舞台となる街~不遇の街アッサム~
北方の平原の只中に位置するこの街は、堅牢なる城壁によって外部の魔物や盗賊から守られている。
しかし、寒冷な気候で作物が育たず、特筆すべき資源も無いこの街は、決して豊かとはいえない。
そのためか治安も悪く、殺人や強盗などが日常茶飯事に生じる“不遇の街”として知られている。
商人や一般人は決して近づきたがらないこの街であるが、
未開拓地に近く、冒険に出る者たちの出発口という一面もある。
そしてその治安の悪さから、賞金稼ぎにとっても良い仕事口が多く、
彼らの寝床や仕事の斡旋をする酒場が多いことから別名“バッカスの街”とも呼ばれている。
今日も街の酒場では、冒険者達が屯している。

始まりはここ、アッサムの酒場からだった
冒険者達がくつろぎ、酒を酌み交わしている中、一人の女性?(オカマ)が突然叫びながら入ってくる

「……だれか! 誰か、た、助けてよぅっ!」

この助けを聞き入れたのが今回の冒険の始まりだった

オカマが言うには、自分の住処である洞窟を多数のオーク達に占拠されたのだという
命からがら逃げてきたこの酒場で、冒険者達にオーク討伐を依頼したのだ

報酬金額はなんと一人10000G
これはもちろん破格であり、オーク討伐でこの報酬は目が飛び出るほどであった

金額のせいもあってか、次々と冒険者達はこの依頼を引き受ける
冒険者達はエミネムのこと、街のことなどを酒場のマスターに聞くと、オークに占拠されたという洞窟へと向かった


マスター
「エミネム、か…奴はこの“不遇の街”の被害者みたいなもんさ。
 元々は優しいただの親父だったんだがな…ある日、強盗で一家が全滅して…
 奴は命からがら助かったんだが、その日からおかしくなっちまってな…
 『あっはんパブ』を開くとか行って駆けずり回るようになっちまった。
 街の連中も最初は同情的だったんだが、次第に敬遠するようになっちまってな…
 町外れにある穴をあてがって、体よく街から追い出したってわけさ。
 まぁ、怪しいとは思うが…ただのイカれた変人だよ。
 犯罪を犯すわけじゃないぶん、この街じゃマシなほうさ。」

洞窟でまず待っていたのはオーク・センチネル達だった
彼らは軽装を身に纏い、果敢に冒険者達に攻撃をしかけてくる
しかしたかが、オーク
ものの10分としないうちに一掃されてしまう

冒険者達は多数に分かれ、奥に進むもの、その場で休むものもいた
奥にすすんだ冒険者達を出迎えたのは、なんとオークの上位種であるオーク・ジェネラル、オーク・マギ(火闇×2)
ただのオークではない魔物に苦戦を強いられる
負傷するもの、あっさり倒すものなど冒険者の実力の差が見られる戦いになった

そして上位のオークを倒した後にまっていたもの
それはオーク達を束ねるボス、オーク・キング(火闇地×4)だった

とてつもなく強大な力に、高レベルの魔法使い数人で挑む
オーク・キングは、仲間であり家族であるオーク達を殺された怒りでいっぱいだった
驚くべきは魔法よりその力
魔法で展開された重力場も気にせず、人間ほどもある鉄の塊を振り回す
その一振りは洞窟の壁も楽に破壊するほどの威力だった

しかし多対一、オーク・キングも時間と共に徐々に劣勢になっていく
もうオーク・キングがやられる
そんな時に、オーク・キングは悟ったのか魔力を右手へと溜めていく
そして死に際、溜めた魔力を地面に突き立てると、地面を灼熱の赤銅のマグマへと変えたのだ
熱いマグマが噴出す中、冒険者達は皆一様に洞窟を抜け出す

だが、誰もが逃げ出す中、独りの男が洞窟の奥へと足を踏み入れていた
エミネムだ

…ハハハハ! 家族! ワタシの家族が!
アハハハハ! 家族が!
【奇妙な言葉を叫びながら、脇目も振らずに洞窟へ向かってフラフラと走り去った】
【目に光はなく、茫然自失といった感じである】

ははは…はははは・・・・あなた…
はははははは…
【洞窟内をフラフラとオカマが走っていく】

あは、は……あな…た……
【すでにエミネムの姿はマグマの中に飲まれてしまっている】
【それでも尚、愛おしそうにオーク・キングに寄り添って笑いながら】
あな……
【エミネムの声は聴こえなくなった】

エミネムは、オーク・キングを「あなた」と呼ぶと、マグマの中に共に消えていった……

奥底からあふれ出したマグマは、洞窟の入口を満たしたところでその勢いをとめた。
命からがら洞窟の外に逃げ出した冒険者達は奇妙な光景を目の当たりにする。
周囲に隠れていたオーク達が、仲間の死体を抱え上げ、自らマグマへと身を投じていったのだ。
徐々に外気に冷やされ、固まっていくマグマの中に、全ての家族が渾然となり、
溶けて、消えていった。
一昼夜冷やされたマグマが岩石に変わった頃、アッサムの街の周囲から、オークは消えた。

冒険者達は疲れた足取りで酒場へと戻る。
マスターが労うように飲み物を出してくれる。
事の一部始終を聴いたマスターは、
街にオーク・キングの咆哮が響いた直後、エミネムが姿を消したこと、
彼のいた宿屋の一室に、紙切れがあったことを話してくれた。

冒険者達は、手に入れた紙片を組み合わせてみた。
以下はエミネムの物と思われる日記を、時系列順に組み合わせた物である。


~エミネムの日記1~
今日からここが新しい住まいだ。
私を追い出した、家族を見殺しにした街の人間たちに復讐をしてやる。
そのために馬鹿になったフリもしてきた。準備は完璧だ。
攫ってきたオークの赤ん坊を育てて街を襲わせれば…

なんということだ。
まさか洞窟にオークの残党が住み着いていたとは…。
だが、赤ん坊を連れていた私を、奴らは仲間だと思ったらしい。
少し計算は狂ったが、一気に仲間が増えたと考えれば、これも良い。

さすがはオークだ。人を攫っては食っている。
私は持ち込んだ食料を細々と食っているが、
肉を食わない私を、彼らが不審がっているのが良く分かる。
覚悟を決めるべきだろうか……


~エミネムの日記2~
気が狂いそうだ。彼らははじめて肉を食べた私を歓迎している。
私はすでに人ではない……

彼らのことが少しわかってきた。
人間とは違うが、かんたんな言葉をもっているようだ。

肉を食うことにも抵抗を覚えなくなった。
これを書くのを彼らがふしぎそうに見ている。
止めるべきだろうか…


~エミネムの日記3~
もうふくしゅうなどどうでもいい。
ここで彼らとしずかに暮らしていることがなによりしあわせだ。
私はあたらしい家族を手に入れた
もう何ものぞまない

肉がすくなくなってきた。
ワタシたちはまだ数もおおくない。
なんとか肉をつれてこれないだろうか。

にくをつれてきた

~エミネムの日記4~

ワタシ達はすばらしい
外のれん中よりよっぽど人間らしい

肉うまいと思うようになった
ワタシはいったい

もういい ワタシはワタシだ
この日記もさい後だ
ワタシたちかぞく


~エミネムの日記5~

肉 
       にく
          ニク  
     にく
にく

      肉  
  くい     た

        にく 
            みんなと


マスターは日記を読み、あの洞窟をエミネムの家族の墓として街で守っていくとを約束した。
冒険者達にはオークの残党討伐として、街から3000Gほどの報奨金を得たと言う。


~Fin~

こうして、数時間に及ぶクエストは幕を閉じた

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最終更新:2010年04月10日 20:29