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第一回放送 - (2024/07/04 (木) 21:51:26) のソース
【聞こえるか、魔に愛されし子らよ……】 突如、脳内に響いた言葉に、ゲーム参加者の一人、アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドは、『作業』を中断し、その場に立ち尽くした。 【これより、第一回放送を行う】 この声の主は覚えている。六時間前に、殺し合いを宣告した魔法王その人だ。 (放送……?) 意図を測りかねながらも、アリスは魔法王の言葉に意識を傾けた。 【よくぞ、最初の六時間を生き延びた。諸君らは評価に値する魔法少女だ】 (いいえ、魔法王……。それは違う。殺し合いに強い魔法少女なんて——論外。唾棄すべき存在だわ) 放送、と銘打っている以上、向こうの言葉は聞こえても、こちらの言葉は届かないのだろう。アリスは分かった上で、魔法王の言葉を否定する。 【六時間を生き延びた報酬だ。諸君らに、プレゼントがある】 (プレゼント……?) アリスの足元に、魔法陣が浮かび上がる。 咄嗟にアリスはその場を飛び退いた。他の参加者からの攻撃かもしれないからだ。 しかし、魔法陣から出現したのは剣や槍、アリスを害するものではなく。 「これは、羊皮紙……?」 恐る恐る手に取る。 上質な紙に、文字が並んでいる。 人の名前だ。 アリスの名もある。 『柩枢(ひつぎ くるる)/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド』と表記されている。 (これは……名簿?) 並べられた名は、44。 ハイエンドの名もある。 そして。 (幾つかの名前が、赤くなっている……) &color(#F54738){星月 夜/アルセーヌ。} &color(#F54738){ナサリーブラウン。} &color(#F54738){ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス。} &color(#F54738){和妻 颯葵/トリックスター。} &color(#F54738){木羽 マミ/ビリーバー。} &color(#F54738){玉柳 水華/アレヰ・スタア。} &color(#F54738){裁原 編/パペッタン。} &color(#F54738){陣内 葉月/ブラックブレイド。} &color(#F54738){らいと/フライフィアー。} &color(#F54738){田中 空/スカイウィッチ。} &color(#F54738){メリア・スーザン。} 11人の名前が、真っ赤に染まっている。 【これは、このゲームの参加者を示す名簿だ。 そして、赤に変じた者は、この六時間で脱落した者たちである】 (そう、まだこの程度しか死んでないんだ) 不甲斐ないと、アリスは思った。世界を浄化するためにもっと頑張らなければ。 【親しい者は居たか? 憎む敵は居たか? 名簿の情報は六時間ごとに更新される。参加者は減ることはあっても、増えることはない。因縁を果たしたければ精々走り回ることだ。 ——それでは六時間後に、また会おう】 始まったときと同じように、唐突に魔法王の言葉は聞こえなくなった。 アリスは再び『作業』を再開する。 やがて、彼女の前に、一人の魔法少女が立った。 意思を感じさせない暗い瞳を覗き込み、アリスはふぅと汗を拭う。 そして、名簿を広げると再び目を通し始める。 「あ、ごめんなさい。一緒に見る?」 そう言ってアリスは名簿を魔法少女に差し出す。 操り人形でしかない魔法少女は、提案に対し、ただぼんやりと立ち尽くすのだった。 「見ない? そっか。……みんなはどうする?」 そう言って、アリスは後ろを振り返り——自らが作り出した、意思無き魔法少女の集団に声をかけた。