小さな村だった。
自然に囲まれて、そこに住む人々は木々などを用い、生活していた。
最近は隣町からも物資が豊富に流れてきて、少しずつ発展してることを日々感じる。
そんなこの村が私は好きだ。
私はというと父と二人で暮らしている。
母は体が弱く、私を生んだ後に重い病気に掛かり亡くなってしまったらしい。
それはそうと、今夜は年に一度の祭りなのだ。その為、私は隣町に買い出しに行くことになった。
肉とか野菜とか…まぁその辺。結構遠くて時間かかるから、朝早くに行かないと…
そう思い出発しようとした時に、父に声をかけられた。
「こいつで好きなものも一緒に買ってこい。」
「こんなに!?いいの?」
「あぁ、今夜は祭りだからなァ」
「ありがとう父さん!」
一通り買い物を済ませたけれど、結構余っちゃった。好きなものと言われても…と歩いていると
暗い路地の向こう側から誰かの声に呼ばれるように、誘われるように足が運ばれていった。
そこにはひっそりとした雑貨屋があった。置いてあるのは綺麗なものばかりだった。
ふと、惹かれてしまうアクセサリーがあった。それは確かに綺麗ではあるのだけれど、
他の物とは違って、妖しく深い蒼に引き込まれるような、兎のペンダント。
「君ぃ…なかなか見る目があるねぇ……」
いつからいたのか。それとも最初からいたのか。そんなことも分からないまま男は言葉を続ける。
「このペンダントは対になっていてね…つけている人の【想い】
を繋げてくれるんだよ…」
「君はいい目をしている…その純粋で何も知らない真っ白な心…きっと君に似合うと思うよ…
サービス。君には特別に安くしてあげようかね……」
そんな言葉に騙されたのかもしれない。いつの間にか私はその二つのペンダントを買ってしまった。
でもとっても綺麗だし、父さんにあげたらきっと喜んでもらえるよね。
大通りにもどると、何やら町がざわついていた。小耳を
立てて話を聞くと…
「あそこの村燃えちゃったのかい?残念だねぇ…今日は祭りがあるみたいだから行こうと思ったのに、
不幸なこともあるもんだねぇ」
その話が終わらないうちに、その足は故郷へ向けて駆け出していた。
……なに…これ……
辿り着いたとき、私は炎を目にした。
その炎は祭りの炎ではない。その焔は村全てを包んでいた。噂を聞いた人々も何人か居るようだ。村の外から来た人だろうか。
体はいつの間にか見知らぬ人に抱きしめられていた。
「怖かっただろう…もう大丈夫だからね…」
ふと、頬に違和感を感じ、人差し指で触れた。その頬は涙で濡れてしまっていた。
「村の皆は?…父さんは?」
顔を見上げても、その人は顔を逸らすだけだった。私はその人を振り払った。絶対に誰かいるはず。会えるはずだ。
そう心に言い聞かせながら……焔の中へと走り出した。
目に映るのは、人の大きさと変わらぬ何かの塊ばかり…
自分の家があった場所に着くと、反射的に、無心で何かを探していた自分でも何を探しているかも分からないまま…
ふいに、誰かに呼びかけられた【自分の名前を】【父の声が】
「おぉ柊兎、美味しそうな食材が揃っているじゃないか!偉いぞぉ!」
「そうでしょ…だから今年も皆で楽しく盛り上げようよ…ほ、ほら
父さんの為にこんな首飾りも買ったんだよ!」
「そうだなぁ…そうしたいが、俺も村もこんなんになっちまった…今息子と
話せてるのはそれのおかげなのかもなぁ…」
「それに、そろそろ時間切れだ。いいかい柊兎、これからはお前一人だ。
大変なことや、理不尽なことが一杯起こるだろう。だからといって、決して
恨んではいけないよ………」
「何言ってんだよ父さん……父さん?…ねぇ、ねぇったら…!!」
もう父の声は聴こえない。あれは幼き子供の心が生み出した幻想だったのだろうか…?
悟った。ようやく気付いた。
もう村の人々は、家族は、父はいない。
「ぁぁ…あああぁ……ああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼」
私は鳴いていた。私は泣いていた。
……………………………
『ゴトッ』
その悲痛な叫びが子供の喉を枯れ果てるまで続いた後に、その物音が聞こえた。
それは骸骨だった。
「父さん…?」
「助けられなくてごめんね…これ、買ってきたんだよ。」
私が兎の首飾りをそれにつけようとした瞬間、首飾りが砕け散った。
そしてその頭蓋骨と融合しながらバキバキと音を立てて変形し…
不気味な髑髏の仮面の形になった。
その不思議な現象に驚く暇も無く、私は声を耳にした。それは父の声でもなければ、さっきの人の声でもない。
怪鳥イャンクックのものであった。
怪鳥は火をまき散らしていた。時たま、その大きな顔を地に突っ込み、、何かを食っていた
―――今にして思えば、この焔の規模は余りにも大きすぎた。イャンクックがやったものとは
到底理解できない。ただ、己の村を、友達を、思い出を、父を目の前で焼かれていたのだ。
14歳の幼き子供に耐えられるはずが、理性をもって考える余裕なんてなかった。――――
それを見ていながら、落ち着いていた。いや、落ち着きすぎていた。
心の思いをぶつけられる相手を見つけて、ひどく嬉しそうだった。
ふいに怪鳥が新たな獲物を見つけ、ゆっくりと振り向いた。
私はあたかもそれが運命かのように、仮面を被った。
その腕には父が使っていたハンマー…ウォーバッシュを握って。
「許さない…こんなことをしたお前を絶対に許さない…。
殺す殺す…どこまで行っても逃がさないよ…」
子供の口角はにやりとつりあがり、その目からは涙も光も消えていて、
ただ目の前のイャンクックのみに据えられていた……。
ここに、仮面ネメシスが生まれたのである。
その胸に、尋常ならざる大きさの復讐を抱えて…
………………………………………………………………………………………
あの日から数日。私は真相を調べて、そして知った。
私の村を焼き尽くした理由。
それは急な軍事兵器のテストだったらしい。
避難命令は出された。遠くに親戚の居る家はすぐに避難した。
しかし避難といえど、結局は故郷の消滅には変わりなかったのだ。
父は先頭に立って講義した。
こんなことあってはいけないと。
同じ思いを持った沢山の人々も講義した。
その幹部であろう輩は聞く耳を持つはずも無く、寧ろ嘲笑っていたそうだ。
数分後、兵器は使われた。
沢山の軍人が戦争の為、実践訓練として焼き払ったのだ。
俺は憎んだ。
兵器を、軍人を、その幹部を、この国の軍を、そして、
その時その場にいなかった自分自身を。
一番自分が嫌だった。
父が奮闘している中こんなニコニコしていた自分が。俺は、惨めな自身を忘れたかった。そして父の様になりたかったんだ。
だから……俺は頭蓋骨という仮面を手にとった。
全てを捨てられ、自分の存在も捨てた。
復讐するために。
【「そう言えば、この軍の名前は【ギルド】と言うらしいな。」】
最終更新:2016年01月28日 15:56