ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

long name

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long name ◆UcWYhusQhw



―――生き残れ。

それは即ち。

―――殺しあえと言う事。

ミスリル作戦部西太平洋戦隊陸戦ユニットSRT所属、相良宗介軍曹がそういうものだと肯定するまでにさほど時間はかからなかった。
ここまで気付かない内に拉致された事を悔やみながらも宗介は草原の中現状把握に徹していた。
狐面の男による開幕の合図。
色々と喋っていたが結論としては60人での生き残りゲームを行えと言うものとそのルール説明。
そして一人になるまでゲームは続く。逆にいつまでも一人にならなければゲームーオーバー。
どうやったら一人になるか。
答えが結びつくのは簡単だった。
即ち殺し合いを行えと言う事。

幼い頃宗介がゲリラとして活動していた頃、生き残る為には殺さなければならなかった。
そういった事のずっと幼い頃から宗介は殺してきた、生き残る為に。
ミスリルといった傭兵組織に入った後もそうであった。
そして、その任務で陣代高校という高校で学生になった時も、そう。
宗介の身の回りには殺し合いなど常であった。

故にこれが殺し合いと即判断することが出来た。

宗介は黙ってデイバックから一丁の拳銃を出す。
黒光りする銃が頬の大きなX字の傷を持つ宗介の顔を映していた。

宗介はその黒い銃身を見ながらただ思考に溺れていた。
まずは脱出の出来る可能性を考えていた。
しかし、宗介は即その可能性を否定する。
まず、拉致の時点で可笑しいのだ。
宗介は連れてこられる直前陣代高校で授業を受けていた。苦手な古文を。
現に今も陣代高校の黒の制服である。
悪戦苦闘しつつ問題を解いていた時、ふと気がつけばあの狐面の男の前に連れてこられた。
瞬く間に拉致をした相手に脱出などできるのか。
いや、出来はしないだろう。精々また拉致されてしまう。
それに、60人ほどの人数を拉致して騒がれないのも可笑しいし同じように60人も拉致する事なんて並大抵な事ではない。
外部との連絡もきっと出来ないだろう、多分邪魔されない為に何か妨害をしてるに違いない。
つまり外部の接触も不可に限りなく近いだろう。
要するに自力での脱出は不可。

宗介はそう肯定して次に殺し合いにどう自分は向き合うかを考え始める。
普通ならばそのまま59人を殺戮し優勝するのも手だろう。
自分には護るべき対象、千鳥かなめが居るのだから。
しかし困った事がある。

(千鳥……)

その千鳥かなめもこの殺し合いに巻き込まれているのだ。
そして、自分の上官でテレサ・テスタロッサも巻き込まれている。
彼女たちは絶対に死なせてはならない。
テッサは上官であり、ミスリルのとって無くてはならない存在だ。
かなめは……兎に角護らなければならない。絶対に。
二人ともここで死なせてはならない。
そう宗介は思う。
他にもクルツ・ウェーバーという同僚も巻き込まれていた。
何故か死んだガウルンの名前があったかがこの際気にしない。
別人かもしれないと宗介は思って。
そんな事よりも宗介はもっと考えなければならない。

(どうする……?)

この殺し合いでどうするべきかを。
この殺し合いでかなめとテッサが巻き込まれている現状、優勝を狙うつもりは宗介は無い。
ならば2人が生還できるように脱出の術を探すべきか、いやそんな事している間に殺されるかもしれない。
二人とも戦闘能力は皆無に等しいのだ。

ならばどうする……?
どうする……?

思考の渦に飲み込まれていく宗介。
そして編み出される苦し紛れの一手。

(2人……どちらかでも優勝させる。その為に俺が人を殺す……?)

千鳥かなめかテッサ・テスタロッサ。
この2名が両方とも助かる可能性は極めて少ない。
しかし……力の無い彼女達を生かす為に宗介が出来る事。
それは片方しか生還できないのならば……それならば。
どちらかでも優勝させると言う事。
その為に人を殺すという事。

つまりは彼女達の為に殺し合いに乗るということ。

自らの命を捨てる覚悟はとうにできている。
だから、彼女達を生還させるために。
ミスリルの軍人として。
相良宗介として。
殺し合いに乗ろうと。
そう思ったのだ。

しかし

(一般人が居たのならそれを殺す……?……それに千鳥は……彼女達は喜ぶのだろか?……それにこれが正しい事なのか?)

未だに迷っていた。
ただの感傷なのかもしれない。
それでも迷っていた。
罪も無い一般人を殺すという事。
それに彼女達はこれを望むのだろうかと考えてしまう。
これが正しい事かと。
学園生活してそう思ってしまう。
もし、残りの10人にクラスメートがいたらと考えてしまう。

そんな迷いの中だった。

宗介が長い栗色の髪を持った少女を見つけたのは。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







わたしの名前はリリア・シュルツ。リリアが与えられた名前で、シュルツが名字。
いつも誰からもリリアと呼ばれるけど、正式な本名はこれが呆れるほど長くて、リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツになる。
これだけ長いとめったに使うことない。半年に一度あるかないか。
まぁ今はそんな事はどうでもよかった。

「何なのよ……生き残れって」

ぶつくさ呟きながら私は草原を唯歩いていた。
あの男の人が言った意味を未だに良く理解できていない。
気がついたら一人草原にぽつんと立っていて。
良く解らなかったから唯歩いている。

それにこの良く分からないものにわたしのママ――アリソン・シュルツも巻き込まれているらしい。
何故だか。
でも、あのママの事だから飛行機に乗り回す空軍大尉のように上手くやってると思う、多分。
取りあえずママと合流したい。
それとママの彼氏である英雄さん――トラヴァス――も居た。
得体の知れない所もあるけど信頼できる、うん。

それと……トレイズ
私の……んーなんだろ?
上手くやってるかな、あいつ。
……妙にへたれてるし、詰めが甘いし。

とりあえず真っ先に合流してやろう。
トレイズ一人では心配だ。
何を失敗するか分からないし。

うん。

そうしよう。


しかし今回の事は本当によくわからない。
今までトレイズと一緒に飛行機を運転する羽目になったり、テロリストの篭城事件に関わったり、列車で殺人事件に巻き込まれたりと色んな事件に遭遇したけど今回はよく分からない。
何かしら事件に巻き込まれる体質なんだろうか?
命の危険も人の死も何回も見てきたし。
そういうのは余り見たくもないし体験もしたくないけど。
今回は何がしたいんだが全く。

そう思って腕を組んで歩いていた時だった。


「止まれ」

銃を背に突きつけられ低い声が聞こえてきたのは。

そう、もう何回目か分からない命の危険だった。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「止まれ」

宗介の制止の声が草原に静かに響いた。
宗介はリリアの姿を確認した後近くの茂みに隠れ静かに移動しリリアの背後を取ったのだ。

「な、何?」

リリアの驚きと恐怖の声が響いた。
リリアとしては唐突に訪れた死の危険に唯驚くばかり。

「もう、何なのよ……生き残れって言われてそれで命の危険……訳わかんないわよ」
「これは殺し合いだ。生き残りたかったら殺して生き残らなければならない」
「……え?」

宗介の言葉にようやくリリアは趣旨を理解し始めている
生き残れと言われた言葉の意味、それは殺しあえという事。
リリアのディバックに入っていた武器のサバイバルナイフ。
リリアは理解できなかったがそれで人を殺して生き延びれという事。
それをようやくだが理解し始めていたのだ。

「まあいい。貴様に聞きたい事がある」
「何よ、わたしには名前があるのよ」
「……何だ?」
「リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツよ」
「……は?」
「だからリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツよ。馬鹿みたいに長いけど本名なの」

リリアの名前に粟くらいつつも宗介は続ける。

「そ、それで貴様に聞きたい事がある」
「……わたしを殺すの?」
「……それは貴様の返答次第だ」
「……ちゃんと本名で言わないと嫌だ。答えない」
「……ちっ。ええとリリアーヌ・アイカシア……なんだ?」

宗介はリリアの名前を答えられず途中で止まる。
そんな宗介にリリアは鼻を鳴らしてもう一度早口で言う。

「リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツよ」
「……すまない。聞き取れなかったのだが」

宗介は聞き取れずもう一度聞き返すも

「駄目。一度しか言わない」
「……リリアーヌ・アイカシア・コラソン……続きは?」
「さあ?」

宗介は顔を歪める。
かなめとテッサの事を聴こうと思ったのだがいい加減殺しても言いかと思えてきた。
しかし、リリアが一般人である事とかなめとテッサの情報を持ってるかもしれない淡い期待が浮かび未だに続けている。
まだ抵抗があった。
自分の通ってる高校生と同じような子を殺すのは。

「……リリアーヌ・アイ……ええと……カシア・コラソン・ウィ……ふむ………………ッティング・シュルツ」
「残念、何か抜けているわよ」
「……馬鹿な……っ……リリア……」

もう一度言い直そうと記憶を呼びもどうそうとリリアから顔を背けた時だった。
一般人だからという宗介の慢心もあったのかも知れない。
まだ殺す抵抗があったのかもしれない。
それは分からないが一瞬の隙ができたのだ。
リリアはその隙を狙い

「リリア肘打ち」
「……ぐっ!?」

宗介の鳩尾に肘をを入れる。
宗介は苦悶し、すかさず撃とうとするが

(千鳥……!?)

一瞬。
一瞬だが。
リリアのその活発な姿がかなめにかぶって。
宗介はトリガーを引けなかった。
そんな事を露も知らないリリアは

「でええい!」
「ぐぇ!?」

想いっきり蹴った。金的を。
流石の宗介もこれには悶絶し銃を離す。
それをリリアはすかさず奪って宗介に向ける。

「はぁ……はぁ……怖かった……もう、ビックリしたんだから……それでアンタ私を殺そうとしたんでしょ」
「……肯定だ」

リリアの問いに宗介は重々しく答える。
状況が逆転したのだからこの場は従うしかない。

「ばっかじゃない!? なんで!?」
「……俺には護りたい人達が居る。その為には彼女達を優勝させようと思った」

本来ならこんな少女の問いに答える義理は無い。
拷問されても宗介は答えないと言えた。
しかし今はまるで懺悔するように答えている。
それは未だに迷っているせいか。
ただ、かなめに被った少女のせいか。
誰にも分からないけど。

それでも宗介は思った。

「はぁ……?……そんな事してその人達喜ぶの? 私は似たような事トレイズにやられたら問答無用で殴るわよ……そんなの正しい訳ないじゃない」
「しかし助かる可能性なんて少ないんだぞ!」
「少ないなくてもあるならいいじゃん。少しでもあるならそれに賭ければいいじゃないの」

正しくない。
たとえ少ない可能性だとしてもそれに賭ければいい。

そう、誰かに言ってほしかったのかもしれないと。

結局の所、宗介は未だ修羅にはなれないかもしれない。
それは学園生活のせいか。
宗介自身の成長ゆえか。

それは誰も分からないけど。


ただ、今この瞬間は。


「……ああそうかも……しれんな。肯定だ」

かなめに似た少女の出した結論に肯定した。

肯定したい。

そう、宗介は思ったから。

リリアは屈託無く笑い腕を組み偉そうにこう言った。

「うむ、よろしい」








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「それで、宗介は千鳥かなめさん、テッサ・テスタロッサさんを探してるのね」
「肯定だ」
「よし、じゃあいこー」

草原をリリアと宗介が共に歩き始めていた。
あの後情報交換し共に行動する事を決めた。

宗介はとりあえずかなめとテッサと合流を目指す事にした。
殺し合いに乗るかは保留にしてまずは脱出の可能性を最後まで模索する事にして。
しかし、もし、脱出が本当に否定されたのだったら。
そして、もし、かなめとテッサの為に殺し合いに乗らないといけないことがあったのなら。

(俺はもう一度、彼女に銃を向けるかもしれない……)

そんな事を想いながら前を進むリリアの背を見つめていた。
そんな時不意にリリアが振り向き宗介に何かを手渡す。

「あ、そうだ……これ、渡しておく。私上手く使えないし」
「……いいのか?」
「うまくつかえるのでしょ?」
「肯定だ」
「なら、渡しておく」

そうやって渡されたのはリリアに支給されたサバイバルナイフ。
リリア自身扱いはできない。
なら、軍隊出身である宗介に渡した方がいいとリリアは判断したのだ。
リリアは屈託無く笑いもう再び前を歩き始める。
宗介はその後ろについていくように歩き始めた。

(これで……いいんだ)

……胸に未だ迷いを残しながら。

そんな二人の間を風が優しく。

優しく吹いていた。




【A-5 草原 一日目 深夜】

【リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式(ランダム支給品0~2個所持)
[思考・状況]
1:宗介と行動。
2:トレイズが心配
3:アリソン、トレイズ、トラヴァスと合流


【相良宗介@フルメタルパニック!】
[状態]:健康、やや迷い
[装備]:サバイバルナイフ、IMI ジェリコ941 (17/16+1)
[道具]:デイパック、支給品一式、予備マガジン×4(確認済みランダム支給品0~2個所持)
[思考・状況]
1:リリアと行動
2:かなめとテッサとの合流最優先。
3:これでいいのか……?

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リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ 次:粗悪品共の舞踏会
相良宗介 次:粗悪品共の舞踏会
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