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スキルエンカウンター(下) 古泉一樹の挑戦

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スキルエンカウンター(下) 古泉一樹の挑戦 ◆LxH6hCs9JU




 戦鐘が鳴って古泉がまず取った行動といえば、一時退却だった。

「あれだけ大見得切っといて、ケンカのやり方がせこいってのよ……!」

 不平を漏らしつつも、美琴は街中を走って古泉の姿を捜す。
 近辺はオフィス街とも住宅街とも言い表しがたい雑然とした街で、人が潜むのに不自由はないように見える。
 駐車場付きの二階建ての家宅に、24時間営業のコンビニ、駐車スペース四台分程度の駐車場、廃れたビル、
 昼間だと言うのにシャッターの閉まった銀行、ファミリーレストラン『Beny's』といった新鮮な街並みが目に映った。

「さて、アイツはどこにいるかな、と……」

 まさかあのまま逃げた、などとは思いたくない。
 正面からの攻防は不利と考え、潜みながらの闇討ちを狙っていると見るのが妥当だ。
 敵の攻撃を座して待っているのも馬鹿馬鹿しい、と美琴は街中を東奔西走、動きながら古泉の出方を待つ。

 軒先に特売のケース売りビールなどが積まれた酒屋の角を曲がったところで、それは見つかった。
 バレーボール大の球が一つ、淡い採光を放ちながらふよふよと宙に浮いている。
 傍らに古泉一樹の姿はない。

「……?」

 訝る美琴の背後、その気配は突如として現れた。
 『おすい』と書かれたマンホールが音を立てて弾け飛び、下水道の中から古泉お得意の光の球がもう一つ浮かび上がる。
 美琴が後ろのそれに気を取られた直後、前方でただ漂っていただけの光の球も動きを見せた。
 前と後ろ、両方向から光の球が迫り来る。

(遠隔操作も可能、ってわけね!)

 美琴は俊敏な動作で横に跳び、地面を転がりながらこれを回避する。
 二つの光球は互いに衝突し、消滅。急な方向転換までは難しいようだった。

(アレ自体が意思を持っているとかそういうわけじゃないだろうし、だとしたらアイツは私が見える範囲に……いる!)

 学園都市でも見たことがない、未知の能力である『光の球』。
 発現させ、操ることがその本領と見て取れるが、さすがに自身の視覚外にあるものは操作できないだろう。
 ならば攻撃を受けたこの瞬間こそが好機と捉え、美琴も負けじと能力を行使する。

「こそこそ隠れてないで、出てこいやぁ――――っ!」

 左右前後を確認した後、放電。対象を指定せず、無差別に電流を送り込む。
 酒屋に置いてあったビール瓶が一斉に破裂した。向かいの理髪店の看板が黒こげになって弾けた。
 頭上を伝う電線が焼き切れた。猫避けに置いてあったペットボトル入りの水が破裂した。雷でも落ちたような被害だった。

 美琴を中心とした半径十メートルほどが電撃の余波を受け、しかし標的の悲鳴は聞こえない。
 賛嘆に値する徹底したヒットアンドアウェイ。付き合う側としてはストレスが溜まることこの上なかった。

「また走らせるつもりかい……っ」

 ビリ、と美琴の憤懣を表すように火花が散る。
 古泉の嫌みったらしいほどにさわやかな微笑みを思い浮かべると、イラつきはさらに増した。

 常盤台の『超電磁砲(レールガン)』相手に、『体力の消耗を狙う』などといった戦法は通用しない。
 大抵はスタミナが切れるよりも先に終わらせてしまうからだ。御坂美琴の攻撃力はそれほどなのである。

(とはいえ……ここに来てからの違和感も考えると過信してはいられないわよね。
 放送でアイツが言ってた話も気になるし、土壇場で電池切れでも起こしたりしたら目も当てられない)

 せめて無駄な力の放出は抑えたい。そのためにはやはり、きちんと古泉の姿を視認しなければ。
 あの光の球、攻撃方法はなかなかにトリッキーだが、防御にまで応用が利く能力とも思えない。
 さすがに『超電磁砲(レールガン)』を使うわけにはいかないが、電撃を叩き込むだけでも無力化は容易だろう。

 何度目かの奔走を続け、やがて美琴は古泉の姿を発見する。
 これまでの行動が冗談かなにかだったかのように、隠れもせずにただポツンと立っている影。
 景色に溶け込んでいると言っても過言ではない。危うく見落としそうになった。走り抜ける横合いの月極駐車場に。

「どうも。お探しの僕、古泉一樹です」

 古泉は数年ぶりの知人にでも会ったかのような様相で、手を振っていた。
 美琴は駆ける足にブレーキをかけ、停止。古泉に向き直る。
 駐車場には二台の乗用車が停めてあった。ハードトップとミニバン。空きスペースが四台分ある。
 古泉は駐車場の中央に立っており、その背後はブロック塀。逃げ場のない袋小路。思わず、美琴の口元が歪んだ。

「いよいよ観念した、ってわけ?」
「ええ。一度、正攻法で貴女を迎え撃ってみたくなりまして」

 古泉はそう言って、右手に握っていたものを指し示す。
 遠くからでも傷や凹みがわかる、使い古した野球バットだった。

「能力で劣るからって、今度は武器に頼りますか。しかもただのバット。私も見くびられたものね」
「なにを隠そう、僕は超能力者であると同時に天才野球少年としての顔も持っていましてね」

 相も変わらずふざけたことを言う口である。
 いい加減辟易し始めた美琴をよそに、古泉はその場でバットを構えた。

「リクエストします。貴女お得意の『超電磁砲(レールガン)』――僕に寄越してみてください」

 まるで、バッターボックスにでも立つかように。
 マウンドではなく駐車場入り口に立つ美琴を、投手かなにかと仮定して。
 『超電磁砲(レールガン)』を寄越せ、それをかっ飛ばしてやるからよ――と。

「ふざけんのも……っ」

 これにはさすがに、堪忍袋の緒が切れた。
 スカートのポケットからゲーム用のコインを取り出し、古泉に向ける。
 美琴の周りでまた、空気が震動した。怒りがそのまま、力のブレーキを外してしまう。

「大概に、しろってのよぉ――っ!!」

 やれるもんならやってみろ、と美琴がコインを指で弾いた。
 超速の『超電磁砲(レールガン)』は古泉がバットを構える真横を狙い、一直線に伸びる。
 大リーグ投手のストレートすら比較にすることはできないその『弾』に、しかし古泉は表情を崩さず、

「ふん……もっふ!」

 バットを一閃、これをホームラン。
 カキーン、という爽快な音が電流を帯びたコインを軽々空へと上げ、そして消えた。

「……………………なっ」

 そんな馬鹿な、と零れんばかりの驚愕が美琴を襲う。
 快打を披露した古泉はバットの具合を確かめながら、

「ふむ。どうやって飛距離を稼いでいたのか疑問でしたが、なるほど。そういう風に情報を改変していたわけですか。
 バットがボールを追うだけならまだしも、彼の妹さんですらスタンドに運べてしまうわけですからね。
 物理干渉の法則性自体を変え、涼宮さんのご期待通りにしたと。いやはや、さすがの手腕と言うべきでしょうか」

 美琴を打ち負かした余韻になど浸ることなく、ぶつくさと訳のわからないことを呟いている。

「も、もう一回よもう一回! まぐれは二回も続かないんだからね!」
「いいですよ。受けて立ちましょう」

 美琴がまた、電撃に乗せてコインを放った。
 古泉がバットを振り、これを虚空へとかき消した。

 快音の響きがなんとも馴染む、午前の青空だった。

 わかってはいるのだ。まぐれなどあるはずがない。
 そんな不確かなもので、『超電磁砲(レールガン)』が攻略されるなどあってたまるものか。
 こんな珍事、常盤台中学で知れればたちまち大ニュースである。
 《超能力少年古泉一樹、御坂美琴の『超電磁砲(レールガン)』をホームラン!》――など。

 笑い話にもならない。

「……三度目の正直よ、構えなさい」
「ええ、構いませんよ」

 ポケットからまた新しいコインを取り出し、親指の上に載せた。
 古泉は「どうせ当たるから」と言わんばかりのだらけたフォームでバットを構える。
 電流が迸った。周囲の空気がはためいた。勢いで雷雲すら呼んでしまいそうだった。

 パチン、と美琴の親指がコインを弾いた。
 その速度は実に、音速の三倍と検証されている。
 電磁力の反発によって打ち出されるそれが、金属バットなどで打ち返せるはずがない。

 打ち返せるはずがないのだ――絶対に。

 追尾機能でも備わっているのか、古泉のバットがコインを真芯で捉えた。
 ドゴン、と快音が轟き、バットの上半分が木っ端微塵に砕け散った。
 続いて、古泉の背後にあったブロック塀が弾け飛んだ。

「おや」

 驚いた風に、古泉はバットをしげしげ眺める。
 コインに触れた部分が綺麗さっぱりなくなってしまっている。
 どうやら、二度あることは三度あるとはいかなかったようだ。

「なめんじゃないわよ」

 語気重く、美琴が言う。

「どんなふざけた能力だか知らないけど、私の力が通用しない相手なんてこの世で『二人』しか存在しないのよ」

 怒りを込めた、だからこそ静かな語り。言う『二人』とは、美琴にとって因縁深い人物である。
 一人は、『一方通行(アクセラレータ)』。七人しかいない『超能力者(レベル5)』の頂点、つまりは学園都市最強の存在。
 彼のベクトル変換にかかれば、いかな電撃を放とうとも容易く反射、もしくは受け流されてしまう。
 そしてもう一人は、名簿にも名を連ねている『無能力者(レベル0)』の少年。 

「ふむ……さすがの長門さんといえど、高速で射出されるコインとの接触など想定の範囲外でしたか。
 バット自体の耐久力をあとほんの少し上げておいてもらいたかったところですが、言っても始まりませんね。
 まあ二度も持ち堪えただけ上出来としましょうか。ただの『鈍器』として活用するよりかは、役割が見出せました」

 アイツの、上条当麻のみょうちくりんな力の前では、たとえ古泉の超能力といえど――と。

「……って、無視すんなやこらぁ――――――っ!!」

 バットにばかり注意がいき、まるで美琴の話を聞いていない古泉だった。
 もはや問答無用、と美琴は手中に、目に見えるほどの巨大な雷撃を形成する。
 槍のように先端を鋭く尖らせたそれを、古泉目掛けて思い切り投擲した。

「おっと」

 途端、古泉の身体が淡く発光し、真上に跳躍した。
 無重力にでもなったかのような高さまで上がり、真下を雷撃の槍が突き抜ける。
 また軽やかに着地して、依然微笑は崩さない。

「いやはや、身内の作ったものなので期待していたのですが、そう上手くはいきませんね」

 損壊したバットを放り捨て、嘲笑。
 美琴は怒髪天をついた。

 そのときだった。

 距離を詰めようとした美琴の進路を塞ぐようにして、駐車場に業火が渦巻く。
 なんの前触れもなく、ほとんど天災に近い形で、その炎は空からやって来た。
 美琴と古泉は、揃って上空を見やった。一人の少女の姿が、そこにある。

「なっ……!?」

 目を見張る中、空を飛んでいたその少女は駐車場へ降下する。
 放った炎は早々に消え、しかし少女の像は陽炎のように歪んだ。

 見た目の年齢は自分たちと大差ない。小柄な体格は比較対象として白井黒子を呼び起こさせる。
 仰々しいことに漆黒のコートを羽織っており、チラリと見える中の着衣は見慣れない学生服だった。

 特筆すべきは、髪と背中。

 少女の髪は紅蓮の二文字がぴったり合致するほどに紅く染まり、そしてなにより『燃えている』。
 背中からは荒鷲を思わせるほどに巨大な『炎の翼』が生えており、今もなお微かに、少女の身を宙に浮かせていた。

 人と見るには異様すぎる出で立ち。歳不相応なまでに凛とした佇まい。首から下げたペンダント。右手に握った木刀。
 炎のように燃える髪と、灼熱のように紅い眼が印象的な少女は、美琴と古泉の間に割って入り、そして告げた。

「どちらが先かは知らないけれど、二人とも今すぐ戦闘をやめなさい」


 ◇ ◇ ◇


 翼での形状維持に、自身の頭髪の燃焼、さらに先ほどの『火炎放射(フレイムスロアー)』。
 あのような形で炎を繰るなど、『発火能力者(パイロキネシスト)』の力の範疇を超えている。
 それこそ、『超能力者(レベル5)』の領域だ。
 しかし『超能力者(レベル5)』の域にいる『発火能力者(パイロキネシスト)』など、美琴は知らない。

「なに、アンタ?」

 ぶっきら棒に尋ねる言葉の端で、おおよその見当はついていた。
 おそらく、能力者ではない。古泉と同じく、別の『物語』に住まう人間だ。
 力の原理はよくわからないが、実力は『超能力者(レベル5)』と断定しきれる。
 それほどの威圧感が、対峙する美琴に生唾を飲み込ませた。

「言っておくけど、襲ってきたのはそいつのが先よ。私は一方的な被害者なんだからね」
「それはあんまりな言い草ですね。こちらは危うく、消し炭にされるところだったというのに」

 軽口を叩く古泉の表情も、どこか険しい。明らかに余裕がなくなっている様子だった。
 少女は炎髪の熱気に反し、極めて冷淡に言葉を紡ぐ。

「どちらが先か、なんて本当はどうでもいいのよ。私は、おまえたちが争っているのを見たから止めに来ただけ。
 無用ないざこざなら仲裁役を買って出てもいい。双方共に殺意あってのことなら――二人とも討つ」

 炎の翼がフッと消え、代わりにどちらに向けてでもなく木刀を構えた。
 突如として戦闘に介入してきたイレギュラー因子を前に、古泉は押し黙る。
 一方、美琴は、

「おもしろいじゃない……」

 少女の行為を『ケンカへの参加』と解釈し、電流の流れを止めるどころかむしろ活性化させる。

「どうにも、ここに来てからなめられっぱなしなのよねぇ……ガウルンとかいうおっさんといい、零崎といいさ」

 今に至るまで自身に感じていた不甲斐なさ、古泉に向けていた敵愾心を、そっくりそのまま少女に転化して、

「ここには黒子もいるってのにさ……常盤台の『超電磁砲(レールガン)』が、このままじゃいられないでしょうがっ!」

 名誉挽回のために、もっと言えば溜まりに溜まった憂さを晴らすために、美琴は電撃の猛威を振るう。
 傍に止めてあったハードトップが、電撃の余波を受けて弾けた。ボンネットから煙が噴き出し、タイヤは破裂して車高が下がった。
 少女と古泉がその事態に刮目する中、美琴は右掌を中心に磁場を発生させ、駐車場の砂利から砂鉄を引き寄せる。
 集まった砂鉄は少女が握る木刀を意識し、剣の形を形成。刀身全体が黒く澄んだ色をしていた。

「忠告はしたはずよ。やめる気がないって言うんなら、容赦はしない」
「お生憎様。私、売られたケンカは倍の値段で買い取る主義なのよ、ね!」

 美琴が駆ける。砂鉄の剣の先端を突き出すように構え、一直線にそれを放った。
 少女はその刺突を微細な動作でかわし、わずか身を翻して美琴の背中に木刀の峰を打った。

「あでっ!?」

 間の抜けた声を上げて、美琴が転倒。砂利の地面に思い切り顔を滑らせた。

「刃が振動してる?」
「そのようだな」

 少女の独り言に、遠雷のような重い声が返したように聞こえたが、気にしていられない。
 美琴はひりひりとする顔面を摩りながら、立ち上がってまた砂鉄の剣を構える。

 少女の言うとおり、砂鉄で作った刃は音こそ静かなものだが高速で振動し続けている。
 触れれば切れる、ではなく、触れれば切断される、といった次元の切れ味だ。
 美琴が構えるのは、剣というよりは小型のチェーンソーに近かった。

「う、りゃ! こ、のぉ!」

 少女もそれを理解しているのだろう。安易に木刀で受けようとはせず、後退しながらの回避に努めている。
 顔色一つ変えないところが癪に触り、美琴は必要以上に剣を振り回してこれを追った。
 横薙ぎの一撃を、少女が跳躍して避ける。停車されていたミニバンの屋根の上に、トン、と乗った。

「ちょこまかとぉ――っ!」

 距離が開いたのを鑑みて、美琴が攻撃方法を切り替える。
 前髪が、避雷針のようにピンと伸びた。
 瞬間、ミニバンに向けて電撃が放たれ、大型の車体を焼く。
 屋根に乗っていた少女はまた跳躍し、今度は美琴の背後に降り立った。

「電撃か……『震威の結い手』を髣髴とさせる自在法だが、やはり不可解だな」
「“ミステス”でもないのに“存在の力”を扱えている。ただの人間じゃないみたい」
「『あの二人』とは違うと考えるべきか。心してかかれよ」

 背後からまた、遠雷のような声が響いてきた。振り向いて確認するも、少女は一人だ。
 まるでそこに、少女以外の誰かが存在しているかのように。
 少女はまるで、自分以外の誰かと会話しているかのように。
 この姿に既視感を覚えるのも、美琴はまだ止まれない。

「逃げ回るのは結構だけどね……」

 接近しても軽くいなされる。美琴に剣術の心得などはなく、斬りかかっても少女を仕留めるのは困難と判断。
 なので、美琴は距離を六メートル間隔ほど置いたその場から、『遠距離攻撃として』砂鉄の剣を振るった。

「こいつには、こういうこともできんのよっ!!」

 美琴の掛け声と同時に、砂鉄の剣がうねうねと蠢動する。
 鞭のようにしなやかに、蛇のように艶かしく、刀身は不規則な軌道を描きながら少女の胸元を目掛け伸びた。

「――ッ!」

 刹那、少女の表情が引き締まる。
 さすがに顔に出たか、と美琴は一瞬だけ笑み。
 少女はしかし、これまで通りの回避ではなく、かといって防御でもなく、

「なっ――!?」

 伸びてくる刃に向かって、駆けた。

(ちょっと、自殺でもするつもり!?)

 美琴は絶句するが、すぐにそんな心配は不要だったと、考えを改める。
 少女はその小柄な体躯を、ほとんど地面に滑り込まんほどに屈め、伸びゆく刃の下を抜ける。
 それで体勢が崩れたりはしない。刃と身が触れ合う瀬戸際の境界を行き、そして。
 あっという間に、刃の根元へと――御坂美琴の正面へと、躍り出た。

「あっ……!」

 怒気に塗れていた美琴の表情が、蒼白に変わる。
 少女は一切の間断も置かず、美琴の右掌、砂鉄の剣を操る支点へと、木刀の峰を叩きつけた。
 骨が破壊されたのではないかと思うほどの激痛が、美琴を襲う。

「くっ、あ――ッ!!」

 そこで、集中力は絶たれた。
 剣の形状を保っていた砂鉄はコントロールを逃れ、砂利に戻る。
 無手となった美琴はその場で尻餅をつき、しかしすぐに起き上がろうとして、

 ヒュッ、と。

「これで終わり」
「…………っ」

 眼前に、木刀の先端を突きつけられた。

 息を呑む。起き上がるに起き上がれない。
 少しでも妙な動きを見せれば、このまま顔面に刺突を食らうか。
 そうでなくとも、介入の際に放った業火で丸焼きにされる可能性とてある。

(強い、なぁ……)

 普段、『唯一の例外』を除いては、戦う際にも力をセーブしてきた美琴である。
 ここに来てから傭兵に辛酸を舐め、殺人鬼に言いようにあしらわれ、超能力者に翻弄されて、果てには少女に命を握られた。
 『超能力者(レベル5)』、『超電磁砲(レールガン)』――強すぎるがゆえに相手を殺しかねないほどの力は、この地においては決して頂点ではない。

 認識を改めると同時、どうやってこの場を切り抜けるか、必死に模索していた。
 敗北という苦い現実を噛み締めながら、どうにか生き延びるすべは、と考えて。

(髪……綺麗だな。キャンプファイヤーの炎みたい。煌々として、なんだか神秘的で……)

 思慮はいつの間にか、少女の燃える髪――『炎髪』のほうへと、意識や視線と共に奪われてしまっていた。
 手入れが大変そうだな、とか。洗髪や散髪はどうやるのかな、とか。そんなどうでもいいことを考えてしまう。
 燃える髪も印象的ではあるが、力漲る紅い瞳――『灼眼』も見事なものだと思った。
 カラーコンタクトなどといった紛い物ではないだろう。あの紅い瞳からは、今の光景がどう映っているのか。

 気になった。
 気になって――ついに気づいた。

 あれ、と。
 あれ……えっと、と。

 一時のクールダウンを置いて、ようやく。

「ちょっと待った!」

 美琴は声を絞り上げ、少女に確認する。

「……あなた、ひょっとして『炎髪灼眼の討ち手』さん? シャナっていう名前の」

 この質問に、少女の身がピクリと動く。確かに反応した。
 肯定もなく、木刀もまだ下ろさないので、さらに付け加える。

「私、御坂美琴。ついさっき、ヴィルヘルミナって人とお知り合いになったばっかなんだけど」

 『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメル
 『炎髪灼眼の討ち手』については、彼女から聞いた。

 炎のように燃える髪と、紅い瞳が印象的な少女。どちらとも黒く染まっている場合もある。
 名簿にはシャナという名前で記載(なぜかヴィルヘルミナは頑なにこの名を口にしようとなかった)。
 外見年齢は人間でいうところの十二歳程度、しかし戸籍上は高校生。
 高確率で首からペンダントをかけている――と、伝え聞いていた情報がすべて合致する。

 頭に血が上りすぎていた。
 どうして今の今まで気づけなかったのか。
 美琴は猛省しつつ、シャナが木刀を納めるのを待った。
 そして、

「御坂美琴……ひょっとして上条当麻の知り合いっていう、ビリビリした中学生?」

 相手側からも思わぬ確認が齎され、このいざこざは落着した。


 ◇ ◇ ◇


 急遽乱入してきた炎髪の少女と、それに突っかかっていった御坂美琴、そして一人その場を離れた古泉一樹。
 街路を緩い足取りで歩きながら、離脱者、古泉一樹は思案に暮れる。

「紫木さんの殺人技術も相当なものでしたが、なるほど。ああいった異能者の類も、僕や長門さんだけではないというわけですね」

 高須竜児水前寺邦博のような一般人はむしろレアケースなのかもしれない、と古泉はそうであってほしくはない仮説を立てる。
 なんにしても、今回の戦いで一つわかったことがある。
 『閉鎖空間』の中ならまだしも、いつぞやの『カマドウマ空間』程度しか力を発揮できない己では、最後の一人になるのは難しい――ということだ。

「知恵はいつも以上に絞らなければいけないと、そういうわけですか。それに、最後の望みも――」

 誰に説明しているわけでもなしに、古泉は考え事を呟いていた。
 その口が、ぴたっと止まる。
 寂れた煙草屋の角を折れたところで、歩も停止した。

「……おやおや。これはさすがに、己の運を呪うべきでしょうかね?」

 曲がった道の先に、置き去りにしたと思い込んでいた二人が立っている。
 一人は、水前寺に御坂と呼ばれていた短髪の少女。名簿の記述を辿るなら、御坂美琴がフルネームだろうか。
 そしてその隣に立つもう一人は、先ほど天壌より飛来し、美琴の怒りの矛先になったと思われた炎髪の少女。
 どちらともにいがみ合うことなく、並んで古泉のほうを睨みやっている。
 電撃と火炎の熱が、痛いほど肌に突き刺さっていた。

「知り合いの知り合いは味方、ってね。ネットワークは築いておくもんだわ」
「事情は御坂美琴から聞いた。古泉一樹、とりあえず捕らえさせてもらうわよ」

 いったいどのような交渉が為されたというのだろうか。
 すっかり共闘体制を組んでいた二人は、揃って古泉の敵として君臨する。
 これにはさすがに、肩を竦めざるを得ない。

「困ったものです。僕としては、今回はほんの挑戦程度のつもりだったのですが。
 このまま捕まれば、今後の活動に支障をきたす恐れすらありそうです」

 が、古泉はめげなかった。
 収穫はすでに、経験という形で自身の中に吸収されている。
 これ以上、この二人から得るものはなにもない。ならば、と。

「そこでどうでしょう。この場は僕と、一つ取引をしてみませんか?」

 古泉は美琴と少女に対し、そんな話を持ちかける。

「僕の支給品の中に、『宝箱』があります。なにかの比喩というわけではなく、文字通りの意味でのお宝です。
 鑑定額はなんと、驚きの千三十一万五千五百ドル。日本円に換算してざっと十二億円の価値になるかと思います。
 お二人で山分けするとなれば、一人頭六億ですか。その年齢でそれだけの財産を築き上げれば、将来に困りませんよ」

 三つ配られた支給品の内の一つ、交渉材料としてしか使い道がないだろう『宝箱』を譲渡する、と古泉は真顔で言った。
 だからこの場は見逃せ、と発現の中に相応の意味も含めて。
 美琴の反応は、

「はっ」

 冷え切った目つきでの、嘲笑。
 周囲を取り巻く空気がビリリと振るえ、古泉の足下でバチッと火花が迸った。

「この場でそんな取引をする意味がわからない」

 と、炎髪の少女は至極もっともな切り返しをしてくる。
 だめでもともとではあったが、ツッコミすら入らないとはおもしろくない。
 古泉は「やれやれ」と首を横に振りながら慨嘆し、「仕方がありませんね」と次なる策を取ることにした。

「では、こちらも切り札を使うほかありません。『鈍器』も『宝箱』も通用しないとなれば……残るは『爆弾』のみですし」

 そのフレーズに、美琴と少女の顔が険しくなった。
 これ以上、猶予を与えてはいけないと――そう判断されたのだろう。

 美琴の前髪が揺れた。電撃を放とうとしている。
 少女の炎髪が煌いた。業火を放とうとしている。

 それよりも速く、古泉は動いた。
 肩に提げていた『二つのデイパック』の内、一方を掴んで上空に投擲する。
 そしてすぐさま、片方の手で『光の球』を形成、頭上高く舞い上がったデイパック目掛け、放つ。

 美琴と少女の視線が、真上のデイパックへと向いた。
 古泉はその間、踵を返して逃走を開始する。
 逃がすまい、と美琴は前方に向かって駆けた。
 少女は逡巡も刹那に、姿勢を低くしながら美琴を追った。

 上空のデイパックは、光球の直撃を受け破裂。
 内容物がぼろぼろと、真下を走る美琴たちの頭に落ちていった。

 うねうねと、蠢動を繰り返しながら。
 それも大量に、二百匹ほどの規模で。

「――ひっ」

 髪の上に、首筋に、服の中に、靴の上に、鼻頭に、肩に、ぴとりと。
 毛虫の大群が、虫嫌いというステータスを持つ少女たちを襲った。

「ぃきゃぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 阿鼻叫喚をバックミュージックに、古泉はクスクスと笑いながらその場を去った。


 ◇ ◇ ◇


 ――『我学の結晶エクセレント29004―毛虫爆弾』。

 それが古泉一樹に支給された三つ目の支給品、『爆弾』の正体である。
 最初に荷物を確認した際、ビニール袋一杯に計五百匹もの毛虫が入っていたときはどうしようかと思ったが、結果的に言えば三つの支給品の中では一番役に立った。
 『物語』や『文法』が違おうとも、少女という生き物は往々にして害虫の類が苦手なものである。

 そして、古泉一樹は今度こそ安全圏にまで達した。
 傍には警察署らしき建物が建っており、背後に追っ手の気配はない。
 今頃は身体に纏わりついた毛虫を引っぺがすのでてんやわんやだろう。

「……可能ならば、涼宮さんを生かすために僕が奮起する――という選択肢を選びたかったのですが、やはり難しいようです」

 古泉はふらり、と警察署の駐車場に迷い込んだ。

「まず第一に、実力が足りていません。僕一人が生き延びるだけなら十分と言えるでしょうが、涼宮さんを害しうる障害を取り除くとなると、些か役者不足です」

 そこにはパトカーや護送車の類が一切見当たらない。がらんとしていた。

「それを確かめる意味での『挑戦』だったわけですが、いざ最悪の結果に直面してみると、堪えますね。
 これはやはり、当初の予定通り『涼宮さんを絶望させる』ほうが簡単と言えるでしょうか?
 しかし、長門さんの訃報でも足りなかったところを見るに……切り札は一つに限られてしまいます。
 天秤にかけてみたとして、どうでしょう。『彼』と接触を図るためのきっかけみたいなものがあればいいのですが」

 警察署内なら、拡声器の一つでも見つかるだろうか。
 道行く人々に交通安全を呼びかけるがごとく、『彼』の名を呼んでみるのもおもしろいかもしれない。

「どちらにせよ、この『物語』に対して涼宮さんの権限がどこまで有効なのか、その答えは出ていないわけです。
 現状、最大権限と考えられる『彼絡みの絶望』を行使したとしても、はたしてどうなるか。わかったものではありません。
 ……などと疑念を抱くこと自体が、間違っていた。ええ。僕とあろうものが、少し自覚が足りなかったようです」

 述懐して、古泉は自らの迷いを戒めた。

「古泉一樹は『機関』の一員にして『超能力者』である。これだけは覆らない事実です」

 ある日突然、涼宮ハルヒが及ぼす世界への影響について知った少年。
 ある日突然、自身に備わった妙な力の本質がなんなのかを知った少年。
 ある日突然、閉鎖空間の放置と《神人》の危険性について知った少年。

 それが『機関』に所属するという証であり、今この場に在る『古泉一樹』のすべて。

「『機関』は涼宮ハルヒを『神』と崇め、世界は彼女の力によって成り立っていると信じて疑わない。そう、疑ってはならないです」

 信奉者のように、古泉一樹は涼宮ハルヒを語る。

「そもそも我々はなぜ、涼宮さんを神と定義しているのか。それは世界が、彼女が見る夢のようなものと考えているからです。
 この『物語』が他人の夢であったとするなら、それはそれで興味深い事実です。しかし、僕個人で『機関』の思想を違えるわけにもいきません」

 時折、歳相応の少年としての顔を見せながら。

「僕は特に、何事もなく平穏無事に世界が継続されることを望んでいます。そこは『彼』となんら変わりませんよ。
 元の世界はそうであってほしい。逆にこの世界、いえ『物語』は、滅んでほしいというのが本音です。
 ふぅ……いくら考えても、鍵は『彼』以外に存在しませんね。ともなれば、当面は彼の捜索でしょうか」

 時折、残酷な組織の一員としての顔を見せて。

「……いえ。減らせる障害は減らしておくべき、ですね。先ほどのような方々は御免被りますが。
 仮に、彼女も『彼』も死んでしまうようなら――僕が帰るべき世界はないのかもしれません。
 一応、『機関』への手土産は用意しておいたのですがね。情報統合思念体への、とも言えますか」

 古泉一樹は様々な立場にいる苦労人として、深くため息をついた。

「なんにせよ……少し休憩しましょうか。朝から運動して疲れてしまいました」

 頭の整理を終え、古泉は警察署へと歩を向ける。
 地図で言うところのD-3エリア。
 この椅子取りゲームが三日間続けば、最後に残るのはこの区画、そしてこの施設となる。
 あるいは、それを見越して篭城している人間がいないとも限らないが……一時休止の場として活用するくらいは許されるだろう。

「できることなら、この先の邪魔は遠慮していただきたいところです」

 その後はまた、超能力少年古泉一樹としての奮闘が始まる。
 鍵となりうる唯一の存在、『彼』を探し。
 世界の中心にして『神』たる存在の彼女を探し。
 己の脆弱な力で潰せる芽があれば、積極的に潰していく。
 やらなければいけないことの数は、膨大だった。

「なにせ僕がしなければ、確実に世界は崩壊しますから」



【D-3/警察署/一日目・午前】

【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式×2、キャプテン・アミーゴの財宝@フルメタル・パニック!、
    我学の結晶エクセレント29004―毛虫爆弾(残り300匹ほど)@灼眼のシャナ、長門有希の生首
[思考]:
基本:涼宮ハルヒを絶望させ、この『物語』を崩壊させる。もしくは、彼女の生還。
1:警察署の中でしばらく休憩。
2:涼宮ハルヒを絶望させうる唯一の鍵である『彼』――キョンの捜索。
3:涼宮ハルヒを最後の一人にすることも想定し、殺せる人間は殺しておく。
4:涼宮ハルヒが死亡した場合、『機関』への報告のため自身が最後の一人となり帰還する。
5:帰還の際、『機関』と情報統合思念体への手土産として長門有希の首を持ち帰る。
[備考]
 カマドウマ空間の時のように能力は使えますが、威力が大分抑えられているようです。

[備考]
『ホーミングバット@涼宮ハルヒの憂鬱』はC-2市街地の駐車場にグリップ部分だけの状態で放置されています。


【キャプテン・アミーゴの財宝@フルメタル・パニック!】
十七世紀の大海賊『キャプテン・アミーゴ』がメリダ島に残した財宝。
古風な宝箱の中に金銀財宝がざっくざっく。
〈ミスリル〉鑑定額は千三十一万五千五百ドル(約12億円)。


【ホーミングバット@涼宮ハルヒの憂鬱】
野球の試合で長門が細工した、金属製のインチキバット。
属性情報をブースト変更。ホーミングモード。


【我学の結晶エクセレント29004―毛虫爆弾@灼眼のシャナ】
“探耽求究”ダンタリオンこと“教授”が発明(?)。元は『夜会の櫃』に装備されていた。
のべ五百匹もの精鋭毛虫軍団がビニール袋に収められている。
あるフレイムヘイズの少女を半狂乱半泣き状態にまで追い込んだ実績を持つ。


 ◇ ◇ ◇


 阿鼻叫喚の宴がようやくの終焉を見せ、少女たちはへとへとだった。
 炎と電撃で毛虫の大群を焼き払いどうにか事なきは得たものの、古泉を追う気力はもう残っていない。

「サイアク……もぉ、なんなのよ~」

 御坂美琴は半ベソをかきながら、ガサガサになった髪をなでる。

「二度も……二度も、あんなものにやられるだなんて……ッ」
「う、ううむ……」

 炎髪灼眼を潜めた、黒髪黒眼状態のシャナが、怒りに震える声で呟いていた。
 彼女が首から下げるペンダント型の神器“コキュートス”から、遠雷のような声が響き渡る。
 彼の声の主こそ、シャナと契約せし強大なる“紅世の王”、“天壌の劫火”アラストールだった。

「よもや、あの“教授”と同じ手を打ってくる人間がいようとはな。それはそうと」

 傷心に浸る二人の少女に対し、アラストールは戸惑いながらも厳格に、今後の動向について促す。

「御坂美琴といったか。今後のことについて議論したい。『万条の仕手』と“夢幻の冠帯”のもとへ案内してはくれぬだろうか?」
「……ヴィルヘルミナに、会うの?」
「うむ。現状、『万条の仕手』と連携を取ることは最優先事項と言えるだろう」

 数瞬間を置いてから、アラストールが続ける。

櫛枝実乃梨を見失い、坂井悠二の消息も未だ掴めていないのだしな」
「……うん」

 その通りだ、とシャナは胸に深く刻み込む。
 ヴィルヘルミナとの合流の機会。これは願ってもない。
 自身の元養育係にして、同士でもあり、なによりも友である、彼女。
 常在戦場を心がけなければならないフレイムヘイズの、理想とも呼べる姿。

 弱音を吐きたくはない。
 だが、今は彼女のような道しるべが欲しい。
 己が迷走していることは自覚している、だからこそ、厳しく律して欲しい。

 叱咤が欲しいという、子供の甘えにしかならない想いを胸に。
 シャナは、己の言葉で美琴に案内を頼む。

「お願い。ヴィルヘルミナのところに案内して」

 毅然とした物言いに、美琴は感嘆しながら返した。

「ん。まあ私もいろいろ聞きたいことあるしね。水前寺と須藤さんは追いかけようにもバギー乗ってっちゃったし」
「ヴィルヘルミナ以外にも、人がたくさんいるって言ってたけど……」
「そのへん、歩きながら話すわ。今はとりあえず」

 美琴は立ち上がって、

「ざけんじゃねーぞゴラァァァァァァ!!」

 空に向かって吼えた。

「なっ……!?」
「ど、どうしたというのだ」

 不意のことに驚くシャナとアラストール。
 美琴の怒りは、決して二人にして一人のフレイムヘイズに向けられているわけではない。

「あンのやろぉぉぉぉ! 次会ったら絶対、ボコボコにしてやんだからぁ――――っ!!」

 毛虫の恨み――と御坂美琴は熱く咆哮し、シャナとアラストールは呆気に取られた。

「むぅ……随分と気性が荒い娘であるようだが」
「でも、御坂美琴には同意する」

 叫ぶという原始的行為で怒りを発散させている美琴に、シャナはいたく共感した。
 少し前まで互いに刃を向け合っていた事実など、古泉の所業に比べれば些細なことである。
 美琴の叫びに賛同できるからこそ、シャナは強く言い放つのだった。

「毛虫の恨みは、いずれ必ず晴らす」
「そ、そうか」

 アラストールはなにも言えなかった。



【C-2/南東・市街地/一日目・午前】

【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:肋骨数本骨折(ヴィルヘルミナによる治療済み、急速に回復中)、全身各所に擦り傷
[装備]:さらし状に巻かれた包帯(治癒力亢進の自在法つき)、ポケットにゲームセンターのコイン数枚
[道具]:デイパック、支給品一式×2、金属タンク入りの航空機燃料(100%)、ブラジャー、
     須藤晶穂のデイパック(調達物資@現地調達 入り)
[思考・状況]
1:シャナを連れ、神社に戻る。その際、水前寺と晶穂のことを報告。
2:上条当麻との接触について、シャナから詳しい話を聞く。
3:もし途中で探し人を見つけたら保護、あるいは神社に誘導。
4:古泉一樹への報復(毛虫の恨み)を果たす。

【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1~2個所持)
[思考・状況]
基本:この世界を調査する。
1:美琴の案内で神社へ。ヴィルヘルミナとの合流を果たす。
2:古泉一樹への報復(毛虫の恨み)を果たす。
3:悠二に会いたい。

[備考]
※封絶使用不可能。
※清秋祭~クリスマス(11~14巻)辺りから登場。


【調達物資@現地調達】
須藤晶穂がスーパーで調達した諸々の品。ダンボール五箱と発泡スチロール一箱。
食料品、生活雑貨、衣類に日用品、薬品と特に考えずいろいろ詰め込んだ。


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