父の力を手に ◆Yv95BkWDl6
思えば僕の人生はずっと苦難の連続だった。
生まれたその日に、母さんが魔物に連れ去られた。
それを追って数日後、父さんもまた行方不明となった。
それを追って数日後、父さんもまた行方不明となった。
両親を突然失った僕の心が、それでもゆがまずにいられたのは、双子の半身タバサの存在はもちろん、
グランバニアの人々と、サンチョと、父さんの大切な仲間の魔物たちのおかげだった。
ピエールとは、鬼ごっこに始まり、剣術訓練まで共にした、親友のようなスライムナイト。
プックルとは、その背に乗って風を切り駆け回る、これまた親友のようなキラーパンサー。
料理が上手くて、まるでもう一人の父親のようだったサンチョおじさん。
他にもたくさんの、父さんの志についてきた魔物たち。
僕にとっては家族のように大切な仲間たちだったけど、それでも寂しさを埋めるには少し足りなかった。
グランバニアの人々と、サンチョと、父さんの大切な仲間の魔物たちのおかげだった。
ピエールとは、鬼ごっこに始まり、剣術訓練まで共にした、親友のようなスライムナイト。
プックルとは、その背に乗って風を切り駆け回る、これまた親友のようなキラーパンサー。
料理が上手くて、まるでもう一人の父親のようだったサンチョおじさん。
他にもたくさんの、父さんの志についてきた魔物たち。
僕にとっては家族のように大切な仲間たちだったけど、それでも寂しさを埋めるには少し足りなかった。
父さんを見つけたのは、僕が8歳の時だ。
実に8年もの間、僕らは両親と言葉を交す事すらできなかった。
実の父親に、「はじめまして」と言わなければならなかった子供なんて、そうはいないだろう。
再会はうれしかった。でも、心のどこかに悲しみがあった。
どうして僕たち家族は、こんなにひどい目にあわなければいけなかったんだろうと。
実に8年もの間、僕らは両親と言葉を交す事すらできなかった。
実の父親に、「はじめまして」と言わなければならなかった子供なんて、そうはいないだろう。
再会はうれしかった。でも、心のどこかに悲しみがあった。
どうして僕たち家族は、こんなにひどい目にあわなければいけなかったんだろうと。
父さんの持っていた天空の剣と、天空の盾。そしてある城に伝わっていた、天空の兜。
それらを全て使いこなすことができた僕は、「天空の勇者」という使命を課せられ、賞賛された。
本当はそんな肩書きより、僕は父さん、母さんの愛が欲しかったというのに。
力よりも、温もりが欲しかったというのに。
だけれど僕は人々の期待にこたえようとした。強くあろうとした。
「天空の勇者」として振舞う事で、寂しさを紛らわせながら生きてきたんだ。
それらを全て使いこなすことができた僕は、「天空の勇者」という使命を課せられ、賞賛された。
本当はそんな肩書きより、僕は父さん、母さんの愛が欲しかったというのに。
力よりも、温もりが欲しかったというのに。
だけれど僕は人々の期待にこたえようとした。強くあろうとした。
「天空の勇者」として振舞う事で、寂しさを紛らわせながら生きてきたんだ。
母さんを見つけたのは、それからさらに2年後。
僕はもう、10歳になっていた。
10年もの間待ちわびていた母の胸は、とても温かかった。ただうれしくて、わんわんと泣いた。
これでやっと、家族みんなで過ごす事ができる、そう思った。
僕はもう、10歳になっていた。
10年もの間待ちわびていた母の胸は、とても温かかった。ただうれしくて、わんわんと泣いた。
これでやっと、家族みんなで過ごす事ができる、そう思った。
でも僕たちの団欒を、世界は良しとしなかった。
父さんの母さん――僕にとっての祖母にあたる――からの連絡。魔王の力が強まっているという現実。
父さんはすぐに立ち上がった。天空の勇者である僕もまた、最後の使命を果たすためにそれに従った。
父さんの母さん――僕にとっての祖母にあたる――からの連絡。魔王の力が強まっているという現実。
父さんはすぐに立ち上がった。天空の勇者である僕もまた、最後の使命を果たすためにそれに従った。
全ての元凶であった魔王――ミルドラースを倒し、世界に、そして僕ら家族にもようやく平穏が訪れた。
戻ってきた僕ら家族を迎えてくれたみんなと一緒に、グランバニアで盛大な宴が催された。
その日、ようやく僕の肩の荷が下りた。
もう「天空の勇者」としての期待に縛られる事もない。魔物を殺す必要もない。
ただの10歳ちょっとの子供として、両親に好きなだけ甘え、着の身着のままに暮らせるんだって。
これから始まる家族との幸せな日々を夢見て、お腹いっぱいに眠りについたのがほんの数日前。
戻ってきた僕ら家族を迎えてくれたみんなと一緒に、グランバニアで盛大な宴が催された。
その日、ようやく僕の肩の荷が下りた。
もう「天空の勇者」としての期待に縛られる事もない。魔物を殺す必要もない。
ただの10歳ちょっとの子供として、両親に好きなだけ甘え、着の身着のままに暮らせるんだって。
これから始まる家族との幸せな日々を夢見て、お腹いっぱいに眠りについたのがほんの数日前。
(なのにどうして、こんなことになってるんだろう)
首に手を伸ばしてみれば、冷たい輪っかの感触があった。
今まで見たことも聞いた事もないような鉱物でできているそれは、爆発し、首を吹き飛ばすらしい。
これがある限り、僕らの命はいとも簡単に奪われてしまうようだった。
試してみないと分からないが、きっとザオリクもこの世界では無力なんだろう。
今まで見たことも聞いた事もないような鉱物でできているそれは、爆発し、首を吹き飛ばすらしい。
これがある限り、僕らの命はいとも簡単に奪われてしまうようだった。
試してみないと分からないが、きっとザオリクもこの世界では無力なんだろう。
名簿を開いてみれば、タバサの名もそこにあった。
僕と同様に、あいつもこの世界に呼ばれてしまっているらしい。
子供二人だけが消える――10年前とは逆の事態に、きっと今頃城のほうは大騒ぎだろうか。
心配をかけないうちに、早く一緒にグランバニアに帰らなくちゃいけない。
僕と同様に、あいつもこの世界に呼ばれてしまっているらしい。
子供二人だけが消える――10年前とは逆の事態に、きっと今頃城のほうは大騒ぎだろうか。
心配をかけないうちに、早く一緒にグランバニアに帰らなくちゃいけない。
(でも生き残れるのは……一人だけ)
本当はここでも勇者として、毅然と立ち上がるべきなのかもしれない。
この世界に呼ばれた全員の旗印となって、このゲームの破壊に乗り出すべきなのかもしれない。
しかし一度切れてしまった緊張の糸は、なかなか元には戻らない。
もう一度、父さんの優しさを感じたかった。
もう一度、母さんの暖かさに触れたかった。
それはきっと、タバサも同じだと思った。
この世界に呼ばれた全員の旗印となって、このゲームの破壊に乗り出すべきなのかもしれない。
しかし一度切れてしまった緊張の糸は、なかなか元には戻らない。
もう一度、父さんの優しさを感じたかった。
もう一度、母さんの暖かさに触れたかった。
それはきっと、タバサも同じだと思った。
「……よし、決めた」
なら僕の取るべき道は一つ。
タバサを、優勝させることだ。
そのために僕は、この手を血で汚すことも厭わない。命を捨てることも厭わない。
最後にタバサと僕が二人だけになったら、僕が自殺すればいい。
僕にあいつを手に掛けることなんかできるわけないから、この方法が一番簡単だろう。
ジェダというやつは言っていた、最後の一人になったら、何でも願いをかなえてやると。
だから優勝したタバサには、僕の蘇生を願ってもらう。
そうすれば、二人一緒にグランバニアに帰ることができる。
タバサを、優勝させることだ。
そのために僕は、この手を血で汚すことも厭わない。命を捨てることも厭わない。
最後にタバサと僕が二人だけになったら、僕が自殺すればいい。
僕にあいつを手に掛けることなんかできるわけないから、この方法が一番簡単だろう。
ジェダというやつは言っていた、最後の一人になったら、何でも願いをかなえてやると。
だから優勝したタバサには、僕の蘇生を願ってもらう。
そうすれば、二人一緒にグランバニアに帰ることができる。
だけどタバサにそれを強要するわけにはいかない。
人を殺し、血に塗れた自分を見れば、あいつは僕を拒絶するかもしれないから。
その時はそれでいい。それだけの罪を犯す事になるのは分かっているから。
タバサ一人でも生きて父さんたちのところに向かえれば、それでいい。
そしてもしタバサが――考えたくはないけど――死んでしまったとしたら。
その時は僕が優勝し、タバサの蘇生を願えばいい。それだけだ。
人を殺し、血に塗れた自分を見れば、あいつは僕を拒絶するかもしれないから。
その時はそれでいい。それだけの罪を犯す事になるのは分かっているから。
タバサ一人でも生きて父さんたちのところに向かえれば、それでいい。
そしてもしタバサが――考えたくはないけど――死んでしまったとしたら。
その時は僕が優勝し、タバサの蘇生を願えばいい。それだけだ。
決めてみれば、すっとした。
タバサを守るために、人間を魔物のように狩ればいい。今までと一緒だ。
天空の勇者として培った力を、こんな事に使うべきではないと怒られるかもしれない。
だけどそれでも僕は家族を、自分の側の世界を守りたかった。
タバサを守るために、人間を魔物のように狩ればいい。今までと一緒だ。
天空の勇者として培った力を、こんな事に使うべきではないと怒られるかもしれない。
だけどそれでも僕は家族を、自分の側の世界を守りたかった。
行動に移すためには、武器が必要だった。
力がなければ、できることもできなくなってしまう。
配られたランドセルというものを開けてみる。
中をまさぐってみれば、明らかに内容量を越える、長い一本の杖が飛び出した。
力がなければ、できることもできなくなってしまう。
配られたランドセルというものを開けてみる。
中をまさぐってみれば、明らかに内容量を越える、長い一本の杖が飛び出した。
「――これは、父さんの」
全体を緑色の竜のうろこで覆われ、先端には竜頭を模した形、その首の部分には魔力を湛えた宝玉。
僕はこの杖にとても見覚えがあった。父さんの愛用していた杖、ドラゴンの杖だ。
天空の剣の力に頼り気味だった僕が、この杖を扱えるかは分からない。
だけどこれはただの武器じゃない。父の力が宿ったかけがえのない杖だった。
僕はこの杖にとても見覚えがあった。父さんの愛用していた杖、ドラゴンの杖だ。
天空の剣の力に頼り気味だった僕が、この杖を扱えるかは分からない。
だけどこれはただの武器じゃない。父の力が宿ったかけがえのない杖だった。
握り締めてみれば、父さんの力強さ、優しさ、そして大きさが伝わってくるような気がした。
ためしに二度、三度と素振りしてみれば、杖は面白いほどに良く手に馴染んでいた。
ためしに二度、三度と素振りしてみれば、杖は面白いほどに良く手に馴染んでいた。
「そっか。父さんも、応援してくれてるんだね」
この力があれば、僕はきっとタバサを守り抜くことが、生き残ることができるだろう。
まずは三人殺せばもらえるという「ご褒美」だ。これでタバサの居場所と無事を確認しよう。
まずは三人殺せばもらえるという「ご褒美」だ。これでタバサの居場所と無事を確認しよう。
僕は残る道具をランドセルに戻し、立ち上がる。
川の先には、大きく広がる廃墟が見えた。
小さな子供が隠れるにはちょうどいい地域に見えたので、手始めに僕は南に向かう事にした。
川の先には、大きく広がる廃墟が見えた。
小さな子供が隠れるにはちょうどいい地域に見えたので、手始めに僕は南に向かう事にした。
【G-6/シェルター前/1日目/朝】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:健康、
[装備]:ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り3回)
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2(本人確認済み)
[思考]
第一行動方針:南の廃墟へ向かう。
第二行動方針:タバサの居場所を知るために、三人殺してご褒美を得る。
第三行動方針:タバサ以外の参加者を全て殺し、最後に自殺してタバサを優勝させる。
第四行動方針:もしタバサが死亡した場合、自分が優勝を目指し、タバサの蘇生を願う。
基本行動方針:兄妹どちらかの優勝(タバサ優先) できれば二人でグランバニアの両親の元に帰る。
参戦時期:エンディング直後
[備考] エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
[状態]:健康、
[装備]:ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り3回)
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2(本人確認済み)
[思考]
第一行動方針:南の廃墟へ向かう。
第二行動方針:タバサの居場所を知るために、三人殺してご褒美を得る。
第三行動方針:タバサ以外の参加者を全て殺し、最後に自殺してタバサを優勝させる。
第四行動方針:もしタバサが死亡した場合、自分が優勝を目指し、タバサの蘇生を願う。
基本行動方針:兄妹どちらかの優勝(タバサ優先) できれば二人でグランバニアの両親の元に帰る。
参戦時期:エンディング直後
[備考] エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
【ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5】
本編で主人公(レックス、タバサの父親)が装備できる、ドラゴンをあしらった杖。
さらに振りかざすことで、竜に変身し炎を吐ける「ドラゴラム」の効果を得ることができる。
作中ではドラゴラムは戦闘終了まで継続したが、本企画内では数分間の変身と制限します。
その他使用回数も制限され、3回使ったら以後はただの杖(鈍器)としてしか使用できません。
それでも数字上は天空の剣の攻撃力を上回る、強力な杖です。
また専用装備という概念は緩和し、それなりの素質や魔力を持つキャラなら誰でも使えます。
本編で主人公(レックス、タバサの父親)が装備できる、ドラゴンをあしらった杖。
さらに振りかざすことで、竜に変身し炎を吐ける「ドラゴラム」の効果を得ることができる。
作中ではドラゴラムは戦闘終了まで継続したが、本企画内では数分間の変身と制限します。
その他使用回数も制限され、3回使ったら以後はただの杖(鈍器)としてしか使用できません。
それでも数字上は天空の剣の攻撃力を上回る、強力な杖です。
また専用装備という概念は緩和し、それなりの素質や魔力を持つキャラなら誰でも使えます。
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