その組織は魔道士の集団であり、自治領すら持つ治外法権組織だった。彼等は自治領である孤島に居を構え、日々研鑽を重ねていた。
ただ魔道士とは言っても人間の魔道士だけでなく、
エルフやドワーフを始めとする人以外の種族――現在では伝説上で語られるに過ぎない種族すら――も多数参加する、一種の多種族共同体(一説では、
ダークエルフすら存在していたとされている)であったらしい。
しかしそれ故に、人類諸国だけでなく、人以外の諸種族からも危険視されていたことは、想像に難くないだろう。
だがこの組織は、諸種族が組織内に存在していることを逆手にとり、絶妙なバランス感覚により中立を保ち続けた。
諸種族はまとまりが無いこともあり、互いが互いを気にして牽制し合っていたのだ。
そんな状況が、数百年も続いた。
その歴史に終止符を打ったのが、エルフ族だ。
エルフ族は、組織が『世界の有り様を乱す発明をした』と突如宣言し、人類諸国に討伐を命じたのだ。
そして全世界の諸国から派遣された勇者達を様々な魔術により、結界で守られた孤島に送りみ、瞬く間に島を制圧する。
だが制圧後、島は突如として大噴火を起こして沈没。勇者達も魔道士達も海の藻屑となってしまった。
エルフ族は、『組織が島ごと自爆した』と発表し、お詫びとして、組織が開発した飛竜――
ワイバーン――を各国に贈呈したとされる。
各国はその性能に狂喜し、その後ワイバーンの増殖、研究に奔走することになる。
国により細部は異なるが、大筋は以上である。
……全ては大昔の話。もはや何が真実かも判別つかぬ御伽噺だ。
最終更新:2006年04月27日 15:40