――――――――やり直したい過去、ありますか?
青空。炎。粉塵。真実。願い。最後。破壊。世界。人形。管理。崩壊。終了。聖杯。
聖杯戦争は、最後の勝者が残ったことを確認すると共に終わりを告げた。
後は、勝者に聖杯の祝福が授けられるのみ。
勝者は、薄汚れた願い事を携え、黄金の螺旋階段を登っていく。
一歩、一歩。噛みしめるように、ゆっくりと足を階段へと落とす。
ふと、視界を下に向けると、総てが崩壊した街並みが広がっている。
悲鳴と怨嗟の声が耳に響く。頬を撫でる風が、肌をざわつかせ、焼け焦げた肉の臭いが生の実感を感じさせる。
それとは裏腹に、見上げた空は何処までも広く、青かった。
叶うなら、この空の向こうまで飛んでいきたいとさえ思ってしまう程に、綺麗だ。
聖杯戦争は、最後の勝者が残ったことを確認すると共に終わりを告げた。
後は、勝者に聖杯の祝福が授けられるのみ。
勝者は、薄汚れた願い事を携え、黄金の螺旋階段を登っていく。
一歩、一歩。噛みしめるように、ゆっくりと足を階段へと落とす。
ふと、視界を下に向けると、総てが崩壊した街並みが広がっている。
悲鳴と怨嗟の声が耳に響く。頬を撫でる風が、肌をざわつかせ、焼け焦げた肉の臭いが生の実感を感じさせる。
それとは裏腹に、見上げた空は何処までも広く、青かった。
叶うなら、この空の向こうまで飛んでいきたいとさえ思ってしまう程に、綺麗だ。
綺麗過ぎて、涙が出た。
此処に辿り着くまで喪ったものは多かった。
この街は優しさも甘えも簡単に奪い去る狂気の戦場だ。
培ってきた常識も、築いた信頼も、現実を蝕んでいく。
それでも、勝者として君臨した彼/彼女は抗うことをやめなかった。
「戦わずとも願いは叶うかもしれない」といった甘く蕩けた言葉を退廃した世界でも声を大にして叫ぶのだ。
夢や理想、想いこそが尊ばれる王道の御伽話。
そんな、未来を夢見て戦った。
抱いた想いは簡素なれど、真っ直ぐだった。絶対に護りたいと焦がれた輝きだった。
客観的な視点、理想と現実の溝に生まれた齟齬を前にしても、曲げれぬ約束が今も胸で煌めいている。
それは、残酷な現実に身を浸しても、変わらないはずだった。
綺麗なままで前へと進み、純白な願いに殉じたい。
けれど、聖杯戦争はそれを許さない。
埋められない溝があることを、理解せざるを得なかった。
この街は優しさも甘えも簡単に奪い去る狂気の戦場だ。
培ってきた常識も、築いた信頼も、現実を蝕んでいく。
それでも、勝者として君臨した彼/彼女は抗うことをやめなかった。
「戦わずとも願いは叶うかもしれない」といった甘く蕩けた言葉を退廃した世界でも声を大にして叫ぶのだ。
夢や理想、想いこそが尊ばれる王道の御伽話。
そんな、未来を夢見て戦った。
抱いた想いは簡素なれど、真っ直ぐだった。絶対に護りたいと焦がれた輝きだった。
客観的な視点、理想と現実の溝に生まれた齟齬を前にしても、曲げれぬ約束が今も胸で煌めいている。
それは、残酷な現実に身を浸しても、変わらないはずだった。
綺麗なままで前へと進み、純白な願いに殉じたい。
けれど、聖杯戦争はそれを許さない。
埋められない溝があることを、理解せざるを得なかった。
戦わなければ、生き残れない。
彼/彼女も最初こそ過去の残滓を捨て切れずに、理想と夢を追い続けていた。
一週間。彼/彼女がこの世界で戦った日数だ。
長いか、短いか。人によってその判断は分かれるが、彼/彼女にとっては永遠の刹那にも感じられるひとときだった。
出会って、育んで、別れて。そして、また出会う。
幾つもの出会いと別れを乗り越えて、走り続けたこの時間は何にも替え難い。
信じた想いに嘘はない。駆けた刹那は、胸に強く刻まれている。
一週間。彼/彼女がこの世界で戦った日数だ。
長いか、短いか。人によってその判断は分かれるが、彼/彼女にとっては永遠の刹那にも感じられるひとときだった。
出会って、育んで、別れて。そして、また出会う。
幾つもの出会いと別れを乗り越えて、走り続けたこの時間は何にも替え難い。
信じた想いに嘘はない。駆けた刹那は、胸に強く刻まれている。
例え、最後に残ったのが自分だけであろうとも。
無くした、愛しい甘さ。
意地っ張りで負けず嫌いな彼/彼女は、それでもと足掻き、悶え苦しみながらもそのままで貫こうとしたが――叶うことは終ぞなかった。
そもそも、当然の話だ。最後の一人になるまで願いは叶わない。
参加する者は大なり小なり願いを抱えて運命の夜へと飛び込んできたのだ。
確実な未来が見えている道を取るか、それとも果てが見えぬ不明瞭な道を選ぶか。
どちらが好まれるかなんて、わかりきった答えだ。
けれど、自分を曲げるといったことだけはどうしてもできなかった。
せめて、この思いだけは誰にも譲らない。不退転の想いを胸に、彼/彼女は階段を登り続けた。
凝り固まった悔恨と願いに囚われた彼/彼女は、振り返る気力が湧かない程、視界を失っていた。
現実は苦く、恐怖感を煽り、熱を帯びた頬が痛い。
そもそも、当然の話だ。最後の一人になるまで願いは叶わない。
参加する者は大なり小なり願いを抱えて運命の夜へと飛び込んできたのだ。
確実な未来が見えている道を取るか、それとも果てが見えぬ不明瞭な道を選ぶか。
どちらが好まれるかなんて、わかりきった答えだ。
けれど、自分を曲げるといったことだけはどうしてもできなかった。
せめて、この思いだけは誰にも譲らない。不退転の想いを胸に、彼/彼女は階段を登り続けた。
凝り固まった悔恨と願いに囚われた彼/彼女は、振り返る気力が湧かない程、視界を失っていた。
現実は苦く、恐怖感を煽り、熱を帯びた頬が痛い。
一日。二日。三日。四日。五日。六日。七日。日が経つに連れて、彼/彼女の傍からは人がいなくなっていった。
七曜の総てを巡り終える頃、世界はヒビ割れていた。
欲しかったのはハッピーエンドだ。ほろ苦い諦めなど、願い下げだった。
足掻いて、否定する。誰もが認めるハッピーエンドを勝ち取り、輝かしい未来をこの手で勝ち取ってこそ、価値がある。
欲しかったのはハッピーエンドだ。ほろ苦い諦めなど、願い下げだった。
足掻いて、否定する。誰もが認めるハッピーエンドを勝ち取り、輝かしい未来をこの手で勝ち取ってこそ、価値がある。
不屈の意志が、理想を削っていくのも知らずに。
どれだけ想いを突き詰めようとも、人にできることは限られている。
命は簡単に霞み、追い詰められた心は脆くも粉々になっていく。
数多くいた仲間達とたった一人の“自分”。
結局、最後は一人だ。定められたルールには抗えず、運命は勝者を選定する。
それを考えると、乾いた笑い声が口から漏れ出した。
命は簡単に霞み、追い詰められた心は脆くも粉々になっていく。
数多くいた仲間達とたった一人の“自分”。
結局、最後は一人だ。定められたルールには抗えず、運命は勝者を選定する。
それを考えると、乾いた笑い声が口から漏れ出した。
何が出来た? 過ぎた理想を抱いて、意地を張って――意味はあったのか?
陥った自責の念に、彼/彼女はほんの少しだけ足を止めてしまった。
小さな綻びであったけれど、一瞬だけ思慮してしまう。
諦めてしまえ、と。
甘えに揺らいでしまえ、と。
もう、終わりにしてしまえ、と。
真っ直ぐな願いを無理に貫こうとしなくてもいいではないか。
ほんの少しだけ、“妥協”を覚えたら、今の苦境も解決だ。
小さな綻びであったけれど、一瞬だけ思慮してしまう。
諦めてしまえ、と。
甘えに揺らいでしまえ、と。
もう、終わりにしてしまえ、と。
真っ直ぐな願いを無理に貫こうとしなくてもいいではないか。
ほんの少しだけ、“妥協”を覚えたら、今の苦境も解決だ。
けれど、彼/彼女が引いた境界線はその選択肢を通さなかった。
理屈ではわかっているし、今の自分が抱いているのが未練がましい感情論だということも承知の上だ。
全てを救える力なんて無いし、護り切れたものなんて数少ない。
一人の人間としてどうしようもなく、彼/彼女は愚直に過ぎたのだ。
拭えなかった後悔がある。踏み出した勇気がある。
いつか夢見た世界に辿り着く時まで。
全てを救える力なんて無いし、護り切れたものなんて数少ない。
一人の人間としてどうしようもなく、彼/彼女は愚直に過ぎたのだ。
拭えなかった後悔がある。踏み出した勇気がある。
いつか夢見た世界に辿り着く時まで。
階段を登り切り、聖杯へと手を伸ばす。
結局の所、彼/彼女は喪ったものの大きさ、耐え切れないだけだった。
意地を張り続ける理由など、知れたことだ。
もう一度――貫きたい。
きっと、その結末は変わらないかもしれない。
最後まで抗って、戦って、その果てで見つかるものが、正しいのか。
その答えが見つからないからこそ、彼/彼女は納得できるまで、何度でも繰り返す。
故に、聖杯に願った。
意地を張り続ける理由など、知れたことだ。
もう一度――貫きたい。
きっと、その結末は変わらないかもしれない。
最後まで抗って、戦って、その果てで見つかるものが、正しいのか。
その答えが見つからないからこそ、彼/彼女は納得できるまで、何度でも繰り返す。
故に、聖杯に願った。
「やり直したい」
世界は流転し、再び始まりの時へと巻き戻る。
■
さあ、聖杯戦争をまた一から始めよう。
■
BACK | NEXT | |
聖杯戦争開幕 | 投下順 | -021:仲村ゆり&セイバー |
時系列順 |