管理人のひとりごと


▶︎サービス終了に寄せて。

管理人自身が「トリプルモンスターズ(以下トリモン)」について思う事、また思った事を、 独断と偏見で好き放題書いてみました。
乱文乱筆、ご容赦ください。

※2019/02/21に、一部を加筆修正しました。

ピリオドゼロという「先人」

両プレイヤーが同時にカードを選択して戦場へ出す、その時の戦場の状況で「先攻/後攻」が決まる……など。カードゲームとして非常に特殊なシステムを有しているトリモンですが、実は管理人自身は、これと非常に類似したゲームを遊んだ事があります。

その名は「ピリオドゼロ」。
株式会社タイトーから「2010年にガラケーアプリで登場→2016年にスマホアプリでリメイク」という形でリリースされた作品です
(現在はサービス終了)。

…でもなぜ、他社のアプリをわざわざ紹介するのか?
その理由は簡単。
トリモンのゲームシステムの核となる部分において、それと非常に近い仕様を、ピリオドゼロはほぼ完成形で既に備えていたからです。
【ピリオドゼロの特徴】
・[[デッキ]]はユニット4枚+SPカード1枚。
 ユニットHPの合計がプレイヤーの[[ライフ]]となる。
・各[[ターン]]ごとに使用するカードを2枚、両プレイヤーが同時に選択。
  →「墓地」の概念が無く、同一のカードを2ターン以上連続で場に出せる。
・両方のプレイヤーが決定するまで、その選択内容はわからない。
・使用された両者のカードを比較して、[[スキル]]発動順序(=先攻・後攻)を決定する。
・カードスキル発動で攻撃力とクリティカル発生確率を高めた後、先攻側→後攻側の順に相手を攻撃。
・相手プレイヤーのライフを先にゼロにしたプレイヤーの勝利。
・SPカードは1試合に1回のみ使用可能。
 攻撃力の超強化や[[ダメージ]]大幅カットなど強力な効果が多い
…これが既に2010年の時点で確立されています。

ちなみにこのピリオドゼロ、基本ルール等のデザインは「遊宝洞」さんが担当しています。かつて「カードファイト!!ヴァンガード」を作っていた所です。そして、今回トリモンを作った「株式会社ゲームスタジオ」さんは、最近話題の「ヴァンガードZERO」の開発元でもあります。…何かこう、運命的なものを感じますね。

ところが、ピリオドゼロは「攻撃して相手プレイヤーのライフを0にすれば勝利」というルールであったにも関わらず、相手に与えるダメージが、そのつど「確率で」「2倍以上の振れ幅で」変動するという致命的な難点がありました。
  • 平たく言えば「運」の要素が強すぎたのです。
これに関してはトリモンは完璧でした。
  • 相手に与えるダメージの計算には「運」要素はゼロ。
  • ランダムで相手を選ぶ攻撃系スキルは多かったですが、逆手にとって「そういう攻撃に特化した属性」をデザインするなど、工夫の跡が随所に見られます。


基本ルールには破綻が無い

トリモンは対戦ゲーム本来の部分において、基本システムの完成度に隙がほとんどないゲームでした。個々のルールや仕様ではなく、それらを組み合わせて全体で考えた時の完成度が高い。
わかりやすい例としては「デッキ構築のルール」と「2本先取制という勝利条件」との関係性があります。
  • デッキ構築ルールそのものは「ハースストーン」とほぼ同一で、1試合中に同じカードを3枚使うのは難しいルールです。
  • そして、このゲームは相手から2本取らなければ勝てないルールです。2本連取できれば問題ありませんが、相手に1本取られて3ターン目に突入した場合、1種類の強い行動をそのまま相手に押しつけ続けるのが難しくなっています。
    • 例えば、水属性の《魔性の歌姫セイレーン》は非常に高い防御性能を誇るカードですが、よほど特殊な状況が発生しない限り、3ターン連続ではエヴォークできない。
    • これを裏返すと「3本目まで勝負がもつれれば、《〜セイレーン》を使えない『隙』が必ずできる」という事であり、「対戦が一方的にならない」工夫として有効に機能しているのです。
    • もちろん、3本目までもつれる事を想定して1ターン目に《〜セイレーン》をエヴォークしない選択も可能で、ここにトリモン独特の奥深い読み合いが発生しています。
トリモンのチュートリアルだけ軽く触って「ホントにカードゲームかこれ?」と思ってしまった人も多いと思います。ですが、実際にシステムを解剖すると非常に考え抜かれた「仕様の組み合わせ」で出来ており、相手と競い合うツールとしては悪くない出来です。


ゲームの質は高かったが……

「適当にパワーカードをぶっ放すだけでも楽しめて、慣れてくれば奥深い駆け引きも楽しめる。」
対戦ツールとしてはなかなかの高水準で完成されていたトリモンでしたが、問題点はむしろ、実際の対戦とは関係ないところに多く存在したように思います。以下、管理人が個人的に「気になった点」「改善が必要だと感じた点」を列挙していきます。

▶︎ルーン召喚(=ガチャ)の作りが雑
  • おそらく、金額の大小を問わず「トリモンのガチャに課金した」プレイヤーの多くが感じた点ではないかと思います。
  • ルーン召喚は基本的に、①新カードの排出確率が高めに設定された「ピックアップ型」と、②排出確率がほぼ均等に設定された「通常型」の2種類から選択する方式。
  • 新カードが追加されるたびに①が変更され(これは特に問題ない)、 同時に②の排出候補も種類が増えるため、結果としてカードプールが膨張するほど、最初期のカードはガチャで当てる事が困難になっていきます。
    • 競合他社製品ではハースストーンなどが、「このセットにはこのレジェンドが入っています」という感じで、複数のパックを用意しています。例えば、最初期のカードが欲しいプレイヤーは「最初期のカードだけが当たる」パックを買えばよい。
    • 実は前述のピリオドゼロにも実装されていた仕様ですが、残念ながらトリモンでは「エキスパンション別に販売する」類の形式は最後まで実装されませんでした。
  • ある程度のプレー経験がある方はご存知でしょうが、最初期のカードには《キャプテン・アンサー》《戦と勝利の女神モリガン》という、全カードで比較しても屈指の汎用性を誇るレジェンドが存在しました。
    • 実際、2018年5月と2018年12月では「レジェンドを引いて、それが《〜モリガン》である確率」に3倍以上の差が出ることになります。遅れてゲームを始めたプレイヤーにとっては《〜モリガン》を揃えるまでがひと苦労。

▶︎対人戦を強要するスタンス
  • 強要、は言い過ぎかもしれませんが、これも個人的には最初期から気になった点のひとつでした。
  • 具体的には「CPUと対戦するモード」の貧弱さです。
    • 独創的なルールを採用したゲームの場合、それを初めて体感した大多数のプレイヤーは「対人戦の前に対CPU戦」という心理へ傾きます。ここへの配慮、もっと言うと「トリモンのキャラや世界観は好きだが、対人戦に抵抗があるプレイヤーへの配慮」が不足していたように思います。
  • ストーリーモードの報酬は初回クリア時のみ。報酬を取り尽くしたら、あとは対人戦か討伐を周回するか。やや大げさな言い方になりますが、対人戦そのものに抵抗があるプレイヤーも、いずれは「我慢して対人戦をする」事を強いられます。
    • ピリオドゼロは対人戦よりも対CPU戦に重きが置かれたゲームで、「1ターン最大ダメージ」を競うランキング(報酬あり)など、対CPU戦の内容に注目した独自のランキングイベントが定期的に開催されていました。
    • もし、トリモンにもこの類の工夫が実装されていたならば、「対人戦には抵抗がある、けどトリモンの世界観やキャラは好き」というライトユーザーを救う受け皿になれたかもしれません。

▶︎無意識の「囲い込み」
  • 個人的に、最も問題だったと感じている点がこれです。
  • トリモンの魅力を簡潔にまとめると、
    ① 魅力的なキャラとカードを使って、
    ② 従来のカードゲームよりずっと手軽に、
    ③ 本格的な対戦の駆け引きを楽しめる。

    ……という感じになるでしょうか。
    • ブシロード公式も、豪華声優陣によるライブや、開発運営サイドをゲストに迎えてのトークイベントなど、様々な手法で「3つの魅力」をアピールしています。僕の周囲にも、①や②に魅力を感じてトリモンを始めた友人が複数いました。
  • ところが、2018年5月に「賞金制大会の開催」が告知されたことで状況が一変します。
    • 個人的には、大会の定期的な開催については賛成ですし、その理由も理解できます。せっかくカードを集め技術を磨いても、それを披露する場が用意されていなければ「強くなる意味が無い」。
    • しかしその一方で「プレイヤーはなぜそのゲームに熱中するのか」という動機に注目した時、「ゲームに勝てば賞金と名誉が手に入るから」という理由でトリモンに熱中するプレイヤーは、前述したトリモン本来の魅力(特に①)を考えると、ごく少数であるように思います。
    • つまり「賞金制大会を開催してプレイヤーを集めよう!」という作戦は完全に「大会慣れしたマニア」向けであり、豪華声優陣によるライブなど、カジュアルな層にアピールしてきたそれまでの宣伝施策とは相反します。
これは本筋とは外れる話になりますが、
ブシロード公式は「トリモンの競技性の高さ」を、
「アプリ配信最初期から」強くアピールしていたように思います。

フタを開けてみれば確かにそれは事実だったのですが、
本来「競技性が高いか否か」「運ゲーか否か」などという要素は
作品を遊び込んだプレイヤーが何かの拍子に気づくものです。

対戦格闘ゲーム「北斗の拳」における通称「バスケ」コンボのように、
開発サイドの思惑を超えた戦略戦術がプレイヤーに考案される可能性を考慮するならば、
「このゲームは競技性が高い」アピールを開発サイドが軽々しくするべきではありません。
  • 加えて前述のように「対人戦以外のモードにはさほど凝った仕掛けが無かった」ため、 人気が根付かないまま初動のブームが終わってしまい、Meister級のプレイヤーが最上層に多数ひしめく「逆ピラミッド型」に近いコミュニティが早期に出来上がってしまいました。
    • 既存の競合他社製カードゲームと比較しても、これは異常な早さでした。結局、トリモンは「新規プレイヤーが途中参入するにはハードルの高いゲーム」として認知される事になります。
無駄なのは承知の上で「仮定の話」をしますが、
もしも、対CPU戦のモードが配信初期から充実していれば、
その後に賞金制大会の告知があったとしても
 ① 大会に出るために対人戦で修練を積むプレイヤー
 ② 大会などは特に興味が無く、マイペースで対CPUモードを楽しむプレイヤー
……という二者の「棲み分け」が起こるため、
結果として「新規が入りづらい状況」の心配をせずに済んだかもしれないのです。


トリモンの良かったところ

結局、半年余りでサービス終了となってしまったトリモンですが、問題点ばかりでは無く、良い点、評価すべき点も色々ありました。

▶︎キャラクター設定は秀逸
  • トリモンは、そのキャラクター設定においては、実はヒットする素質を十分に備えていました。
  • コンテンツビジネスにおいて「(なじみ性 × 意外性)の掛け算」という言葉があります。
    • 例えば、全世界を席巻したバンド「BABYMETAL」は、日本ではありがちな「カワイイ衣装」のメンバー達が、「ハードロックを歌う」という意外性が受けて、多くのファンを獲得しました。
    • トリモンの世界観をこれに当てはめると「現代社会に生きる少年少女が、カードと召喚術で三つ巴の魔法大戦を繰り広げる」という感じになり、ここに「なじみ性の高い人物たちが意外性の高い行動をする」という掛け算が成立しています。

▶︎禁止措置やナーフがほぼ皆無
  • 対戦型カードゲームにおいては、環境を停滞させるほどの壊れた高性能を持つカードは、禁止カード指定(デッキに積めなくなる)やナーフ(スキル効果を下方修正する)の対象になります。
  • しかしトリモンにおいては、環境の正常化を目的として禁止措置やデータ修正を受けたカードがほぼ出ませんでした。
    • 《風鬼神》など、不具合の修正はやや目立ちますが……。
  • 個人的には、《黒天太陽竜 アジ・ダハーカ "ダ・エーワ"》が異常に流行った時は「さすがにこれは修正くるかも」と思っていましたが……実際には修正も禁止措置も無し。
    • その後、幻属性を除くすべての属性に「ダメージ耐性を付与するカード」が1種類以上追加され、《黒天太陽竜〜》1強の時代は終わる事になります。
  • 個人的には、安易に禁止するのではなく「それを潰す新カードを後から追加」してバランスを取る施策は、完全に正しいと思います。

▶︎ミニ大会「キャサリン杯」の開催
  • これは妙案だったと思います。
  • キャサリン杯とは文字通り、ブシロード広報「キャサリン」さん主催による、Discordを用いたオンライン対戦会です。
    • 参加可能なデッキが「キャサリンの気まぐれで」限られていたり、優秀な成績のプレイヤーには特殊称号が授与されたりしました。
  • 各種メディアを通じて大々的に告知された賞金制大会とは違い、告知には主にTwitterが用いられるなど「気軽に参加できそうな印象」なのが特徴。普段SNSを使っているプレイヤーであれば比較的参加しやすい方式でした。
    • 前述したように、カードを揃え技術を磨いても「それを披露する場」が無ければ強くなる意味がない。その場をより多く提供する……という意味で、素晴らしい施策であったと思います。

▶︎「実況」で場を盛り上げやすいゲーム性
  • これは運営施策というよりゲーム自体の特徴になりますが、個人的には非常に高く評価している点のひとつです。
  • まず前提として、トリモンはゲームの仕様上、いわゆる「ソリティア」が実行不可能なゲーム性になっています。
    • ソリティアとはカードゲームにおけるスラングのひとつ。「カードを◯枚引く」などリソースを補充するカードを短時間で連鎖的にプレーして、「1人で延々とカードを引いてはプレーし続ける行為」を指し、これが度を超えて長引くとゲーム全体のテンポが悪くなります。
    • トリモンの場合、1ターン内に出せるカードは前半2枚・後半1枚の合計3枚まで。加えて前半・後半それぞれに制限時間があり、ゲーム全体のテンポは一定に保たれています。
  • 実況や解説のいる大会シーンにおいては、この特徴が良い方向へ働きます。
    • 試合のテンポがほぼ一定なので、ゲームを実況・解説する側にとっても「説明する順序や流れ」を即興で組み立てやすく、場を盛り上げやすい作品となっています。
    • 既存のターン制だと、ひとりのプレイヤーが黙々と長時間カードをプレーし続ける間、対戦相手や周囲のギャラリーは「終わるまで待たなくてはならない」。でも、このゲームでは「待たなくてよい」。この差も非常に大きいと思います。


まだ見ぬ後継者へ……

(自社製・他社製を問わず)類似のシステムを備えた後続作品が出ないまま、トリモンはサービスを終了しました。
開発元(株式会社ゲームスタジオ)も、今後は新作「ヴァンガードZERO」の開発・運営に注力していくと思われます。買い切り有料アプリとしての再発売、また続編やリメイク版などのリリースも、現時点では非常に厳しいと予想します。

もしも今後、この独特のシステムを多少なりとも継承した「トリモンの後継者」が現れるならば、
  • 「この作品は手軽で簡単なんですよ」というアピールを、常に最優先に。
  • 「対人戦」だけでなく「対CPU戦」においてのやり込み要素も豊富に用意。
  • 競技性の高さが「双方向的に」認知された上で、大規模な大会を開催する。
……このあたりに特に注意して、開発・運営にあたってほしいと切に願います。



現実は果てしなく厳しいでしょうが、僕にとっての理想はやはり「トリモン復活」です。
あの魅力的なキャラやカードに、あの独創的なシステムのもとで、もう一度会いたい。

この願いが叶う日が、いつか来る事を願って。





最終更新:2019年02月21日 20:34