DX3_rain/trailer5 - kuromate @ ウィキ

ダブルクロス The 3rd Edition　～Ragnarok in the acid rain～　第五話トレーラー

「そういえば、理央ちゃんって…影山薫の二番目のクローンなんだよね？」
「うん？　そうだよー。でも、ゼロナンバーを含めると、実質三番目だけどね。」

あまりにもデリカシーの無い由里香の問い。
そしてそれが普通であるかのように真顔で応える"セカンド"こと河西理央。
何よりそんなトップシークレットすぎる会話が、筒抜けすぎるオフィスの談話室で行われていることは、遺憾を通り越してもはや噴飯物ですらあった。

「クローンといえば、瞭くんの親戚の…朔次郎さんだっけ？」
「えっ…。」

急に話を振られた瞭は、驚愕の表情を見せる。
…まずいかもしれない。

「彼も素晴らしい研究者だったっていう話よねー。研究者としては、是非とも一度話を伺いたいものだわー。」
「…。」
「単独で行動していたはずの遠野朔次郎…彼が一体どうやってその技術を確立したのか。」

姫宮君、それは、まずい。

「あれだけの成果を得るまでに、どれだけの対価を必要としたのかしら。そして、それを如何にして捻出したのか…。」

瞭は、始めこそ適当に相槌を打っていたが、しばらく話が続くと、何も言わずに談話室から立ち去っていった。
だんだんと張り詰めていった空気が、一瞬にしてどんよりと湿ったようで、その不愉快さといったら例えようもなかった。

「あのなあ、姫宮君。君は、少々…。」
「口がすぎる、って？」

こちらの指摘を先回りして、たいそうドヤ顔の彼女である。

「わかっているなら、どうにかならないものか？　理央は、まあ、いいとして。瞭君はなかなかあれで繊細なところがある。」
「ふうん？　心配なんだ。」
「それはそうだろう。仕事仲間だからな。」
「それだけかしらね。…まあいいわ、私も一応、人に嫌われることのデメリットは理解しているつもりよ。」
「ならば、どうして自重しない。」
「どうしてって、それ以上のメリットを確信しているから。」

由里香は懐から携帯端末を取り出し、期待通りといった手さばきでそれを操作する。

「内容が内容だけに…連れて行って、ってお願いするのは、さすがに厳しいでしょ。」
「だから瞭君に仕掛けたのか、発信機を。」

あまりにも冷酷な手段に、閉口するばかりであった。
由里香も自覚はしているのだろう、さすがにばつの悪そうな表情である。

「この方面だと、上野…時間的にいって、寝台特急かしら。」
「わかっている、追いかければいいんだろう。ただし、君は留守番だ。」
「…そうね。瞭君のこと、彼のおじさんのこと…お願いね。」

毅然としたいような、場を和ませたいような、それでいて憂いを帯びたような。
彼女の複雑で不安定なその表情は、心底ずるいと思った。

「ねえ、ところで、他のナンバーの人たちは、いつ遊びにくるのかなあ？」
「え？　知らないわよそんなこと。」

令の疑問は、理央によって一瞬のうちに制圧された。

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