月明かりの道しるべ◆zrcvXqFgZw
(……夢?)
それが殺し合いの舞台に強制参加させられた電が最初に思い浮かんだ言葉である。
鎮守府に配属され、他の駆逐艦と共に訓練に励んでいた筈の電が突如として見知らぬ空間にいた。
そんな状況になれば、そう考えるのも何ら不思議ではない。
だがそれは間違いであるとすぐに思い知らされる。
「……ッ!!?」
上から降りてきた老人が放ったミサイルによって、一人の人間が肉片を撒き散らしながら命を落とした。
(ひ……酷すぎるのです……)
惨状を目の当たりにした電は両手で口元を押させながらペタリと地面に座り込んだ。
兵器でありながらも敵の命も救いたいと願うほどの優しさを持つ電にとっては、あまりにもショックは大きい。
悲しみで涙が溢れてくる、そんな電の心情をあざ笑うかのように一人、また一人と命が奪われていく。
(…や、め………やめて……ください……)
老人の行為を止めるべく言葉に発しようとした電だったが心の中で懇願するだけで言えなかった。
老人に目を付けられれば殺されてしまうかもしれない。
そう考えた時の恐怖が電の体を縛りつけて何も行動させずにいた。
この場所から別の場所へとテレポートさせられるまで
電は最後まで反抗の意志を見せる事無く、小動物のように震える事しかできなかった。
深海凄艦を倒す為の兵器であり、経験を積めば提督とケッコンカッコカリも可能と言えでも
艦娘の中では幼い方に入る少女である電には恐怖を振り払い、行動するだけの勇気が持てずにいた。
電がテレポートされた先は暗闇に包まれた街の中だった。
近代的な造りの夜の街とは思えないほど静まり返っており、人の気配が全くない。
目の前にあるゴーストタウンは電の不安を掻き立てるには十分だった。
スマートフォンを手に取り、参加者や現在位置等の情報を収集した電は行動を開始した。
鎮守府へ行けば、雷や響もいるかもしれない。
そんな微かな希望にすがって歩いた。
じわじわと心身へ浸食する恐怖から必死に逃れるように。
一刻も早く鎮守府に行きたかった電は、早歩きで進んでおり前方にいた少年に気付くことなく電はまた衝突事故を起こした。
「きゃっ!?」
それが彼との最初の出会いであった。
少年にぶつかった事に気付いた電は慌てて謝罪をしながら少年を見ると
うずくまってガタガタ震えながら命乞いをしていた。
少年は電を殺し合いに乗った人物だと思い込んで恐れていたのだ。
電は少年に優しく話しかけて、自分の誤解を説いた。
幸いにして、少年を落ち着かせる為の対応が結果として、自分自身をも冷静にさせて恐怖心を和らげる事になった。
◆ ◆ ◆
「つまり電さんは、ここから北にある鎮守府という場所へ向かっている途中だったんですね!」
「はい、なのです」
現在は、そのぶつかった少年である真月零と行動を共にする事になった。
「それにしてもポーキーという人は許せませんね!
人の命をまるで玩具のように弄ぶなんてゲスの極みですよ!
こんな……こんな残酷な事は絶対に止めないと……」
ポーキーの残忍な行為に真月は怒りを露わにしていた。
それだけじゃなく殺された人達に対して悲しみの表情も浮かべている。
「真月さん……」
「電さん、一刻も早く鎮守府に行って他の人達を探しましょう!
仲間を集めて皆で力を合わせれば、どんな困難だって乗り越えられるはずです!」
(真月さんの言う通りなのです。いつまでも怯えていては駄目なのです)
熱意の籠った真月の言葉は、電の心の奥底へと響き渡る。
電は脳裏で過去に行われたキス島撤退作戦を思い出す。
駆逐艦だけで編成された艦隊での出撃は熾烈で過酷を極めた。
それでも諦める事無く戦続けた電達は、負傷しながらも勝利をつかみ取る事に成功したのだ。
「真月さん、電も頑張るのです。他の子達も救助したいのです」
「ありがとう電さん!そうと決まったら…」
真月は人懐っこい表情を浮かべながら電の右腕をぎゅっと握る。
突然のアプローチに電は驚きの声をあげた。
「し、し、し、真月さん!?」
「急ぎましょう!さっきスマホで鎮守府への近道を調べておいたんです!」
「ちょっとまっ」
電の制止の声も聞かずに右腕を掴んだまま真月は駆け出した。
「こっちこっちー!」
「はわわーーーっ!?」
大通りから脇道に入り、路地裏の奥深くへと走り…
「こっちです!」
「はにゃーーーっ!?」
ビルとビルの間を飛び越えて進み…
「こっちです!」
「はわわ…こ、ここは~!!」
男子トイレに入り、窓から抜け出し…
「こっちですこっち!」
「ひゃーーーっ!!」
土管が三つ置いてある空き地を通り過ぎた時、大きな爆発と爆音が鳴り響き
真月は足を止め、爆発のした方角を見つめた。
「なんでしょうね?今の爆発は…って電さん大丈夫ですか?」
「ううっ……ちょっとふらふらするのです…」
真月に連れ回された電は、色んな物と衝突して全身埃まみれになっていた。
「すみません電さん、よかれと思って早く鎮守府に着くようにと近道を通ったんですけど……」
「いえ、真月さんは電の事をとても気遣ってくれて、すごく嬉しいのです」
「電さんがそう言ってくれると僕も助かります!それにしてもあの爆発は鎮守府に近いですね」
「もしかしたら、もう戦闘が始まってるのかも……」
「それは大変です!急いで止めに行きましょう!」
「はい!」
最初は怖かった。怖くて怖くてどうしようもなかった。
そんな恐怖の闇を、月明かりのように照らし光をもたらしたのは真月零だった。
自分以上に臆病な少年が見せてくれた明るい笑顔と、困難に立ち向かう勇気が
電の不安を掻き消して、戦う決意を持つことが出来たのだ。
ここには海路を示す羅針盤は無い。
それでも電は必ず脱出できると信じている。
真月の言う通り、仲間を集めて協力すれば不可能ではないと信じているのだから。
【D-4 市街地 /深夜】
【真月零@遊戯王ZEXAL】
[状態]:疲労(中)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、決闘盤とカード(ベクターのカード)@遊戯王ZEXAL、首輪探知機@LSロワ2014オリジナル、
不明支給品×0~1
[思考・行動]
基本方針:良からぬことを企む
1:真月零の姿で殺し合いに乗っていない者達の中に潜む
2:電が利用できる存在か見極め、用済みならば魂を喰らう
3:遊馬とアストラルは必ずぶっ殺す!
4:主催者を乗っ取りさらなる力を得る
※アニメ130話、メラグとナッシュがバリアン世界に戻る直前からの参戦です
※バリアン体での分身能力、瞬間移動が可能かどうかは不明です
※バリアンズスフィアキューブなしでバリアルフォーゼは可能ですが、体力を消耗します
【電@艦隊これくしょん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:真月さんと鎮守府に向かう
2:司令官や響、お姉ちゃんに会いたい
※真月零に信頼を寄せています
最終更新:2014年03月21日 19:26