攻撃力のインフレ


攻撃力について


「攻撃力」とはモンスターカードに記されている情報の内の1つであり、そのカードの戦闘での強さやダメージを与える性能の高さを示している。
もちろん、攻撃力の高さだけでデュエルが成り立つわけではないため、単純な高さ以上に他のカードとのコンボに適した数値が求められることもあるのだが、基本的にこの数値が高ければ高いほど強いモンスターということになる。

モンスターカードには攻撃力の他に「守備力」等のステータスも持つのだが、遊戯王シリーズでは基本的に攻撃力の高さが優先され、守備力の存在を無視しているきらいもある。
例えば、【万丈目vs長作】戦で長作*1が提示したハンディキャップ*2は「デッキのモンスターの攻撃力は全て500未満でなければならない」というものであり、守備力の存在が完全に無視されていた。*3
シリーズを通しては、攻撃力の数値を条件にしながらも守備力の数値は無視した効果を持つカードが多い。*4

もちろん、攻撃力が全てというわけではなく、大下*5のように攻撃力が500しかない《アシニグライ》を「百万の兵にも匹敵する」と評する*6者や、チーム太陽のように守備固めの戦術をとる者達も存在する。
デュエルアカデミアでは、「攻撃力が低い」ことを理由にカードを捨てる生徒が存在する一方、守備固めの戦術をとる生徒や教員も複数存在していた。*7



だが、ゼアルでは攻撃力が全てなのである。


ゼアルにおける「攻撃力」


守備的な戦術に使えるカードが全く登場しないというわけではないものの、これまでのシリーズとは違い、ゼアルで守備固めを主軸とするデュエリストは皆無で、しかも大半のデュエリストがエクシーズ召喚一辺倒で猪みたいな攻め方しかできていない。
守備的な戦術が登場するときはほぼ「登場人物がヘタレている時」*8であり、もはや「守備力が蔑ろにされている」というより「守備力の概念が変わった」といった様子である。
後の遊戯王VRAINSでは守備力がそもそも存在しない*9リンクモンスターが登場しており、OCGでもリンクモンスターの普及に伴い、守備力や守備表示に関する効果のカードは評価が大幅に低下しているため、今やアニメ・OCG共に守備力というステータスにほぼ需要がないのは明白である。

また、駆け引きのゲームである筈のデュエルがまるでマウントの取り合いであるかのようにもなってしまっており、ゼアルでは、A「攻撃力3000だぁ!」 ⇒ B「ならば攻撃力5000だぁ!」 ⇒ A「ならば攻撃力10000だぁ!」といったような攻撃力の見せつけ合いとなる単調な展開が散見される。

この点が特に目立っていたのが【カイト&vs蚊忍者】戦であり、大きなモンスターを嫌っている蚊忍者を含む全員が巨大なモンスターを見せつけ合っており、最終的には攻撃力が12000まで上がり巨大化*10した《銀河眼の光子竜》で攻撃力4000の《No.2 蚊学忍者シャドー・モスキート》*11を攻撃して1ショットキルするという、非常に大味な展開が見られた。

ちょっと万丈目さん、こいつらを叱ってやって下さい。*12



そしてこういった制作姿勢故に、ゼアルでは全体的に攻撃力がインフレしてしまっている。
莫大な攻撃力をあっさり得ているモンスターも非常に多い。

これは誇張でもなんでもなく、本当に「あっさり」である。

初期ライフと同じ数値かつ超大型モンスターの基本的な数値である4000を超える攻撃力を持つモンスターは度々登場しており、これまでのシリーズではあまり見られなかった10000超えの攻撃力を記録したモンスターも多数存在する。
遊戯王シリーズで記録した攻撃力ランキングを作るとその大半をゼアルが占める有様であり、本来は名誉であろうランキング入りが逆にゼアルの問題を浮き彫りにしてしまっているのである。

前述した例で言うと、《銀河眼の光子竜》は《矛盾の合成》1枚で攻撃力が8000アップしており、《No.2 蚊学忍者シャドー・モスキート》も《蚊学忍法・蚊取り閃光》1枚で攻撃力が4000アップしている。*13

攻撃力アップを初めとした数値関係の効果も単調なものが多く、特に「倍にする」系統の効果の登場が歴代作品と比べてかなり多い。
中には「攻撃力を3000アップさせる」「ライフを5倍にする」「4000のダメージを与える」といった滅茶苦茶なものまで登場させている始末である。

ちなみに、これまでの遊戯王シリーズでの最高攻撃力はGXで《サイバー・エンド・ドラゴン》が記録した36900であり、これでも当時はインフレインフレと散々言われた。
しかし、あろうことかゼアルはそれを大幅に更新しており、《No.39 希望皇ホープ》が204000を記録していたり、元々の攻撃力と守備力が100000の《CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア》が登場していたりする。
馬鹿なの?

また、その概念崩壊要素は攻撃力だけに収まらず、《NO13 エーテリック・アメン》と前述の《CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア》*14ランク13のモンスターとなっており、元々のランクの最高値である12を超えてしまっている。
エリファス曰く、「デュエルモンスターズの最高レベルは12だが、ランクの最高が12だとは限らない」らしい。限るわ。*15


また、ライフポイントもチャーリー・マッコイドン・サウザンド10万以上の数値を達成している。


インフレの原因


何故このようなインフレが起きてしまったのか、その原因は「自力では満たされない承認欲求の発露」にあると推察される。

攻撃力の件に限らず、ゼアルでは「ねぇねぇこれ凄いでしょ、感動するでしょ」という押しつけがましいシーンがかなり多い。
散々指摘されている演出面も然ることながら、モンスターカード名もカードテキストもサブタイトルも無闇矢鱈に長かったりする。(テキストが長いことはまた別の理由だが)
サブタイトルは単に長いだけでなく、仰々しい表現やエクスクラメーションマークや三点リーダが目立つため、陶酔していることが単純に分かりやすいだろう。*16

自信のない人間ほど自分を装飾したがるものであり、自信を失いたくない人間ほど手抜きやネタ主張等のセルフハンディキャッピングに逃げるものなのである。

そして、OCGあってのアニメである以上、ゼアル期の売り上げ急落が主要スタッフに全く伝わっていない筈もない。
最も重要となる記録で存在価値を確立することができなかった結果、なにか別の記録に足跡を残してやろうという心理が働いたのではないだろうか?

実際、ゼアルの問題の多くは後期に集中・悪化しており、始まった当初はそれほど評価も低くなかった。
「セカンドから面白くなった」と主張したがるゼアル信者の反応もまた、その悪化や放送時間の左遷という目に見えた結果を実感したくない気持ちの裏返しと言えよう。*17


参考データ


以下はゼアルでインフレした攻撃力を記録したモンスターの一覧である。

何を以て「攻撃力がインフレした」とするかには主観も含まれてしまうのだが、ここではその定義を「攻撃力10000以上」としている。
「元々の数値の最高値である5000を超える攻撃力」とかを基準にした場合は膨大な数になってしまうため、とりあえずこの基準で勘弁してほしい。

なお、それでもその総数は28体にもなる。(同名カードを1体と数えた場合でも15体
過去の最高攻撃力(36900)を超えたモンスターだけでも9体存在するのだから始末に負えない。
しかも《CNo.39 希望皇ホープレイ》以外は全てゼアルⅡで達成された記録である。


数値 モンスターカード名 影響した効果
204000 No.39 希望皇ホープ 《ライジング・ホープ》3回
ダブル・アップ・チャンス
102000 No.39 希望皇ホープ 《ライジング・ホープ》3回
100000 《CiNo.1000 夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア》 元々の攻撃力
83300
*18
《No.104 仮面魔踏士シャイニング》 《ハンドレッド・オーバー》5回
83200 CNo.39 希望皇ホープレイV 《DZW-魔装鵺妖衣》5回
79200 《No.39希望皇ホープルーツ》 自身の効果
ダブル・アップ・チャンス
67200
*19
《No.39 希望皇ホープルーツ》 自身の効果
ダブル・アップ・チャンス
《ランク・ドミネーション》
51000 No.39 希望皇ホープ 《ライジング・ホープ》2回
41700 《No.104 仮面魔踏士シャイニング》 《ハンドレッド・オーバー》4回
41600 CNo.39 希望皇ホープレイV 《DZW-魔装鵺妖衣》4回
39600 No.39 希望皇ホープルーツ》 自身の効果
25500 No.39 希望皇ホープ 《ライジング・ホープ》
23600 《No.6 先史遺産-アトランタル》 自身の効果
《先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット》
ダブル・アップ・チャンス
《速攻予約特典》
20900 《No.104 仮面魔踏士シャイニング》 《ハンドレッド・オーバー》3回
20800 CNo.39 希望皇ホープレイV 《DZW-魔装鵺妖衣》3回
18600 《CNo.43 魂魄傀儡神カオス・マリオネッター》 自身の効果3回
16600 《CNo.39 希望皇ホープレイ》 《エクシーズ・ユニティ》
《ZW-玄武絶対聖盾》
16000 《No.1 ゲート・オブ・ヌメロン-エーカム》 自身の効果
他のゲート・オブ・ヌメロン3体の効果
16000 《No.2 ゲート・オブ・ヌメロン-ドゥヴェー》 同上
16000 《No.3 ゲート・オブ・ヌメロン-トゥリーニ》 同上
16000 《No.4 ゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ》 同上
12400 《CNo.43 魂魄傀儡神カオス・マリオネッター》 自身の効果2回
12000 《銀河眼の光子竜》 自身の効果
《矛盾の合成》
11800 《No.6 先史遺産-アトランタル》 自身の効果
《先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット》
ダブル・アップ・チャンス
11000 《No.101 S・H・Ark Knight》 《ZS-幻影賢者》
10500 《No.104 仮面魔踏士シャイニング》 《ハンドレッド・オーバー》2回
10400 CNo.39 希望皇ホープレイV 《DZW-魔装鵺妖衣》2回
10000 《CNo.1000 夢幻虚神ヌメロニアス》 元々の攻撃力


他の遊戯王シリーズとの比較


ゼアルの問題を他の遊戯王シリーズに擦り付けるのはゼアル信者の基本仕様であるため、以下には他のアニメ作品で「攻撃力10000以上」を記録したモンスターも参考として記す。。

なお、「∞(無限大)」は数値ではなく概念として扱っているため、ここには含めていない。
攻撃力∞を記録したモンスターは、《封印されしエクゾディア》《オベリスクの巨神兵》《蛇神ゲー》の3体*20が存在するが、OCGのルールや概念が定まってから登場し、かつ元々の攻撃力が∞だったゲーの酷さが目立っていると言えよう。*21
そしてゲーが登場した時の脚本担当者はもちろんこいつである。
なお、OCGではなく「ラッシュデュエル」を取り扱う「SEVENS」と「ゴーラッシュ!!」には、攻撃力10000超えのモンスターは存在せず*22、過去作のような極端なインフレは起こしていない*23


作品名 数値 モンスターカード名 影響した効果
遊戯王DM 23000
*24
《オシリスの天空竜》 自身の効果
20000
17000
14000
11000
10000 《ガーディアン・エアトス》 自身の効果
20000 《オレイカルコス・シュノロス》 自身の効果
17200
15700
15200
12100
《オレイカルコスの結界》
遊戯王GX 36900 《サイバー・エンド・ドラゴン》 《パワー・ボンド》
《リミッター解除》
*25
《決闘融合-バトル・フュージョン》
*26
20900 《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》 自身の効果
《決闘融合-バトル・フュージョン》
16000 《サイバー・エンド・ドラゴン》 《パワー・ボンド》
《リミッター解除》
16000
*27
《サイバー・エンド・ドラゴン》 《パワー・ボンド》
《サイバネティック・ゾーン》
14500 《E・HERO エリクシーラー》 《賢者の石-サバティエル》
11300 《レインボー・ネオス》 《オネスト》
10000 《究極宝玉神 レインボー・ドラゴン》 自身の効果
遊戯王5D's
*28
23000 《スターダスト・ドラゴン》 《集いし願い》
20900
18000
15600
12800
20000 《究極時械神セフィロン》 自身の効果
16000
12000
15500 《機皇帝グランエル∞》 自身の効果
14700
12000
10400
10300 《機皇神マシニクル∞³》
自身の効果
遊戯王ARC-V 16400 《RR-ライズ・ファルコン》 自身の効果
13800 《覇王紫竜オッドアイズ・ヴェノム・ドラゴン》 自身の効果
13000 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 自身の効果
10000 《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》
《オーバー・ザ・レッド》
10000 《超銀河眼の光波龍》
《RUM-光波昇華》
《光波干渉》
遊戯王VRAINS 22000
*29
《ジ・アライバル・サイバース@イグニスター》 自身の効果
《裁きの矢》
13000
12000
11000
10000
13000 《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード》 自身の効果
10500
12000 《テッセラクト・ハイドライブ・モナーク》 自身の効果
《裁きの矢》




コメント欄

  • 確かにホープの攻撃力は204000にまで上がってたけど、それは遊馬とナッシュの2人で達成した攻撃力だから、1対1のデュエルに限定するならシャイニングの83300(?)が最高記録になる(劇中での描写は無かったけど、攻撃力83200のホープレイVに攻撃されたから、ハンドレッドオーバーの効果でそれより100高い83300になっていたはず) -- 名無しさん (2020-03-08 22:27:10)
  • どうでもいいけど何であの時攻撃した後にターンエンドして攻撃中断出来たのかイミワカンナイ 攻撃宣言した後でもソリッドビジョン上で相手モンスターを破壊していなければ攻撃を止められるのかな? -- 名無しさん (2020-03-08 22:32:44)
  • ゼアルってライフも異常な数値になってたよね チャーリーがライフ5倍にするインチキカードであっさりとライフを10万にしてて草も生えない -- 名無しさん (2020-03-08 23:16:36)
  • 初代からの伝統であった「星の数は12まで」を特に重要な理由もなく破ってるのが問題なんじゃねーの -- 名無しさん (2020-04-02 21:40:49)
  • アークファイブの記録も書いておいたZE。何故かアークファイブの記録が無かったから。 -- 名無しさん (2020-04-07 15:01:02)
  • VRAINSも追記しておいた。 -- 名無しさん (2020-04-07 15:18:13)
  • ゼアル放送当時ですらリンクモンスターはあったんすね(笑)知識ひけらかしたすぎて脱線しすぎ -- 名無しさん (2024-08-14 12:23:51)
  • ↑ZEXALのせいで、次回作も攻撃力がインフレしていったからな。必要な資料よ。 -- 名無しさん (2024-08-14 17:36:36)
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最終更新:2024年08月14日 17:36
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*1 一応こちらも万丈目姓である

*2 長作がデュエルの素人であったことを理由に設けられた

*3 当の万丈目は「攻撃力0にする」と決めて自ら縛りを強めている

*4 例えば「攻撃力1000以下のモンスターを召喚する」という条件の場合だと、高い守備力を持つ高レベルモンスターを容易に召喚できることになる

*5 ビッグ5の1人で、電脳空間では《深海の戦士》になっていたオッサン

*6 まぁ効果が滅茶苦茶強力だしね

*7 教員のデッキは試験用デッキだったが

*8 カイトと対峙した時のアストラルやミザエルと対峙した時の遊馬など

*9 何!? 守備力を持たないなら守備力0ではないのか!?

*10 普段は十メートルほどの大きさだが、この時は何故か数十メートル単位まで巨大化していた

*11 普段は本物の蚊なみに小さいのだが、攻撃力の上昇と共に何故か巨大化した

*12 気になった人はGXの54話を視聴してみよう。攻撃力の件以外にもゼアルとの比較要素が結構ある

*13 一応他のモンスターもコストとして必要ではあったが

*14 後に登場したOCG版ではアニメ版とは異なり元々の攻守は?であり、自身の効果で攻守が10万アップするという形で再現されているが、ランク13はそのまま元々の数値として再現されている。

*15 アニメ5D’sではレベルがマイナス値のダークシンクロモンスターが登場しており、後にレベル0やランク0のモンスター、レベルやランクを持たないリンクモンスターも登場している。また、OCGオリジナルのランク13のモンスターも登場した。

*16 「Ⅲ!!」と記して縦棒を5本並べたり三点リーダの使い方も間違っていたりするが、それは瑣末なことか

*17 上代にゼアルの全問題を擦り付けられるという逃げ道を得たと思ったことの影響もあるが

*18 本来は5回目となる《ハンドレッド・オーバー》の効果が発動してこの数値になっている筈なのだが、何故か作中でそのシーンは描写されなかった

*19 本来は攻撃する際に《ランク・ドミネーション》の効果が適用されてこの数値になっている筈なのだが、《No.104 仮面魔踏士シャイニング》と同様に何故か作中でシーンが描写されていない

*20 漫画の遊戯王Rも含めるのであれば、オベリスクの攻撃力をコピーした《邪神アバター》も∞になっている

*21 しかも見た目が何の変哲もないただの蛇。デザイン担当者もアホらしくなったのだろうか?

*22 デュエルで使用不能なネタカードには存在するが

*23 過去のOCG系のアニメとは制作陣が全く異なるためだと思われる

*24 アニメ版だとこれが最大値だが、漫画版では28000にまで上がっている

*25 不可解なタイミングで発動しており、それがなかったと仮定した場合の攻撃力は16000か20900となる

*26 十代が同じカードを発動した時のカイザーは「タイミングを見誤ったな!」とか言っていたが、それはお前の《リミッター解除》の方である

*27 《サイバネティック・ゾーン》の効果が適用された後の攻撃力は本来8000なのだが、何故か16000まで上がっていた

*28 マシニクル以外は連続攻撃に伴って攻撃力が目まぐるしく変化している

*29 《裁きの矢》の効果でこの数値になった瞬間が見られたが、OCGのルールで考えるとこの数値になっていない。ただし、OCGとアニメではルールが異なるため、正確な処理は不明