オーバーキル

概要


「相手プレイヤーへの過剰な攻撃」を意味するカードゲーム用語。Over kill
遊戯王的には、必要以上のダメージを与えた上で勝利しようとする行いを指す。

そもそもが不必要なプレイングである上に、身も蓋もない言い方をすれば相手に対するマウンティングでしかないため、ルールに反した行いではないものの、マナーに反した行いと言える。
当然オーバーキルを嫌うプレイヤーも多いので、「対戦相手を失いたくない」「相手から高く評価されたい」と思うのであれば、こういった行為は控えるべきだろう。



ただ、レッテル貼りとして「オーバーキルだ」等と非難するプレイヤーも存在し、負け惜しみとして使われる側面があるのもまた事実である。
無論、そういった負け惜しみ自体がマナー違反でしかなく、相手のマナー違反を糾弾する行為自体がマナー違反になってしまっては、同じ穴の貉としか言えない。
そしてそれがただのレッテル貼りでしかない場合は、掘った穴も墓穴でしかないだろう。

OCGのルールの関係上、オーバーキルだと断言できるプレイングはそうそう見られるものではないため、使用には気を付けたい用語である。


オーバーキルの例


前述したように、オーバーキルだと断言できるプレイングはそうそう見られるものではない。
ここでは、プレイヤーAとプレイヤーBのデュエルにおける例を挙げた上で解説する。



【例1】
A:手札には《青眼の白龍》2枚と《融合》が、フィールドには《青眼の白龍》が存在する。
B:残りライフが3000で、手札にもフィールドにもカードがない。


この場合、Aは攻撃力3000の《青眼の白龍》で直接攻撃するだけで勝利できるため、手札の《融合》を発動して攻撃力4500の《青眼の究極竜》を融合召喚するといったプレイングは、無駄なものでしかない。
そのため、これはオーバーキルに該当するプレイングである。

人間である以上、「自分の切り札で相手にトドメを刺したい」といった欲が出るのも当然と言えるが、やはりこういった行いはマナーに反したものであるため、親しい間柄でもない限りは控えた方がいいだろう。



【例2】
A:手札には《ブラッド・ヴォルス》が、フィールドには《青眼の白龍》が存在する。
B:残りライフが1000で、フィールドには伏せカードが1枚存在する。


この場合、Aは攻撃力3000の《青眼の白龍》で直接攻撃するだけで勝利できるため、手札の《ブラッド・ヴォルス》を召喚するというプレイングは、一見すると無駄なプレイングに見える。
ただ、Aの立場からはBの伏せカードの正体が分からないため、これがオーバーキルであるとは一概には言えない。

例えば、Bの伏せカードが《六芒星の呪縛》であった場合、《青眼の白龍》の攻撃はその効果で止められてしまうため、そのままではAはBにトドメを刺せないことになる。
しかし、予め《ブラッド・ヴォルス》を召喚していた場合は、《青眼の白龍》の攻撃が止められたとしても《ブラッド・ヴォルス》の攻撃でトドメを刺せるため、Aは勝利できるのである。

一方、Bの伏せカードが《激流葬》であった場合は、《青眼の白龍》の直接攻撃で勝利できることになるのだが、《ブラッド・ヴォルス》を召喚してしまえば、それをトリガーに発動した《激流葬》によって、Aは《青眼の白龍》も《ブラッド・ヴォルス》も失うことになってしまう。



このように、不確定な情報がある状態でのプレイングの是非は、結果論でしかない。
ほんの僅かでも不確定要素がある限り、そのプレイングをオーバーキルと断言することはできないのである。

昨今のOCGでは相手のターンに手札で効果を発動できるカードも増えているため、フィールドにカードがなくとも安心できないというのも大きいと言える。
無論、こういった状況でもオーバーキルを行うプレイヤーは存在するため、「オーバーキルではない」と断言することもできないのだが。



また、オーバーキル自体が「不必要なプレイング」である。
結果的にそれで勝てれば問題ないのかもしれないが、その不必要なプレイングを行ったことで前述した例のような損害が生じてしまえば、もう目も当てられない。
マウントを取ろうとする気持ちが大きければ大きいほど、自分に反ってくる恥も大きくなるだろう。

いずれにせよ、対戦相手が存在して初めて成り立つゲームだということを肝に銘じておきたい。
カードゲームは楽しむためのゲームであるため、勝敗がどうであれ、互いに「楽しかった」と言える状態で終わりたいものである。


遊戯王シリーズとオーバーキル


派手な演出をする上で都合がいいためか、遊戯王シリーズでも度々オーバーキルが行われている。
ただ、デュエル構成ミスの結果としてオーバーキルになっていることもあり、場合によってはルールが蔑ろにされていることもある。



ストーリー上の演出として行われていた例としては、「バトルシティ編」での【遊戯vs海馬】戦が挙げられる。

このデュエルでの遊戯は、《超魔導剣士-ブラック・パラディン》で《青眼の白龍》1体を破壊するだけで勝利できる状況にもかかわらず、わざわざライフコストを払ってまで《拡散する波動》を発動し、海馬のフィールドにいた《青眼の白龍》3体を全滅させている。
その行いは完全にオーバーキルであり、マナー違反とも言えるのだが、この時の遊戯は、海馬の憎しみが束ねられた《青眼の究極竜》を《融合解除》で分離させた上でまとめて粉砕することで、海馬を憎しみの闇から救おうとしていた。

なお、このプレイングはOCGのルールでは不可能だが、原作のルールでは可能である。*1



デュエル構成ミス(プレイングミス)として行われていた例としては、原作におけるラストデュエルの【遊戯vsアテム】戦が挙げられる。

このデュエルでのアテムは、《ブラック・マジシャン》か《ブラック・マジシャン・ガール》のどちらかで攻撃するだけで勝利できる状況であるにもかかわらず、わざわざ《マジシャンズ・クロス》を発動して攻撃を連携攻撃にしており、結果として《サイレント・マジシャン》の返り討ちにあっていた。
単体攻撃であれば《ブラック・マジシャン》か《ブラック・マジシャン・ガール》のどちらか片方と《マジシャンズ・クロス》を残せていた*2ため、これはオーバーキルが裏目に出た例と言える。
尤も、この時の遊戯のフィールドには伏せカードがあったため、一概にオーバーキルであったとは言えず、結果として戦闘ダメージを軽減できてはいたのだが。

なお、この展開はアニメで変更されており、《マジシャンズ・クロス》の発動には、「戦闘ダメージを減らしてアテムの敗北を防ぐ」という意味が加えられていた。*3
オーバーキルではなくなったと言えるが、その一方で連携攻撃としての演出が蔑ろにされたとも言える。*4



ルールが蔑ろにされた例としては、かの有名な《狂戦士の魂》が登場した「ドーマ編」での【遊戯vs羽蛾】戦が挙げられる。

このデュエルでの遊戯は、既に羽蛾のライフを0にすることで勝利している状況であるにもかかわらず、《狂戦士の魂》の効果によって羽蛾に執拗な追撃を行っていた。
この時の遊戯は羽蛾の陰湿な精神攻撃を受けたことによる怒りで我を失っており、このオーバーキルは彼の怒りを表現した演出なのだが、マナー違反であることは言わずもがな、OCGのルールとしても不可能な行為である。*5
《狂戦士の魂》は後に効果を変えてOCG化されたが、当然このデュエルの再現はできない。



また、用語としての「オーバーキル」とは若干意味合いが異なるが、「莫大なダメージで決着が付いているデュエル」や「意味もなくモンスターが破壊されて終わるデュエル」も、「オーバーキル」と言われることがある。

前者の例としては【十代vsカイザー亮】戦(2戦目)が挙げられ、このデュエルでは、《決戦融合-ファイナル・フュージョン》の効果によって互いに57800もの効果ダメージを受けていた。
ダメージの数値が大きいだけで不必要なダメージというわけではないため、用語としての意味での「オーバーキル」とはまた意味合いが異なるが、これも一種のオーバーキルと言える。

後者の例としては【遊星vsアンチノミー】戦が挙げられ、このデュエルは《バランス・シューター》の効果ダメージで決着が付いているにもかかわらず、決着後には何故か《TGハルバード・キャノン MAXXX-∞》が破壊されていた。
エースモンスターの同士の勝負とは別の所で決着が付くという地味なデュエルであったため、演出で少しでも派手にしようとしたのだろうか?
だったらなんでそんなデュエル構成にしたのかという話になるが、理由は不明である。


ゼアルとオーバーキル


用語としての意味のオーバーキルも行われているのだが、それ以上に「莫大なダメージで決着が付くデュエル」が目立つ。

また、演出として行われているオーバーキルもパロディが目立ち、が《狂戦士の魂》と似たようなことを2回ほど行っていた。
その内の1回は勝利後の追加攻撃で、もう1回は8回連続攻撃を狙いにいって勝利を逃している。*6



「莫大なダメージで決着が付くデュエル」が多い原因は攻撃力のインフレにあるため、詳細はそちらを参照。

とにもかくにもインフレが酷く、例えば【遊馬&ナッシュvsドン・サウザンド】では、《No.39 希望皇ホープ》がドン・サウザンド104000もの戦闘ダメージを与えていた。
言うまでもなく、これは歴代遊戯王シリーズの中でもダントツの狂った数値である。*7
しかもこの時はドン・サウザンドのライフまでもがインフレしていたため、6桁にも上る莫大なダメージでありながら、ライフの超過分は僅か1100ポイントであった。

次点もゼアルであり、【遊馬vsエリファス】戦では、《No.39 希望皇ホープルーツ》がエリファスに70900もの戦闘ダメージを与えている。
本来であれば《ランク・ドミネーション》の効果でホープルーツの攻撃力が下がり、その戦闘ダメージも58900になる筈なのだが、その処理は描写されなかった。



参考までに記しておくと、《狂戦士の魂》で遊戯が羽蛾に与えた戦闘ダメージの合計は10500であり、これまた連続攻撃で有名な《キメラテック・オーバー・ドラゴン》でヘルカイザー亮*8が犬飼に与えた戦闘ダメージの合計は25800である。

尤も、これらはあくまで「合計ダメージ」であるため、ゼアルのように1度の攻撃で与えたダメージというわけではない。
前者は攻撃力1500のモンスターによる7回連続攻撃*9で、後者は攻撃力4800のモンスターによる6回連続攻撃であるため、それよりも遥かに大きなダメージを1回の攻撃で与えているゼアルのインフレが非常に分かりやすいと言えよう。

なお、「ライフが0になった時点でデュエルが終了する」というルールに則った場合、前者は3000の戦闘ダメージを与えた時点で、後者は16200の戦闘ダメージを与えた時点で決着が付いていることになる。*10





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最終更新:2023年08月07日 11:44
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*1 1回の攻撃宣言で攻撃対象を全て決めるルールであるため。同デュエルで海馬が《ブラック・マジシャン》や《真紅眼の黒竜》に追撃せずに《磁石の戦士β》を破壊していた理由もこれである

*2 《マジシャンズ・クロス》は永続魔法であるため、その後もフィールドに残っている筈なのだが、何故かなくなっていた

*3 ついでに言うと、《マジシャンズ・クロス》も速攻魔法に変更されている。後に通常魔法としてOCG化された

*4 《サイレント・マジシャン》の攻撃力を超えることはできないと理解した状態で《マジシャンズ・クロス》を発動している

*5 ライフが0になった時点でデュエルが終了するため

*6 デュエル構成ミスにより、後者は成否に関わらず勝利できなかったのだが

*7 「無限大」も数値扱いするなら別だが

*8 この一件をきっかけに「ヘルカイザー」と呼ばれるようになる

*9 《狂戦士の魂》の効果による攻撃ではないものも含めれば8回

*10 ヘルカイザーは1回攻撃した後に「5連打」と言っているが、あと3回攻撃するだけで犬飼のライフを0にできていた