禁断の果実

(投稿者:店長)


クロッセル連合とエントリヒとのグレートウォール戦線における戦力は、ほぼ同程度である。
最も空軍に関しては犬猿を通り過ぎて火花を散らす程に敵対視している一方、空と陸の関係はほぼ友好的といっても過言ではなかった。

それはそんな、クロッセルの空の人と、陸のうさぎのお話である。



自他共に紳士──ただし前に変態と付くが──のシーアがその少女を見つけるのにはさほど時間はかからなかった。
テーブルに置かれたバスケットいっぱいの林檎をさぞおいしそうに咀嚼するのは、
髪も目も鮮やかな赤の少女。
その髪は用意された椅子が隠れてしまう程に長く、つやつやしている。教育担当官か、その近くにいる人が丁寧にケアしているのは明らかだ。
瞳もぱっちりとしていて、宝石のようにきらきらしている。
服装こそ目立たない臙脂色に白のエプロンドレスだが、ヘッドドレスの両端や胸元のピンクのリボンがさりげなく可愛らしさを主張している。そもそも着ている少女の容姿を前に出すという意味では良いチョイスなのかもしれない……。
隣の椅子にはツギハギが少々目立つ白いウサギの人形と、黒に左目を眼帯にしているウサギの人形が並んで座らされている。時より少女は人形らを眺めては無邪気に笑っていた。

──なんて可憐なんだろう。

シーアはその少女……エントリヒのベルゼリアを注視していた。
忙しなく林檎を頬張る仕草が、小動物のようで……彼女の保護欲からちょっと言えない欲望まで吹きあがらせるのに時間はかからなかった。

だからだろうか。
視線に気づいた彼女はこちらをじぃっと見つめていた。
つぶらな瞳に宿る無邪気さは醜いシーアの一面の喉を撫で上げる。
これは挑発なのだろうか?
鬩ぎ合いを自身の心のうちでする歴戦の勇者に対して、ついに爆弾は投下された。

「うー?」

小首をかしげる。
ただなんでもない動作だが……シーアにとっては餌を目の前に吊るされたに等しかった。

思わずしてしまったあつい抱擁。
といっても身長差はそれほどでもない。むしろシーアのほうがわずかに低い。
服の柔らかさと、体自身の柔らかさのハーモニー。
普段から果物やお菓子を食べているからか……甘い香りを伴っていた。
体が次第に熱くなっていく。本来ならここで誰かが静止するのだが、この時シーアを正常な領域へと誘う存在はいなかった。

「……ん~」

止めが入った。
抱き返されたのだ。少女に。
ぎゅうっと、人形を抱きしめるようにやや強かったが、シーアには至高の心地である。
しかもほっぺた同士を合わせてきての濃密なスキンシップだ。
ルフトバッフェではこうはいかない。 まず間違いなくトリアあたりがとめに入るからだ。
思わぬ新鮮な反応は、シーアの眠れる本能を呼び覚まそうとしていた。

「ふ、ふふふ……」

まるで底なし沼……判っていても踏み入れてしまう。
シーアの手が背中から次第に下りてきて……。
そのとき、ベルゼリアの瞳に怪しい光が灯ったことに気づかなかった。
故に。

「──私に欲情した? ルフトバッフェのシーアさん」

豹変──否、この場合は擬態だ。それも、ハナカマキリのような捕食のための──に気づかず……。
くすくす、と耳元で小悪魔となったベルゼリアが嗤っていた。
哀れな獲物となったシーアは、ゆっくりとテーブルの上へと乗せらr


──……
─……


バンッ!


「な、ヴォルケン中将!?」
「認めん! 認めんぞぉ!!……その同人誌、出版は認めん!」
「軍神さまが見てる 赤い林檎は魅惑の味……我らが出版せずして誰が出す!」
「ふ、ふふ……中将とて我々、否、全世界の同士に対する野望(しめい)、果たさねばならないのです」
「貴様もか……いいだろう」
「な、それは幻の二丁拳銃による闘法……○UN=○ATA!?」
「基礎の動きをマスターするだけで、攻撃力(攻撃の能率)は少なくとも120%上昇(2.2倍)、一撃必殺の技量も63%上昇する(1.63倍)。さらに第1級クラリックになればその戦闘能力は計り知れないものになると噂の!?」
「やけに詳しいわね……だが当法に暗黒冥土殺法あり……!」
「来るか……!」
「ふ、ツヴァイマウザーだった貴方の伝説はここで終焉を迎えるのです……!」





かかったな! 間抜けめッ!
何を期待したのかな? けーっけけけ!



最終更新:2010年02月20日 18:43
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