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第一章 -覚醒-


そこにいた
誰に命じられたわけでもなく、気がついたらそこにいた
いや、数多の世界を見てきたことによって人の思念や記憶のようなものを読み取ったことで人格のようなものが構成されたのかも知れない
何にせよ、私は世界を見ているだけの存在ではなくなった
これまで見ていることしかできずに滅んでしまった世界も沢山あった
それがその世界の住人が自らの過ちによって滅んだのならば何も言えないが
いくつかの世界は別の何かから干渉を受け、その影響で滅んだこと確認している
次元に干渉する力を持つものが、どんな理由で行使していようと私はそれを許すわけにはいかない
世界の流れは、その世界の住人のものだからだ
今も外部の者から影響を受けている世界がある
「向かわなければ・・・」

この世界・某所

「データを書き換えられたモンスターはこいつか」
自身が感知した反応追い、対象モンスターを確認
その身体は通常の個体よりも遥かに大きくそして常に激怒していた
データ上では本来そこまで怒りを激しく周りにぶつけようとする個体ではないはずだった
「今、元に戻すからな。コード承認!クロニクルリライト!」
モンスターの周りに文字列が生じ、文字列がモンスターに取り込まれていきデータの更新が行われていく
そして、文字列がモンスターの体内に完全に取り込まれた
「これで元に戻る・・・」
そう、そのハズだった
その直後、モンスターが苦しみにもがく
「これは・・・一体・・・まさか!」
クロノスの直感は当たっていた
精神的(データ上)な改善は可能でも、物理(肉体)的には改善されていなかったのだ
データを一度に変えられたモンスターは精神と肉体の調和が取れなくなり、激しい叫び声を上げてそのまま動かなくなった
とりあえずとして目的を達成したクロノス
しかし、その言葉にはやるせなさがにじみ出る
「歪みに歯止めをかけることはできたが、この方法では・・・。」
クロノスはこの世界の住人ではないため具現(実体)化してしまうと、自身が歪みを誘発させる可能性がある
それ故に精神を変えることしかできないのだが、行った結果が今の結果である
クロノスは他の方法を取らざるを得なかった
「誰かに、私の力を使ってもらうのが無難か」
ふと思いついた提案
しかし、クロノスの力は誰にでも使えるわけではない
時空を超越してしまうほどの力を何の能力も持たない人間に扱うことは不可能である
「私と適合率の高い者が必要となる
 この世界に居てくれれば良いが・・・」
不安を抱きながらも、この世界と同化する
そして全ての情報が記録されたアーカイブスから今現在生存している全ての生命体との適合率を照合していく
人であれば幸いだが、虫や鳥であったらという負の考えが思考と作業を鈍らせようとする
そうだとしてもやらねばならぬ使命感から淡々とクロノスは照合を進めていく
そして、適合率99.9%の生命体を見付けることができた
「Ghost-N-Raven・・・。カテゴライズは人間か」
一先ず適合者が人であったことに安堵する
しかし、その者がどんな人間であるかは不明である
凶悪な人格かもしれない、戦闘を全くしたことがないかもしれない
子供かもしれない、老人かもしれない
様々な可能性が脳内を駆け巡る
しかし、その者が何であれ、自体は一刻を争う状況である
迷っている暇は・・・ない
「早急に向かわなければ・・・」
クロノスはその生命体が存在する座標へと飛び立った



その座標は生い茂る原生林と雄大な山々、そこは渓流と呼ばれる場所だった
「この辺りのはずだが」
クロノスが上空から辺りを見渡すと、白い煙を上げる建物が目についた
「あれは一体・・・」
それ以外に何かあるわけではなかったので、とりあえずその白煙を目指して向かう
白煙の周辺はそこまで大きくはない山村だった
そして村の入り口には【温泉街ユクモ村】と書かれている
あの白い煙の正体は温泉の湯けむりであったことに気づく
「街であるなら、人もそれなりにいるはずだ。ならばこの街のどこかに」
クロノスは自身の能力を使い、見かけた人間と自分の適合率を照合していく
しかし、一向に見つかる気配はない
「この村の者ではないのだろうか
 それともこの近辺ではない可能性も・・・」
その時、遠くのほうから角笛の音色が聞こえてくる
クロノスは世界の歴史から様々な情報を閲覧することができるので
角笛の音色は誰かが狩猟に出かけるときの音色だと言うことを知っていた
そして、今から出かける者かもしれないという直感からクロノスはその音色が聞こえた方向へと急ぐ
クエストに向かう寸前だった彼の適合率を照合する・・・99.9%
「彼が適合者か!」
発見した勢いで呼び止めようとしてしまうクロノス
しかし、いきなり声をかけてしまっては彼のクエストを邪魔するばかりか
下手をすれば邪険に扱われて契約を断られる可能性もある
そうなってしまっては世界を正す前提にすら到達できないことを恐れ、感情を落ち着かせる
「そうだな・・・ここは一つ、観察させてもらうとしよう」
クロノスはクエストに向かうGhostの後を静かについていく



クエストの場所は渓流であった
詳しいことは分からないが、背中の武器と身に纏っている防具を見る限り
山菜を摘みにいくような穏やかなクエストではなさそうだった
何かを狩猟するのであれば、それはそれで能力を観るには好都合というもの
一体何を狩猟するのか考えていると、彼の前に青い毛皮に覆われた大熊が現れる
「あれは、アオアシラという個体だったかな」
世界と同化したときに知り得た情報を見る限りでは、強敵と言うには程遠い個体であった
「まさか、この程度の個体を狩猟する実力なのだろうか」
クロノスが落胆しかけた直後
「グオォォォ・・・」
アオアシラが意識を失う声とその場に崩落ちる音が聞こえる
「!?」
突然の出来事に驚くクロノス
それもそのはず、今の一瞬でGhostはアオアシラを気絶させていたのだ
しかし、彼はアオアシラから素材を剥ぎ取るわけでもなければ帰ろうとする素振りさえ見せない
その振る舞いから察するに初めからアオアシラは眼中になかったようだ
「彼が対象としているモンスターは一体・・・」
引き続き、彼の後についていく
クエストにでかけた時はまだ日が登っていたはずだったが
気がつくと辺りはすっかり日が落ち、夜となっていた
昼間とは全く違う雰囲気となった渓流に不穏な空気が流れ始める
昼はまだ穏やかと呼べるような空気であったが
それと比べると夜中は張り詰めたような空気で殺伐としている
いつ何が襲ってきてもおかしくない
一瞬足りとも気が抜けない状況下にGhostは居た
そんな中、草木がざわめき立ち、一筋の赤い光が高速で飛び回る
木から木へ、着地してからさらに次の木へと飛び移っていく
Ghostが姿を確認しようとして、赤い光が向かう方向を予測して閃光玉を投げる
辺りが一瞬明るくなり、その光の影となって映しだされた黒い身体が着地して月明かりに照らされる
両腕に伸びる鋭利な刃としなやかな身体、そして赤く鋭い眼光
「あれは・・・迅竜、ナルガクルガ・・・!」
昼間は獲物を求めて、他のエリアに移動していたのが夜中になって戻ってきたのだろう
ナルガクルガの戦闘力と言えば、この世界ではそれなりと上位に位置する個体
そして彼もアオアシラを一瞬で気絶させるほどの実力を持ち合わせる強者
「これほどまで彼の力を観るのに好ましい組み合わせはないな。・・・見せてもらおう」
夜の渓流、彼ら以外の生命体は危険を察知して遠くへと逃げている中
それらには見向きもせず目の前の敵と互いに隙を探り合うGhostと迅竜
タフネス、スピード、パワーどれを取っても人と迅竜では、迅竜には遠く及ばないであろう
しかし何故だろうか
彼からは不思議と負ける気配はない
あの時見せた一瞬の出来事はそれらのアドバンテージでさえも凌駕するのではないかという期待がクロノスにはあった



風に煽られた木の葉が両者の間に流れ落ちる
ひらりゆらりと自由気ままに落ちる木の葉
しかし、その木の葉の先にいる敵に全力で集中する二体
その脳内では相手を制するための戦術がどのように組まれているのだろうか
そしてどちらが勝ち、生き残るのだろうか
落ちる木の葉が地に落ちた瞬間、激しい火花とともに両者がぶつかった
迅竜は右腕の刃でGhostを薙ぎ払う
遠目から見れば当たっているように見えるが彼はそれを完全に武器でいなす
そして攻撃をいなしつつ懐に飛び込み、反撃を試みるが、迅竜の驚異的な身体能力でこれを躱される
回避により距離を取った迅竜は尻尾から尾針を無数に飛ばした
ただでさえ辺りが暗い状況を保護色とした黒い尾針がGhostを襲う
Ghostの居た周りが土煙をあげるほどに尾針を叩き込まれていく
しばらくして攻撃が止み、迅竜は臨戦態勢のまま土煙の方向を見据える
巻き上がった土煙が消え去ると、そこにGhostの姿はなかった
しかし、そこで死んでしまった様子も感じられない
依然として張り詰めた空気が辺りを包み込んでいる
迅竜が何かを察知して上を見上げ吼える
月を背にしたGhostが迅竜目掛けて急速に落下し攻撃の姿勢をとっていた
その状況を咄嗟に判断した迅竜、自身の細く長い尻尾を振り回し迎撃を試みる
しかし、Ghostこれを身体を捻りながら躱し、そのまま迅竜の頬へと斬撃を浴びせた
怯む迅竜、Ghostは続けざまに攻撃を試みるが
迅竜がGhostを振り解こうと激しく暴れ回り、間合いからの撤退を余儀なくされた
もう一度、迅竜が距離を取り体勢を立て直す
そして、さっきまでとは比べ物にならないほどの気迫と赤い眼光をさらに赤くして吼える
大気が震え、ここからが本番だと言うことを告げるかのよう咆哮
迅竜がさっきまで見せなかった攻撃の構えを取る
何かが来ると直感で感じたGhostは瞬きせずに迅竜を凝視している
迅竜が大きく腕を振りさっきと同じ腕の刃でGhostを切り裂こうとするが
先程と同じような攻撃が通じるわけもなく完全にいなされる
しかし、今度は一撃で終わらなかった
二撃、三撃と迅竜は次々と攻撃を重ねていく
Ghostの集中が切れる瞬間までスピードとパワーで押し切ろうという考えなのだろう
四撃、五撃と回数を重ねるほどにいなすタイミングがズレていくのが見ていて分かる
いや、迅竜がわざと攻撃のタイミングをズラしてGhostのリズムを崩そうとしてたのだった
防御のリズムを狂わされ次第にGhostの鎧にはかすり傷がついていく
迅竜の攻撃は十回にまで達するところまできていた
攻撃を仕掛けた迅竜も流石に疲れていた
この攻撃をどれだけ浴びせようとも、全て紙一重で躱されてしまうと判断した迅竜
戦略を変更し一度、距離を取りありったけの尾針を飛ばしてGhostをその場に止めた後
逆側まで回り込みGhostの真上から渾身の尻尾による叩きつけ繰り出す
周囲に空気が破裂するような音が炸裂した
静かになる渓流 両者の周りに立ち込める土煙
そのとき、一陣の風が土煙を連れ去る
姿が現れる両者、しかし、先ほどの攻撃を受けたはずのGhostは無傷で迅竜の目の前に立っている
目の前の獲物を仕留めようと再び動こうとする迅竜だったが
立ち上がる寸前、力無き叫び声と共に夜の渓流へと崩落ちた
「素晴らしい技術と直感だ・・・」
戦いの最中に一切の声を出せ無かったクロノスは漏れたように口にした
自分の適合できる者がまさかここまでの実力者であったとは思いもよらなかったのだろう
数々の世界を見てきたクロノスはこれほどの逸材は他には有り得ないと確信した
しかし、クロノスはまだ声を掛けずにいた
クエストが終わったわけではなかったからだ
確かに討伐は完了したが、そのまま放置というわけではない
彼が村に戻るまでその後の行動も観察してから、最終的な判断をしようと決めていたのである
Ghostは迅竜から素材を剥ぎ取った後、すぐにギルドに連絡を入れ
到着した回収員に指示を出しながら迅竜の体を分解し、回収員が荷車に積んでいく
その振る舞いから察するに恐らくギルドという中でもそれなりの実力者なのであろうと思わせられる
迅竜の回収が終わると、自身も荷車に乗ってそのまま村へと運ばれていった
村に帰ったGhostはギルドマスターに報告を入れて、隣にいた受付嬢から報酬をもらってギルドを後にする
それから必要な額だけを別の袋に入れ、残りのお金を使って村の住民を集めての宴会を開いた
「たくましいものだ。さっきまで命のやり取りをしていたと言うのに」
温泉宿の屋根の上からクロノスは宴会の様子を見ていた
その様子を見ていて、クロノスは人の生命の雄大さを知ったかのようだった
「このような者達だからこそ、あのような屈強なモンスターたちからこれまで生きてこれたのかも知れないな」
日が昇り始めるかどうかまで続けられた宴会
その宴会が開けたところでGhostに話を持ちかけようとしたクロノスであったが
もし自分が酔っ払った拍子に見た夢だと思われて契約を反故にされるのも癪なので
彼が起きてから再度話を持ちかけようと考えこの世界を後にした

【翌日の昼ごろ】

「さて、彼はどうしているのか」
座標を記憶してあったため、再度この世界に来たとしても迷うことはない
また狩猟に出かけてないかと不安になりながらも、Ghostの座標に到達する
まだ寝ていた
「これはこれで、何というか腹が立つな
 だが、仕方がない おい、起きろ」
とりあえず声をかけてみるが、一向に起きる気配はない
「起きろと言っている!」
さっきより強く声をかけるが、やはり起きる気配はない
「・・・。さっさと起きろ馬鹿者が!」
クロノスの感情が昂ぶり、大地が揺れる
「な、何だ!?」
何か危険が迫ったのかと思い、直ぐに武器を手にするGhost=
しかし、揺れはすぐに止んだ
一息付いたGhostにクロノスは声をかける
「やっと起きたか」
姿が見えないはずなのに頭に響く声を聞き再び慌てるGhost
G「何者だ!」
C「私はこの世界を管理している者だ」
G「・・・姿も見えない素性の知れない奴の言葉を簡単に信じるわけにはいかないな。姿を見せろ」
C「この世界で私は実体を持たないのだが、信じてもらうためには仕方ない」
白いような光の塊がGhostの目の前に現れる
G「まさか、本当に姿がないのか?」
C「これ以上は世界に干渉し過ぎてしまう。申し訳ないがこれが限界だ」
G「そうか、ならば姿はそれで良しとしよう。で、その管理者とやらが私に一体何の用かな?」
C「そうだな・・・。回りくどいと帰って面倒だ
  結論から言わせてもらおう。この世界は崩壊に向かっている」
G「馬鹿な!何を根拠にそれを信じろと!」
C「驚くのも無理はない、これは君たちの世界ではないものからの干渉なのだからな」
Ghostは黙る。しかし、Ghostはクロノスの話を真剣に聞くつもりでいた。それを察したクロノスは話を続けた
C「その者がこの世界で何を企んでいるのかは知らないが、この世界のモンスターと呼ばれる者達に通常では考えられない力を与え
  そしてそれをそのまま放置している。通常とは別格の能力を持った個体だ。並大抵の者では歯が立たずに返り討ちに遭うだろう。
  生きて帰ることができれば幸いだが、その多くは命を落とすと私は予想している。」
G「私にそのモンスターと戦えと言うのか?」
C「そうだな、確かに戦ってもらうことには変わりないが、その強化されたモンスターはこの世界の歴史に障害をもたらす存在となってしまっている。
  しかし、それらのモンスターも元々はこの世界で生まれ、この世界で生きてきた者だ。単純に殺してしまえば良いわけではない」
G「ならばどうする。普通のハンターでは返り討ちに遭うが、逆に手練のハンターが単純に討伐するだけでは意味がないのだろう?」
C「そこで、私の力を君に与える。それにより、君はそういった者達に物理的に干渉することができる」
G「なるほど話は分かった。では何故私なのか。そしてお前は何故自らそれを行使しないのか。そこを教えてもらおうか」
C「・・・まずは後者の質問から説明しよう。数日前、ある場所にて世界に歪みを与える存在を発見し、そいつのデータの上書きを実行した。
  しかし、結果としてデータだけが上書きされ、その存在はしばらく間は適応しようと耐えていたが、後ほど絶命した。」
C「そして、前者の質問に回答するが、君の因子は限りなく私に近い。その適合率は99.9%という数値を出した。これがどういうことかを意味するか
  それは、君に私の力を分け与えた場合、君は私の力をほぼそのまま使うことができるレベルと考えてもらっていい
  私は昨夜、君と迅竜の戦闘を遠くから見せてもらったが、素晴らしいの一言だった
  君と私の力でもってすれば、必ずや世界を正しい流れへと戻すことができると確信している」
G「しかし・・・」
C「言葉を重ねるようだが、これは君にしかできないことだ
  この世界の住人を一人残らず照合したが、適合率50%を超えるのは君以外に存在しない
  そして、私が力を与えるほどに、この世界は次元の歪みを発生してしまう
  それはつまり、他の者ではこの世界を救うことは不可能であることを意味している」
G「・・・通常とは、異なる強さをもった個体だと言ったな。最近、ギルドからも謎の進化を遂げた個体の情報を耳にすることがある
  その殆どが手練を集めても撤退を余儀なくされたという報告も含めてな
  その歪みというやつにこれも関係しているのか?」
C「全てがというわけではないが、可能性は大いにあると言える」
G「そうか。お前の力を使えば、無念に散っていった奴らの命も救われるのかもしれないな・・・」
しばらくGhostは静かに目を閉じて考えた
そして、覚悟を決める
「わかった、お前と契約を交わそう」
クロノスは世界を救う上での前提がクリアできたことに安堵しながらも口調は変えず
C「わかった、ありがとう」
どんな言葉よりも、その言葉だけが真っ先に口に出た
G「さて、お前の能力を与えてもらうにはどうしたらいいんだ?いや、もうお前では失礼か」
C「そうだな、私の名前は・・・クロノスと呼んでくれ。能力の共有はすぐにできる」
G「クロノスか、わかった
  ではクロノス、その力を与えるには何か儀式のようなことが必要ではないのか?」
C「既に準備は整っている。君はそのままで良い」
その瞬間、Ghostの周りが見たことのない文字列で包まれていく
C「コード承認、バーソナルデータの書換・・・完了、パーソナルデータ【クロノス】のダウンロードを開始・・・完了、インストール開始」
次々と知らない言葉と知らない文字列がGhostの身体へと流れ込んでいく
しかし、依然のような異常はまだ見受けられない
C「インストール80%、90%、100%・・・インストール完了」
とりあえず、インストールは完了した、問題はここからだ
これで、しばらく何もなければ無事完了なのだが・・・
G「あああああああああ!!」
やはり拒否反応が始まってしまった
いくら適合率が限りなく近いといってもやはり無理があったのかもしれない
だが、今はそんなことを考えている場合ではない
クロノスは即座にGhostのデータベースの再構成を試みる
「ここで君を死なせるわけにはいかない!パーソナルデータを+へと移行!及びにメンタルキャリアを増設!」
G「アアアアアアアア!!」
しばらくの叫び声の後、Ghostはその場に倒れる
C「おい、大丈夫か!君!?」
急いで声をかけるが返事はない
そして、動く気配もない
「やはり、生身の人間では・・・無理があったのだろうか」
クロノスが言葉を漏らす
いくら適合率が高いとはいえ、やはり人は人以上にはなれなかったのだろうか
クロノスが落胆していると、Ghostの身体が動き出す
G「・・・勝手に人のことを殺されては困るな。そして私にはGhostという名がある」
C「よかった、生きていたか。どこか変わったところはないか?苦しくはないか?」
G「特に体に異常は見当たらな・・・ん?」
C「どうした?何かあったのか?」
G「これは私の体・・・だよな?」
C「そのハズだが?」
G「・・・何故、女性の身体つきをしている・・・。」
C「!?」
一瞬凍りつく二人、その原因を探ろうと思考を最大限に稼働させ、気がついたようにクロノスが口を開く
C「まさかとは思うが、君の身体が拒絶反応を示していたときに肉体のパラメータを再構成させてもらった
  もしかすると、その時の拍子に性別が変わってしまったのかもしれない・・・」
恐らくそのせいだと直感したGhost、さらに凍りつく
C「いや、そんなに落胆する必要もないと思うぞ?その身体には私の力を扱うための肉体の強化と精神が備わっている
  もしかすると、男性であった君の時よりもさらに進化しているかもしれない」
とりあえず、何とかフォローしようと必死になるクロノス
しばらく黙っていたGhostが無言で家の外に出る
C「ど、どこに行く気だ!君!」
精神体のクロノスも慌てて後を付いて行く
向かった先は大木の前、Ghostは構えを取る
G「ハッ!」
大木に向かって正拳を一撃
大木は折れることはなかったが、穿たれたかのように彼、いや彼女の拳の大きさの穴を空けていた
G「・・・確かにスピード、パワー共に向上はしているようだ」
目の前の状況を観察して、Ghostは静かに呟く
G「確かに、肉体の能力は上がってはいるが・・・ハァ」
C「他に何か問題があるのか?」
G「問題・・・そうだな問題と言えば問題かもしれない」
C「どういうことだ?説明してくれ」
G「この世界ではな、男性には男性の、女性には女性の防具が存在する
  そしてその防具は一つ一つ、寸法を測った上で作られた品々で完全にその人以外では着れないようになっている
  この身体を見ると、どう考えても男性であったころの体格とは異なる
  つまり、今までの防具が全て使えないというわけだ
  それが、色々と心残りでな・・・」
C「また新しく作ってもらうわけにはいかないのか?」
G「確かにそれでも大丈夫だ、素材も十分に揃っているしな
  しかし、私の防具一つ一つには、その防具を作るために苦労した歴史のようなものがある
  思い出とでも言うのかな それを安々と捨てることはできない」
C「・・・詰まるところ、その防具が君の身体に合えば良いのだろう?」
G「それはそうだが、そんなことできるわけが」
C「私は時の管理者だぞ?その程度どうということはない。案内しろ、直してやる」
G「・・・。(世界の流れがどうとか言ってた割にそういうことは平気でできるんだな)」
と半ば呆れるGhostではあったが、奴がそれで良いと言っているのだから良いのだろうと考えるのを諦めた
C「どれだ?これか?」
G「それではない。こいつだ」
Ghostの指が差す方向には、深い緑色で構成された防具が飾ってあった
G「これは、この世界のモンスターのナルガクルガ亜種、ドボルベルク、イビルジョーを狩猟して作ってもらった装備だ
  私はよくこの辺りでの狩猟を任されることが多いからな。こういった色は保護色になる」
C「なるほど、そうだったのか」
クロノスは昨晩のことを思い浮かべながら防具を見つめる
C「よし、とりあえずこの防具を着てくれ」
いきなりのことにGhostは慌てる
そして即座に反論する
G「さっきも言っただろう この防具は完全な特注品で女性の身体となった私では・・・」
C「いいから、着ろと言っている」
よく分からないが、とりあえず奴の言うとおりにするしかないかと思い防具を着るGhost
見た目は非常に不恰好であった
C「よし、防具を着たな。それではこれからその防具を君に合わせるぞ」
G「防具を合わせるってどうやって・・・」
C「いいから、そのままでいろ コード承認!」
クロノスがまた文字列を発動させる
C「防具のパーソナルデータを更新を開始!データを装着者に準拠!既存のデータをアンインストール・・・完了!再構築を開始!」
自分の着ていた防具の見た目が次々と変わっていく
C「防具の再構築・・・完了!」
そこには先程とは全くことなる防具のだが、碧緑の仮面に包まれた戦士がいた
C「こんなところか。どうだ違和感はあるか?」
G「・・・。(見た目は大幅に変わってしまったが、防具の感覚は以前のままだ
  いや、以前よりもさらに研ぎ澄まされている感じがするな)」
G「いや、特に問題はない」
C「そうか。それでは君の防具に新たなにつけさせてもらった機能を説明しておこう」
C「まず、その頭防具にはクロノライザーと呼ばれる機能を追加させてもらった。これにより君は私といつでも会話をすることができる」
G「何故、その必要があるんだ?クロノスはいつも隣にいるわけではないのか?」
C「できることなら私が常に傍にいることができれば良いのだが、私は他の世界の管理者でもある。故にこの世界にいつも居るわけではない」
G「なるほど、このクロノライザーを使えば、他の世界にいたとしても、会話が可能というわけか」
C「その通りだ。そして基本的に君は今まで通りの生活してもらっていて構わない
  何か歪みを発生させているモンスターに遭遇すると、クロノライザーが察知して君に知らせてくれるようになっている」
G「普段通りと言っても、女性であることに変わりはないのか・・・」
再度、自身の姿を確認して落胆するGhos
C「そ、そうだな・・・。それに関しては済まない。何とかする方法はこちらで模索しよう
  説明を続けるぞ。普段の状態、つまり人が作ったものを着ているだけでは私の能力は使えない
  その防具に私の能力を上乗せする必要がある」
G「この防具はさっきクロノスが変えてくれたじゃないか。それでは駄目なのか?」
C「確かに私の能力はその防具にインストールされている
  しかし、常に発動しているわけではない
  私の能力を君にしか使えないように鍵をかけておいた
  君以外の人間に使われると色々と困るからな」
G「どう困るんだ?ちゃんと説明してくれ」
C「・・・結論から言えば、君以外がその防具を使おうとして装備すると一般の人間では肉体が防具についていけずに恐らく命を落とすだろう
  しかし、ただそれだけで命を落とされては、流石にその人も可哀想というものだ
  君自身の評判にも関わるかも知れないからな
  そこでその防具に鍵をかけた
  ただ装備するだけでは発動できないようにな
  といってもその防具を使う上で鍵となる言葉は非常に重要な単語となる
  その言葉は【リードクロニクル】この言葉を君が唱えるとクロノライザーが共鳴し、その防具と武器を私の力が付与される
  そして、その強化された武器でもって対象となるモンスターを討伐して欲しい」
G「なるほど、その言葉は唱えなければいけないのか
  少し恥ずかしい気もするが・・・」
C「少しずつ慣れてくれ。その言葉を唱えれば、君がどこにいようと装備が可能だ
  通常のクエストに出かけているときに思いがけなく遭遇することも有り得るからな
  勿論、防具の性能も高めてある
  並大抵の防具の性能では全く役に立たないだろうからな」
G「ふむ、大体分かった
  後は実戦で色々と試してみるとしよう
  長々と説明をありがとう
  これからよろしく頼む」
C「こちらこそよろしく頼む
  君のおかげでこの世界を救えるかも知れないと言う希望を見出すことができた」
こうして仮面クロノスは誕生した
これから彼らが歪みを抱えたモンスターと戦い、そして傷付き悩む
しかし志を共にする仲間たちと出会い、助けられ
世界をあるべき姿へと戻す旅の幕が開けたのであった


彼らの歴史はまだ始まったばかりである
最終更新:2013年07月05日 22:09