仮面クロノスとなって数日が過ぎたとりあえず、私とその周りは激変した
まずは男性から女性になってしまったこと
それに伴い、全ての人間関係がリセットされてしまったこと
ただ、筋力は元の身体よりもさらに強固に強力になったこと
生活資金は元々あったのだけれど、生活の糧であった狩猟が、また一からやり直しになってしまったこと
ギルドとの繋がりがなくなってしまったことが一番の問題だった
G【武器や防具はそのままっていうのがな・・・】
数々の死線をくぐり抜けて作られた武器や防具にはそれに見合った輝きを放っている
G【流石にこれをそのまま使うわけにもいかないか。これはこのままで、装備も一から作り直すか・・・?】
あまり気乗りはしないが、このままというわけにもいかなかった
とりあえずまずはハンター登録の申請をしにいかなければならない
Ghostは村長に許可をもらいに村長の家へ向かった
G【すまない、村長殿はいらっしゃるか?
村長【はい、どちら様でしょうか?】
家の奥から雅な格好をした方が出迎えてくれた
G【突然で申し訳ないのだが、ハンター登録の推薦書が欲しい】
村長【それは構わないのですけれど、貴女はどちら様でしょうか?】
G【わ、私は・・・】
そういえば忘れていた
先日まで村にいた頃とは姿も声も違うことに
Ghostが言葉を詰まらせていると
村長【・・・なんとなくですけど、誰かさんに似た雰囲気がする人ですねー
うーん・・・多分、大丈夫な気がするんで推薦書かきますねー】
村長は特に何も言うことはなく推薦書を書いてくれた
村長【はい、こちらになりますー。頑張って下さいねー】
そこには志願者の欄が空欄となった推薦書、そして村長がそれを手渡しながら小声で囁く
村長【本当は駄目なんですけれど、特別ですよー?】
村長はそう言ってにこやかに笑う
G【あ、ありがとうございます!・・・それでは!】
Ghostは半ば逃げるようにその場を後にした
村長【・・・どういう理由でああなったのかは知りませんけど、また今度詳しく話を聞かせてもらいましょう・・・】
村長は家を飛び出していくGhostの背中を静かに見送った
推薦書をもらったGhostは村の上にあるギルド集会所の受付に推薦書を出す
受付嬢【あれ、この推薦書、名前が記載されてないんですけれど・・・?】
G【(しまった、慌てて来たから書くのをすっかり忘れていた・・・)え、いや、これは・・・】
受付嬢【まぁ、あの村長ならやりかねないませんからね・・・
こちらで書いておきますー。名前をお願いしますー】
G【Gho、いや・・・クロノスだ】
受付嬢【クロノス、ですね。記載を確認しました。推薦書を受理します
ハンターとなる前に訓練所にて実地演習を受けていただきます
装備やアイテムは訓練所にて配布されるのでそのままで大丈夫です
それでは早速・・・いってらっしゃいませ!】
G【いきなりだな・・・。わかった、ありがとう】
Ghostは集会所を後にして訓練所へと向かった
ギルド集会所と隣接した場所にある訓練場
数々のハンターの最初の一歩となる場所
G【私はこれで3回目になるのか・・・。流石にこんなに頻繁にハンターをやり直す人なんていないよな・・・】
Ghostの足取りは軽くなかった
けれどその足が止まるようなことはなかった
訓練場に着くと入り口に一人の男性が仁王立ちしていた
教官【君が新しくハンターになりたいという新米だな?
私はここで教官をやっているものだ!
ハンターとは過酷な環境で屈強なモンスターを狩猟する死と隣合わせの生活が常だ!
新米だからといって甘やかすことはしない!
覚悟してもらおう!(フフフ、最近めっきりハンター志願者がこないから厳しくしてやろう・・・!)】
G【分かった、訓練を始めてくれ】
教官【よ、よかろう!これより訓練を開始する!(あれを聞いて全く動じないだと・・・?)】
G【(あの頃と変わらないな・・・)】
教官【まずは最初の訓練!防具の装備と武器の使い方だ!
防具装着の制限時間は2分!武器は好きなものを選べ!
(本当は10分だけど、あたふたしてる新米にサッと助けに入る俺!好感度アップさせるナイスな作戦だ!)】
G【・・・教官殿、終わりました】
教官【む?そうか、終わったか!
だがその程度の速さでは突然モンスターに襲われたときに死んでしまうぞ!
もっと速く付けれるようにするのだ!】
G【・・・制限時間内のはずですが】
教官【何を新米!生意気な、そんなわけ・・・
な、ななな!三十秒だと!我輩でもそんなに速く付けれないというのに!
・・・まぁ良い!それで、武器は何にするのだ!】
予想を遥か上をいくタイムを叩きだされて焦る教官
とりあえず話題を逸らすために武器の選択をさせる
見た目こそは新米だが、中身はベテランハンターなのだから
G【武器はー・・・これにしようかな】
教官【ほう、スラッシュアックスか
変形させることによって臨機応変な動きができる武器だ!
新米に使いこなせるかな?
(え、スラッシュアックスとかあったの?我輩まだ扱ったことないんだけど・・・)】
G【・・・何を仕留めてくれば良いんだ?】
教官【ワハハハ!勇ましいな!
新米にはまず土地に慣れるために村の近くの渓流を自由に散策してくると良い!制限時間は50分だ!
(ギルドから何か言われてた気がするけれど、まぁ良いか)】
G【分かった、ではいってくる・・・】
Ghostは単独で渓流へ向かうことになった
ベースキャンプに到着して支給品を確認すると地図のみだった
G【行ってくると言ったは良いが、長年ここで狩りはしていたからな
今更、散策と言われても特にすることは・・・】
ベースキャンプで昼寝でもして時間を潰そうと思い寝台で寝ようとしたが、異様な気配を感覚的に察知する
Ghostは目を閉じ耳を澄ませて五感の感覚を広げる
クロノスによって強化されたことにより、五感も以前より増して鋭くなっていた
G【森の動物たちが一斉にどこかへと向かっている・・・。いや、これは散っている?】
ある場所から放たれる異常な気配を頼りにGhostはそこへ向かう
G【恐らく、この辺り・・・】
異様な静けさに包まれたその場所に動植物の気配、生命の気配は感じられなかった
その中で青白く発光する巨体が一つ
G【あれは・・・ジンオウガ?本来、霊峰付近に住んでいるはずのモンスターが何故こんな村の近くまで?】
考えること調べることは色々ありそうだが、今そんなことを考えている暇はない
このまま見過ごせば村に被害が及ぶ可能性もある
G【武器と防具は支給品か・・・けれどいくしかない・・・!
まさか訓練所の渓流散策っていうお気楽なクエストが村の存亡に関わるかもしれない緊急クエストに変わるとは・・・】
Ghostは茂みから飛び出すとジンオウガの背後に立つ
ジンオウガは気配を察知してゆっくりと振り返った
G【(ジンオウガと戦うのはいつ以来だろうか・・・とりあえず今は忘れよう。戦いの邪魔になる)】
今は目の前のモンスターに集中することだけを考えた
私は支給されたばかりの武器と防具
分は明らかに悪い
けれど退くことも逃げることもできない
書類が通ったばかりの新米ハンターであることに変わりはないが、これまでに幾度となくモンスターと戦ってきたのも事実だ
不利な状況なんて何度もあった。不利なら不利なりに動けば良い。今の目的はこいつを村に近寄らせないこと、ここで退かせること
先程まで晴れていた空に雲が掛かり始めた
薄暗くなった渓流でジンオウガだけは変わらずに青白く発光している
ジンオウガがGhostの周りを歩きながら隙を伺う
Ghostも同じように周りを歩きながら間合いを保つ
先に動いたのはジンオウガ、伸び上がりながら腕を振り下ろし叩き潰そうと試みる
対するGhost、これをギリギリの間合いで避けスラッシュアックスを斬り上げて反撃を繰り出す
が、これを読んだジンオウガは身体を翻し躱す
躱した反動を使い、次は尻尾にて叩き潰そうとする
斬り上げの反動で若干動けなくなったGhostは尻尾の攻撃をスラッシュアックスの刃でガードする
本来、ガードができる武器ではない
スラッシュアックスは変形機構を備える武器
横から武器に攻撃を受けてしまったら恐らく武器として使い物にはならなくなるだろう
しかし、そんなことを考えている暇はない
生きるか死ぬか、食うか食われるかの野生の戦いにおいて逃げの発想は死に直結する
膨大な経験により蓄積された直感はGhostに攻めと守りのタイミングを的確に教えてくれていた
G【まだ武器の扱いに慣れていないか
使うのは随分と久しぶりだからな・・・】
尻尾の叩きつけを真横に回避してスラッシュアックスを大きく振りかぶりそして振り下ろし斬撃を加える
クロノスによって強化された身体能力は切れ味の悪いスラッシュアックスの攻撃力を補正していた
後ろ足を狙ったはずだったがとっさに前足でガードされた
受け止めきれると判断したのだろうがガードした前足の甲殻は粉々に割れて弾け飛ぶ
ジンオウガは悲鳴を上げ後ろに仰け反った
G【浅いか・・・!】
隙を逃さずにGhostが追撃を入れる
突き出した刃はジンオウガの胸元を捉えた
ギィィン!
刃は胸に当たると共に鈍い音を発し刃は弾かれた
いつもの自分の武器ではないことを改めて思い知る
大きく弾かれたGhost、ジンオウガはすかさず回転し尻尾で薙ぎ払う
G【グッ・・・!】
まともに一撃をもらったGhostは数十メートルほど吹き飛ばされ、大木に叩きつけられる
G【やられたな・・・完全に私の判断ミスだ
ただ身体に支障は全くない、・・・やはり私はもう人ではないのだな】
改めて人を超えてしまった存在なのだと知る
そしてだからこそ自分が喰い止めなければという使命感があった
G【(村には私以外にジンオウガと対峙したことがあるハンターはいないだろう
ならばやはり私がなんとかしなくては・・・)】
Ghostは再び武器を取りジンオウガの前に立つ
ジンオウガは驚いていた
人間は脆い、今までに見た人間は逃げることが多かった
立ち向かってくる人間もいたが、大したこともできずに平伏すことがほとんどだった
しかし、一撃を食らったにも関わらず戦闘を続行しようと再び立ち向かってきたのは目の前にいる人間が初めてだった
しかも見たところダメージを負っている様子もない
恐らく小手調べの攻撃ではあの人間の命には届かない
命を狩るには全力で臨まなければ・・・そうしなければこいつの刃は我が命に届きうる
退けることではなく、狩ることを決意したジンオウガは充電を始める
遠吠えを上げ雷光虫を呼び、力を増幅させる
ジンオウガにジンオウガが空に向かって吠えると共に雷柱が立つ
戦闘の準備を整った。後は全力で狩るのみ
G【そういえば、この武器は変形するんだったか・・・】
カシュンカシュン・・・プシュー
斧だったものは変形し大剣へとその姿を変えていた
全体的に重くなった分、機動力は落ちるが一撃は大きくなる
さらに内蔵されているビンによってその攻撃力は飛躍的に上昇した
G【続きをしようか。ジンオウガ!】
スラッシュアックスを片手に持ちながら走り出すGhost
本来は大剣の形状のまま走ることなど熟練されたハンターでも不可能だが、ハンター以上の身体能力を持つGhostには関係なかった
重さによって加速した攻撃はジンオウガの反応速度を超えた
バカァァン!
ジンオウガの片方の角に当たり、角が粉々に砕け散る
ジンオウガは構わず頭を振り回しGhostを退ける
距離を取らされたGhostは再び間合いに入るために距離を詰める
危険を察知したジンオウガは身体を捻り、尻尾に雷の乗せ、雷光弾を繰り出す
不意を突いたつもりだったのだろうが以前ジンオウガと対峙したことのあるGhostには通用しなかった
G【その攻撃は欠点がある・・・左右から流れてくる弾には弾と弾の間に空間が空いていることだ!】
そう叫ぶと一度目の前転で隙間に入り、タイミングを見て二度目の前転でジンオウガの足元に飛び込んだ
不意を突いたつもりが逆に不意を突かれた形となったジンオウガは、足元への侵入を許してしまったことでそのことを確認する
Ghostは前転した反動を使い下から斬り上げ、頭部を狙う
辛うじて前足を犠牲にして攻撃をガードしたジンオウガ
一瞬でも判断が遅れれば確実に死んでいたであろう場面
そんな状況が前足一つで済むなら安いものだろう
しかし、ジンオウガは力量の差を埋めれないでいた
知識、経験、技術、体力、あらゆる面から弱点を探そうとしたがこれまでの戦闘はそのいずれかの項目も自分より勝っていると直感で感じていた
しかし、野生の戦いにおいて退く逃げるという選択はプライドが許さない
そして負けるわけにはいかない
勝たなければならぬ
ジンオウガは距離を取りGhostを睨む
その時、ジンオウガの頭に声が響く
?【力を欲するか?】
突然聞こえた声に戦闘を忘れて周りを見渡すジンオウガ
Ghost自身も戦闘の最中に周りを見渡すという行動があまりに不可解であり初めてであったため不用意に動けなかった
?【力を欲するのであれば叫べ・・・お前の魂を見せてみろ・・・】
ジンオウガに迷っている暇はなかった
勝つための可能性を上げるにはそれしかなかったからだ
ジンオウガは空に向かって遠吠えをする
遠吠えが終わり、辺りが静まり返る。数秒の後、ジンオウガに声が響く
?【お前の魂、見せてもらった・・・力を与えよう・・・】
ドオオオォォォン!!!
その声が途切れると同時に雷雲が騒ぎ出し、雷鳴と共にジンオウガの体へ雷が落ちた
明らかにジンオウガの許容を越えた電力が無理やりその体に帯電させられていた
何故そうなったのかは知らないが、危険な状態であることを察したGhostはクロノスに連絡を入れる
G【クロノス、ジンオウガと対峙しているのだが従来の個体には有り得ない現象が起きている
何か異常なことが起きている可能性が高い。応援を頼む】
K【ジジジ・・・了解。早急にそちらへ向かう】
G【(早急とは行ったが直ぐに来れるわけではなさそうだ
しばらく持ちこたえないといけないか・・・)】
目線を戻すと目の前には強化されたジンオウガ
溢れ出る電力は留まることができずに周りの磁場を歪めていた
体は真っ白になり、青い雷を纏っている
G【この武器と防具では流石に役不足だな・・・だが今はそうも言ってられない】
とりあえずクロノスが来るまで持ちこたえる
勝つことではなく生き残るための戦い
Ghostは何をされても良いように身構えていた
ジンオウガは溢れ出る暴走した力によって理性を失っていた
残ったのは食う、狩るといった原始的な本能
そしてその本能は目の前の人間に向けられていた
辛うじて記憶が残っていたのか、目の前の人間は殺さなければ後々厄介になるということは認識していた
殺るなら今しかない
ジンオウガは体勢を整えると同時に飛びかかった
電気により筋肉を刺激され活性化している状態からの一撃はGhostのリズムを狂わせ、反応速度を僅かに上回った
直撃は避けたが爪が掠っただけで防具が焦げるほどの威力
まともに貰えば一撃だろうと命はない
しかしこの時、ジンオウガはまだ力を扱い切れていなかった
ただ攻撃のための間合いを詰めようしただけだったのだ
本来なら攻撃とは程遠い、ただの移動
それだけで目の前の標的にとっては攻撃となり威圧している
ならば確実に狙った攻撃ならどうなるのだろうか
不敵な笑みを浮かべるジンオウガ
殺気を感じとったGhostは距離を取り、更に集中力を上げる
何がきても反応できる距離を・・・
ジンオウガが突進をしかける
先程とあまり変わらない突進
リズムは先程ので分かっている
Ghostは突進してくる方向から垂直に回避すると直ぐ様ジンオウガのほうを見る
しかし、そこにジンオウガの姿はなかった
G【・・・!、一体どこへ!?】
左右にはいない・・・
かと言って地中に潜れるわけでもない・・・
だとすれば居る場所は一つしかない
G【・・・上か!】
飛び上がった巨体は体勢を整え終わり、全身に雷を纏って叩きつける準備が完了していた
自分の能力と相手の能力を比較して逃げることができないと判断したGhostは武器を構え、防御の姿勢を取る
G【(最悪、武器が破壊されるかも知れないがこれで守るしかない!)】
ジンオウガが特攻を仕掛ける
両者が衝突した瞬間、行き場を失った雷が周囲を暴れまわり木々を切り裂き、焼き払う
中心地にいるGhostにもその雷が襲いかかっていた
焼ける防具、悲鳴を上げる武器、ただひたすらに正面の敵に立ち向かう狩人
未だに止まない雷撃に武器のほうが遂に限界を超えた
ガシャーン!!
武器の破壊と共に吹き飛ばされるGhost
転がりながらなんとか姿勢は立て直したが至る所が焦げている
武器は使えそうにない
しかし、大量の電力を使わせることには成功した
G【これで少しは・・・】
しかしそれは甘い考えだった
仰向けから体勢を立て直したジンオウガは標的がまだ死んでいないことを確認すると、天に向かって吠えた
暗雲はそれに共鳴するようにジンオウガに向かって雷が振り注ぐ
一瞬にして充電は完了されてしまった
G【やる・・・じゃないか・・・】
Ghostの意識が朦朧としつつある
ジンオウガは雷を従えてゆっくりと歩を進める
動けるわけもなく目の前にジンオウガは立つ
静かに見下ろした後、腕を振り上げ叩きつけた
ズンッ!
…振り下ろした腕は大地を踏みつけただけだった
仕留めるはずだった標的はそこからいなくなっていた
生命の気配を察知したジンオウガは後ろを振り向く
ボロボロなハズの姿であることには変わりない
しかし何か様子が違っていた
K【すまない、遅れた。しばらく休んでいろ】
G【そう・・・させてもらう・・・ガハッ・・・】
K【チェンジマインド:クロノス・・・】
キィン!という音と共に精神がクロノスに移る
K【Ghostは気を失ったか・・・無理もない、生身であれほどの攻撃を受けたのだから・・・
確かに歪みを抱えた個体であると確認した。ミッションを開始する。リードクロニクル・・・!】
白い光に包まれた後、碧緑に見を包んだ姿が現れ、その手にもまた碧緑のスラッシュアックスが握られていた
K【転装完了。ライザー、防具、武器、共に異常無し。戦闘を開始する】
武器を手に走り出すクロノス。Ghostの記憶を引き継いだクロノスは、目の前の生物が普通ではないことを理解していた
それ故に速やかに排除しなければならないことも
相手がこちらの手の内を把握する前に攻撃を重ねておくことを第一と考えていたクロノスは瞬時に間合いを詰め、左から右に抜けるように連撃を入れる
先程までと全く違う動きに反応が遅れたジンオウガは一切の防御も間に合わず連撃をもらう
激痛が走り、思わず転倒するジンオウガ
クロノスはそれを予測していたかのように切り返し背面に斬撃を叩き込む
先程と形成が逆転されたことに憤り、起き上がりながら尻尾を振り回しクロノスに攻撃を加える
しかしその攻撃をクロノスは見切っていた
それはGhostのジンオウガとの戦闘の記憶から読み取ったデータ通りの行動だったからだ
劣勢からの脱出だったはずがさらに劣勢となったジンオウガ
距離を取り、呼吸を整えたかったが現状では無理と判断
腕を振り回し、クロノスに間合いからの撤退を余儀なくさせた
呼吸を整えることができたジンオウガだったが、その時に始めて自身の体の異変に気づいた
腕が重い
いや、体全体が重くなっていた
戦闘による体力の消耗もあるがそれだけでは説明仕切れない倦怠感があった
K【ようやく回ったらしい・・・】
クロノスが小さく呟いた声をジンオウガは聞き逃さなかった
ジンオウガ【(回る?何が・・・?)】
その時気づいた
自分の体、攻撃を受けた場所が紫色に変色していることを
ジンオウガ【(そうか、これは毒。あの刃には毒が仕込まれていたのか
だが、このまま倒れるわけにはいかない・・・!せめて一撃・・・!)】
渾身の力を込めて全身で飛びかかるジンオウガ
しかしその攻撃は虚しく空を裂く
クロノス冷静に懐に刀身を突き刺し言葉を唱える
K【クロニクルバースト・・・!】
ジンオウガが光に包まれ、周囲に文字列が発生する
文字列がジンオウガに流れ込みパラメータが修正されていく
光が消え、そこには元の姿となったジンオウガがいた
そして数秒の後、静かにその巨体は地に伏した
生命の反応はない
あの状態になった時点で既に命は無かったに等しい
暗雲は晴れ、柔らかな月明かりが戦いの終わりを告げていた
K【ミッション完了・・・。アームドリリース・・・】
その言葉と共にクロノスの武装が解除され、元の姿に戻った
K【Ghost、起きているか?】
クロノスはGhostに呼びかける
G【ん、あぁ、起きている。・・・終わったようだな】
K【体を返すぞ。それに色々と教えておかなければならないこともある・・・。チェンジマインド:Ghost】
人格がGhostに移る。G【・・・そういえば、これは渓流散策だったな】
そう言うとGhostはベースキャンプに戻る
支給品ボックスにネコタクチケットはない
G【そうか、これは正式なクエストではなかったな・・・】
Ghostはそのまま歩いて村へと帰った
半刻ほどして村へと帰ると住民たちが詰め寄ってきた
村のハンター【おぉ!無事だったか!訓練所の教官が全然帰ってこねぇって言うもんだから、村総出で探そうか検討していたところだ!
ところでおめぇ何でまたそんなにボロボロになっちまったんだ?】
G【渓流を散策をしていたらジンオウガに遭遇した。村に近かったから応戦した】
村のハンター【ジンオウガだとッ!?この辺りに生息しないモンスターじゃねぇか!
そんな奴と一戦やり合おうなんて命知らずにも程がある!】
村のハンターから厳しい言葉が飛んでくる。危険なことは分かっていた
けれど、見過ごせば村にどれほどの被害が出ていたは想像を絶する
もしかしたら壊滅していたかも知れない
村のハンターの言葉を右から左に流しながら考えごとをしていると村長がやってきた
村長【はいはい、退いてくださいな まずは無事を喜びましょう
そして早急に手当をしましょう 叱咤激励はその後です】
村のハンターは村長に諭されて身を引いた
村長【さぁ、こちらへ】
そう言われ、村長の家へと案内される
村長【装備を脱いでくださいな。私には勝手が分かりませんから・・・】
Ghostは装備を脱いだ
インナーはもはや原型を留めていなかった
村長【本当に女性の体になってしまったのですね・・・Ghostさん?】
突然の核心を突いた言葉に動揺を隠せなかった
急に動いたので体中から痛みが走る
G【痛・・・!い、いや、私はGhostでは・・・ッ!】
長【隠しているようですけど無駄です 嘘をつくときに視線を逸らす癖、出てますよ?】
G【・・・ッ!】
完全にバレていた
いや、ここまで分かっているなら隠すこともできないだろう
Ghostは決意して村長に事情を話した
村長【事情はわかりました・・・とは言え何とも重大な使命を負うことになりましたね
この世界を救わなければならないだなんて・・・】
Ghost【こうなってしまった以上は天命と思うことにしました
それにこれは私が望んだことでもありますから・・・】
村長【そうだとしても、命を投げ出すようなことはお止めください
貴女が死んでしまったら、この世界を救う人はいなくなってしまうのでしょう?
勇む気持ちは分かりますが、どうかご自愛くださいませ】
Ghost【・・・そう、ですね。どんな生命にも命は一つ。大事にしないと、ですね】
Ghostは肩を竦ませる
村長【けれど、結果として村は救われました
そのことには村長としてお礼を申し上げなければなりません
ありがとうございました・・・】
村長は深々と頭を下げた
G【こちらこそありがとうございます
この村の村長が貴女でよかった】
Ghostも頭を下げる
しばらくして村長が頭を上げた
村長【体は丈夫になったみたいですけれど、疲労などはしっかりと蓄積されているはずです
今日はゆっくりと養生してくださいませ】
G【分かりました。ありがとうございます】
Ghostは村長にお礼を言うと自宅へと戻った
帰った途端に急激な睡眠欲に襲われた
Ghostは朦朧としながら寝台へと辿り着き、倒れ込むように寝た
朝方、Ghostは目が覚めた
朝日が眩しかった
ぼーっとしているとクロノスが語りかけてきた
K【起きたか、随分と寝ていたな。】
G【私はどれくらい寝ていたんだ・・・?】
K【そうだな、この世界で言うと3日くらいか】
その言葉にGhostは驚いた
G【3日!?私はそんなに寝ていたのか・・・】
にわかに信じられなかったが、クロノスがそんなことで嘘をつくはずがないと考え、本当のことなのだろうと察する
だとしても3日も寝ていることになるとは
K【そういえば、昨日のことだが何やら誰かが置き手紙を置いていったな そこのテーブルの上にある】
Ghostはテーブルの上にあったメモのようなものを手にとった
それには【村長の家にて預かりもの】とだけ書かれていた
Ghostはすぐに村長の家に向かった
村長の家に着いた
Ghostは村長を呼ぶ
G【村長殿!クロノスです!】
そう言うと村長が奥から出てきた。
村長【お久しぶりですね もう体は良いのですか?】
G【おかげさまで・・・ それで起きましたら手紙がありまして村長の家に預かりものがあると書かれていたのですが・・・】
村長【あー・・・、そのことですか ちょっと待っていてくださいね】
村長は小走りで奥へと走っていった
しばらくすると書簡のようなものを持ってきた
G【村長殿、これは?】
Ghostが問いかける
村長【さて、なんでしょうね?とりあえず読み上げますね】
村長の顔はにこやかだった
村長【ハンター:クロノス 右の者はユクモの村を襲った壊滅の危機から適切かつ迅速に判断し村を救ったことをここに賞する
その多大なる功績は厳正なる審査の末、右の者に上位ハンター試験の資格を与えるものとする ―ギルド本部―
と、いうことなの】
G【え・・・?上位ハンター試験?いや、私はただ渓流を散策していたときにたまたま遭遇したジンオウガをたまたま討伐できただけであって・・・】
村長【でもギルド本部はそう思ってないみたいよ?現にこうして書簡も届いていますし】
G【それはそうですが・・・】
村長【私のギルドの仕組みとかは詳しくは分からないけど、物事が手っ取り早く進んでよかったじゃない
良いほうに考えておきましょう?】
G【それもそうですね・・・遅かれ早かれ上位ハンター試験は受けなければなりません
時期が早まっただけですよね】
村長に促された気はするが、私が寝ている間に何か特殊な事態があったことをGhostは感覚的に察していた
でなければこんなに早く上位ハンター試験の通知書なんてくるはずがない
しかしGhostはあえて何も言わなかった
G【預かっていただきありがとうございました その他に預かり物はありませんでしょうか】
Ghostは問いかける
村長【他には何もないですよ?】
G【分かりました 私はこれで失礼します】
少し冷たいような口調でお礼を言い、村長の家を後にする
自宅に戻るとクロノスが語りかけてきた
K【どういう経緯かは知らないがよかったじゃないか。随分と話が進んだのだろう?】
G【確かにそうなのだが、何処か腑に落ちなくてな】
K【そういうものか?素直に喜んでおけばいいのではないか?】
G【そうだな・・・】
Ghostはそのことについて深く考えることをやめた
K【さて、その試験とやらはいつになるのだ?】
クロノスは問いかけた
G【そういえば何日なんだ?これには書いてないようだ・・・ん?】
書簡にもう一枚の紙があることに気づく
その紙に必要なことは記載されていた
G【今日から数えて丁度一週間後か
。K【(あまり時間がないな・・・)Ghost、君に教えておかなければならないことがいくつかある】
G【何かあったのか?】
K【いや、歪みを感知したわけではない
Ghostに関することだ。先日の戦いで、君は強化されたとは言え生身の体で立ち向かった
そして君自信を強化されたジンオウガに負けた
私は身体能力を強化すれば少しはなんとかなると考えていたが、それでは無理ということが分かった
私は力を開放し、私の力が付与された武器と防具でもって初めてモンスターを討伐することに成功した
つまり、私の力を使えるようにならなければこの先、生残ることはできない
君に私の力を分け与えたときに教えた言葉は忘れてしまったのか?】
G【そういえばそんなのもあったな・・・リード・・・クロなんとかだったか?】
K【リードクロニクルだ・・・!その言葉はああいった奴らと戦う場合必ず唱えなければいけない言葉だ
その重要性は見に染みてわかっただろう?】
G【・・・そうだな 死を覚悟したのは久しぶりだった】
K【あれと同じことを繰り返すようなことがあってはいけない
そのためには私の能力がフルに使えるように訓練をしなければならない
Ghostにはそのための訓練を受けてもらう】
G【訓練をしたりするのであればここでは色々とまずい 場所を移そう】
Ghostは村から少し外れた場所に向かった
G【この辺りで良いか。さて、何をすれば良い?】
K【まずは変身してもらわなければならない・・・リードクロニクルと唱えてくれ】
G【わかった。リードクロニクル!】
Ghostの周りに文字列が浮かび上がる
文字列はGhostの装備を分解し再構成させた
そこには碧緑に鎧に包まれた姿
G【へぇ、案外時間は掛からないんだな・・・】
K【無事に変身はできたようだな
リードクロニクルとはこの世界の歴史を読み取り、その情報を取り込み変身する
今は先日、私が戦った後の履歴が残ってるからその姿となったが基本的にイメージさえあればどんなもにでもなれる】
G【この装備はクロノスがイメージしたものなのか?】
K【このイメージはGhostの家にあった防具を参考にしたものだ
他にイメージになりそうなものはなかったのでな】
G【あの防具には思い入れがあるからな
しばらくはこのままで戦いたいが問題はないか?】
K【特に問題はない
イメージの強さがそのまま力となるのだから、イメージしやすいものであることが一番だ】
G【なるほど。しかしやけに重たく感じるが・・・】
K【次の説明のための手間が少し省けたな
その防具にはこの世界の歴史、つまり情報でもって構成されている
Ghostが感じた重みは歴史の重みといったところか。体力が消耗されることはないが代わりに膨大な精神力を使うことになる
意識を保てるのは5分から10分
それ以上は今のGhostでは難しいかもしれない】
G【歴史の重みか・・・
確かに・・・!動きに問題はない・・・な!むしろ先程より軽いくらい・・・!だ・・・!】
Ghostは言葉を交わしながら体を動かす
紙ののような軽さと刃物のような鋭さが一体となったかのような体術
K【体の調子は良いようだな
だが必要なのは精神力だ
万全のモチベーションで挑まなければ最高のパフォーマンスは得られない
そしてそれは同時に時として死に直結する
これからはGhostに特殊な訓練をしてもらう
訓練といってもそんなに大したことじゃない
その防具をつけて座禅を組み、ただひたすらに頭の中でモンスターと戦うだけだ】
G【頭の中でモンスターと?そんなことをしても意味はないように思うが?】
K【勿論、ただのモンスターではない 私が作り出すモンスターだ
本当は実際に作り出したモンスターと戦うほうが効果的なのだが・・・
生命を作り出すことはこの世界のバランスを崩しかねない
それでは本末転倒となってしまうからな】
G【・・・そういうことなら】
K【なるべく早くしなければならない
私ではGhostの体の疲労度までは分からない
本当はもう限界なのにそれを知らずに能力を使ってしまう可能性がある
それはGhostの命を削るようなものだ
体は強く強化されたが不死身になったわけではない
命は一つであることを忘れないで欲しい】
G【そうか なら、なるべく早くクロノスがどんなに無茶をしても大丈夫なようにきたえないとな!
この領域に達するまでに訓練や実践やらで修行を積んだつもりだったが、さらに上を目指すために修行をすることになるとはな
なんだろうな。楽しくなってきたよ。早速始めようクロノス!】
Ghostは座禅を組み、目を閉じた
K【(少しは臆するかと思ったが思い違いだったようだ 頼もしい限りだ)分かった、データを転送する・・・!存分に戦ってくれ!】
クロノスによるGhostの強化演習が開始された
クロノスは仮設を立てていた
ギルドの動きは明らかにおかしい
上位ハンター試験の資格を与えることに関して、この世界の情報を調べた手順と今回の手順とは全く異なった形をしていたこと
ジンオウガを討伐した際、誰もギルドに使者を送っていなかったのに翌日の朝にはギルドからの使者が村を訪れたこと
不確定な部分が多いため何とも言えない部分は多いが何やらギルドには黒い何かが潜んでいるらしい
だとすればギルドには何らかの罠が仕掛けられているはず・・・
K【何事もなければ良いのだが・・・】
クロノスは空を見上げて呟くとGhostのほうに振り返り
K【様々な意味で君はこの世界にとって必要不可欠な役割を担っているのかもしれないな・・・】
クロノスはGhostという生命体としての潜在能力をこの後に知ることとなる
最終更新:2013年07月11日 09:27