夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

審判の刻

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この世には多様な噂が溢れている。
作り話。都市伝説。学校の怪談。ネット上のデマ。
現実に起きた幻想秘話。根の葉もない陰謀論。揉み消された真実。信用されずに消えた実話。など。など。
それは、やり直しを願われ構築された歪な街においても同じことである。
今も、出自も真偽も定かでない風説が無数に生み出されている。



例えば、数世紀先を行く未知の技術が詰め込まれた機械の腕が某研究機関に保管されている、とか。

例えば、儚げな黒髪の少女に出会った人はいつの間にか失踪してしまう、とか。

例えば、中等~高等の教育現場で小さな子供らしき先生が教鞭を取っている、とか。

例えば、どこかで死んでしまったはずの人間が平然と生活している、とか。

例えば、黒い霧のような首のないナニカが夜間の市街を走り廻っている、とか。

例えば、何かを隠すために「原因不明のガス爆発」という情報操作が為されている、とか。

例えば、時空を揺るがすほどの力を秘めた魔石が冬木の地に散らばっている、とか。

例えば、朝方まで出勤が確認されていた学園の教師が急に姿を消してしまった、とか。

例えば、人間を喰らう亜人が正体を隠しながら人間社会に潜んでいる、とか。

例えば、同じ容姿・顔の人物が複数人で街中を行動していた、とか。

例えば、身体・感覚・精神を蝕み死をもたらす新ドラッグが闇市場に出回っている、とか。

例えば、都市のどこにも実在しないはずの巨大な黄金螺旋階段を目撃した、とか。



当然、ここに挙げられた話題はほんの一部に過ぎない、もっと数多くの噂が溢れている。
ところで、これらは果たして本当に只の流言なのか。
否、全部を無駄として切り捨てるべきものではない。
確かに無意味な噂も多いが、多少のノイズが混ざっているものの、少なからず真相の一端に触れた人言もある。
本来知り得ないはずの情報が、意図せずゴシップの海に溶け込んでいる。
何故、そのような事が起きるのだろうか。
人々の好奇心があるから?無意識な作用が働くから?それとも、善意や悪意が介入するから?
さあ、わからない。
兎も角、それらの噂をどうするか。
気にせず無視する。調べて無為に終わる。内容の真意を探る。真相を見抜き有効活用する。
程度はそれぞれ、その人次第。
あとは自由に噂と付き合えばいいだろう。











最後に、噂話をもう一つ。


そこはB-8の研究所、企業秘密の宝庫。
表向きは医療分野、ロボット工学、数多の事業で社会に貢献する最新鋭の施設。
裏では違法とされる様々な危険物の研究・開発・製造を行う闇の工廠。
その最深部には、禁断の何かが封秘されている、と。


 ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~


キリヤ・ケイジは未だ研究所の中にいた。
先のマスター同士による死闘の後、クソッタレの最低野郎を追いかける訳でもなく、不具合のジャケットスーツを脱ぎ捨て、休むことなく周辺の部屋を確認して回っていた。
鮮血に染まった死体が所々に転がっている。この世界での顔見知りも何人かその中にいた。だが、今はそれよりも。
とある扉を開けたところで、彼女を見つけた。
リタ・ヴラタスキ。
元の世界ではギタイを駆逐する人類最強のジャケット兵。付けられた渾名は「戦場の牝犬」。
偽りの世界ではジャケットの研究に携わるただの少女。
だが、血潮の海に浮かぶその顔は生気のない虚ろそのもの。
彼女は頭に開いた穴から血を流して倒れている、そんな姿をケイジは見つけてしまった。



―――ああ、それは分かりきっていたことだ。

―――あの狂人がここに現れた時点で。
―――自分が問いただした時点で。
―――奴が捨て吐いた時点で。

―――ここにいたのは化物殺しの狂犬たる“本物”の英雄ではなく、
―――ただの普通の人として生きていた“偽り”の少女なのだから。

―――こうなることは分かりきっていたことだ。
―――人の死なんて、何度もループで体験してきたことだろう。
―――これもその内の一つだ、だから何でもないことなんだ。










―――だけど










―――ああ、視界の端で道化師が踊っている。





ケイジがその場にいたのは数刻の間だった。
外面には何も変化を表さないまま、踵を返してその場を立ち去る。
内面にある狂気と湧き上がる感情に気付くことなく。
今この場で為すべきことはない、そしてまだこの研究所で為すべきことがあると感じて。
押し寄せる疲労を無視しながら、ケイジはさらに奥へと進んでいった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


T-1000は未だ未だ研究所の中にいた。
二騎のサーヴァント同士の死闘に介入し一人のマスターを葬った後、地上に出る訳でもなく。
逆にT-1000は奥に進み、やがて堅牢なドアの前に辿り着き、壁面に備えられた端末を操作し始めた。

そもそも、T-1000はなぜ研究所にいるのだろうか。
T-1000は新たに見つけた標的“北条加蓮”、彼女をあらゆる手段を使って殺そうとしていた。
そのためにT-1000はいくつかの仕込みを施し、様々な場所に情報を流していた。
動かなくなった“北条加蓮の母親”を自宅に置き、その娘が凶行に及んだようにみせかけて。
警察、各種メディア関係、情報屋、ネットなどに彼女の悪評をばら撒き。
そして最後に、自らの手で標的を確実に抹殺するために、ここへ来た。
この扉の奥に眠っている、とある物を求めて。

余談だが、目的地を目前にして他の聖杯戦争参加者による戦いが起きていた事については想定外だった。
同時に、その戦闘を経て“鍵”を手に入れられたことも予期せぬ誤算だった。
その“鍵”がなくともT-1000は自身の能力を駆使する事で目的の場所には到達できる確証を持っていた。
しかし、“鍵”があれば余計な工程や時間を取らずに済む。
たまたまの偶然で然したるリスクもなく“鍵”を得られたのならば、それを使う以外の手立てはない。
故にT-1000は端末を操作し、“鍵”を使う段階へと進めた。
だが、その前に。

「やっと見つけたぞ、アサシン」

それを遮るかのように声が薄暗い廊下に響く。
T-1000はその声の主を知っている、忌々しい人間<マスター>の声であることを。
あと一歩のところまできていたが、特段焦り急ぐ必要もないため、T-1000は振り向いた。
近づいてくる契約者を見据えるために。
彼、キリヤ・ケイジが少なからず驚く顔を見るために。
T-1000は“今の姿”でそれとなく言葉を交えることにした。

「キリヤ・ケイジか、ここで何をしている。
 ここは立ち入り禁止区域だ、お前が来るべきところではないぞ」
「なっ…え、紫杏、社長…?」

その貌はキリヤ・ケイジも見知った人物のものだった。
スーツを纏った若いキャリアウーマンのようで、しかし年齢以上に威厳と風格のある女性。
この研究所を保有する企業の社長であり、何度か視察に訪れたことのある人物。
そして、先の争いの最中にT-1000がこの手で葬ったマスターの一人。
―――そう、T-1000は“神条紫杏”の姿に変容していたのだ。

「いや…アサシン、なのか」
「ああ、そうだ」

しかしケイジはすぐにその正体を見破ってしまった。
やはりマスター相手に注視されるとバレてしまうようである。

「何故お前がその姿に」
「簡単な話だ。神条紫杏は聖杯戦争の参加者だった」
「!?…お前、もしかして、紫杏社長を」
「ああ、殺した」

重要人物の殺害宣言、さらに衝撃の真実にケイジは驚く。
まさか紫杏社長が自分と同じ契約者で、知らぬ間に自分のサーヴァントが葬っていただなんて。
老若男女の貧富の違い、地位、役職、権力の有無にかかわらず聖杯戦争の参加者は選ばれている、という可能性を頭の中では留めていたつもりだが、彼女については全くと言っていいほどに思い至っていなかった。
そして同時に不安も覚える。
もしかしたら、組織の末端である自分の素性も知られていたのでは、と考えると戦慄が走る。

「…お前は、一体何をしようとしているんだ」
「…ついでだ、自分の目で確かめてみるがいい」

そのまま“神条紫杏”の顔が端末正面に近づいていく。
機械から微かな赤外線照射が放たれ、“神条紫杏”の網膜をスキャンする。
虹彩認証が正常に作動し、分厚いドアが何の問題もなく開かれて。
そして間を置くことなく“神条紫杏”に扮したT-1000が部屋の中へと滑り込んでしまった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「おい、待て、アサシンっ!」

先に中へ入ったT-1000の後を追うように、ケイジも釣られ中へと入っていく。
しかしT-1000の姿は姿を消しており、暗く広い空間が視界に映るだけだった。

「クソッ、何処行きやがった。それになんだ、この場所は」

ケイジはこの場所を知らない。
ここはケイジの権限では近寄ることもできない未知の領域、その最深部である。
元はと言えば、姿を消したはずのT-1000の気配が研究所内にいるように感じて、それが正しいか確かめるためにここまで侵入してみただけだが。
思わぬ事態が続く中、ここは明らかに異様で異質な場所であると直感が告げる。
―――この場所は一体なんだ。
―――もしかして、紫杏社長はここに何か隠していたのか?
―――そして、あのイカれた機械野郎は一体何を企んでいやがる。
数瞬の間だけそのような事を考えていると、突如上方よりカタン、カタン、カタン、と音が鳴り響く。
遥か上の照明が点灯し、闇に包まれていた空間が徐々に明るくなっていく。
そして、複数の何かが光に曝される、一斉に影を落とした。


「な、なんだ、これは!」



それは、それらは、機械人形であった。
無機質で、無骨で、不気味なロボットらしきモノが幾つも並んでいる。
人からかけ離れたその姿は、青く塗られた球体のボディに自立行動可能な脚がついており、赤く大きい眼球のような部分がまるでこちらを見ているかの如く威圧感を放っている。
今はまだ物言わぬ置物に過ぎないが、主からの命令を待つ兵のように佇んでいるようだった。
―――一体なんだ。何のためにコイツらはいるのか。
絶え間なく続く正体を掴めない状況に、しかしケイジの疑問も尽きる事はない。
暫くして、ロボット達の隙間からT-1000の姿を発見する。
ケイジはすぐさま奥にいる彼、いや、今は彼女の元へ向かい、そして問いただした。

「説明しろ!コイツは一体なんなんだ、お前は何をしようとしているんだ!」

何度でも繰り返す確認するための質問。というよりも命令に近い物言い。
まともに取り合わなかったT-1000も、作業が一段落したのか、操作を終えてついに語り始めた。

「聖杯戦争に勝つ、敵を殲滅する。そのためにこの“TX-110”を使用する」
「“TX-110”…?」

“TX-110”と呼称されるロボット。
それは“神条紫杏”が元いた世界で秘密裏に開発した決戦用兵器。
同じ組織のNo.2が率いる超能力者部隊が奇襲を仕掛けてきた際には逆に殲滅、そして返す刀で本部を強襲した時にも瞬く間に制圧という圧倒的な性能を持つ、“神条紫杏”の手腕もさることながら彼女のクーデターに多大な貢献を残した代物である。
超能力の使用を阻害するESPジャマー、簡単に人を吹き飛ばしてしまうレーザー兵器を装備し、軽火器程度では対処しきれない堅い装甲を備えた“TX-110”は、つまり普通の人間相手には過剰な戦闘能力を有する殺戮兵器である。
それを、如何様な理由でもって“神条紫杏”は保有し、しかし使用することなく封印していたかは、今となっては分からない。
ただ、厳重に秘匿された機密情報とその存在をT-1000は簡単に暴きだしてしまった。
T-1000にしてみれば研究所のセキュリティなどザルのようなものであり、以前侵入した際に容易に情報を吸い出していたのだ。
いつの日か有効活用してみようと考えていたが、ついにそれが、今となった。

「“TX-110”は“神条紫杏”が隠し持っていた兵器、これで標的<ターゲット>“北条加蓮”を抹殺する」

その宣言と同時に、T-1000の全面にある端末の画面に一人の少女が映し出される。
「誰だ」とケイジは一瞬思った。
だがしかし、何故だか、薄っすらと、そしてじっくりと拡がるように、何処か見覚えがあるように感じていた。
頭の奥に眠っている記憶を想起するために少女の顔を再度確認すると、ダルそうに歩く姿が思い浮かんできた。
―――たしか、以前にランニング中に公園で見た……
―――あの時の、眠た気にしていた女子高生、なのか……?

「この娘も、マスターなのか?」
「その通りだ」
「それは、確かなのか」
「サーヴァントと共に逃走するところも確認した、間違いない」


平和な日常を彩る記号の一つ、NPCだと思って全く気にも留めていなかった。
水と油のような立場であると思っていたが、まさかこんなところで繋がっているとは。
画面に映るその顔は、どこか儚げな、希望も夢も諦めてしまった、そのような印象を受ける少女だ。
それでも本当にどこにでもいる、些細な事で悩んだり幸せを享受していそうな若者で。
血生臭いことなど知らずに、普通でまともで退屈な日常を過ごしてきた人間にしか見えない。
そんな彼女が、一体何を抱いて聖杯戦争に参加しているのだろうか。
昨日助けた少女のように、神様とやらに叛逆するつもりだろうか。
先程の狡猾な戦争屋のように、望みのために闘争を求めるのだろうか。
それとも、別の思惑があるのだろうか。
わからない。彼女がどのような人間なのか知らないのだから。
そして、自分は…

「すでに“TX-110”に命令<コマンド>を与えた。
 もう止められない。たとえお前が邪魔をしようとも無駄だ」

ケイジには、前も、今も、これからも、ループを脱出するという目標がある。
その過程で邪魔者を排除し聖杯を掴むという明確な目的意識もある。
特に、サーシェスのようなサイコパス野郎ならば手加減しない、確実に殺してやると心に決めたばかりだ。
だから、どんな手でも絶対に生き残る、その決意と覚悟は当に出来ていた。
そのはずだった。
なのに、狙われてしまった彼女に対し、自分はどうするのかを決めきれずにいた。
目の前の化物が彼女を殺害することを、許容するのか、否か。
さらに言えば、明らかに弱者であろう彼女を、果たして自分の手で殺せるのか。
彼女が何者かを判断することなく、ただ自分の願望のためだけに犠牲にすることができるのか。

「私に令呪を使うのも無駄だ。
 例え私に自害を命じようとも、その瞬間に“TX-110”がお前を抹殺するように設定した」

T-1000の宣言に合わせたかのように、背後のロボット達が起動する音がして、やがてそれらの視線が集まっているように感じた。
その言葉は本当なのだろう、既に命令を受け取った彼らは例え主亡き後も独自に動き続けるに違いない。
一応、令呪を用いた別の回避方法も考えられなくはないが、どちらにしても令呪一画を消耗するほかない。
ケイジに残された令呪は残り二画、ここは慎重にならざるを得ない。

「とにかく、私の邪魔をさせない。
 そしてこれだけは言っておこう。お前がここで大人しくしているなら危害を加えない。
 さあ、お前はどうする」

選択しなければならない。
自分はどうするのか。標的となった彼女をどうするのか。今この場面をどうするのか。
迷う間もなき審判の刻が訪れる。




【B-8/とある研究施設・最深部/二日目 午後】

【キリヤ・ケイジ@All you need is kill】
[状態]疲労(大)
[令呪]残り二画
[装備]
[道具]
[金銭状況]同年代よりは多めに持っている。
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に生き残って、ループを打ち破る。
1.聖杯を取る。その過程で邪魔をする主従は殺す。特にサーシェスは絶対に殺す。
2.T-1000と北条加蓮、それらの対処をどうするか、どの選択を進むべきか。
3.サーヴァントの鞍替えを検討中。ただし、無茶はしない。というより出来ない。
[備考]


【アサシン(T-1000)@ターミネーター2】
[状態]正常、『神条紫杏』の姿に擬態
[装備]拳銃
[道具]『仲村ゆり』の写真
[思考・状況]
基本行動方針:スカイネットを護るため、聖杯を獲得し人類を抹殺する。
1.現段階の最優先事項として、「北条加蓮」を抹殺する。
2.多種多様な姿を取って、情報を得る。
3.マスターらしき人物を見つけたら様子見、確定次第暗殺を試みる。
 ただし、未知数のサーヴァントが傍にいる場合は慎重に行動する。
4.「仲村ゆり」を見かけたらマスターかどうか見極める。
[備考]
1.キリヤ・ケイジの私物に液体金属の一部を忍ばせてあるので、どこにいるかは大体把握しています。
 なお、魔力探知などにより忍ばせた液体金属が気付かれてしまう可能性があります。
2.現在“TX-110”を運用した「北条加蓮」殺害のプランを計画中。
 複数で標的を狙いつつ敵対者の戦闘能力を把握し、臨機応変に対応する予定。
 その他については次の書き手にお任せします。

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