「う、うええ……」
4勢力の大混戦並びに鏖魔マジアベーゼの大蹂躙から早くも3日、柊うてなはアジトで寝込んでいた。
「マジアっちマジ凹みじゃん」
「まあ無理もありませんね……我々はある程度正体を知ってる者もいたとはいえ彼女はそうでもなかったし」
「ネタバレされたのがよっぽど響いたみたいだね……」
ベーゼ六人衆は何か終わっても帰る素振りは見せず会議室でのんびりゴロゴロくつろいでいたが掃除をしていた真珠に踏まれてお母さんみたいに怒られるが、エノルミータとしては笑い事じゃない。
なにせ認識阻害が無効化されるというのは変身している自分達には死活問題、身バレには気を使っていただけに今後の活動にも影響してくる。
「ってことは我々は身分隠してイケメン喫茶しなくてもいいってことですかね?」
「えー……あれ地味に好きだったんだよなぁ人気もあって、ねえネロアリスちゃん」
そんな中、キウィだけがうてなの看病をしながら冷静に状況を確認していた。
「き、キウィちゃん……こんな無様な状態でほんとうにごめん」
「ちゃんと帰ってきただけでも儲けもんだっての、後の事は他のうてなちゃんに任せておけばいいから、問題は……」
「トレスマジアの正体を知っただけでもキツいですが、我々の身バレは本当に手痛いですね、オンオフも効かないしマゼンタも不本意ですからね」
「いや、それよりもさ……」
「……やはり気付きます?ここまでの大惨事が起きても尚ヴェナさんの反応が一切ないんですよ」
◇
とにかく巻き込まれたゴジュウジャー達だが、ようやく騒ぎも落ち着いてきたので転移されたテガソードの里を元の世界に帰すことにした、そして真銀も元の世界に行くことに。
パラレルの遠野久光に関してだが、騒動が終わった後に完全に姿を消している、
たくっちスノーが言うにはミリィの元へ向かったとか…?
「姉御!お世話になりました!もう魔法で楽して生活しようとか考えませんので!」
「もうええわ、勝手にしとけばええねん」
「あっ……そうだゴジュウジャーの皆さんもトレスマジアも、戦隊絡みで何かあった時にはこの人を頼ってください」
真銀は一人一人に名刺と写真を見せる、名前は往歳巡で職業は大学教授とある。
専攻は……戦隊考古学となにやら怪しいもの。
「巡先生は時空学っていうまだ分かってない他世界の要素を研究してる人なんだけど、なかでもスーパー戦隊の歴史を調べてて……ほら前に話したでしょ?私が前に戦った人!」
「うーん、まあ考えとくわ」
テガソードはテガソードの里を直接引っこ抜いて時空間に繋げる、ゴジュウジャーの面々は手を振ってトレスマジアに別れを告げる。
「さよなら!短い間だったけど楽しかったよ!」
「お別れじゃないよ!また僕の顔が見たくなったら今度はそっちから来てほしいくらいだね」
「はるか、お前の家事代行は心配するな……この剣があればいつでもそっち来れるしな」
「みんなもお元気で!指輪集め頑張ってください!」
「あっちょっと待てや」
薫子はサルファに変身するとテガソードの手に乗って、竜義を誘う。
「なあ爆神兄ちゃん、ウチちょっと連れてってもらいたいところあるんやけど……」
「ほう?それでテガソード様の力をお借りしたいと……中々いい度胸をしていますね、それで私に何か?」
「ウチにとっても大事な用件やが神様を借りるなんて見過ごせんやろ、ここは一つじゃんけんで後腐れなくどっちが行くか決めへんか」
サルファは拳を突き出すが竜義は何も言わずに肩に手を置いてテガソードを見送る。
「俺もそこまで融通が効かないわけではない……テガソード様に頼るほどだ、相当なことだろう……そそうがないように」
「サルファ大丈夫なの?」
「任せときって、ウチらにとっても無縁な話ちゃうしな」
テガソードの手に乗ったサルファはそのまま相席する形でテガソードの里の中に入る、小夜からすれば何が何だか分からないので
マガフォンを貸してもらいポチに相談してみることにした。
「え!?メイドウィンの手を借りてまで行きたいところなんて一つしか思い当たらないよ……まだ知らなかったよね!?というか普通は知っちゃいけないんだよデスゲームみたいなことしない限りは!」
「そ、それってもしかして……私達の世界のメイドウィンに!?」
◇
ここはメイドウィン達だけが持つ専用のプライベートルーム、
はじまりの書が保管されており自由にくつろげる自由気ままな場所。
入ることが出来るのはメイドウィンだけ……連れていけるとするなら、
メイリンクを結んた存在のみ……。
だがここに例外が存在する、メイドウィンに直接連れてってもらえば話は別である。
サルファは前々から自分の世界を管理している存在に興味があった、そして予想もしていたがやはりそうだ。
その存在の両腕にはパペット人形が付いていた、白と黒で見覚えのあるデザイン。
「……やっぱりお前やったかヴァーツ、いやヴァーツのフリをしとったやつか?」
「その質問までは答えられないね、僕にとって想定外なのは事実だし……g-lokシステムとやらは楽しませてもらったがせっかくのマゼンタがあんな結果になるとはね」
「ずいぶん余裕そうやな、はじまりの書をグチャグチャにされた気分はどうや?」
「心配してくれるの?君は優しいんだね」
「アホ言うな、ウチは神様のツラを拝みに来たんや……はっきり言って最悪やぞ?殺したいくらいにはな」
「それは僕も同感だ、たくっちスノーは上手く軌道修正しようと努力してたけど例のともだちとやらのせいで台無しだ、お互いに身バレだよ?でも僕はテガソードくんと違ってヴァーツとヴェナリータとしてしか出れないし……」
「だったらそうしてろ、ヴァーツとして以外に関わるな……マジアベーゼもそう言うやろ……お前ら神なんて一生傍観者でいればええ、それを伝えに来た、ほな」
言うだけ言って確認したサルファは帰っていった。
……ただの報告に見えるかもしれないがかなり焦っていた、その点まで含めて薫子はたくっちスノーやテガソードと相談した上で計算付くだった。
たくっちスノーに教えてもらったのは、メイドウィンを殺せるのはその世界の存在のみ、ただちょっとメイドウィンの在処に乗り込んで脅しをかけるだけで生殺与奪の権を握られたも同然なのである。
更にはナンバーワンという自分には知らない世界と力も得ている、もし逆らったら本当に命が危ないと悟ったのだ。
メイドウィンというのは基本的に上位なわけでもないのだ。
◇
「ミッチー、お世話になったね……イミタシオグッズに関しては一任して……ぐえっ」
「お世話になりましたみち子社長……だろう?」
他の分身達も色々やらかしたのかこれまでの努力が全部無駄、稼いできたものもこれまでのものも全部差し押さえられてしまい、たくっちスノーは今あるお金がどれだけ残っているのか確認しなくてはならない。
イミタシオの魔法少女グッズはというと、これまでの稼ぎを溜めておいたみち子が権利を買い取ってプロデューサーからそのまま社長に昇格、イミタシオのブランドを管理するには自分自身が一番都合が良いと考えたのだ。
そしてそのまま立場は逆転した。
「……だが問題は例の奴らだ、ベーゼ……柊うてながイミタシオが私だと知るのも時間の問題だ……クソッ、復讐どころか商売の邪魔にもなる……」
「でもそのうてなって子、もう3日も姿見せてないそうだけど?」
「その件に関しては例の時空新聞のことだろう……ほら、マジアマゼンタとマジアベーゼの熱愛報道」
「ああ……」
熱愛報道というのは例の魔力と鏖魔の取り替えっこした時の例のキス、あれがすっぱり切り抜かれてしまい……元々トレスマジアが時空でも注目されていただけにスキャンダルを求められていたのでたちまち時空に広まってしまったということである。
悪の勝利、魔法少女中身ネタバレ、それに加えて善と悪のイチャイチャ疑惑。
地雷に地雷を重ねてマトリョーシカとなったうてなはガチに寝込んでいたが、これがより一層信憑性を高めてしまう。
はるかの方はというと自分の目的のために強引に唇を奪ったので何とか否定しているが騒ぎは沈静化しない。
「
マガイジン、『ともだち』、そしてその作り方……出来ることなら今すぐにでも調べたいところだが今は監理局がヤバいんだよね」
「このままウチで部下としてこき使ってやってもいいぞ」
「バカいえ、シン・ロード団の尻ぬぐいまで付き合いきれるか……だが、近い内にマゼンタちゃんにはまた大きな試練が待ち受けているだろう、何より……黒影のことが気になりすぎる」
「ベーゼの方はどうなる?」
「最初はA級なんて黒影の単なる気の迷いだろって思っていたが……マガイジンになった上にあそこまでの事態起こしたら本当にそうせざるを得ない」
皮肉にも最初黒影が望んだ通りの形になってしまった、その上で黒影がいないというのも妙な話になってくるが……問題はこの世界の今後である。
吠とガリュードの戦いに関してはテガソードが目をつけているのでどうにでもなるが、この世界に関してはもう取り返しが付かない、だからこそ本来禁忌であるはずの薫子による脅しも許したわけである。
「しかしまさかヴェナリータがメイドウィンだったとは……気付かないはずだ」
「正確にはヴァーツとヴェナリータは最初からはじまりの書に載ってたんだけど、アイツは作らずに
メイドウィンブラストでそれを誤魔化したんだな、手を抜いたのか神様気取りしたかったのか……ランクが違うから分からんけど」
軽く話を済ませた後にたくっちスノーは別れを済ませて分身同士の情報共有のために監理局へ帰っていった。
……嵐のように過ぎ去った感覚、小さかったはずの部屋にほんのりと寂しさを感じたような気もしたが、思い出を振り返ってみるとやっぱりいないほうがいい気がしてきた。
扉を閉めようとしたらポチが来ていた。
「あっみち子さん、たくっちスノーってもう行きました?」
「ああ、お前もさっさと帰ったほうがいいんじゃないのか?」
「まあそうですけど……なるべくこの世界を見物したくて、俺にとっては長い付き合いですし」
元はと言えば、ポチからすれば軽い思いつきで監理局のお金を稼ぐために軽い流れでトレスマジアに会いに来たというのにトレスマジアに大きく迷惑かけたどころか結果で言えばマイナス、良かったことなんてあの3人に会えたことぐらいで自分のやってることはなんだったのだろう……と散歩していた。
テガソードの里があったところは既に跡地になりメイドウィンの力で別の店になっていたが……問題はまだ残っている。
パラレルうてなとパラレルトレスマジアが店の近くに集まっており一瞬即発の雰囲気だった。
「ま……まさか堂々とこんな店建てていたとは、灯台下暗しとはこの事だね」
「それはこっちの台詞やエセイケメン共、よくもまぁ堂々と全員でそんなことしおったな」
「えー?焼肉屋とか可愛くない仕事してるやつに言われたかねーし」
「アレ仕事してると油とか炭の匂いが魔法少女服に染み付くのよね……」
パラレルのうてなが帰らないということはパラレルのはるか達も同じである。
「……き、君等まだ居たんだね、というか堂々と表舞台に出てるし」
「まあ、あっちのあーし達も花菱はるか達も両方バレたし?隠す理由あーしらにはないし?」
「そもそも今回の件って重く見るのって……アンタじゃないの?」
「うぐぅ」
何も言えないが現在の
時空監理局はg-lokシステムをどうにかする手段はない、差し押さえの際に権利まで持ってかれた……それどころかパラレルワールドの存在が視認どころかそのまま滞在していることも前代未聞なのでたくっちスノーに聞いてもどうしようもならないだろう。
振り返ってみると、百戦錬磨のバカ5人でも知らないような未知の情報と残された課題があまりにも多すぎる。
だがひとまず現在出来る後始末だけでも考えなくてはならない。
◇鏖魔に覚醒してしまった花菱はるかを元に戻すには?
一番のイレギュラーは『ともだち』と呼ばれる存在によって突如改造され、まだ得体も知れない『マガイジン』になってしまった花菱はるか、彼女を元に戻す方法を見つけることが最優事項である。
無論マガイジンの研究はしたいがたくっちスノーも監理局もそれどころではない……だがポチには頼れるところがあったので恥を忍んで帰ることにした。
「もしもしはるかちゃん?準備が出来たよ」
◇
「あっ」
「あ……」
花菱はるかと柊うてなは正体がバレてから初めて顔見せする。
お互いに誰なのかも理解したことで申し訳なさと解釈違いのフラッシュバックで
マガイモノ成分を嘔吐するうてなとそれを宥めるはるか。
一旦2人でお洒落な店の席に座る。
「改めて……その」
「待って、そこから先は言わないで本当に、バレたからって今更意識したくないよ私」
「あっ……それはごめん」
「それよりもです、ゴジュウジャーだとか時空監理局とか他所から来た問題はなんとか終わりましたけど問題はコレですコレ、熱愛報道!コレに関しては全面的に貴方のせいです、善と悪のスキャンダルに加えて闇の形態!鏖魔対策はともかく貴方今後の魔法少女活動どうする気なんですか!!」
「う、うええ……本当にそれはごめんなさい……」
まさか今まで勝負を繰り広げてきた悪の総帥に説教されると思わなかったがこの件に関しては1から10まで自分の責任だし、小夜や薫子にも自分で撒いた種だからどうにもならないと匙を投げられている。
強引にされたことよりも魔法少女のこんな姿見とうなかったとばかりに目から黒い成分が出てくる、多分コレは血涙だろう。
「だ……だってしょうがないじゃん!暴走して殺戮するのも爆発するのも怖くて対策を考えてたら!そういえば教えてもらった暗黒真化はナースっぽかったなって!お薬でなんとかできそうだなって!!」
「だからって無理矢理私の魔力を得ることないでしょう!それもキスで!それこそ注射で取ることも……」
「ストップストップ、興奮したらツノが生えてくるから」
「あっ……ああ、そういえばそうでしたね」
口喧嘩していると余計にカップルっぽいと感じたし、鏖魔の影響は思ったより強く少しの興奮でディアブロスの角が生えてしまうので押し黙るうてな。
「そういえば貴方はどうやってマガイモノの力を抑えてるの?あたしでも定期的に抑制剤を打ち込んでるのに」
「……悪の組織が自分の秘密を素直に話すと思いますか?」
「まあそうだよね……じゃあ、そろそろポチさんに呼ばれてるから」
「うん、私も厄介な集まりに呼ばれてるから……A級
時空犯罪者に重要参考実験体、お互いどうしてこうなったんだろう」
魔法少女に選ばれたもの、方や魔法少女にあこがれた者。
その二人はどんな因果か時空規模の善でも悪でも危険な特別な存在に、1つ言えることはもう前のような戦いは出来るのか分からなくなったこと……時空監理局の最終的な評価は軽はずみに信じてはいけない。
悪人が善人として振る舞わないといけないくらい終わってるからこそ、利用するような形でしか信用できない。
うてなとはるかは別の道を歩む、今後マジアベーゼとマジアマゼンタとして再会できるのはいつになるのか分からないが……うてなはあくまでまた魔法少女相手に楽しむ生活のために余計なものを排除する。
今も昔も変わらない、魔法少女が好きである限り。
うてなのマガフォンに着信が入る、マガイモノになったので身体に収納できるようになったのでそのまま応対するとキウィからであった。
「もしもしうてなちゃん、世界にめんどくさいやつ出てきたけどどうする?」
「めんどくさいの内容にもよるけど……多分目の前のやつ?」
うてなの目の前には巨大なろうそくのようなロボットが立ちふさがる。
「見つけたぞ!!お前がゴジュウウルフと因縁があるという例の奴か!このファイヤキャンドルと勝負しやがれ」
「……やれやれ、それでは私は前と変わらず……この世界に邪魔な不純物を追い出すとしましょうかね!!」
柊うてなはマジアベーゼである。
愛するトレスマジアとの推し活生活と約束された自分の敗北を守るために彼女は絶対にその時まで負けることはない。
◇
「あっ、二人もついてくるんだ」
「当たり前やろ、言っとくがお前もまだ信用しきれてない段階やからな」
「ま、それもそうか……それじゃあついてきて」
はるか、小夜、薫子はいつもと違う雰囲気の
時空の渦に入っていく、時空監理局に連れて行くわけではないこと、これを知ったら後戻りできないことも前もって話だが、『ともだち』に近付いて厄介なことになるのは承知の上だった。
「だったらもう根底まで話す……実は『ともだち』の正体は大元見当がついてるんだ、あっこれはたくっちスノーには秘密ね?」
「見当って……」
「なるほど、お前二重スパイってわけやな、ただのエロ男やないと思っとったが中々あくどいな」
「二重スパイって言うほどたいそれたものじゃないよ偶然だし……はるかちゃんが見た情報からすると『ともだち』の本名は
カーレッジ・フレイン、黒影局長の最古の友達で……俺が生まれた組織が長年追っているこの世の根源」
「この世の根源って……え?」
「まあカーレッジの事より君を何とかするほうが先になるだろうね……」
渦の先は色んなデータが入り混じる研究所で……はるかは自分と同じマガイモノの反応を感じ取った。
「あー……俺にやってきた事的に言いづらい事なんだけどさ……?一応言わせて、ただいま……博士」
「ポチさん、これって……?」
「ようこそ、ムゲンダイ科学研究所へ」
そしてカーレッジと戦う愛と正義の魔法少女が、また1人加わることに。
最終更新:2025年05月11日 07:22