テオドリクスは窓の隙間を縫って来訪する夜風に、戦いの予感を悟っていた。
重厚な鎧に包まれた肌が、武者震いと鳥肌で騒ぎ立てている。
全身の毛が逆立つ程の殺気が、部屋に充満する。
それは、テオドリクスにとっておよそ類を見ぬ戦いであった。
眼前にて対峙せし白き鎧の男は大柄な太刀を構え、こちらを見据えている。
「このテオドリクス、とうとう年貢の納め時か。旧知の仲とはいえ、むざむざ土足で踏み入られるとはな」
「我が宿敵よ。久しく顔を合わせぬうちに老け込んだか」
「俺を嘲うか――皇呀」
皇呀と呼ばれた男は、鉄面皮を崩す事無く頷く。
正確には、その鉄面皮には血のように赤い仮面が上塗りされており、それが皇呀の無表情に拍車を掛けていた。
暫しの沈黙の後、テオドリクスは兜を外す。同時に刀を鞘に納める音が、部屋に響いた。
「面を外せ。素顔を知らぬ仲でもあるまいて」
「……」
端正な顔立ちが――しかし月の光とは程遠い、ひどく冷たい空気を纏って――仮面から姿を現す。
かつて肩を並べて戦場を駆け巡った時と全く同じ顔だ。傷一つ付いていなかった。
あとはこの場に
ブリュンヒルデが居たならば、ひとつのグループの懐かしき対談も嗜めたろう。
彼女は死んだ。もう居ない。その事実がこの二人の男の心に、永久に消えぬ傷を刻み込んでいた。
数年前は密やかな内にテオドリクスと皇呀は彼女を巡って牽制しあっていたというに、その運河は立ち消えた。
そのまま、両者もまた断ち切られたように思えた。
――が、皇呀が次に口を開いた時、それはただの思い過ごしである事に気づかされる。
両者の心は既に、一つの方向へと纏まっていたのだ。
「老兵と呼ぶには、我々はあまりに若いな」
「ブリュンヒルデか」
「忘れられんよ。卿があの時、守り損ねた瞬間を、我は……」
憎々しげに呟く皇呀の双眸からは、テオドリクスの部屋に踏み込んだ時と同じく静かな熱が発せられる。
涙こそ流さねど、わなわなと震える両拳は、彼の心が慟哭している事を何よりも雄弁に語っている。
「テオドリクス! 腹癒せには足らぬが、ここで卿を討たずして、我は前には進めぬ。それが戦場に生ける者共の運命ではないか」
「貴公……」
呆気に取られたテオドリクスはベッドに押し倒され、鎧を上半身から順番に、丁寧に剥がされて行く。
自らの頬が紅潮するのを、テオドリクス自身がその熱を以ってして実感していた。
皇呀が耳元に顔を寄せ、囁く。
「我とて下衆ではない。下だけを開けるなど邪道というものだ」
「これが貴公の選択か……俺は、これが初めてだというに」
「無茶を通せば道理は引っ込む……我がそれを見せてやろう。それに、こうでもせねば、無血開城は成り立たぬ」
「貴公……」
そして、白くべたt
オロヴェは原稿を握り締めたまま机に突っ伏し、曇り空と夕闇で錆色に染まった窓を眺めた。
空が曇っているからこそ、丑三つ時の満月をより強く想起できる。
月に恋焦がれる想いに、男女の別などありはしないのだ。
「っていうか締め切りが明後日とか、心が折れそうだ……」
……やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このアンバサはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「まただよ(笑)」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この作品を書いたんだ。
じゃあ、注文を聞こうか。
ちなみに「べた」とは魚の一種であり、最後の一文は
べたと隣り合わせに盛り付けたカリフラワーの事を書きたかったそうです。
オロヴェがそう供述しました。
登場人物
主犯格
最終更新:2009年09月14日 03:16