改秋月型駆逐艦とともに新世代の帝國海軍を担う艦であり、従来の建艦思想からの決別を示す艦でもある。

松型駆逐艦は改秋月型の補助として、『早く』『安く』建造できる事を第一として設計され、起工から竣工まで1年とかからない安価な量産艦であった。無論それに見合う能力しか持たず、対空・対水上攻撃力は秋月改型の半分以下、電探も搭載されていなかった(通信能力については言うまでも無いだろう)。それでも従来の駆逐艦群より、遥かに有能ではあったが。

松型最大の欠点はその航続距離の短さであり、その18ノットで3500海里という短さは航洋型駆逐艦としては致命的ですらあった。だがその安さと(そこそこの)性能は魅力であり、何よりも全ての駆逐艦を改秋月型で賄えないという現実を前に、改秋月型を上回る数の生産が決定された。松型は、貼り付け任務である各地の方面艦隊に主に配属され、帝國の権益確保のため活躍する事になる。


余談ではあるが、改秋月型は本国艦隊、松型は方面艦隊に配備され、シーレーン防衛を任務とする海上護衛総隊には配属されなかった。松型の航続距離に不安が有り過ぎたという事もあるが、やはり広大な海域全てをカバーするには数が少なすぎたのである。代わりに松型よりも遥かに安価な、船団護衛任務専門の『海防艦』も量産されていく。

だが、様々な努力にも関わらず、これらの艦の総建造費は増加の一途を辿り、やがて海軍予算を圧迫していくようになる。そして巡洋艦以上の大型戦闘艦建造計画を狂わせていく事となる。

これらの艦の出現が物語るのは、『帝國海軍が迎撃型の海軍ではなくなりつつある』という事実だろう。最早迎撃する相手がいないという現実と、広がりつつある海外権益を前に、帝國海軍は試行錯誤しつつも、ようやく現状に即した状態に変化しようとしていたのだ。…未だ迎撃型海軍の影を捨てきる事は出来ないでいたが。


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最終更新:2006年11月23日 16:17