虚構侵蝕事例
ここには観測者たちが遭遇した虚構侵蝕が、その視点を通して書かれている。
自身が虚構侵蝕に巻き込まれた際の参考になるだろう。
自身が虚構侵蝕に巻き込まれた際の参考になるだろう。
呪いのビデオ/泉川瀧人※サンプル
ある日、目が覚めたら自宅のテレビ台に見たこともない黒い機器が置いてあった。
そこにはブルーレイレコーダーが置いてあったはずなんだが、それはなくなっていて代わりに形と色は似ている、ちょっと野暮ったい機械が置いてあったんだ。
ワンルームだから、寝てる間に誰かが入って盗んでいったなら気づくだろうし、代わりの機器を置いていく意味が分からない。
考えても答えは出ないし、大学に遅刻しそうで急いでたからスマホで写真撮って、そのまま自宅を出た。
講義前に友人にその写真を見せると、「普通のビデオデッキじゃん。それがどうしたんだよ」と、さも当たり前のように言い出した。それどころかブルーレイの存在を知らないようだった。ビデオデッキなんて、聞いたことはあるけど俺や友人が物心つく頃には廃れていたものなのに。
不安になってVER-THで調べようとすると、いつもと違って検索ウインドウが2つあった。試しにそれぞれでビデオについて調べてみたが、ひとつは俺が知る情報だった。もうひとつの検索ではブルーレイもDVDも存在しない、ビデオが録画媒体の主役になっている世界の情報だった。
その瞬間、これが噂に聞いた虚構侵蝕というものだと気づいた。映画を題材にしてるらしいから、ビデオがメインの映画作品ってなんだろうなと考え始めた瞬間、教授が入ってきた。その表情には、いつもと違い、悲痛さが見て取れた。教授は手に持ったビデオテープを無言で眺めたあと、デッキに入れ再生させた。
そこに映ったのは、井戸から這い出てくる白装束の女の姿だった。
危険な子供/とあるホテルの客
いいホテルだよなぁ、ここ。飯も旨いし、景色も良くてさ。それで……えーと、何の話だっけ。
ああ、虚構侵蝕か。
虚構侵蝕なー、聞いた事はあるけど遭遇した事はないんだよな。一回くらい体験してみたいんだけど。だってさ、楽しそうじゃね? 俺どうせならアクション映画の虚構侵蝕がいいな、アクション好きなんだよね、ほら、ドカーンと派手に爆発したりするようなやつ。
絶対楽しいってー! マジでマジで、爆発……とか……アクション……と……か……。
あれ……?
あれって……いや見間違い……いやでもそうだ、なあ、虚構侵蝕すんのって実写映画だけだよな? え? 実写が多いけどアニメ映画とかの場合もある?
じゃあやっぱりそうじゃん! あのガキ絶対アレじゃん! アイツまさかこのホテルに泊まるとかないよな嘘だよなダメだ泊まるわコレ!
ほらお前あれあれあれ! あれだって! あそこ! あそこにいる子!
蝶ネクタイの子供!
くそっ、こんなホテルにいられるか! 俺はチェックアウトするぞ!