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暇やねん

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暇やねん 03/06/22

  終電が回送となって車内を清掃している人を乗せたまま出て行くのを煙草を喫いながら見送りつつ、声高に喋る職業の見当がつかない女性達と酔って寝ている男が背中合わせになったベンチを通り過ぎて立ち止まる。

  向こうから歩いてくるのはバックパックを担いでいる集団。ユースだろうか。ワンゲルだろうか。キャリーを引いている。どちらでもないようだ。半ズボン。サンダル。男女混合。ヘルメット。パドル。カヌー族だ。騒ぎながらり乗越し料金を払うのをじっと待ち、やがて改札口の下に忘れた荷物を小走りに取りにくるまで更に待ってから、切符に途中下車の印を押して貰い夜中の街に出る。

  終電の客を捕まえ損ねたタクシーの群れを無視して駅前にある街の地図を眺め、繁華街のあたりをつけ、やがて歩き出す。幸いにして雨は止んでいるが肌寒く、この街で朝まで過ごすか深夜ひっそりと走る快速に間に合うよう戻るかまだ決めずに歩いてゆく。商店街、居酒屋、煙草屋、カラオケ、パブ、風俗エステ、コンビニ、そして後は眠る街。

  貨物列車が通る音を後ろに聞きつつ奇声をあげる大学生らしき集団。どこから来てどこへ行くのかわからない男女二人連れ。徘徊している崩れた服装の中年男とすれ違い、どこかの国の訛りで「オ兄サンドウ?」と声を掛けてくる姫たち。昼でもなく夜でもないどの街でも同じいつもの深夜の繁華街の顔に迎えられる。

  タクシーの走る音しか響かない冷えた空気を吸い込み、身震いしてから裏通りに踏み込み、歩くうちに何時の間にかまた表に戻っている。駅の反対側に回って風俗店とラーメン屋が並ぶ一角を通り抜けると大通りの向こうで叫び声が聞こえる。女が車に押し込められたのだろう。皆一応そちらを振り向くが信号を無視してタイヤを鳴らして走り去る車を茫洋と眺め、ふと我に返る。ラーメン屋の若者が水を道路に流す音とジッポを点けて消した音が違う方向から同時に聞こえた。

  深夜の繁華街は不思議な程匂いがしない。有明月だけ輝く空は霧に濁った青灰の空。かなり遠くで救急車のサイレンが一瞬響き、また消える。駅前のロータリーに戻り、最早客を取ることが出来ないタクシー運転手の立ち話の声が低く伝わってくるのを感じながら時折通る学生ふう、やくざふう。

  錆びた看板に倒れた自転車、静かに眠る街といつものありふれた深夜の繁華街に身を沈め、遠くで光る塔の灯りに今日もまた、溜息をひとつ。

  暇やねん。

 
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