秘密警察職員の手記(10 > 26迄)

(投稿者:怨是)


10/13/1943

 ひと仕事終えて帰ってきたら、フォルボルトがMAIDのシュヴェルテの暗殺にしくじっていた。
 Gに喰われてくたばったらしい。
 やれやれ。
 だから気をつけろっつったのに。

 惜しい仕事仲間を失うと同時に、暗殺計画がバレちまった。
 一からやり直すにしたって、どんだけ時間喰うんだ。
 マクレーヴィヒが別の計画を立てているらしいが、詳細は知らされていない。
 上手く運んでくれるといいんだが……

 加工屋に頼んだ写真は、中々の出来だった。
 これなら怪しまれる事は無さそうだ。
 お偉方も、これをそのまま使えと云っていた。
 ただ、“ジークフリート、ヴォ連スパイを抹殺!”の見出しはしまっておかにゃあならん。
 ありゃあまだ使えるもんじゃない。



10/17/1943

 相変わらず、出る杭のほうのネガティヴキャンペーンは順調だという。
 あることない事をあちこちに言い触らす事で支持を得ているらしい。
 で、新聞のほうもその中で真実味のある話に同調するような記事を書くんだとか。
 ほとほと呆れた話だが、そうでもしないと消されるからな。
 不都合な記事は書けないんだろう。

 暗殺関係は胸糞悪い思いをしそうだったから辞めたのに、
 情報関係もやっぱり胸糞悪いと来た。

 こんな仕事、早いところおさらばしたいよ。



10/21

 弱音を吐きつつも、逆らったところでどうにかなるもんでもなし。
 悲しいかな。
 魔女狩りに逆らうやつは魔女の手下と思われちまう。
 ヒーローになるには、俺はあまりに歳をとりすぎたし、人手も少なすぎるんだ。

 マクレーヴィヒのやつに色々と進捗状況を訊きたいが、守秘義務やらで聞かせてもらえなかった。
 まぁ当然か。
 あいつも、ああ見えて頭は回る。
 失敗の知らせが無いって事は、うまくやっているんだろう。



10/25

 あんまり気になったもんだから、盗み見た書類の情報をここに書き記しておく。
 覚えているうちに全部書き留めないとな。
 どうせもう作戦もいい具合に展開中だろう。見られて減るもんでもなし。
 それに、誓って云うが、俺も口だけは堅い。

 ジークフリートとヴォルフ・フォン・シュナイダー少佐、ザフター・ニルフレート大尉の率いる、指輪隊。
 どいつもこいつも、ジークフリートの熱烈なファンばかりの構成だ。
 ポイントAを直進し、正面からGを粉砕する。空軍の支援がもっとも分厚い激戦区。
 なるほど、花形みたいなもんか。

 ターゲットとなるシュヴェルテは、アシュレイ・ゼクスフォルト少佐とアロイス・フュールケ大尉の率いるランスロット隊。
 ポイントAより北に5キロ離れた山道を迂回して、森林に潜むワモン系をしらみつぶしに探すという地味な作戦か。
 その後はポイントBへと合流。この辺りでどう消すかだな。

 ダリウス・ヴァン・ベルン中将とディートリヒが率いるノートゥング隊は……連中の場合は陸軍と親衛隊の混成部隊の上に、
 頭となる両名も“皇帝派”のメンツからは良く思われてないらしい。
 暗殺作戦に加わってるとは考えられないな。

 トリスタン隊は距離が遠すぎるし、エメリンスキー旅団じゃ目立ちすぎる。
 いっそ空軍の“誤射”か何かで粉々にしたりするのか?
 MAIDとはいえあの大きさの弾丸を喰らえばひとたまりもないしな。
 我ながらえげつない。やれやれだ。



10/26

 書くことは無いが、一応何か書いておくか。
 いつかこの日記を盗み見る奇特な歴史家さんらの為にも。
 作戦は順調に進行中とのこと。だが、友軍の戦闘機を撃ち落して気を引こうとしたが失敗したらしい。
 明日に別の状況下で、もう一機落とすなりするんだと。
 そこまで金かけてどうするんだとも思うが、俺は関わっちゃいないからな。
 何とも云えない。
 一度決めちまったもんは、覆しようが無いんだ。



最終更新:2008年12月06日 18:37
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