううううううううううう!)
(私との愛を育んではもらえないのですか?黒子は!黒子はぁ!あああああああああああああああああああああん!)

 黒子は完全に自分の世界に入り込んでいた。テーブルに頭突きを何度もしている。その音はかなりうるさい。近所迷惑だ。美琴は仕方なく軽くショックを与える。
下條に気づかれないようにこっそり。いまは、黒子の頭から湯気が立っている。彼女は完全にKOされた。想いを寄せるお姉さまに。その顔はとても幸せそう。
変態だから仕方ないのかもしれないが。そんなことも知らずに黒子を除いた4人は話を続ける。その途中に美琴と下條(上条)の頼んでいたものが来て伝票がおかれる。

「「いただきまーす」」
「やっぱりうめぇな。ここの料理は!マーボハンバーグって高いからなかなか食えねえんですよ。か…下條さんはとても感動してるんですよ」
「あんたはテレビの見すぎじゃないの?そんな口調誰から教わったのよ」
「生まれつきだし。」
「そうだそうだ。真登くんはこの4人のお姉ちゃんの中で誰が好き?この涙子おねえちゃんかな?それとも、初春かな?それとも…」
「私でしょ?アンタは!」
「わたしですか?」
「…うーん。あまり、順序とか決めたくないんだよな。みんな優しいし大好きです」
「わ!わたしはドジだし、いっつもあわあわしてるけどそれでも大丈夫ですか?」
「それでもですよ!」
「うれしいな。そしたら、明日も遊ぼっか?ねえ?御坂さん!」
「あんたはどうなの?私はいいけど」
「うん。いいぜ!お姉さんたち!」
「あははっ!実際にお姉さんとか言われたら照れちゃうっていうか…ね?初春?」
「えっ!?えええ、はい!そうですね」
「ずるいわよ!アンタは!そんな答えかたするから。……今頃黒子も目覚ましてるんじゃない?おーい!おーきろー」
「あの殿方もこんな風に色々な女性に接してこられたのでしょうねぇ…」
「「「え?」」」

 会話が弾む。しかし、下條の目の前のハンバーグはすでに無くなっている。話に参加しても結局は女子4人で成立している。
その間に、ご飯をしっかり口に流し込む。たまに振られる話にしっかりと答えるようにたまに話のほうに耳を傾けて。でも、意識は目の前の皿に。
その隣のカルボナーラは半分くらい残っている。しかし、佐天が気を利かせてくれたおかげで美琴はその皿を空けることができた。
なんだかんだで2時間はいるだろう。店員は邪魔だというオーラを出している。そんなとき、黒子の携帯電話が鳴り、店の外に出て応対した。
数分後、彼女は戻ってきて風紀委員(ジャッジメント)の仕事が入ったと言って初春の首をつかんで出て行った。
現在、美琴、佐天、上条…今は下條がテーブルを囲む。

「なんか、いきなり静かになりましたね。」
「そうね。この後、何も予定入れてなかったんだけどさ、佐天さんもこのガキんちょと遊ばない?」
「ガキんちょって言うな!俺はれっきとしたkブホッ!」
 美琴の鉄拳制裁が上条の頭に下される。それと同時に美琴は何かを隠すように笑う。
「あははははははは!こいつ、暑いと変なこと言い出すのよね。あはは。あははははは」
「いいですよ。ちょうど私もこの後暇ですから。それより、真登くんって面白い子ですね」
「そしたら、ゲーセンでも行っちゃおうか!」

 美琴の言葉で全員席を発ち、ファミレスをでて、とあるゲーセンに向かった。真ん中に美琴がいて、それを挟むように無能力者が並んで歩く。
なんともほのぼのした雰囲気がその3人を包んでいる。途中で佐天の提案で真ん中に下條(上条)を置き、両手に華という状態である。
お姉さま2人はうれしそうな顔でツンツン頭を見ている。その後、美琴と佐天は見合って笑顔になる。そろそろゲーセンに着くころだ。

「そろそろだね。佐天さん。私、化粧直してきていい?」
「いいですよ。この辺で待ってますから」
「ありがとう。なるべく早く戻ってくる」

……下條と佐天は近くにあったベンチに座る。

「真登くんのそのツンツン頭ってそれって地毛?」
「カツラもなんも、地毛ですよ?」
「へぇ-。そうなんだ。私にもさ、弟いるんだけどね。君と同じくらいなんだよね。」
「そうなんですか。(俺はもう18歳になるんですが。年越してからだけど)」
「それでさ、どんどんこの涙子お姉さまに頼っちゃっていいから。まかせて!」
「あ…はい。(その言葉は俺が言うのに。言わなくても助けるのに。)」
「そんじゃ、御坂さん遅いから様子でも見に行こうかな。」
「…確かにおそいなぁ。俺も一緒に行ってもいいですか?(あいつまた泣いてるんじゃないのか…?)」
「男の子が女子の変身は覗かなーい!」
「じょ、じょ、冗談ですよ。ね?ほら。」

そうやり取りしているうちに、美琴は戻ってきた。待っていた2人は心配そうに見ていたが、御坂はなんでそんな顔してるの?といったような顔している。
だが、そんなことを気にしてたら『いつもあいつを想っている私はどうなんだよ?』となるのでゲーセンに向かうことにした。なお、そのゲーセンはよく、美琴たちが行くところだ。
彼女たちのブームはパンチングマシンでハイスコアを出すというものだ。なんだかそういうことを聞くと逆らうことができないと下條は思った。だが、上条は幸せだと思った。
下條もとい、小さくなってしまった上条は歩く時も何か行動する時も自らの不幸体質を考えておかなければならない。だが、2年前からの記憶しかなくとも体が知っていた。
幻想を壊す右手を宿した男の人生は不幸に満ち溢れていた…だが、上条はふと思う――今日は全くと言っていいほど不幸なことが起きていないことに。
上条は指を折って今日起こった不幸を数えだす。しかし、不幸という不幸が起こっていない。指を折るほど不幸は起こっていなかった。不幸といえるのは今朝の美琴の電撃制裁くらいだ。


ウィキ募集バナー