ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
What a Beautiful Hopes
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What a Beautiful Hopes ◆UcWYhusQhw
「…………え?」
朝日が既に高くまで昇った6時を境に流れた放送。
街の路上を進んでいた二人の少年少女は歩みを止め聞き耳を立てていた。
その放送にいの一番に呼ばれた名前に未来から現れた少女、朝比奈みくるは驚きの余り動きを止めてしまった。
破れかぶれのメイド服を抑えていた手を思わず離し、そのまま顔を覆ってしまう。
街の路上を進んでいた二人の少年少女は歩みを止め聞き耳を立てていた。
その放送にいの一番に呼ばれた名前に未来から現れた少女、朝比奈みくるは驚きの余り動きを止めてしまった。
破れかぶれのメイド服を抑えていた手を思わず離し、そのまま顔を覆ってしまう。
自分が所属するSOSの団員長門有希。
そして、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースであった彼女が。
そして、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースであった彼女が。
「…………亡くなった?」
死んだのだ。
その告げられた事実がみくるにはただ信じられなくて。
その告げられた事実がみくるにはただ信じられなくて。
「えっ?……ふぇ?…………え?……」
驚愕がみくるの心を支配していく。
みくるが知る長門有希は少なくとも簡単に死ぬような人物でないはず。
情報思念体が使わした対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースはみくるが知る限りでも万能に近かったのだ。
事実、彼女の力によって問題が解決していった事が幾つもあった。
その彼女が事もあろうか一番最初に呼ばれてしまったのである。
みくるが知る長門有希は少なくとも簡単に死ぬような人物でないはず。
情報思念体が使わした対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースはみくるが知る限りでも万能に近かったのだ。
事実、彼女の力によって問題が解決していった事が幾つもあった。
その彼女が事もあろうか一番最初に呼ばれてしまったのである。
「嘘……そんな…………」
ただ、信じられなかった。
哀しみより驚愕がみくるの心を侵食していった。
哀しみより驚愕がみくるの心を侵食していった。
「長門さん…………嘘……ふぇ…………」
長門有希の死亡。
それはSOS団の朝比奈みくるだからこそ。
長門有希の万能さを知っているからこそ。
彼女と接しているからこそ。
それはSOS団の朝比奈みくるだからこそ。
長門有希の万能さを知っているからこそ。
彼女と接しているからこそ。
「そん……な……」
朝比奈みくるはただ、驚くしかなかった。
「…………大丈夫か」
そのみくるに対して声をかける少年――土屋康太。
彼は眼鏡をかけ直しながら心配そうにみくるに近寄る。
彼は眼鏡をかけ直しながら心配そうにみくるに近寄る。
「……あ……ああ、はい。びっくりしたけど大丈夫です」
みくるはそんな彼の気遣いに気丈に笑いながら応えた。
彼を心配させてはならない、その一心で。
内心を悟られないように無理に笑ったのだった。
みくるの誰が見ても無理しているような仕草に土屋康太は無表情のまま、でも心配するように
彼を心配させてはならない、その一心で。
内心を悟られないように無理に笑ったのだった。
みくるの誰が見ても無理しているような仕草に土屋康太は無表情のまま、でも心配するように
「…………辛かったらいつでも言えばいい」
そう声をかけ、みくるを見つめている。
ただ、見つめている。
そんな彼の心遣いにみくるは顔を朱に染めて手をばたばた振りながら言う。
ただ、見つめている。
そんな彼の心遣いにみくるは顔を朱に染めて手をばたばた振りながら言う。
「ありがとうございます。わざわざ私の心配をしてくれて」
「…………どうと言う事は無い」
「ありがとうございます」
「…………どうと言う事は無い」
「ありがとうございます」
謝辞の言葉を述べてみくるはお辞儀をする。
彼の心遣いに感謝しながら。
余りにも予想外の出来事に気が動転しそうだったのを抑えてくれたから。
心からの感謝の意を籠めて彼に送った。
彼の心遣いに感謝しながら。
余りにも予想外の出来事に気が動転しそうだったのを抑えてくれたから。
心からの感謝の意を籠めて彼に送った。
……最も土屋康太の目論見はそれだけではないのだが。
(…………グッ!)
土屋康太ことムッツリーニは心の中で指を立てる。
それは今も稼動しているこの眼鏡式のビデオカメラ。
そのカメラにみくるの溢れんばかりのボディを接近してとれた事。
しかも、服の切れ間からみれる柔肌。
余りのエロさに鼻血が噴出しそうだったがそこは我慢。
ただ、我慢してなるべく長い時間接近して映像を写すことが出来た。
その事に自ら賞賛を心の中で与えたのだった。
それは今も稼動しているこの眼鏡式のビデオカメラ。
そのカメラにみくるの溢れんばかりのボディを接近してとれた事。
しかも、服の切れ間からみれる柔肌。
余りのエロさに鼻血が噴出しそうだったがそこは我慢。
ただ、我慢してなるべく長い時間接近して映像を写すことが出来た。
その事に自ら賞賛を心の中で与えたのだった。
…………だから、土屋康太は気付いていない。
朝比奈みくるは驚きこそしたものの『哀しみ』すらしなかった事を。
あの長門有希がこんな早くに命を落とした事に驚いただけで。
長門有希の死に対しては哀しみすら見せなかった事に。
むしろ長門有希を屠る事が出来る人物が居た事にも驚いていた。
また長門有希を失った事でこの場所からの脱出方法が難しくなったと言う所まで推測できる。
正直、これからどうすればいいか解らない。
長門有希無しで果たしてこの殺し合いから脱出できるのだろうか。
また、それは可能性的に高いのだろうか。
その答えはもう闇の中でみくるには判断できない。
あの長門有希がこんな早くに命を落とした事に驚いただけで。
長門有希の死に対しては哀しみすら見せなかった事に。
むしろ長門有希を屠る事が出来る人物が居た事にも驚いていた。
また長門有希を失った事でこの場所からの脱出方法が難しくなったと言う所まで推測できる。
正直、これからどうすればいいか解らない。
長門有希無しで果たしてこの殺し合いから脱出できるのだろうか。
また、それは可能性的に高いのだろうか。
その答えはもう闇の中でみくるには判断できない。
それほどまでに長門有希の存在は大きかったという事。
だけどそれまで。
その驚きで気が動転しそうになったが、それまで。
朝比奈みくるは長門有希に関して想いを巡らす事をやめた。
そんな様子で二人はあってるようで微妙に噛合ってなかったのだった。
「ふもーーーーーーーーーー!!!!」
突如、響く奇声。
放送の余韻に浸っていた二人を容赦なく現実に帰す声。
二人が振り返った先に見えるものは
放送の余韻に浸っていた二人を容赦なく現実に帰す声。
二人が振り返った先に見えるものは
「ふぇええええええええええええええ!? な、何なんですか!?」
緑色の帽子、赤い蝶ネクタイを纏った黄色い動物のような化け物。
みくるにとって未知の生物らしき存在がふもふも叫びながら突撃してくる。
白髪の少女に襲われた時よりある意味衝撃で腰を抜かしそうだった。
みくるはそのまま後ずさりを始め化け物から離れようとする。
みくるにとって未知の生物らしき存在がふもふも叫びながら突撃してくる。
白髪の少女に襲われた時よりある意味衝撃で腰を抜かしそうだった。
みくるはそのまま後ずさりを始め化け物から離れようとする。
「…………下がれ」
そのみくるを庇う様に前に出たのは土屋康太。
ロケット弾を肩に担ぎ化け物に向けている。
何かあれば、即座撃つつもりであった。
勿論、みくるへの好感度稼ぎもかねて。
ロケット弾を肩に担ぎ化け物に向けている。
何かあれば、即座撃つつもりであった。
勿論、みくるへの好感度稼ぎもかねて。
「ふ、ふも!?」
逆に驚いたのは化け物の方。
向けられた銃口に何か脅える様に後退りを始めている。
そして二人、特に土屋康太に向かって見つめるように眼差しを向けていた。
向けられた銃口に何か脅える様に後退りを始めている。
そして二人、特に土屋康太に向かって見つめるように眼差しを向けていた。
「ふもっ! ふもっふ!」
手振り身振りで何かを言おうとしている化け物。
みくる達はその意外な行動にきょとんとして逆に戸惑ってしまう。
その様子にみくるは勇気を振り絞って尋ねる。
みくる達はその意外な行動にきょとんとして逆に戸惑ってしまう。
その様子にみくるは勇気を振り絞って尋ねる。
「害を与えるつもりはないんですか?」
「ふも!」
「ふも!」
力強く頷く化け物。
ついでに手を上げて無害をアピール。
みくる達は互いに顔を見合わせて
ついでに手を上げて無害をアピール。
みくる達は互いに顔を見合わせて
「え、えと……どうします? 土屋くん、解ります?」
「…………解らない」
「ふ、ふも~~~……」
「…………解らない」
「ふ、ふも~~~……」
首を振った。何かを伝えたいのは解るがさっぱり解らなかった。
二人はお互いに首を傾げ悩むばかり。
その様子に化け物は落胆した様子でいじけ始める。
みくるはそんな仕草を見てちょっと可愛いなと思ってくすっと笑ってしまう。
とはいえ、状況的には膠着し何も解決にはなっていなかった。
二人はお互いに首を傾げ悩むばかり。
その様子に化け物は落胆した様子でいじけ始める。
みくるはそんな仕草を見てちょっと可愛いなと思ってくすっと笑ってしまう。
とはいえ、状況的には膠着し何も解決にはなっていなかった。
「…………困った」
「困りましたねぇ……どうしましょう」
「ふも……ふも……」
「困りましたねぇ……どうしましょう」
「ふも……ふも……」
三者三様、互いに困った風に首をかしげる。
考えても、考えても解決するものでもない。
そもそも、言葉が通じないのだから理解しようがない。
まさに頭を抱え込みたいような状況になりかけていた時
考えても、考えても解決するものでもない。
そもそも、言葉が通じないのだから理解しようがない。
まさに頭を抱え込みたいような状況になりかけていた時
「…………やっと追いついた。何を見つけたか知りませんけど駆け出さないでください、吉井さん」
現れたのは黄色のくすんだコートを纏った中性的な整った顔たちをした人。
少しうんざりとした様子で吉井と呼んだ化け物を睨む。
そして、みくる達に気付き話しかけ始めた。
少しうんざりとした様子で吉井と呼んだ化け物を睨む。
そして、みくる達に気付き話しかけ始めた。
簡単な名乗りとついでに化け物――吉井明久の紹介をしたキノ。
キノは気だるそうに彼らを見て顎に手をを乗せ何かを考え始めていた。
そんな時だった。
キノは気だるそうに彼らを見て顎に手をを乗せ何かを考え始めていた。
そんな時だった。
「…………吉井明久?」
普段はむっつりした表情の土屋康太の顔が驚きに変わったのは。
それは聞きなれた名前が聞こえたから。
しかも、その人物が熊だかネズミだかよくわからない化け物に変わっている。
驚きと不思議が彼の心を染めていく。
それは聞きなれた名前が聞こえたから。
しかも、その人物が熊だかネズミだかよくわからない化け物に変わっている。
驚きと不思議が彼の心を染めていく。
「ふもっふ!」
反応する化け物もとい吉井。
何か変なポーズをとり存在をアピールし続ける。
どうやってこんな姿になったかは知らないがとりあえず吉井である事が判明した。
土屋康太はそんな吉井を見続け、そして
何か変なポーズをとり存在をアピールし続ける。
どうやってこんな姿になったかは知らないがとりあえず吉井である事が判明した。
土屋康太はそんな吉井を見続け、そして
「…………馬鹿だ」
「ふもっ!?」
「ふもっ!?」
ただ、そう一言だけ呟いた。
過剰な反応をしてへこんでいる吉井もとい化け物。
そんな様子に大きな溜息をキノは吐きながら
過剰な反応をしてへこんでいる吉井もとい化け物。
そんな様子に大きな溜息をキノは吐きながら
「知り合いですか?」
「…………(コク)」
「……ああ、だからいきなり駆け出したんですか、なるほど」
「ふも!」
「……で、再会したのにまだ脱がないんですか?」
「…………(コク)」
「……ああ、だからいきなり駆け出したんですか、なるほど」
「ふも!」
「……で、再会したのにまだ脱がないんですか?」
吉井が駆け出した理由をキノは理解したが新たに発生した疑問が一つ。
それは何故彼が未だにきぐるみを脱がないかという事。
キノは頭を抱えながら吉井に尋ねる。
それは何故彼が未だにきぐるみを脱がないかという事。
キノは頭を抱えながら吉井に尋ねる。
吉井が駆け出した理由をキノは理解したが新たに発生した疑問が一つ。
それは何故彼が未だにきぐるみを脱がないかという事。
キノは頭を抱えながら吉井に尋ねる。
それは何故彼が未だにきぐるみを脱がないかという事。
キノは頭を抱えながら吉井に尋ねる。
「ふも、ふもふも、ふもっふ!」
それを吉井は身振り手振り鳴き声で説明する。
だけど当然の事ながら3人に伝わらず困惑するばかり。
首をかしげ吉井を見つめている。
だけど当然の事ながら3人に伝わらず困惑するばかり。
首をかしげ吉井を見つめている。
「ふも! ふも!」
吉井は必死に身振りを大きくするが全く伝わらない。
キノと土屋康太は顔を見合わせ、
キノと土屋康太は顔を見合わせ、
「解りますか?」
「…………(ふるふる)」
「ですよね」
「ふも~~~~~……」
「…………(ふるふる)」
「ですよね」
「ふも~~~~~……」
落胆する吉井。
その姿を見てみくるは傾いていた首を更に傾け。
そして、何かが解った様に頷き
その姿を見てみくるは傾いていた首を更に傾け。
そして、何かが解った様に頷き
「…………もしかして脱がして欲しいんですか?」
「ふもっ! ふもっ!」
「やっぱりそうだったんですか~何となくそんな気がしたんです」
「ふもっ! ふもっ!」
「やっぱりそうだったんですか~何となくそんな気がしたんです」
大きく頷く吉井に会心の笑みをみくるは浮かべて喜ぶ。
その極上の笑みに土屋康太の心は癒されながらもどうして解ったんだろうと疑問が浮かぶ。
それはキノも同様で不思議そうに呟く。
その極上の笑みに土屋康太の心は癒されながらもどうして解ったんだろうと疑問が浮かぶ。
それはキノも同様で不思議そうに呟く。
「…………なんでわかったんでしょうね」
「…………さあ」
「……まぁいいか。脱がせましょう。手伝いお願いできますか?」
「…………(こく)」
「…………さあ」
「……まぁいいか。脱がせましょう。手伝いお願いできますか?」
「…………(こく)」
互いに頷きあって吉井の下に向かう。
そして互いに息を合わせて吉井のきぐるみの頭の部分を一気に外した。
その瞬間
そして互いに息を合わせて吉井のきぐるみの頭の部分を一気に外した。
その瞬間
「あーーーーー苦しかった! 暑い!」
現れた極普通の少年で額に沢山の汗がにじんでいる。
そして、きょろきょろ辺りを見回して、そして左側に居る少年を見つけて。
そして、きょろきょろ辺りを見回して、そして左側に居る少年を見つけて。
「会いたかったっ! ムッツーリニ!」
「…………苦しい」
「…………苦しい」
土屋康太ことムッツリーニに強く抱きしめたのだった。
吉井にとってまさか彼が名簿外の十人に含まれているとは思わなかった。
でもこの殺し合いの場で、生きて出会えた事、それはとても幸運で嬉しい事には違いなかったから。
だから、この久し振りに会った少年に喜びを露にして抱きしめる。
土屋康太も無表情ではいるが心のそこでは再会を喜んでいた。
こんなにも早く出会えた事は幸運の何者でもなかったから。
吉井にとってまさか彼が名簿外の十人に含まれているとは思わなかった。
でもこの殺し合いの場で、生きて出会えた事、それはとても幸運で嬉しい事には違いなかったから。
だから、この久し振りに会った少年に喜びを露にして抱きしめる。
土屋康太も無表情ではいるが心のそこでは再会を喜んでいた。
こんなにも早く出会えた事は幸運の何者でもなかったから。
だからこそ、互いに再会を喜びあったのだった。
それをみくるは微笑ましげに見つめ。
キノは呆れたように見ていた。
キノは呆れたように見ていた。
こうして、一騒動の後に彼らは再会を果たしたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
色々あったけど、僕らは無事、ムッツリーニと合流する事ができた。
ついでにあの可愛らしくも忌々しい着ぐるみも脱ぐ事がやっとできたしね!
今はムッツリーニの提案に乗って病院に向かってる所だ。
本当は南下する予定だったんだけど実に魅力的な提案だったから僕もその通りにした。
なんたって……
ついでにあの可愛らしくも忌々しい着ぐるみも脱ぐ事がやっとできたしね!
今はムッツリーニの提案に乗って病院に向かってる所だ。
本当は南下する予定だったんだけど実に魅力的な提案だったから僕もその通りにした。
なんたって……
「ナース……」
「ふぇ……どうかしましたか?」
「い、いえ、別に! 決して妄想してたわけじゃありませんからっ!」
「……ふ、ふぇ?」
「ふぇ……どうかしましたか?」
「い、いえ、別に! 決して妄想してたわけじゃありませんからっ!」
「……ふ、ふぇ?」
不思議そうに首を傾げる朝比奈さん。
危ない、危ない。妄想していた事を口に出しそうだったよ。
しかし、こんなむっちりな子と一緒にいたなんて羨ましいね、ムッツリーニ。
僕はムッツリーニを横目で見るとグッと親指を立てやがった。
危ない、危ない。妄想していた事を口に出しそうだったよ。
しかし、こんなむっちりな子と一緒にいたなんて羨ましいね、ムッツリーニ。
僕はムッツリーニを横目で見るとグッと親指を立てやがった。
この野郎と思ったけどまあいいか。
なんたって病院にいく目的は朝比奈さんのナースを見るためなんだからね!
乗らない訳にはいかないから!
それを提案したムッツーリニに多大なる拍手を送りたいぐらいだ。
簡潔に一言『…………ナース』と呟いただけで意図も汲めたし!
持つべきものは友達だよ、やっぱり。
……だけど、気がかりといえば余り木野君が乗り気でなかった事だ。
今は渋々後ろをついてきている感じだけど、最初は護衛の役割をここで打ち切っていいかと提案してきたんだ。
僕とムッツーリニが合流できたのもあっての提案だったけど、その提案を僕は蹴った。
折角ここまで一緒に着たんだんだし、折角気もあったんだから一緒にいこうよとね。
朝比奈さんも乗ってくれて、木野君は本当に渋々という感じで付き合ってくれた。
うん、気の合うもの同士が行動する……こういうの呉越同舟(本来の意味は仲の悪い者どうしが同じ所に居合わせたり、行動を共にしたりすること)というけどいいもんだ。
なんたって病院にいく目的は朝比奈さんのナースを見るためなんだからね!
乗らない訳にはいかないから!
それを提案したムッツーリニに多大なる拍手を送りたいぐらいだ。
簡潔に一言『…………ナース』と呟いただけで意図も汲めたし!
持つべきものは友達だよ、やっぱり。
……だけど、気がかりといえば余り木野君が乗り気でなかった事だ。
今は渋々後ろをついてきている感じだけど、最初は護衛の役割をここで打ち切っていいかと提案してきたんだ。
僕とムッツーリニが合流できたのもあっての提案だったけど、その提案を僕は蹴った。
折角ここまで一緒に着たんだんだし、折角気もあったんだから一緒にいこうよとね。
朝比奈さんも乗ってくれて、木野君は本当に渋々という感じで付き合ってくれた。
うん、気の合うもの同士が行動する……こういうの呉越同舟(本来の意味は仲の悪い者どうしが同じ所に居合わせたり、行動を共にしたりすること)というけどいいもんだ。
でも、放送の件で姫路さんが呼ばれなかったのは本当によかった。
他にも色々言っていたけどその事柄だけは本当安心したんだ。
ムッツリーニと合流できたし早く姫路さんも合流しないと。
姫路さんは僕が護らなきゃ!
他にも色々言っていたけどその事柄だけは本当安心したんだ。
ムッツリーニと合流できたし早く姫路さんも合流しないと。
姫路さんは僕が護らなきゃ!
そんな決意を改めてした所で僕達は目的地である病院に辿り着く事が出来た。
「……ひゃあ……大きな病院ですねぇ」
「…………ここに目的のものがあるはず」
「うん、そうだね楽しみだねムッツリーニ!」
「………………(ぐっ!)」
「……何でそんな無駄にに気合入っているんですか。いきますよ」
「…………ここに目的のものがあるはず」
「うん、そうだね楽しみだねムッツリーニ!」
「………………(ぐっ!)」
「……何でそんな無駄にに気合入っているんですか。いきますよ」
木野君は盛り上がる僕らを冷ややかに一瞥し大きな赤い十字が掲げられてる病院の入り口まで先導し向かう。
どうしたのだろう? 放送を聴いてから余り機嫌がよくないようだ。
僕は不思議に思いながら彼の背を追った。
そして自動ドアの前に立って自動ドアが開けかかった瞬間、木野君が声を張り上げ
どうしたのだろう? 放送を聴いてから余り機嫌がよくないようだ。
僕は不思議に思いながら彼の背を追った。
そして自動ドアの前に立って自動ドアが開けかかった瞬間、木野君が声を張り上げ
「……っ下がって! この匂いは……!」
僕達を急いで下がらせた。
僕はよくわからないまま木野君の指示に従い入り口から下がっていく。
木野君は僕達を下がらせた後、病院のガラス、自動ドアなど、割られるガラスに大きな石を投げて次々割っていた。
僕はこの行為を不思議に思いながらただ、木野君を見ている。
……一体何が起きたんだ?
僕はよくわからないまま木野君の指示に従い入り口から下がっていく。
木野君は僕達を下がらせた後、病院のガラス、自動ドアなど、割られるガラスに大きな石を投げて次々割っていた。
僕はこの行為を不思議に思いながらただ、木野君を見ている。
……一体何が起きたんだ?
やがて木野君も戻ってくる。
そして、皆、無言の時間が続いた後暫くしてから木野君が立ち上がった。
そして、皆、無言の時間が続いた後暫くしてから木野君が立ち上がった。
「……よし、もういいでしょう」
「……あの何があったんですか?」
「有毒な匂いがしましたから……何かの毒ガスの類でしょう」
「ど、毒ガス!?」
「ええ。まぁもう空気に流れて大丈夫なはずです」
「……あの何があったんですか?」
「有毒な匂いがしましたから……何かの毒ガスの類でしょう」
「ど、毒ガス!?」
「ええ。まぁもう空気に流れて大丈夫なはずです」
木野君が淡々といった事に僕は驚くばかりだった。
木野君は何か場慣れしているような感じで、対応もなれたものである。
……凄いなぁ木野君は。
木野君は何か場慣れしているような感じで、対応もなれたものである。
……凄いなぁ木野君は。
木野君は何事もなかったように歩き出し病院の入り口からはいっていく。
「さて、行きましょうか。もしかしたらここで何かあったかもしれません」
「ま、待ってよ木野君!」
「ま、待ってよ木野君!」
僕達は慌てながら、慣れた様子で戸惑う事無く行動する木野君の後を追った。
そして綺麗に整った病院のロビーに入り僕が見たのは
そして綺麗に整った病院のロビーに入り僕が見たのは
「ひっ…………?!」
「ふぇ!?」
「…………っ!?」
「ふぇ!?」
「…………っ!?」
倒れ伏せる中年の男。
赤い水溜り……いや、これは血だ……
つ、つまり……し、死んでる。
赤い水溜り……いや、これは血だ……
つ、つまり……し、死んでる。
うわぁ………………
僕は余りの恐怖に後退りし、尻餅をついてしまう。
それは朝比奈さんも一緒でその場に座り込んでいる。
ムッツリーニは唖然とその光景を見ているだけ。
それは朝比奈さんも一緒でその場に座り込んでいる。
ムッツリーニは唖然とその光景を見ているだけ。
き、木野君は……
「――――そんな事が……可笑しい……有り得ない」
誰よりも驚き狼狽していた。
あの場慣れした木野君の表情が驚愕に染まり、視線は定まらない。
あの場慣れした木野君の表情が驚愕に染まり、視線は定まらない。
……あれ?
何か可笑しいな……
僕は、いや僕達はこの死体があった事にただ恐怖するだけなのに。
僕は、いや僕達はこの死体があった事にただ恐怖するだけなのに。
木野君はそんな死体の事より、何かそれ以上の事に驚きを隠せない様子で。
それなのに誰よりもその事が信じられない様子だった。
死よりも何かに驚き、そして戸惑っている。
それなのに誰よりもその事が信じられない様子だった。
死よりも何かに驚き、そして戸惑っている。
木野君はそのまま恐れず中年の遺体に向かっていく。
そして中年の遺体を見て何かを呟いている。
そして中年の遺体を見て何かを呟いている。
「……撃った……治ってる…………有り得ない……何でここにいる……まさか……いや、ちゃんと死ん…………じゃあ…………」
木野君は遺体を見て何かを呟いているけどここらではよく聞こえなかった。
それでも、ここからただ驚いているのは解った。
それでも、ここからただ驚いているのは解った。
…………僕は。
僕はただ、戸惑っていた。
はじめてみる死体に僕は動く事もできなかった。
ただ、そこに人が死んでいる。
それだけが怖くて堪らない。
情けない事に震えて動けなかった。
僕らがそうなる可能性。
姫路さんがそうなる可能性。
そんな事さえも考えて、ただ恐怖で。
はじめてみる死体に僕は動く事もできなかった。
ただ、そこに人が死んでいる。
それだけが怖くて堪らない。
情けない事に震えて動けなかった。
僕らがそうなる可能性。
姫路さんがそうなる可能性。
そんな事さえも考えて、ただ恐怖で。
僕は脅えるしかなかった。
そんな、恐怖に脅えてる時だった。
「――――なっ!? ま、まさか……な……!?」
木野君がその死体を見て改めて声をあげ驚愕して。
何か非常に戸惑って。
何か非常に戸惑って。
そして
「…………生きています。何とか一命を取り留めているみたいです」
そう冷静を努めて呟いた。
生きてる……?
「生きてる? 本当に?」
「ええ、いきてます……」
「よ、よかった……」
「ええ、いきてます……」
「よ、よかった……」
僕は安堵の溜息を大きく吐く。
死んでると思ったのにどうやら、生きているようだ。
その生存に僕はただ喜びを感じている。
死んでると思ったのにどうやら、生きているようだ。
その生存に僕はただ喜びを感じている。
よかった……本当に生きていてよかった。
朝比奈さん、ムッツリーニも安堵しているようで表情が明るい。
僕らはそのまま木野君とその男の下に駆け寄っていく。
僕らはそのまま木野君とその男の下に駆け寄っていく。
「すいません……吉井さん達はここで看病してもらってていいですか?」
「……いいけどどうして?」
「まだ、この人をこうした人がここに居るかもしれません。ちょっと探索してきます」
「解ったよ、木野君も一人で大丈夫?」
「ええ、平気です」
「……気を付けてくださいね」
「はい」
「……いいけどどうして?」
「まだ、この人をこうした人がここに居るかもしれません。ちょっと探索してきます」
「解ったよ、木野君も一人で大丈夫?」
「ええ、平気です」
「……気を付けてくださいね」
「はい」
朝比奈さんの気遣いに木野君は言葉を返して踵を返して病院の奥に向かう。
……そんな木野君の様子に僕は何処か違和感を感じていた。
なんだか、解らないけど何かに動揺しているような。
なんだか、解らないけど何かに動揺しているような。
木野君が何かに揺れてるような感じが何故かして。
僕はそれを、見送ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……有り得ない。
何が起きたんだ……?
ボクは戸惑うしかない。
ボクは戸惑うしかない。
吉井さん達は始めてみたらしい遺体に驚いたらしいけどボクは別の事に驚いている。
何故ならあの遺体は…………僕が『一度殺したはずの遺体』なんだ。
始まった当初、森であの男をパースエイダーで撃ち殺した。
そして、あの男は死んだ。
ボクはそれを一度確認している。
確かに死んでいたはず。
そして、あの男は死んだ。
ボクはそれを一度確認している。
確かに死んでいたはず。
それなのにあの男は森から病院に移動した。
そればかりじゃない。
撃った銃創。それすらも無くなっている。
そればかりじゃない。
撃った銃創。それすらも無くなっている。
……正直、訳が分からない。
つまり、あの男は『死んだ』はずなのに蘇って、また病院で毒によって『死んだ』という事。
何かのトリックかと最初は思った。
最初の時、なにかしらによって死んだフリをしたとか。
だけど、それは間違いだという事に否が応にも気付かされたんだから。
最初の時、なにかしらによって死んだフリをしたとか。
だけど、それは間違いだという事に否が応にも気付かされたんだから。
それは……あの止まっていたはずの心臓が『再び』動き出した事実。
完全に止まっていた。
実際、ボクが確かめた時には動きもしなかったのだから。
それなのに突然、蘇生を始めていた。
正しく……蘇りが起きていたんだ。
実際、ボクが確かめた時には動きもしなかったのだから。
それなのに突然、蘇生を始めていた。
正しく……蘇りが起きていたんだ。
ボクはあの男を吉井さんたちに任せて離れた。
もしかしたらあの男が吉井さんたちを襲うかもしれない。
もしかしたらあの男が吉井さんたちを襲うかもしれない。
まぁそれでも一度彼を撃ち殺したボクが居るより安全かもしれない。
ボクも撃ち殺した手前顔を合わすわけにもいかないし。
ボクも撃ち殺した手前顔を合わすわけにもいかないし。
――――そもそも、撃ち殺した人間ともう一度顔を合わすという自体、有り得ない非常識なんだけどね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「むおっ!?」
「あ……大丈夫ですか?」
「ああ、起きたんだね!」
「…………大丈夫か?」
「ああ、起きたんだね!」
「…………大丈夫か?」
天膳に駆け寄るみくる達。
天膳は状況がつかめず、目の前に居る三名は自分を毒殺した小僧の仲間かと考えるも自身を心配した事から違うと判断する。
ならば、蘇生の秘密を知られたかと思い、少し焦るも
天膳は状況がつかめず、目の前に居る三名は自分を毒殺した小僧の仲間かと考えるも自身を心配した事から違うと判断する。
ならば、蘇生の秘密を知られたかと思い、少し焦るも
「何か気絶してたようですけど……何があったんですか?」
その焦りもみくるの一言で雲散霧消した。
どうやら彼らは心臓が動き出してから見つけたらしいと天膳は考え少女に応える。
どうやら彼らは心臓が動き出してから見つけたらしいと天膳は考え少女に応える。
「おう、ちと……な。うぬらは何者じゃ?」
「あ、はい。朝比奈みくるです」
「…………土屋康太」
「僕は吉井明久」
「……ふむ、朝比奈、土屋、吉井か」
「あ、はい。朝比奈みくるです」
「…………土屋康太」
「僕は吉井明久」
「……ふむ、朝比奈、土屋、吉井か」
天膳はその三名の名を聞いて顔をそれぞれ見る。
どれも、普通の少年や少女のようで害は無さそうに見える。
つまり、自分は看病されていたのかと気付き、少し気をよくした。
友好的に此方に接しているのだから一先ず邪険に扱う必要は無い。
だから天膳は名乗った。
どれも、普通の少年や少女のようで害は無さそうに見える。
つまり、自分は看病されていたのかと気付き、少し気をよくした。
友好的に此方に接しているのだから一先ず邪険に扱う必要は無い。
だから天膳は名乗った。
「俺は薬師寺天膳よ。うぬらはここで何をしておった?」
「えっと……私達は手当てなどをしに……そこで薬師寺さんが倒れていて」
「なるほどのう……」
「何があったんですか? 襲われたりしたんですか?」
「む……」
「えっと……私達は手当てなどをしに……そこで薬師寺さんが倒れていて」
「なるほどのう……」
「何があったんですか? 襲われたりしたんですか?」
「む……」
少女の先程と変わらない質問にどう答えようかと迷う。
正直に話してもよいのだが、天膳とて完全に信用しているわけではない。
目的は変わらず朧との脱出なのだ。
必要な情報さえ知りえればよい。
できるのならば、みくる達からも情報を聞き出したい。
それならば対価になるものは必要であろうとも思う。
なにより、先程の二回強行に事を進めようとして殺されてしまったのだ。
ならば、穏便に事を進めたほうが情報を得られるだろうと天膳は判断し
正直に話してもよいのだが、天膳とて完全に信用しているわけではない。
目的は変わらず朧との脱出なのだ。
必要な情報さえ知りえればよい。
できるのならば、みくる達からも情報を聞き出したい。
それならば対価になるものは必要であろうとも思う。
なにより、先程の二回強行に事を進めようとして殺されてしまったのだ。
ならば、穏便に事を進めたほうが情報を得られるだろうと天膳は判断し
「何、ちと不覚をとってな。襲われてしまったのだ」
「そうなんですか……どうりで毒ガスの匂いが」
「……何、毒か……ふむ、あれは毒だったか……あの小僧め。小癪な真似を……」
「小僧……?」
「うぬらと同じような小僧だ、それに襲われたのだ」
「そうなんですか……どうりで毒ガスの匂いが」
「……何、毒か……ふむ、あれは毒だったか……あの小僧め。小癪な真似を……」
「小僧……?」
「うぬらと同じような小僧だ、それに襲われたのだ」
事を正直に話した。
それを聞いた三名は驚きや籠めた顔をしている。
天膳はそれを見るに、表に生きる人物なのであろうと改めて思う。
殺し合いや、自分らのような闇に生きるものと無縁のものであると。
そんな事を思いながらも話を進める。
それを聞いた三名は驚きや籠めた顔をしている。
天膳はそれを見るに、表に生きる人物なのであろうと改めて思う。
殺し合いや、自分らのような闇に生きるものと無縁のものであると。
そんな事を思いながらも話を進める。
「うぬらは俺に会う前は何をしておった?」
「えっとですね……放送を聞いて」
「……放送?」
「ああ、はい。あの狐さんが話していた放送です……もしかして聞いていませんか?」
「……うむ、気を失っていたからのう」
「そうですか……では、話しますね」
「えっとですね……放送を聞いて」
「……放送?」
「ああ、はい。あの狐さんが話していた放送です……もしかして聞いていませんか?」
「……うむ、気を失っていたからのう」
「そうですか……では、話しますね」
本当は死んでいたのだがなと心の中で笑いながら天膳はみくるの話を聞く様にする。
そういえば、彼らの衣装は面白いものだと思いながらも。
南蛮のものだろうか、それとも自らが知らぬ世界のものかと期待しながら。
そして、みくるの露出された柔肌が気になりながらも。
そういえば、彼らの衣装は面白いものだと思いながらも。
南蛮のものだろうか、それとも自らが知らぬ世界のものかと期待しながら。
そして、みくるの露出された柔肌が気になりながらも。
みくるが語る放送を聴き始めたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どうやら、吉井さん達は無事に話せてるようだ。
ボクは陰で隠れながらも彼らの会話を聞いている。
ボクは陰で隠れながらも彼らの会話を聞いている。
そして、薬師寺天膳といったかな……あの人も無事生き返ったみたいだし。
まぁボクが表立つ必要性も無いだろうし。
まぁボクが表立つ必要性も無いだろうし。
しかし、参ったね。
エルメスが居たなら聞いて欲しいぐらいだ。
エルメスが居たなら聞いて欲しいぐらいだ。
どうやら放送によると僕らと彼らとでは文字通り生きている世界が違うらしい。
そう『世界』が。
つまりは国とか大陸とか海とかそういうものじゃない。
吉井さんの話を聞くと確かに別の世界である事がわかる。
日本という国、六つの大陸、国名がしっかりついている。
吉井さんの話を聞くと確かに別の世界である事がわかる。
日本という国、六つの大陸、国名がしっかりついている。
ボクと吉井さん、朝比奈さん達の世界ではまるっきり違ってる。
つまりは……この生き残りゲームみたいの上に立つ人はそもそも次元とかそこら辺が違うみたいなんだ。
何だかボク自身何言っているかさっぱり解らないけどね。
何だかボク自身何言っているかさっぱり解らないけどね。
違う世界から切り取られてきた。
つまり、ここもボクが住んでいる世界と違うのかもしれない。
ねぇ、エルメス。
君はどう思うかな?
こんな世界すらも違う場所で『脱出』なんて可能なのかな?
素直に従った方が早い気がする。
……ああ、何かもうごっちゃごっちゃだ。
与えられた情報がスケールがでかいや。
まぁ……いいか。
もうちょっと……話を聞いてみようかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はっ……死におったか。そうか死におったか! 甲賀弦之介!」
「はっ……死におったか。そうか死におったか! 甲賀弦之介!」
みくるが語った放送。
その呼ばれた死者に天膳は心の底から笑った。
あの怨敵、甲賀弦之介がもう死んだのだ。
それは心の底からの大願であったのだから。
これで忍法勝負にも圧倒的に有利になるのだ。
小四郎が呼ばれたのが、多少痛いがそれに比べても弦之介の死亡は天膳にとって痛快であった。
その呼ばれた死者に天膳は心の底から笑った。
あの怨敵、甲賀弦之介がもう死んだのだ。
それは心の底からの大願であったのだから。
これで忍法勝負にも圧倒的に有利になるのだ。
小四郎が呼ばれたのが、多少痛いがそれに比べても弦之介の死亡は天膳にとって痛快であった。
少し朧の身が心配ではあるが、今はそれよりもまず始末したいものが死んだ喜びが勝っている。
この目で奴が死ぬ所が見えなかったのが唯一の残念だと思いながらも。
この目で奴が死ぬ所が見えなかったのが唯一の残念だと思いながらも。
「……え、えと。こんな感じです。薬師寺さん」
「うむ、朝比奈、わざわざ難儀であったな」
「い、いえ別に……それよりも沢山の事がこの放送でわかりましたね」
「うむ、朝比奈、わざわざ難儀であったな」
「い、いえ別に……それよりも沢山の事がこの放送でわかりましたね」
死者の発表に何故か喜んだ天膳にみくるは少し驚きながらもこの放送で判明した事実をいう。
しかし、吉井はそれが理解できず
しかし、吉井はそれが理解できず
「…………ええと、どういう事? 朝比奈さん」
それをみくるに尋ねる。
土屋康太も頷き吉井同様解らない様だ。
みくるは苦笑いしながらも彼らにもわかりやすいように話し始める。
土屋康太も頷き吉井同様解らない様だ。
みくるは苦笑いしながらも彼らにもわかりやすいように話し始める。
「えと……まず大きくわかった事は私達が居る『世界』が別々という事ですよね」
「うん、薬師寺さんなんて僕らの生きる四百年前の世界だったなんて……」
「それは俺の方が驚きじゃ……なれば、あの見慣れる世界は遥か先という事なのか……ふむ、面白い話よ」
「私も召還戦争なんて知らないですし……でも吉井君達と時代は一緒みたいですね」
「…………(こくっ)」
「うん、薬師寺さんなんて僕らの生きる四百年前の世界だったなんて……」
「それは俺の方が驚きじゃ……なれば、あの見慣れる世界は遥か先という事なのか……ふむ、面白い話よ」
「私も召還戦争なんて知らないですし……でも吉井君達と時代は一緒みたいですね」
「…………(こくっ)」
まずは彼らが住む世界が別である事。
本来ならば到底信じられないような話であっても薬師寺天膳という存在がその世界が別である事を認めている。
彼の話す世界、それはみくる達の遥か昔の事なのであるから。
それを吉井達は信じ固いものだったが受け止め、天膳もまた受け止めていた。
みくるはその彼らを見て話を続ける。
本来ならば到底信じられないような話であっても薬師寺天膳という存在がその世界が別である事を認めている。
彼の話す世界、それはみくる達の遥か昔の事なのであるから。
それを吉井達は信じ固いものだったが受け止め、天膳もまた受け止めていた。
みくるはその彼らを見て話を続ける。
「まず……世界が別という事が判明した時点で狐さん、あるいはそのバックに居るものは持ちえる力は常識では考えられないものだと思います」
「…………何故?」
「それは、時間軸の移動、別次元の世界から人を集める事が出来る事が出来る人間……土屋君は知ってますか?」
「…………いや」
「普通は居ませんよね。だから、彼らは恐るべき力を持っていると推測できるんです」
「……でも、ちょっと変じゃない?」
「…………何故?」
「それは、時間軸の移動、別次元の世界から人を集める事が出来る事が出来る人間……土屋君は知ってますか?」
「…………いや」
「普通は居ませんよね。だから、彼らは恐るべき力を持っていると推測できるんです」
「……でも、ちょっと変じゃない?」
みくるの推論に疑問を呈したのは吉井。
頭を傾けながら、多くの人に馬鹿といわれている彼の頭が思いついたのは単純な事。
それはある意味当たり前の事でもある。
頭を傾けながら、多くの人に馬鹿といわれている彼の頭が思いついたのは単純な事。
それはある意味当たり前の事でもある。
「……そんな事出来る人。誰も知らないんじゃ無理じゃ……」
「……いえ、私は知ってます。少なくとも時間軸の移動に関しては出来ると断言できます」
「……朝比奈、それは何故じゃ」
「私自身が…………いえ、すいませんこれは【禁則事項】で詳しくは……」
「………………禁則事項?」
「はい、詳しくは話せないです……御免なさい」
「……いえ、私は知ってます。少なくとも時間軸の移動に関しては出来ると断言できます」
「……朝比奈、それは何故じゃ」
「私自身が…………いえ、すいませんこれは【禁則事項】で詳しくは……」
「………………禁則事項?」
「はい、詳しくは話せないです……御免なさい」
深々と頭をするみくる。
こんな大事な時なのに未だにそれに縛られているのを心苦しくも思っていた。
そんなみくるに天膳は言う。
こんな大事な時なのに未だにそれに縛られているのを心苦しくも思っていた。
そんなみくるに天膳は言う。
「……ふむ、掟のようなものか?」
「あ、はい」
「ならばよい。話せない事であろう。少なくとも存在する。それは確かなのだな?」
「はい、それは間違いないです」
「あ、はい」
「ならばよい。話せない事であろう。少なくとも存在する。それは確かなのだな?」
「はい、それは間違いないです」
天膳は知っている。
自らが忍者であるように人に言えぬ厳しい掟が存在する事を。
また、それを破る事はできず、強要されたならば自決も問わない覚悟もある事を。
同じようなものだと解釈し、天膳はみくるの立場に理解を示した。
みくるは感謝しながら話を続ける。
自らが忍者であるように人に言えぬ厳しい掟が存在する事を。
また、それを破る事はできず、強要されたならば自決も問わない覚悟もある事を。
同じようなものだと解釈し、天膳はみくるの立場に理解を示した。
みくるは感謝しながら話を続ける。
「兎も角、上にそんな者が居ると解釈して問題ないと思います。そして今回もう一つ明らかになった事があります」
「さっき纏めて言った『異端』という存在?」
「さっき纏めて言った『異端』という存在?」
吉井の返答にみくるは笑顔で頷きながら答えを言う。
「そうですね……魔法や、超能力や、忍法やら、殺人技術といったものです」
「…………召喚も同じものか」
「多分そうですね、超能力に関していうなら私にも知り合いが居ます」
「……忍法もまぁそうであるか」
「はい、そんなある意味非常識な存在といえますね。幸い私達は皆知っていますが……」
「…………召喚も同じものか」
「多分そうですね、超能力に関していうなら私にも知り合いが居ます」
「……忍法もまぁそうであるか」
「はい、そんなある意味非常識な存在といえますね。幸い私達は皆知っていますが……」
こほんと一息を吐いて真面目な表情を浮かべる。
「それを持たないもの、知らないものも沢山居るって事も解りますよね?」
「え? どうして?」
「え? どうして?」
疑問を呈した吉井に対してみくるは笑いながらわかり易く伝わるように
「”海水魚ばかりになれば水槽の中の塩分濃度は高まり成分は海のものに近づく。また逆も然り。” ってこの言葉には色んな解釈ができますが……」
「…………ふむ」
「海水魚を『異端者』とするならばその逆も然りですよね。つまり『一般人』としましょう」
「成程……」
「まぁ実際私達も一般人と変わりませんし。でも薬師寺さんはその……忍者なんですよね?」
「……いかにも」
「しかし、私達は一般人です……このように沢山の異端と一般が混ざってますね」
「僕たちも召喚無ければただの学生だしね」
「………………(こくっ)」
「しかも今使えないし…………ああ、姫路さんが心配だ。頭がいいといってもただの学生だし」
「…………ふむ」
「海水魚を『異端者』とするならばその逆も然りですよね。つまり『一般人』としましょう」
「成程……」
「まぁ実際私達も一般人と変わりませんし。でも薬師寺さんはその……忍者なんですよね?」
「……いかにも」
「しかし、私達は一般人です……このように沢山の異端と一般が混ざってますね」
「僕たちも召喚無ければただの学生だしね」
「………………(こくっ)」
「しかも今使えないし…………ああ、姫路さんが心配だ。頭がいいといってもただの学生だし」
吉井は姫路さんのことを心配して暗くなっていく。
みくるはそれに表情を曇らせながらも言葉を紡ぎ続ける。
みくるはそれに表情を曇らせながらも言葉を紡ぎ続ける。
「つまり、異端者ばかりになると異端者本来の実力がだせたりする……逆に一般人ばかりになると更に力が出なくなると解釈で着ます」
「……それは解ったんだけどつまりどういう事かな?」
「……それを自由に操る事が出来るかもしれないって事です。狐さんは」
「……それは解ったんだけどつまりどういう事かな?」
「……それを自由に操る事が出来るかもしれないって事です。狐さんは」
みくるはそう重々しく告げる。
つまりは、人の力の上限すらも自由に扱えるという事は恐るべき事であるという事。
その言葉に三人は黙ってしまう。
みくるはそれでも気丈に笑顔で振舞って
つまりは、人の力の上限すらも自由に扱えるという事は恐るべき事であるという事。
その言葉に三人は黙ってしまう。
みくるはそれでも気丈に笑顔で振舞って
「放送に関してはこんな感じですけど…………それを踏まえてどう脱出できるかを考えて見ましょうか」
「どのような形なのだ?」
「まず…………この狭くなっていくこの場所で黒く消失するもの解明。そしてその先が続いているものかどうかを確かめないといけません」
「手立てはあるの?」
「……まだ、ありません。そして、たとえその手立てがあろうと狐さんたちが監視してるでしょう。脱出する為には彼の目をごまかさないといけません」
「手段はどうだ?」
「打倒か、それとも情報隠蔽かのどちらかでしょう」
「…………どちらも出来る見込みは」
「…………まだありません。そもそも何処にいるかさえ知りませんし。何者すらもわかりません」
「だよね……」
「兎も角脱出のプロセスとしては
①この場所からの脱出方法を見つけ出す。この島の場所の解明。
②狐さんを何とかする方法を探し出す。狐さんの情報集め
ですね。大雑把に言うと……しかしながら、これができる手立てや手段は無きに等しいです」
「どのような形なのだ?」
「まず…………この狭くなっていくこの場所で黒く消失するもの解明。そしてその先が続いているものかどうかを確かめないといけません」
「手立てはあるの?」
「……まだ、ありません。そして、たとえその手立てがあろうと狐さんたちが監視してるでしょう。脱出する為には彼の目をごまかさないといけません」
「手段はどうだ?」
「打倒か、それとも情報隠蔽かのどちらかでしょう」
「…………どちらも出来る見込みは」
「…………まだありません。そもそも何処にいるかさえ知りませんし。何者すらもわかりません」
「だよね……」
「兎も角脱出のプロセスとしては
①この場所からの脱出方法を見つけ出す。この島の場所の解明。
②狐さんを何とかする方法を探し出す。狐さんの情報集め
ですね。大雑把に言うと……しかしながら、これができる手立てや手段は無きに等しいです」
その言葉に更に場が重たくなってしまう。
脱出の見込みがほぼ無いに等しいといってるのだから。
皆が暗くなる中、一人だけ吉井が声を上げる。
脱出の見込みがほぼ無いに等しいといってるのだから。
皆が暗くなる中、一人だけ吉井が声を上げる。
「……皆、たとえ暗中もずくだとしてもさ、きっと何とかなるよ! 希望を持とうよ!」
暗中もずくという意味の解らない言葉を発しながら。
その言葉に一度、沈黙して。
そして。
その言葉に一度、沈黙して。
そして。
「ぷ……ふふふふふふ」
「……………くっくっ」
「……可笑しいな事を言い寄るわい」
「……え、なんでさ!」
「そ、それ暗中模索じゃないですか?」
「あ……ああ! そ、そうだった!」
「……………くっくっ」
「……可笑しいな事を言い寄るわい」
「……え、なんでさ!」
「そ、それ暗中模索じゃないですか?」
「あ……ああ! そ、そうだった!」
そしてみくるは笑いながら間違いを指摘する。
吉井は酷く恥ずかしくなりながらも、それを無視して。
吉井は酷く恥ずかしくなりながらも、それを無視して。
「と、兎も角さ! 何とかなるって! 何とかするよ! 希望を持たなきゃ始まらないと僕は思うんだ!
だからさ、皆元気出して、そして皆で脱出しよう!」
だからさ、皆元気出して、そして皆で脱出しよう!」
そう、元気を出して強く言った。
希望をもって脱出をと。
たとえ道がなくても。
皆が強く思っていれば何とかなるはず。
希望をもって脱出をと。
たとえ道がなくても。
皆が強く思っていれば何とかなるはず。
そんな希望を持って。
「……そうですね。そうしないと始まりませんね。希望を持たないと」
みくるはそれに笑いながら応えて。
「…………(こくっ)」
土屋康太は強く頷いて。
「……ふむ、まぁそれも悪くはないよの」
薬師寺天膳もまんざらではない表情を浮かべた。
「うん! だから、頑張ろう!」
そして吉井明久は大きく笑って。
手をつきのばした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇