ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

スキルエンカウンター(上) 古泉一樹の挑戦

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
管理者のみ編集可

スキルエンカウンター(上) 古泉一樹の挑戦 ◆LxH6hCs9JU



「事実――長門有希は確かに、紫木一姫に殺害されたようです」

 『ロールト・リヴァーで会いましょう』という表題の本をパラパラとめくり、古泉一樹は語る。

「高須くんと同様に身体のほうはバラバラにされてしまっていましたが、首から上は損傷が少なく判別も容易でした。
 普段の彼女からは想像もできなかった表情ですが……まさかそれで別人と断定するわけにもいかないでしょう」

 机の上に本を置き、その上にもう一冊、『ボビーと檸檬』を積む。

「ですがやはり、不明な点は残りますね。なにせ目の前の惨状は、誰がどう検分しても『人間の死』に違いありません。
 長門有希が紫木一姫に敗北した。百歩譲ってこれは肯定しましょう。しかし、だからといってこの死に方はおかしい。
 『機関』のお偉方からの情報を信用するなら、長門さんがこんなにも血生臭い死に様を晒すはずもないのですが……」

 『ブラウ・フラウ・ブラウ』を本棚から取り出し、ページをめくってまた机の上に積む。

「……水槽の話がありましたが、あれはあくまでも能力に関しての喩えであったはず。
 存在そのものの構成情報を変えてしまうほどの力が、彼らにはあるというのでしょうか?
 インターフェイスに過ぎない長門さんの『肉体』を、ただの『人間』に改造……いえ、改変してしまうなど。
 それこそ、情報統合思念体をも超越した、言うなれば涼宮ハルヒの領域に踏み込みうる力だと言えるでしょう」

 隣にあった『レルター・テンスン・ロジジコネルサレ』も手に取り、積む。

「試しに、この『血液』をDNA鑑定にでも回してみましょうか? 今は無理でしょうが。
 サンプルとして『機関』に持ち帰れば、情報統合思念体の未知なる部分が見えてくるとも限りません。
 支給品に試験管でもあればよかったのですが。さすがにペットボトルに汲むというわけにもいきませんし。
 人体収集の趣味はないのですが、この綺麗な『生首』を持ち帰るというのも手ではあるかもしれませんね。
 間違いなく、『機関』にとって有益な情報へと昇華されるでしょう。俗っぽく言うと、宇宙人の脳なわけですから」

 堆くなってきた本の上に、新しく『車輪はただ回るだけ』が積まれた。

「この世界における長門有希は『人間』だった。結果を正しく読み取るなら、正解はこれしかないのかもしません。
 ここまで考えて、同姓同名のそっくりさんというオチではさすがの僕も落胆するというものです。
 いえ。もしくはこれは、長門有希に成り代わった別の誰か――という可能性も捨て切れはしないでしょうか。
 ここはいろいろと特殊なようですから。そういった技術、あるいは能力、もしくは魔法か、それとも忍法か。
 おっと、摩訶不思議な支給品に頼ったという可能性も考慮に含める必要がありましたね。
 僕の場合は『鈍器』と『宝箱』と『爆弾』でしたが、彼女の場合は変身道具かなにかだったのでしょうか?」

 古泉一樹の手には今、『パッケージ・ナインティーン』があり、

「とにもかくにも、これで長門有希の死は証明されてしまったわけです」

 本の山のてっぺんには、『重力は四十五歳で窓を割る』が置いてある。著者は同じようだった。

「彼女がどれだけ環境に対して適応化していたのかはともかくとして、これだけは揺るぎないものと言えるでしょう」

 その上からさらに、と『ケリストネルトネス』と『ルルトネルトネス』を積み、

「では、力量的な面で彼女に大きく劣る僕は、はたしてこの事実をどう受け取るべきなのか」

 『ボルト・アップ ―運命の三叉路―』、『ラムはこう言った』をさらに積んだところで山が揺れ、

「なにも変わりませんよ」

 最後の一冊、『トモッマ・レデヤツイ ~私の愛の唄~』を積み切る前に山は崩れた。

「我々『機関』は涼宮ハルヒを『神』と定義し、それを前提として行動する――ならばもちろん、僕もそう在るだけです」

 血の滲む白いシーツの上に、どさどさと名著がなだれ落ちていく。
 生前、大変な読書家であった彼女は、この餞別をどう受け取ってくれただろうか。


 ◇ ◇ ◇


 ――スーパーマーケット。

 伝統的市場の統合、あるいは凝縮とも言うべきその商店は、日本の代表的な小売店として世に普及した。
 食料品に生活雑貨、衣料品に薬品と、多種多様な品物が棚に並べられ、平台に積まれている。
 生鮮野菜や生肉、生魚の類も冷房ケースに取り揃えられており、見た限りでは腐ってもいない。
 今が何年の何月何日なのかはわからないため、消費期限の表示を頼ることができないのが痛かった。

「この鞄って、保冷効果とかあるのかな?」

 さすがにないか、とセルフサービスの氷をポリ袋に詰め、お客様お持ち帰り用の発泡スチロールに入れる。
 中には氷だけでなく、パックに詰められた魚介や豚肉が満載だった。

「あ、インデックスは豚とか食べられない人だったりすのかな。なんかそんな宗教あったわよね」

 どうだったっけかな、と大して悩まずこれを黒い鞄に収納していく。
 生ものが入った発泡スチロールの他にも、ダンボールが五箱ほど。
 こちらには使えそうな日用雑貨やヴィルヘルミナ要望のインスタント食品が詰まっている。

「これも投入……っと。ん。こんなところで十分でしょ」

 上出来上出来、と須藤晶穂は満足げに頷いた。
 買い物を終えて会計を済ませる場所、すなわちレジの付近に、彼女の姿はある。
 山中の神社を拠点とした八人から成るグループ、その物資調達係として使わされた晶穂は、たった今あらかたの作業を終えたところだった。

「本当に、あれもこれも入っちゃうのね。便利っちゃ便利だけど……まあ」

 内容量は無尽蔵という驚異のテクノロジーに感心しつつ、足元の黒い鞄を拾い肩にかける晶穂。
 このスーパーで仕入れた物資は発泡スチロール一箱とダンボール五箱に分けて入れ、デイパックにまとめた。
 八人分ということで結構な量を入れたのだが、肩にかかる重みはここに来る前と大差なく、むしろ軽い。
 これなら難しく考えず、棚にあるものを片っ端から放り込んでいけばいいのではないだろうか。
 とも考えたが、整理が面倒くさくなりそうなのでやめた。

「欲しいものが欲しいときに出てこないってのもあれだしね。さて」

 入店したときとなんら変わりない軽装で、晶穂は店の出入り口ではなく、奥へと向かっていった。
 ここでの用事はもう済んだが、どうやら店内のどこかに忘れ物をしてきてしまったらしい。
 それを見つけないことには、勝手に帰るわけにもいかないだろう。
 と晶穂が疲れ気味に嘆息したところで、その忘れ物は発見された。

「……なに食ってんですか、部長」
「む、須藤特派員。君も一口どうかね?」

 言って、紙の受け皿に盛られた試食用のサラダを差し出す男。名前は水前寺邦博
 場所は生鮮野菜売り場の一角。ガンガンの冷房が少し肌寒かった。

「勝手に食べていいんですか、そんなの?」
「馬鹿を言うな。客が試食品を食べてなにが悪い」
「あたしら客じゃないですよ。むしろ泥棒です」

 値札がかけられ、価格が設定された商品を店の者に無断で持ち出そうとしているのだから、泥棒には違いないだろう。
 晶穂たちが踏み入ったスーパーは、あたりまえのことだが無人だった。
 目的の品はちゃんと確保できたからそれで問題はないのだが、がらんとした店内はどこか薄気味悪い。
 できることならさっさとここを出たい、といった心境の晶穂を蔑ろに、水前寺はむしゃむしゃと試食のサラダを咀嚼する。

「味、食感、鮮度、どれを取っても異常なしだ。おかしいとは思わないかね?」
「おかしいところがあるとしたら、試食のサラダにそこまでがっついてる部長くらいです」

 水前寺邦博はその中学生離れした体格に見合う大食漢である。
 朝昼晩とガッツリ食う健康優良児ではあるが、なにもそこまで食い意地が張っているというわけではない。
 まあなにかしら考える部分があったりするんだろうな。とは思うものの、その先を予想するのは少し怖かった。

「真面目な話だ、須藤特派員。君はマリー・セレスト号の乗組員失踪事件を知っているかね?」

 案の定、試食のサラダとどう結びつくのか見当もつかない話題が飛び出してきた。

「1872年11月5日、アメリカからイタリアに向けて出航したはずのマリー・セレスト号が、
 同年の12月5日にポルトガルとアゾレス諸島の間の大西洋で漂流しているのが発見された。
 難破ではなく漂流だ。しかし航行しているわけでもない。ただ漂っていただけという状態だ。
 マリー・セレスト号を発見した船はこれに近づき声をかけてみたが、一向に応答がない。
 発見した船は、中でなにか事故が起きているのではないかとこれを訝り、数人の乗組員が確認のため船内に乗り込んだ。
 しかし中はもぬけのから。人っ子一人いなかったという話なのだが、さてマリー・セレスト号の乗組員はどこに消えたのか?」

 興味もなさそうに、晶穂は思ったことを口にする。

「時代が時代ですし、海賊に襲われでもしたんじゃないですか?」
「不正解だ。船内には死体はおろか、血の跡すらなかった」

 試食に使っていた割り箸をゴミ箱に捨て、水前寺が続ける。

「マリー・セレスト号は無人で漂流していた。しかし、中に人がいた痕跡は確かに残ったままだったのだ。
 船長室のテーブルでは食べかけの朝食が温かいまま残されていたし、調理室では火にかけたまま鍋が煮立っていた。
 洗面所には誰かが今までヒゲを剃っていたような形跡があり、倉庫の中の飲み水や食料は大量に残っていた。
 極めつけは、船に用意されていた脱出用の救命ボートがすべて残されていたという点だろう。
 船内で争った形跡も、積荷が盗難にあった形跡も、乗組員が船外に出た形跡もまるでないのだ。
 さて、ではマリー・セレスト号の乗組員はどこに消えたのか? 須藤特派員、わかるかね?」

 船内に生活の跡を残しておきながら、人間だけが消失したという怪事件。
 新聞部の一員として、水前寺の与太話にはこれまでにも何度か付き合ってきたが、今回はかなり難解だ。
 考えさせられるという要素がある分、余計に難解だ。常なら「知ってるわけないでしょうが」の一言で返す。

「……あ」

 考えるうちに、晶穂は気づいた。
 答えに気づいたわけではない。
 水前寺の語るマリー・セレスト号の事件と、試食のサラダの結びつきについて気づいたのだ。

「客も店員もいないというのに、なぜ試食品などが置かれているのだろうな。こうも新鮮な状態で」

 言われてみれば、そうだ。
 この試食のサラダは、いったい誰が調理し、ここに用意したというのか。

 気にかかるのは試食品だけではない。
 生鮮野菜コーナーの先にある、惣菜コーナーのほうを見やる。
 買い物かごが載ったカートが一台、無造作に放置されていた。
 そして買い物かごの中には、惣菜のパックが数点入っている。
 それが温かいかどうかなど、わざわざ確かめる必要もない。
 そのカートは買い物の途中であったかのように――放置されている。

「先ほど惣菜売り場の中に潜入してみたが、揚げ物用の油がそのままになっていたよ」

 つまり、そういうことなのだ。
 このスーパーは、まるでマリー・セレスト号そのものだと。
 水前寺は新鮮なままのサラダを食べながら、そう言いたかったのだ。

「もっとも、先ほど語ったマリー・セレスト号の話はだいぶ脚色がしてある。
 実際には脱出用の救命ボートなど残っていなかったらしいのだが、この場合はそんなこと関係あるまい。
 仕事中だった店員と、買い物中だった客はどこに消えたのか。いや、どこに消されたのか?
 営業中だったこのスーパーは、いったいどこから持ってきたのか――興味深いテーマだとは思わないかね?」

 晶穂はなにも返答できなかった。
 しかし、無人のスーパーに感じていた薄気味悪さの正体が、これで掴めたような気がした。

「ところで」

 神妙な面持ちの晶穂に、水前寺はやたら高いトーンで声をかける。

「我々の護衛を務めると言ってのけた彼女は、いったいどこに行ったのだ?」

 話が摩り替わった。
 晶穂は多少あっけに取られたものの、そういえば部長は食料品を漁っている最中に消えたんだったな、と思い出す。
 なので彼女が一度外に出たことは知らないのだろう。
 ってこれじゃ護衛の意味もないわね、と晶穂は出口への道を目指しながら、水前寺に説明する。

「彼女なら――」


 ◇ ◇ ◇


 須藤晶穂と水前寺邦博がスーパーで物資調達に勤しんでいた頃、はす向かいのゲームセンターでは御坂美琴が一人苦悩していた。

「む」

 美琴の眼前にはショーケースにも似た箱型の機械が一台設置されており、中に収められた景品の数々が彼女の意識を攫う。

「むむむ」

 クレーンゲーム、あるいはUFOキャッチャーという名称で知られるそれにべったりと顔をつけ、美琴はキュピンと目を光らせた。

「むがぁー!」

 かと思ったら、吼えた。
 そしてへなへなと花が萎れるようにその場にへたり込み、「う、う、う、う、う」と悲愴な呻きを漏らした。
 もちろん、誰にも見られていないという状況を理解しての羞恥度外視オーバーアクションである。計算ではなく、天然だが。

「運がいいのか、悪いのか、ぐぬぬ……」

 唸りながら、美琴がUFOキャッチャーの中へ熱っぽい視線を注ぐ。
 その対象は有象無象ではなく、ピンポイントに一つだけ。
 髭を生やしスーツを着た、珍妙なカエルのぬいぐるみにのみ向けられていた。

「こんなところでゲコ太を発見するだなんて……しかもぬいぐるみなんて! 激、レア、じゃん!」

 どん、とUFOキャッチャーに拳を叩きつける美琴。
 透明な壁一枚が、美琴とゲコ太の距離を何倍にも遠ざけていた。

 ゲコ太というのは、現在美琴がご執心中のカエルのマスコットである。
 元は携帯電話サービスの特典として配られていたストラップで、他にグッズ展開はしていなかったはずなのだが、目の前の愛くるしい紳士服姿はパチモンには見えない。

「いやいや、今は遊んでる場合じゃないって。そもそも財布持ってないし、昔からクレーンゲームは貯金箱だって言うし」

 もともと、美琴は『弾』となるコインを求めてこのゲームセンターに訪れたのだ。
 なにも遊びたかったわけではないし、そこで運命的な出会いがあろうとも、時間を無駄にする理由にはならない。
 と、頭では理解している。あとは欲望との闘いだった。

「……別に壊したからって、誰が文句を言ってくるわけでもないのよね。無人なわけだし。そうよ。手早く済ませればいいのよ!」

 ビリビリ、ビリビリ、と美琴の身体が電気を帯び始める。
 本気になれば、学園都市を区画単位で停電に至らしめることができる彼女である。
 UFOキャッチャーの一つや二つ、電撃でショートさせることができないはずもない。

 ――カツン。

 邪な考えを抱き始めたとき、美琴の背後で革靴が歩を刻む音が鳴った。
 思わず、全身の毛が逆立つ。ほとんどいたずらが露見した男の子の面持ちで、背後を振り返った。

 そこに立っていたのは、ブレザータイプの制服を纏う男子学生だった。
 さわやかな印象を全身に宿す、細身の姿。柔和な目元は薄く笑み、こちらを眺めている。 
 自分の顔が、かぁーっと赤くなっていくのがわかった。初対面の相手に、見られたくはない一面を見られた。

 そんな感情が先行していたから、彼の右掌の上でふよふよと浮遊する『光の球』に気づくのが遅れた。


 ◇ ◇ ◇


 スーパーのはす向かいに建っているゲームセンターから、爆音が轟いた。
 既に店内から脱し、店先に停めておいたバギーへの乗車を済ませていた水前寺と晶穂が、慌てて降りる。
 なんだなんだと近寄っていったところで、粉塵舞うゲームセンターから一つの影が飛び出してきた。
 ブラウスにサマーセーター、ミニスカートの三点から成る格好の短髪。御坂美琴である。

「何事かね御坂くん! 状況を説明したまえ!」
「げほっ……ぐっ。見りゃわかるでしょ、敵よ敵!」

 美琴は水前寺と晶穂への説明もそこそこに、すぐさまゲームセンターのほうへと向き直った。
 出入り口用の自動ドアは無残に破壊され、外から窺える範囲での店内は業火で燃えている。
 いったい中でなにが起こったというのだろうか。水前寺はその疑問の答えを、すぐに得ることになる。

「おや」

 ゲームセンターから美琴を追うようにして出てきた、その少年の記憶に新しい顔を見て、状況は理解した。

「久しぶり、というほどの時間は経過していませんね。こうも早く再会に至るとは、どういった縁でしょうか?」
「さてな。しかし白昼堂々超能力で市街破壊、その上婦女暴行とは恐れ入ったぞ――古泉一樹」

 見るからに二枚目な容貌、宿している思想にそぐわぬにこやかな表情、一概に悪とは決め付けられない印象。
 以前園原新聞部部長水前寺邦博に対し『超能力者』を自称してのけた愚かな少年が、そこにいた。

「共闘体制にあった高須竜児が死亡してもやることは変わらずか。紫木一姫からはどうやって逃げたんだ?」
「彼女のことをご存知でしたか。ならば話が早い。今では高須くんに代わり、彼女が僕のパートナーを務めています」
「また挟撃狙いとでも言いたいのか? 見え透いた嘘はやめたまえ古泉クン。今の君は単独で動いているはずだ」

 学校で相対したときと同じように言葉を交わす水前寺と古泉。
 そこに表面的な殺意はなく、言動の凶暴性も無に等しい。
 お互いが、腹の底を探り合うように舌を回していった。

「すぐそこに停めておいたバギーに、まさか気づかなかったなどとは言わんだろうな?
 君はそこのスーパーにおれと須藤特派員がいることを知っていた。なのに標的にはしなかった。
 おれたちではなくゲームセンターにいる御坂くんを襲ったのは、彼女が一人でいたからに違いあるまい。
 それに島田特派員からは、紫木一姫は二人がかりでの挟撃など必要がないほどに危険な輩だとも聞き及んでいる。
 わざわざ狙いやすい的を絞らずともおれたちは襲えたはずなのだ。いや、そもそも共闘自体拒みそうな人物ではあるが?」

 水前寺は古泉の襲撃、そして紫木一姫との共闘体制について看破していく。

「ご明察の通りです。彼女にはぜひとも高須くんの後釜を頼みたかったのですが、ふられてしまいまして。
 彼女の糸から命からがら逃げおおせ、独り身となったところで心機一転、とりあえずお一人ご退場願おうかと思ったしだいです。
 それはそうと、貴方のほうも両手に花で羨ましい状況のようですが、前の彼女はどうしたんです?
 そう、貴方が島田特派員と呼んでいた彼女です。島田が苗字と仮定するなら、名簿から外れた十人の内の一人でしょうか。
 僕と高須くんが起こした騒動がきっかけで喧嘩別れしたというならお察ししますが、しかし貴方も節操がない」

 水前寺が語れば古泉もまた語る。
 端に置かれた女子二名は、よくもまあこうも舌が回る男たちだと感心していた。

「ふん。あれだけ痛い目に遭わされて懲りん男だな、君も」
「高須くんは僕とは比較にならないほど痛い目に遭いましたからね。彼の分も奮起しなければなりません」
「ほう。その奮起というのは――『涼宮ハルヒ』を活用して、か?」

 古泉の眉がピクリと釣り上がるのを、水前寺は見逃さなかった。
 やはりか、と確信すると同時、畳み掛ける。

「島田特派員が高須竜児から仕入れた情報だ。『涼宮ハルヒ』なる人物がなにかしら鍵を握っているそうだな?
 なんでも、『皆が揃って助かるかもしれない方法』があるとかないとか。話の出所は君だろう、古泉一樹」

 古泉一樹と高須竜児の共闘関係について、水前寺は詳しく知っていたわけではない。
 しかし、高須竜児が島田美波に語った内容の一部始終で推察はできる。
 謎のキーパーソン、『涼宮ハルヒ』について。最も情報を有しているのは、この古泉一樹に違いないと。

「さて、三対一なわけだが……いい機会だと思わんかね? 我々にも、『涼宮ハルヒ』の話を聞かせてもらおうか」

 『涼宮ハルヒ』の正体がわかれば、古泉が他の人間を襲う理由、そして目的も見えてくるはずだ。
 これは勘にすぎないが、古泉がただ保身のためだけに動いているとは思いがたい。
 なにかしら裏がある。そう考え水前寺は直接これを問いただそうとしたが、

「残念ですが、それはできません」

 答えは簡潔に、古泉の緩く笑んだ口から吐き出された。

「涼宮さんに関する情報は他人においそれと吹聴していいものではありませんので。高須くんのときは特例です。
 でもそうですね。どうしてもと仰るなら、考えないでもありません。一つ、僕と勝負をしませんか?」

 三対一という状況を盾にしての詰問を放ったつもりだったが、古泉はそれをものともせず、勝負の提案という形で返す。
 水前寺以外の二人が女子ということで見くびっているのか、それとも自身の超能力を過信しているのか。
 どこか余裕の態度と窺える古泉に疑念を抱きつつも、水前寺は黙って耳を傾ける。

「勝利条件は、そうですね……『僕があなた方三人を殺し切る前に、あなた方の誰かが僕を無力化する』というのはどうでしょう」

 飛び出したのは、なんとも強気な発言だった。

「そうすれば『涼宮ハルヒ』について話す、と? しかしおれたち三人を一人で殺すとは随分と大きく出たな。まさか学校での一件を忘れたあけではあるまい」
「お言葉ですが、貴方は僕を過小評価しすぎているのではありませんか? あの場ではつまらない挑発に乗ってしまいましたが、今回はそうはいきません」

 水前寺に電気銃で撃退されたのを忘れたわけではないらしい。
 たしかにあのときは、上手く挑発が機能したのと、地の利を活かせたのと、逃走のための足が確保できていたからの、三つの条件が重なっての勝利だった。
 正面からの真面目な『勝負』ともなれば、小細工が利かない分、水前寺の勝ち目は薄い。
 そうわかってはいても、古泉の強気な提案に対抗しないわけにはいかない。

「知っているか超能力少年? そういうのを、負け犬の遠吠えと――」

 水前寺が言い返そうとして、しかし言い終わるよりも先に、古泉がその力を行使し始めた。
 全身が淡く輝き、光のドレスを纏う。持ち上げた右掌から、光の球が発現した。
 水前寺を追い掛け回していたときのそれとは、明らかに威圧感が違った。

「貴方にお見せした超能力など、僕の力の一端に過ぎない――と言ったら、どうします?」

 このときばかりは、さすがの水前寺も息を呑んだ。
 古泉の標準装備とも言うべき微笑が、一時だけ邪悪な色に染まる。
 眼前の未知なる輝きには横の晶穂も驚いているようで、一歩分後ずさっていた。
 そして、襲撃者古泉に第一の標的と定められた御坂美琴は、

「へぇー」

 と、大して驚いた風でもない平坦な声を上げる。

「それがアンタの『能力』。ふむふむ。はぁー、なるほどねー」

 感心しているのか納得しているのかそのどちらでもないただのポーズなのか、よくわからない態度を取る。
 他三人が彼女の言動を怪訝に思う中、美琴はスカートのポケットを探り、一枚のコインを手に取った。

「それじゃ、さっきのお返しもあるし……私も一つ見せてあげちゃおっかな」

 右手で緩く拳を作り、親指の爪に当たる部分にコインを乗せる。
 その状態で右腕を古泉のほうへと伸ばし、狙う。
 パチ、パチ、と美琴の周囲の空気が鳴いた。

 そして、美琴の親指がコインを弾く。

 ピン、と勢い良く放たれたそれは回転力はもちろん、電磁石の原理を応用した反発力を伴い、一直線に前へ。
 ほとんどレーザービームと称しても間違いではない威力と速度で、古泉の掌にある光球を撃ち抜いた。
 しかしそれで失速などはせず、そのままドゴン、と古泉の背後にあるゲームセンター内部へと到達。
 中に置かれていた機械がまた爆発する様子が、外からでも見て取れた。

 それら、すべて瞬きの間に。

 須藤晶穂はあんぐりと口を開け、燃え盛るゲームセンターを唖然と眺めている。
 古泉一樹は光球が消えてもなお掌をそのままに、そっと背後を振り返っていた。
 水前寺邦博もやはり驚愕は隠せず、しかし声までは失わない。

「……なるほど、それで『超電磁砲(レールガン)』か」

 呟き、神社で顔を合わせた際に知った彼女の肩書きを思い出す。
 学園都市にわずか七人しか存在しないとされる『超能力者(レベル5)』。
 その界隈でも最高峰と言える『電撃使い(エレクトロマスター)』。
 常盤台中学が誇る最強無敵の『超電磁砲(レールガン)』。
 いかにも強そうな用語の数々は、実際に強さの証明だった。

「で、これでもまだ私と『勝負』だなんて戯言が吐けるのかしら?」

 ポケットからもう一枚コインを取り出し、指で真上に弾く。電気は帯びていない。
 美琴の表情はどこか得意気だった。それも古泉の反応を受けてのことだろう。
 あんなものを見せられれば、戦意などすぐに消沈してしまう。

「……ふっ」

 古泉一樹はやれやれと言わんばかりに首を振り、そして、

「ええ、これは実におもしろい勝負となりそうです」

 変わらずの微笑で、宣言の撤回を拒む。
 これには、美琴が呆れた様子を見せた。

「あんた、バカ? 私とあんたの能力とじゃ、天と地ほども差があるのよ。勝ち目なんて――」
「まともにやり合っての勝ち目は、たしかに薄いでしょう。ですが、今の一撃で勝算はあることがわかりました」

 古泉の不敵な発言に、美琴が顔を顰める。
 勝ち目は薄いが勝算はある、という言葉の意味が理解できないのだろう。

「目にも留まらぬ速さでコインを打ち出し、僕の能力すら霧散させてしまうその威力は恐るべしです。
 もし人体で受けようものなら、どの部位であったとしても跡形もなく消し飛んでしまうでしょうね。
 頭が吹き飛ぶか、四肢が弾け飛ぶか、腹部に風穴が開くか、いずれしても、命中は死を意味します。
 あまりにも強大で、それでいて絶対的な破壊の技。それゆえに、手加減も利かないのではないですか?」

 古泉の指摘に、美琴が「むっ」と唸った。
 反応から見るに、どうやら図星らしい。

「ならば、あなたの勝利方法は『僕を殺す』しかない。先ほどの力の使用を前提とした話ではありますが。
 あなた方が涼宮さんの話にどれだけの興味を抱いているかはわかりませんが、僕の口は生かしておきたいのでしょう?
 いえ、たとえ涼宮さんに関する情報を僕が有していなかったとしても、あなたに僕を殺すことはできないはずです」

 違いますか、と古泉は尋ねる。
 美琴は答えなかった。
 沈黙が答えとなった。
 水前寺は分析する。

 先ほどの、『超電磁砲(レールガン)』。
 一見しただけでもわかるその驚異的破壊力は、手加減がどうのこうのといった次元ではなかった。
 当たれば木っ端微塵。それは対象が機械だろうが人体だろうが関係なく、一撃必壊だ。
 命が備わっているなら、当然それは潰える。人間に当てれば、死ぬ。殺してしまうのだ。

 なら、古泉一樹に『超電磁砲(レールガン)』は使えない。
 使えば彼を殺してしまうから。美琴に殺人の意思はないから。
 美琴の異能は、強すぎるがゆえに封殺されたも同然なのである。

「……たしかに、さっき見せたのは加減が利くような力じゃないわ。けどね、私の力があれだけだなんて――」
「もちろん、それだけを理由に勝算を見出したわけではありませんよ」

 反論を試みようとした美琴に対し、古泉は鷹揚に微笑んで見せる。

「三対一。彼は現在の状況をそのように解釈していましたが、僕はそうは考えません。
 僕にとって、彼と彼女は数の内には入らないからです。
 これは紛れもなく一対一。お荷物を背負っている分、貴女のほうが不利ではあるでしょうが」

 言いながら水前寺と晶穂を指す古泉。
 一度辛酸を舐めた相手である水前寺すら、古泉は敵というほどの障害にはなりえないと断じた。
 これに憤慨するところはない。実際、水前寺本人もそう見ている。
 二人の異能者が睨み合うこの状況下、自分と晶穂は明らかに足手まといだ、と。

 ――ならば、考えようもある。

 水前寺は一人、美琴の耳元にまで寄り、古泉には聞こえぬようひっそり声をかけた。

「御坂くん。単刀直入に訊こう。我々は邪魔かね?」
「は?」
「おれと須藤特派員は、あのエセ超能力者をぶっ飛ばす上で君の足手まといになるかと訊いているんだ」
「そりゃ、本音を言うと一人のほうがやりやすいけどね。けど問題ないわよ。あれしきの能力者、私の実力なら――」
「そうか。わかった。ではこうしよう」

 美琴からの返答を受け取ると、水前寺は今度は晶穂のほうへ向き直った。

「須藤特派員。部長命令だ。荷物を貸したまえ」
「へ? あ、はい」

 晶穂が持っていたデイパックを預かり、それを美琴のほうに投げてよこす。

「ちょっと、なによこれ」
「調達した物資だ。食料品に生活雑貨、薬品に衣料品とすべてそれに入っている。持ち帰ってくれ」

 端的に告げる水前寺。続けて、晶穂の腕をつかんだ。
 頭の上を疑問符でいっぱいにしながら、晶穂は半ば引き摺られるように水前寺に連行されていく。
 辿り着いた先がバギーの助手席だった。水前寺は晶穂にシートベルトを締めるよう促し、自身は運転席に座る。

「では、我々は事態が収束するまで逃げ回っていることにする。午後六時までには拠点に戻ろう」

 と、車中から車外の美琴へと、これまた端的に告げた。

「健闘を祈るぞ、御坂くん!」

 一応の激励としてその言葉を残し、フルアクセル。
 水前寺が運転するバギーはエンジン音を轟かせ、美琴と古泉のもとより遠ざかっていった。

 去っていったのは二人。残されたのは二人。
 須藤晶穂は水前寺邦博に拉致も同然な形で同行を強いられ、御坂美琴と古泉一樹はただ呆然とその出立を見送る。
 運転席のバックミラーに美琴と古泉の間抜けな顔が映り、しかし水前寺は悪びれた様子もない。

「ちょ、ちょっと水前寺~っ!?」

 背後からそんな声が響いてきても、ブレーキを踏むことはなかった。


 ◇ ◇ ◇


 逃げた。
 誰がどう見てもそうとしか解釈できないほどに逃げた。
 いや、本人としては足手まといにならないようこの場から退避したかっただけなのかもしれないが、それにしたってもっと言いようがあったはずだ。
 水前寺の奇天烈な行動には、説明が欠けすぎていた。

「見捨てられてしまいましたねぇ」

 標的を二人取り逃がしたことになる古泉は、しかし笑みのまま置き去りにされた美琴を揶揄する。
 古泉一樹を無力化し、『涼宮ハルヒ』に関する情報を聞き出す。これを達成するには、確かに一人のほうがやりやすい。
 水前寺は気を配っただけなのだ。そうに違いないのだ。わかってはいる。わかってはいるが。

「女の子一人に任せて男がとんずら、ってのもどうなのよ……」

 バチ、と美琴の前髪が音を立てて弾けた。
 火花にも似た閃光が彼女の周りで発生し、古泉は瞠目する。
 放電現象。静電気体質などというレベルを超越した電圧が、音で相手を威嚇する。

 バチバチバチバチバチバチ、と、いつの間にか。
 美琴の足元のアスファルトが、黒く焦げていた。

「なるほど。電撃使い……といったところでしょうか。興味深い能力です」
「『超電磁砲(レールガン)』。それが私の異名よ」
「名は体を表す、というわけですか。貴方に相応しい異名だと思いますよ」
「上等じゃない……その減らず口、今すぐ感電させてやるわ」

 臨戦態勢はすでに整っている。
 これから始まるのは、殺すか口を割らせるかの『勝負(ゲーム)』。
 対立するのは共に能力者、『電撃使い(エレクトロマスター)』と『超能力少年』の二人である。


 ◇ ◇ ◇


 戦場から遠ざかっていくバギーの速度は、速い。
 アクセルペダルを踏む運転手、水前寺に躊躇いはなかった。
 あの場を御坂美琴に任せ、遁走を決め込むことになんら悪気を感じていない。

 実際の心情としてはどうなのか知らないが、少なくとも須藤晶穂の目にはそう映った。
 だからこそ、許せない。

「なにやってんですか部長! 御坂さん一人に任せちゃって、男として最低だと思わないわけ!?」
「落ち着きたまえ須藤特派員。あの場にいておれたちができたことなどなにもない。せいぜいが足を引っ張るくらいだ」

 助手席から騒ぎ立てるが、水前寺は視線を進行方向に預けたまま、平坦にこれを諌めてくる。
 須藤晶穂と水前寺邦博は火と油のような関係だ。ここぞという場面では馬が合わない。口論の回数も数え切れないほどである。

 そんな晶穂がなぜ、水前寺が部長を務める新聞部などに属しているのか。
 それには複雑な事情が、というほどでもなく、もう一人の男子部員の存在が起因となったことも自覚してはいる。

 彼なら。浅羽なら、今の部長の行動をどう捉えただろうか――と。
 晶穂は怒りの端でそんなことを考え、感傷に浸る。

「それに、絶好の機会でもあったわけだしな」
「絶好の機会? いったいなんの――」
「これよりおれは、浅羽特派員の捜索に向かう」

 だからこそ、水前寺がそう発言したときには考えを見透かされているような心持になった。

「浅羽……の? なんですって?」
「君にも同行の権利はあると思うが、どうだ」

 水前寺からの誘い。
 晶穂は思考する。

 浅羽を、捜す。その目的は、語らずとも容易に察することができた。
 水前寺は浅羽を正そうとしているのだ。山から街へ下りる際、事細かに浅羽のことを訊いてきたときから予感はしていた。
 部長として、友人として、人殺しの道に進もうとしている浅羽を、ぶん殴ってでも更正させるに違いない。
 水前寺邦博とはそういう男だ。悔しいが、浅羽への理解度は誰よりも深い。

 そんな水前寺が、同行者として自分を誘っている。
 一度は浅羽の説得に失敗した、この須藤晶穂を。

「もちろん、無理強いはしない。これは神社に残してきた彼女たちを裏切るにも等しい行為だ。
 今ならまだ距離も離れていないし、古泉一樹に見つからぬよう一足先に神社に帰るという手もあるぞ。
 これから先、おれについてきたからといって安全が保障されるわけでもないからな。むしろ危険な旅路になるかもしれん」

 川に流された浅羽の行き先は見当がついている、と水前寺は言う。
 バギーという足があるとはいえ、それなりの時間はかかってしまうだろう。
 神社に残してきた皆には、多大な迷惑をかけてしまうことになる。
 いや、そもそも無事に帰れる保障だってないのだ。

 気を失ってしまった逢坂大河のことが、気がかりではある。
 壁の調査に向かったテッサたちの報告が、楽しみでもある。
 一人だけ戦場に残された御坂美琴のことが、心配でもある。

 どれもこれも気になる。
 だがそれ以上に、晶穂の中では依然――浅羽との因縁が燻っている。

 もう一度会いたいとは思っても、もう二度と会えないかもしれない。
 機会があるとすれば、おそらくこの一回限り。
 拒めば、水前寺は自分を下ろして一人で浅羽を捜しに行くのだろう。
 一緒に行く、ただそれだけを口にすれば、このまま助手席に座っていられる。

「今も神社からどんどん遠ざかっていっている。迅速に決断したまえ、須藤特派員」

 返答を急かされた。
 時間が許せば、小一時間ほど悩んだだろう。
 しかし、晶穂はここで決めた。
 決めざるを得なかった。

「あたしは――」

 水前寺はアクセルペダルを踏む力を緩めることなく、その返答を受け入れる。



【D-2/北東・道路上/一日目・午前】

【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、シズのバギーを運転中
[装備]:電気銃(1/2)@フルメタル・パニック!、シズのバギー@キノの旅
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
1:晶穂の返答を待つ。その後、バギーから降ろすか、一緒に行くかを検討。
2:浅羽捜索のため、北東の方角へと移動する。
3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
4:浅羽が見つからずとも、午後六時までには神社に帰還する。

【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康、シズのバギーの助手席
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:なし
[思考・状況]
1:水前寺と共に浅羽を捜しに行くか、それとも一人で神社に帰るか、決断する。
2:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。


 ◇ ◇ ◇


ウィキ募集バナー