高校2年のある時期、俺G-syamは暇潰しにバンド部の練習を見に行っていた。
で、気付いたらキーボードとして参加してた。今回はそんなお話です。
で、気付いたらキーボードとして参加してた。今回はそんなお話です。
バンドの名は『Incredible motion』。メンバー構成は
Vocal :T野
Guitar1 :おっくん
Guitar2 :らまぬん@黒子の貴公子
Bass :いってん
Drums :ワルキューレ
Keyboard:G-syam
Guitar1 :おっくん
Guitar2 :らまぬん@黒子の貴公子
Bass :いってん
Drums :ワルキューレ
Keyboard:G-syam
の6人で、他のバンドと同じく文化祭ライブに向けて日々練習を続けていた。
T野はバンド部の部長でいくつものバンドを掛け持ちする程歌が上手く、Guitar1のおっくんは曲を弾きこなす為に努力を惜しまない奴だった。Bassのいってんも時折電波な発言はすれどしっかりと与えられた曲をこなし、drumのワルキューレは特に鼻息の荒い男だった。らまぬんは、あまり役には立たなかった。
T野はバンド部の部長でいくつものバンドを掛け持ちする程歌が上手く、Guitar1のおっくんは曲を弾きこなす為に努力を惜しまない奴だった。Bassのいってんも時折電波な発言はすれどしっかりと与えられた曲をこなし、drumのワルキューレは特に鼻息の荒い男だった。らまぬんは、あまり役には立たなかった。
そんなある日、バンド部に新たな入部希望者が現れた。
本人はギタリストを名乗ったが、ギターは全く弾けず、ただでさえTDUのバンド部はギタリストが飽和状態だったので引き取るバンドは一つも出てこなかった。
結局、彼はクラスが同じと言う理由で我ら『Incredible motion』に所属する事になった。
本人はギタリストを名乗ったが、ギターは全く弾けず、ただでさえTDUのバンド部はギタリストが飽和状態だったので引き取るバンドは一つも出てこなかった。
結局、彼はクラスが同じと言う理由で我ら『Incredible motion』に所属する事になった。
彼の名は「クロ」。
前述の通りギターが弾けず、元からギターが2人居た『Incredible motion』にも彼の居場所は無いように思えた。
楽譜を渡して見るも、ほぼ手付かず状態。スタジオを借りて練習する時、彼はいつも端に座って俺達の演奏を聴くような形だった。
ある日、そんなクロを見兼ねてか「サブボーカルにしてみないか」という話が持ち上がる。
これならギターを持って舞台に立てるし、何より「何もしない」という虚無感からの脱出は図れるかも知れない。
が、残念な事に歌も歌えない様子だったので、彼の為に「サンボマスター」の「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を選曲、シャウトや語りを任せる事になった。
前述の通りギターが弾けず、元からギターが2人居た『Incredible motion』にも彼の居場所は無いように思えた。
楽譜を渡して見るも、ほぼ手付かず状態。スタジオを借りて練習する時、彼はいつも端に座って俺達の演奏を聴くような形だった。
ある日、そんなクロを見兼ねてか「サブボーカルにしてみないか」という話が持ち上がる。
これならギターを持って舞台に立てるし、何より「何もしない」という虚無感からの脱出は図れるかも知れない。
が、残念な事に歌も歌えない様子だったので、彼の為に「サンボマスター」の「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を選曲、シャウトや語りを任せる事になった。
それ以来、スタジオを借りての練習も熱が入ってきた。
ライブが近くなった事が直接の原因だったが、それによりクロの熱意もさらに増し、いよいよメンバーが団結してきた感があった。
台詞を覚えさせ、振り付けも俺が考えてやらせてみた。ただ曲の終了間際に跳ねるだけだったが、本人は何故か満足そうだった。
ライブが近くなった事が直接の原因だったが、それによりクロの熱意もさらに増し、いよいよメンバーが団結してきた感があった。
台詞を覚えさせ、振り付けも俺が考えてやらせてみた。ただ曲の終了間際に跳ねるだけだったが、本人は何故か満足そうだった。
相変わらずT野は歌詞を覚えてるんだか覚えてないんだか分からない。おっくんは「イントロどーしよー」とか言ってる。いってんは文句も言わずただベースを弾き続ける。ワルキューレは相変わらず鼻息を唸らせながら渾身のドラムを叩いている。俺も俺とて、ライブの前の胸の高鳴りを楽しんでいた。らまぬんは弾けていなかった。
ライブ当日。
クラスの参加部門の手伝いをしていたメンバーが各々の楽器を手に徐々に集まり始める。
おっくん達のクラスのお化け屋敷の控え室でヒソヒソ声で話しながら時間が来るのを待つ。皆緊張した顔持ちだったような気もしたが、実際の所暗くて良く見えなかった。
数十分後、俺らの数組前のバンドの演奏が始まった頃、皆でホールへ向かった。
大丈夫、今まで通りやれば良いさ、そう自分に言い聞かせながら、まもなく演奏の時間になる。メンバーは皆笑っていたが、緊張していたに違い無い。クロの顔は引き攣っていたようにも見えた。
おっくん達のクラスのお化け屋敷の控え室でヒソヒソ声で話しながら時間が来るのを待つ。皆緊張した顔持ちだったような気もしたが、実際の所暗くて良く見えなかった。
数十分後、俺らの数組前のバンドの演奏が始まった頃、皆でホールへ向かった。
大丈夫、今まで通りやれば良いさ、そう自分に言い聞かせながら、まもなく演奏の時間になる。メンバーは皆笑っていたが、緊張していたに違い無い。クロの顔は引き攣っていたようにも見えた。
一曲目は普通に終わり、簡単なメンバー紹介とトークを終わらせ、いよいよ「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を演奏する時が来る。
おもむろに前に進むクロ。イントロが始まり、彼の語りが始まる・・・。
おもむろに前に進むクロ。イントロが始まり、彼の語りが始まる・・・。
―――彼は元来、人とあまり話をしないタイプだった。
声が小さく、下を向いて話すので良く聞き取れない。友達も居ないように見えたし、およそコミュニケーション能力に欠けた男だった。
そんな彼が今、大勢の観客の前で、仲間の中で「愛」を叫んでいる・・・。
声が小さく、下を向いて話すので良く聞き取れない。友達も居ないように見えたし、およそコミュニケーション能力に欠けた男だった。
そんな彼が今、大勢の観客の前で、仲間の中で「愛」を叫んでいる・・・。
曲も終盤に向かい、次はクロが「Love&Peace!」と叫ぶ筈だ。
キーボードのパートは割と簡単だったので周りを見ながら演奏出来た。なるほど、皆必死だ。らまぬんがサボっている。音、忘れたんだろうか。
そんな事を考えながらクロを見る。彼は彼でギターを弾いているふりをしている。次の瞬間。
キーボードのパートは割と簡単だったので周りを見ながら演奏出来た。なるほど、皆必死だ。らまぬんがサボっている。音、忘れたんだろうか。
そんな事を考えながらクロを見る。彼は彼でギターを弾いているふりをしている。次の瞬間。
「かーまんべーる!」
「かーまんべーる!」
- あれ?クロは確かに「Love&Peace!」と叫んでいる筈だったよな?
観客が笑っている。いや、コイツらはさっきから笑いっぱなしだが・・・クロの語りやらシャウトやらが実に彼らしくて。それにしても今回の笑いようは異常だ。
歌詞を間違えてるのではない。彼の生まれ持った「滑舌の悪さ」が災いして「Love&Peace!」が「かまんべーる!」に聞こえているらしかった。
- 気にするな!ノンストップだ、クロ!
彼は歌い続けた。途中でヴォーカルのT野がむっくんにマイクを強奪されても歌い続けた。え?俺らジャックされてる?
そして最後。散々練習したクロの大ジャンプだ。
ワルキューレが鼻息を噴出する勢いと共にドラムを連打する。そしてクロが・・・
ワルキューレが鼻息を噴出する勢いと共にドラムを連打する。そしてクロが・・・
- 飛べよ、そこは。「?」って顔してんなよ。
そんな感じで1日目のライブは終わった。ぐだぐだだったが、終わった後は不思議な爽快感があった。やっぱり人前で演奏するのは気持ちが良い。
聴いてくれたクラスメイトからも「カッコ良かったよ」とか「思ったより良かった」とか「キーボード音小さいんだよ!」など、色々な感想を頂いた。
2日目はジャックをされる事無く最後まで演奏し切った。
聴いてくれたクラスメイトからも「カッコ良かったよ」とか「思ったより良かった」とか「キーボード音小さいんだよ!」など、色々な感想を頂いた。
2日目はジャックをされる事無く最後まで演奏し切った。
その後、気付かぬ間に撮られていたビデオを見て驚いた。
※「あれ何~?かまんべーるって言ってたのー?」
マサトー「「Love&Peace!」だよ。」
マサトー「「Love&Peace!」だよ。」
あ、やっぱ勘付かれてた。
- このライブより一年。
ある事件をきっかけに、クロは急速に俺達と決別していく。
この頃は考えもしなかったが、それはまた別の話。