新生人工言語論

自然物以外の高級語

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lideldmiir

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前回の高級語は具体的な物に限定したので、今回は自然物以外のやや抽象的なものについて言及したいと思います。

自然物以外の高級語とはたとえば学術用語や道具の類のことです。
道具というのはここでは時計、車、洗濯機、医療器具など、人工的に作り出したものを指します。
科学・技術・芸術などの学術用語は抽象的ですが、大雑把に言って道具はそういった知識を応用した具体的なものだといえます。

学術用語や道具の数は極めて多いです。学術用語は勿論として、道具はその物の名称だけでなく、各部品の名前まで必要ですから。
これらを全て命名するのは事実上不可能です。人類が長年の歴史で作り上げてきたものを個人や少人数では命名しきれません。
そこで、日常生活に必要なものから作っていくのが重要になります。

特に日常目にするものを優先し、中でも日常その名称を目にする物を優先すべきです。
たとえば車の細部は目にしますが名前は書いてありません。
一方、日用品の原材料名は箱に書いてあり、名称が目に触れます。目に触れる物は優先的に作るべきです。

さて、道具の名前なら車のブレーキやハンドルは作るとして、とても細かい部品、母語でさえ知らない部品を命名する必要はありません。
もし自言語で車の開発をする必要が出てきたら、そのとき初めてそういう部品を命名すればいいだけのことです。
学術用語も同じです。別に自言語でそれを研究したり勉強したりする必要がなければ作らなくていいです。必要だったら作るまで。それだけのことです。

しかし意外と日常生活に必要な学術用語は多いものです。
特に注目すべきは化学です。日用品の中に――特に原材料名の中に化学が多く潜んでいます。
今横にあるジュースの缶を見ましたが、ゲル化剤(増粘多糖類)、果糖ブドウ糖液糖、ビタミンCなどと書いてあります。
ふだん気にすることはありませんが、確かによく目にするものが当たり前のように記載されています。

日常的に目に触れる名称なのに自言語で訳せないと、人に聞かれたときに困るでしょう。
子供に聞かれたときなど一番困るはずです。日本語なら「知らない。そういう材料」と答えてもいいでしょう。

日本語名は既に決まっているから、それがどんな物質であるか知らなくても構いません。
でも自言語の場合、子供への回答は「知らない」ではなく「その語が存在しない」です。
これはまるで事情が異なります。あっても知らないならともかく、日常目にするのにその名称が無いでは困ります。
それがはたして何という物であるかという質問さえできません。

そこで、日常目にするものは命名しておいたほうが無難です。
特に化学は日用品の中に堂々と出ている上に、しっかり物質名が記載されています。
なのでこれを避けて通るのは難しいでしょう。テレビの部品のように一々名称が書かれていなければ無視できるのですが……。というわけで、意外な伏兵は化学です。
他は名称が細かくとも一々記載されていないので誰にも突っ込まれることはないでしょう。
自分でも母語でさえ知らない部品について述べることはないでしょうから、先回りして一々命名する必要はありません。

もちろん、名前が書いてないものは命名しなくて良いといっているのではありません。
細部までは命名しなくていいですが、その物自身の名称程度は命名しましょう。
たとえばパソコンやマウス、スキャナ、プリンタ、テレビ、ビデオなど、家電の類は命名しなければなりません。
もっとも、日本ほどの技術力の文化圏で実用するならですが。

なお、パソコン用語を全て命名する必要はありません。
メモリやハードディスクやインターネット程度なら作っておいたほうが良いかもしれませんが、イントラネット辺りはグレーゾーンで作成者次第です。
いずれにせよ高レベルな語は必要時に作りましょう。

さて、作る範囲を日常目にするものに区切って学術用語と道具を命名するとしたら、今度はどうやって命名するかが次の課題です。
自然物と同じく、人工文化がある場合は自文化の科学史等を参考に一々命名しますが、自力で地球の科学力を越えるのは実質不可能なため、実際には当該分野の本を調べて命名していく地道な作業になります。

後験語の場合、術語をそのまま自言語に直訳するか、音訳してそのまま取り込むのが一番便利でしょう(特に後者が楽なのでお勧め)。
自言語に訳す場合、注意点があります。大抵の術語はもはや英語なので英語を訳すことになりますが、訳し間違いには気をつけてください。
たとえば日本語の数学用語の「有理数」は「有比数」の間違いです。rationalという語の訳を間違えた結果です。こういう間違いをしないように気をつけてください。

また、英語には及びませんが日本語文献も相当多いので、日本語を母語とする作成者の中には日本語の術語を自言語に訳す人もいるでしょう。
そのときは有理数みたいな術語に気をつけて、本などで一々裏を取ったほうがいいです。
有理数は既に日本語の時点で間違っている術語なので、それをそのまま訳してしまうと間違いを踏襲してしまうからです。
もちろん英語にも日本語の有理数のような「既に間違った表現」があります。試しに「帝王切開」の語源を調べてみてください。そういったものを訳す際はご注意を。

もっとも、後験語の場合、たとえ間違っていても国際的な英語を正しいと認めて命名することも考えられます。
人工文化がある場合、そのようなことは推奨されませんが、広く使われたい後験語の場合は参考言語の間違えさえ肯定しても構わないでしょう。
たとえそうしても、作成者と学習者が「間違っていてもむしろ覚えるのが簡単で良い」と思えれば、なんら問題はないと思います。
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