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ジッポ

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ZIPPO 04/06/27

  考えてみればジッポライタでは随分無駄をしたものだ。

  なんとなく数えてみると七台使ったことになる。殆どが大学生の頃の話だから馬鹿馬鹿しい。最初にあったのは無地の一番安い型で、分解して以降パーツ取り専用となった。保証書が無かったからこれは仕方がない。拾ったものだった。

  二台目は自分で買った。黒ニッケルのもので下地を出すべくせっせと角を擦っていたものだ。これが最も長くそして過酷に扱った。ジッポライタはどうしても蓋の開け方や点火方法をあれこれ研究したくなるもので、最終的に完成したのは上下逆さにヒンジを向こうに、そして下に位置するジッポの蓋を持ち、手首を上に返すと本体がその重みで回転しつつ開き手の甲で受け止め、親指をずらして火花を飛ばす技であった。余りにも大袈裟ながら同じ方法で点火する人を見たことがなかったので悦に入っていたのだが、ある日突然本体と蓋を繋ぐヒンジが切れて蓋だけ手に残して本体は遥か後方へ吹っ飛んだ。そのようなとち狂った点火方法をする人がいない理由を悟り、修理に出し、新品のインサートになって返って来た。これは今でもある筈だ。

  三台目はゴールデンバットのデザインだった。煙草のゴールデンバットが箱になった記念のキャンペーン懸賞で当てたもので、オールドジッポの雰囲気を醸すレプリカで、暫く使っているうちに黄銅は手垢で輝きを失っていよいよ古い雰囲気になった頃、何処かのカラオケ屋でテーブルに置いたまま席を外し戻ってみると消失していた。

  四台目もまた無地のもので、これは合宿教習の最中に教習車のシートの隙間に落ちていたもので、芯も綿もないただの抜け殻であったが、単純な機構であるから瞬く間に再生させた。布団の綿を詰め込み、百円ライタを分解して石を流用し、芯は黒ニッケルの修理で得たインサートのものを半分に切って捻じ込んだ。オイルを注して点くようになると同室の教習仲間に呉れてやったから実質所持期間は一日もない。

  五台目はチタンコーティングのもので、鏡のような存在感に惚れ込んだが、一度アスファルトに落としただけで瑕だらけになり、「チタン製」と「チタンコーティング」の違いを学習し、以降鏡のように磨き上げると余計に瑕が目立ち、だから益々乱暴に扱い、そして磨かなくなり、やがて虹色になった。手の油が作用したのだと思う。これも探せばある筈だ。

  六台目はトーテムポールとcanadaの字が掘り込んであるもので、バンコク土曜チャイナタウンで掘り出したものだが、同時に買った初代てんとうむしの時計が既に使い潰したことを考えると少々感慨深い。これは黄銅だが直ぐに錆びるので手入れに難渋し、タバスコに漬けて汚れを落としてから半紙で包み、そして密封した。今どこにあるだろう。

  七台目はベトナムジッポで、これは卒業記念に貰ったものだが、どこで紛失したか忘れた。非常に悔しいが仕方がない。考えてみると自ら金を出して買ったものだけが残っているのであって、ただで入手したジッポは悉く手を離れている。そうは言っても勿体ないとする思いは強い。やがてジッポは持ち歩くものではなくて、しかし蒐集するほどの気合はなく、日常的に使うには少々面倒で、あれこれを計算して「割に合わない」と結論し、火が点けば何でもよいとする合理主義者となった。飽きただけでもある。

  煙草を喫い始めたのが大学の二年で、実質三年間で七台を廻して飽きたのだから無駄以外の何物でもなかった。底やインサートの年度記号を暗記したり削ったり磨いたりとそれなりに熱中した筈なのに、腕時計やサンダルまでもジッポに染めていた阿呆は今百円ライタを愛用しているのだが、ひとつだけ皆様に聞きたいことがある。

  何故百円ライタは一度も紛失しないのか?
 
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