第四章 回想
「えーっと、これが左銃身で、こっちが右銃身で、これが冷却帯、それでこれとこれが左右円筒形弾倉で……」
アスールバスターの部品に油をさし、正常に動作するか点検しながら、彼は過去の事を思い出していた。
……もう、何年前だろうか。
世界中に、異次元へと繋がる穴が空いたのは。
穴の先にある世界は、絵に描いたような異世界もあれば、元の世界とほんのすこしの違いしかないような並行世界じみた世界もあった。
そして、物や人の交流が始まった。
「この小さいのが砲撃用薬室で、こっちのでっかいのが龍撃砲用薬室、んでこれが冷却機構で……」
威迫の分解整備にあたりながら、回想する。
……当時は、それぞれの世界が接触することにより様々なことが起こった。未知の疫病の蔓延、言葉が通じないことによる貿易の不具合、そして日々勃発する紛争。国家の存亡すら決めかねない事態の数々を収束させるため、政府は情報収集を目的とした部隊を結成し、穴の向こう側へと送り込んだ。
「えいっえいっ、ここで、こう!」
徒手格闘の型を確認しながら、声が漏れる。今居る世界では、特定の条件を満たすことにより、素手や特定の武器が赤い光を放ち、殺傷力が上がることが確認されている。その力を最大限に発揮するための型の鍛練は、日課となっていた。
……次元貫通孔(ホール)と呼ばれるその穴をいくつか通った、その地で部隊は散会し、個々で任務にあたることになった。彼がたどり着いたのは、山のようなモンスターが跋扈するこの地。
「てい!てい!たあ!」
かつて習った銃剣術の動きをもとに、槍の穂先を突き出す。槍術を元にした銃剣術の経験があるので、槍の扱いにも暫くしたら慣れるだろう。
……そうして、彼は放浪者(ドリフター)となった。数多の世界を越え、己の意思すら越える、オーバード・ドリフター。
その身の一部に昔馴染みのオリーブ・ドラブを塗装し、名乗る彼の名は……
O.D
斯くして、彼はO.Dとなった。
最終更新:2015年11月11日 00:38