(投稿者:Cet)
セレキ・イチキュウロクレイネン
ベーエルデーレンポウ・ベオングラド・コウガイ
長い銀髪をしたそのメードは、青年に対して困惑の表情を浮かべていた。
「
トリア?
……さあ、私にはその名前に聞き覚えがありません」
その、市街地にほど近い住宅街。
静まりかえり、しめっぽい雰囲気を放つアパートメントが立ち並んでいる校外で。一人の青年が、困り顔のメードに立ち話をしているところであった。
メードは一振りの小銃を背負っているが、その他に装備をしているわけではない。どうやらパトロール中らしい。
「知らないのか、青の部隊のトリアといったら、
グレートウォール戦線でも指折りのエースだったんだぞ」
「……もう、そのような時代の話は終わってしまったのです。
えーと」
青年は落胆を浮かべながら、うつむきがちに一つ、溜息を吐いた。
「
ブラウだ、ブラウ・アイニヒハイト」
「失礼、……ブラウさん、もし、貴方が先の対G戦争についてのお話をしたいのであれば、ベーエルデー
国立戦争図書館に行ってみてはいかがでしょうか。
貴方のような教養をお持ちの御仁が他にもいらっしゃることでしょうし」
「……分かった、もういいよ。
任務御苦労、巡回に戻りたまえメード衛兵」
「ハッ……。
って貴方は私の上官でも何でも――!」
その非難の声が上がった頃には、青年はとっくに踵を返しており、アパートメントの間の道を歩き去るところであった。
最終更新:2011年11月27日 20:56