第三回放送 ◆yX/9K6uV4E



この世界には、希望が必要だ。
どんな絶望に囲まれても、それでもなお輝きを失わない、希望が。
その希望に人は魅了される。
どんな絶望にだって、負けない希望が。
希望が、絶望を癒し、絶望から目を逸らす。
そして、絶望を乗り越えて、なお希望は輝く。


なら、その希望を―――








     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇









「ふふっ……あははっ……遂に、見えたっ!」

何で、この人は、千川ちひろはこんなに笑ってるんだろう。
余りにも凄惨な光景でしかないのに。
それなのに、まるで祝福するかのように、歓迎するかのように笑っている。

「『希望』の一端が、何もかも輝いている絶対的な『正しい希望』がっ!」

私はその人の言ってる事がよく解らない。
というより、狂気しか感じられず、怖い。
なんで、私はこんな人と隣でサポートしないといけないんだろう。

「けど、まだ足りない……まだ足りないのよ。何もかも救えるには、まだ……!」

いくら上の指示とはいえ、気分が重い。
出世のチャンスだけれど、うけなきゃよかった。
思わず、ため息をついていしまう。

「……どうしました?」
「い、いえっ」

千川ちひろは私のため息に目ざとく反応し、怪訝な顔を浮かべる。
私は焦って、直ぐ目の前のモニターを見た。

「しっかりしてくださいよ。これは大事な計画なんですから……」
「は、はい」

大事な計画か、人が死ぬ計画が何が大事なのだろう。
上と、千川ちひろが考えてる計画とはなんだろう。
千川ちひろは上の理解者であり、協力者だけど、この人の考えは狂気そのものだ。
こんな計画を行なっているぐらいなのだから、狂気に染まって当然なのだけど。
それにしても、少し異常だ。
まるで、そうでなければ、ならないように。

そうして、モニターを確認しながら、私は一つの変化を見つける。

「……あ、すいません、ちょっといいですか?」
「なんでしょう?」
「雨雲が向かってきているようなんですが、どうしましょう? 通り雨ですみそうですが」
「……放送で伝えればいいかな。今後も注視してください」
「はい」

気がつけば、そろそろ放送の時間だ。
もう直ぐ夜で、そして殺し合いも一日がたつ。
色々なものが生まれ、色々ものが終わった。
正直、今でも気が重いけど、何故だろう。

何故か、何故だか、どんどん魅入られて気がするんです。

もっと、もっと、見たいって。


どうしてでしょう。




「――――それこそ、人が『希望』に惹かれることなんですよ。もしくは、『アイドル』そのものに、貴方は惹かれてるんです」



……っ!?
どうして!?



「口に出てましたよ。まあ、いいでしょう。そういうことなんですよ」



これが、希望に惹かれる?
あの子達が何処までもアイドルで。
だから私も惹かれてるの?



「『愛』……『夢』……『希望』……皆、それぞれの『正しさ』を持っている。何処にでも生まれ、何処までも行く」


ちひろは遠くを見ていて。
まるで、それこそ大切なんだと。



「だから、惹かれる……けどっ!」


彼女は力をこめて、言う。



「まだ、まだ、足りない! 全然足りない! もっと、もっと、絶対的な正しさ、絶対的な希望がなきゃ、ダメなんです!」



やはり、この人は怖い。

壊れてるような人が、言葉を続けて。



「その為には、もっと、もっと希望同士がぶつからなきゃ――」



そう、言いかけた瞬間、ブザーがなりました。
これは、直接ちひろにメッセージが会った時に、流れるブザーで。





「ほら」



彼女は、それを見て、にっこりと、気味が悪い風に笑った。






「こうやって、『希望』は生まれようとするんですよ」




其処に書かれていたのは、力が欲しいと。
向日葵の少女からのメッセージでした。



「だから、私は、いつまでも、『希望』を望むんです」


そうして、放送が、始まる。








     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇










こんばんは!
そろそろ夜になりそうですが、準備はできてますか?
第三回放送の時間になりましたよ!

まず、皆さんに天気予報ですよ!
どうやら雨雲が向かっているようなんです。
正確な時間帯はいえませんが、この時間帯にそろそろ雨になるので、準備してくださいね。
最も、通り雨なので、直ぐやむと思います。

この機会に休むもよし。
この機に乗じて殺しにはしるのもよし。

皆さんの判断にお任せします!
殺し合いはまだ終わらないですから!


希望を持って。
貴方の正しさを信じて。



そうやって、貴方達は、アイドルを、ヒロインを貫き通してくださいね!




それでは、死者の発表を行ないますね。



以上六名。

いいペースだと思いますよ!
ヒロインの方、頑張りますねー。


そして、次は禁止エリアです。

20時にC-2

22時にA-7


よく覚えて置いてくださいね。





さて、これで放送は終わりです。
次の放送で一日が、終わります。

貴方達が持つ。


『愛』



『夢』



『希望』




どれも、皆、素晴らしいぐらい輝いています。


まぶしいくらいに。




その希望を忘れないでくださいね。




貴方達が信じるもの。



そして、その『正しさ』を貫く事が。




なによりも、輝いて見えるんだから。



それこそが、『命』で。




生きる証なんだから。




最期まで、頑張りなさい。







     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








そう。

『夢』も、『愛』も、『希望』も。


何もかも、水によって流されてしまった今。




貴方達の希望が何よりも輝くんですよ。




いつも、奪われてばかりだった。

火に。
瓦礫に。
水に。


何もかも理不尽で。
何もかも哀しくて。



それでも、絶対的な『正しさ』を持つ『希望』があったから。



私は此処まで来れた。




だから、どんな絶望の先でも。



輝く希望が。



今の世界には、必要なんですよ。






その為には、私は何だってやる。
今は花束達に、与えるものの準備をしよう。
この時間帯はまだ、動かなくていいけど。

だって、何よりも輝く花が、試される時間なんだから。





さあ、アイドル達。




貴方達の『正しさ』を、『希望」を。






私に、見せて。





【残り31名】


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最終更新:2013年09月03日 17:51