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  • 鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑧

自分用SSまとめ

鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑧

最終更新:2011年08月09日 19:34

meteor089

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管理者のみ編集可

鈴「あっづー……」セシリア「な、何ですのコレは……」⑧

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450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 00:37:58.75 ID:ghJ8Yr7J0



飛行機の旅というのは、存外退屈なものだ。
ロンドンまで時計の上では約4時間、日本とイギリスの時差は約9時間。時刻を遡りながらのフライトになるのだろうか。
初めて乗るファーストクラスの座席は存外快適だけれど、今は動けない。窓の外の景色をのんびり眺めることにしよう。そうでなければ……

「……ううん……むにゃ……うふふ、一夏さん…………」

肩に頭を預けて眠るセシリアに変な気を起こしたら、そこのエアロックから放り出されてもおかしくない。
なんだかバラの香りが心地よい。困ったことに。
最近鈴も近付くと同じにおいがするものだから、時々鈴が綺麗に見えるなぁなんて思っていると。

「一夏さん!」

「はいぃ!!」

「うふふ、うふふふふ……すぅ……すぅ」

(何だ……寝言かよ今の……)

絶妙のタイミングでの寝言にほっと一息つきながら、
そして背後の座席で寝ている筈の姉の気配に殺気すら感じながら、一夏は肘掛に頬杖をつく。

事の始まりは、よりにもよって昼間まで放置された独房生活の後だった。



451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 00:54:01.06 ID:ghJ8Yr7J0


――――――――――


部屋、正確には千冬姉、織斑先生の部屋に同居している一夏がシャワーを浴びていると、外から千冬の声がした。


「……聞こえるか?」

「千冬姉?聞こえてるけど……あ、いや、織斑先生」

「いや、いい……今は職務時間外だ」

普段と違う声音に、一夏は疑問を感じる。何かあったのだろうか……
微かな心配と、不安。

「……一夏。お前はアレだ……何だ…………どう思っている」

「……千冬姉……いや……あの……お姉さま?…………何を!?」

「うるさい!」

「ええっ!?」

意味がわからないから問い返したら怒られた、本当にわけがわからない。

(ただなんとなく、何の事を言っているのかは……察しが着く。姉弟だからな)

「…………好きなんじゃないかな?多分」

「多分とは何だ貴様、それでも男か!?」

風呂場のドアを思い切り開けて千冬が怒鳴る。姉とはいえあまりの仕打ちに、大事なところだけは何とか隠す一夏。

「ちょっ!千冬姉!流石にそれはない!ない!!」

「ふん、お前のなんぞ見慣れたものだ。そんな小さな事はどうでもいい」

姉の冷静な言葉が嫌に突き刺さる、そりゃいくらなんでも同年代と比べたことは無いけれど、実姉に小さな事呼ばわりされるのは結構ショックが大きかった。

「……なんだ、気にしていたのか。すまん」

「そこで誤らないで!?リアルに傷つくから!!」

「いや、そんな事無いとは姉の口からは言い難いことを察しろ?」

「しらねぇよ!!いいから閉めてくれよ!!」

「ふむ、良かろう」

パタンとおとなしく戸を閉める千冬。一呼吸置いて、本題を口にしてきた。

「明日からイギリスに行くぞ、ついてこい」

むしろ、今までの話との脈絡も何も無く、決定事項だけを宣告された。



452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 01:06:24.87 ID:ghJ8Yr7J0


――――――――――

「…………やっぱり無茶苦茶だよな」

溜息と共に呟く。どうでもいいのだがファーストクラスというだけあって、客室は広い。
しかも他の客が一人もファーストクラスに乗っていない。

一夏、セシリア、千冬の三人だけだ。
先程から多分寝ているのは間違いないのだけれど、びしびしと威圧感を感じる気配を発している姉など、肘掛を取っ払って三席を丸ごと占領して完全に横になっている。

(俺は知っている。サービスドリンクだからってシャンパンを飲みまくっていたことを……)

おかげで要らぬ殺気をひしひしと感じ、眠ってしまうことも出来ない。
それにしても珍しいなと一夏は思った。いくら何でも、先日の3on3後は原因が自分にあるから別として、厳格なほうで、規律を重んじる姉が、連休の旅行のようなものとはいえ、仮にも生徒の前で酒を飲み、眠るなど普段の千冬から考えればありえないことだ。

ちらりと隣を見れば、他に席は十分にあるのに、わざわざ自分の隣の席へ、肘掛まで取っ払い、二人掛けにして当然のように眠っている同級生、今回の目的地であるイギリスの代表候補生セシリア・オルコットを見る。
改めて言うまでも無いことだけれど、細い眉も、伏せられた睫も、此方の肩に頭を預けているから、片腕が隠れてしまうほど長い髪と同じ当然金色で、肌は比喩抜きに白く。唇だけが仄かに色付いているのが余計に際立つ。一言で言うなら可愛い。美人の部類だ。

あの3on3以来、今までなんと無しに眼が行くと思っていたものが、ひょっとしたらひょっとすると自覚してから、あまり長く見ていられなくなってしまった。
本当は昨日の日曜日あたりにでも、実家に帰り、五反田食堂の悪友に少し相談でもしてみるつもりだったのだが、残念な事に昨日は24時間用具入れの中で過ごした為、相談も出来ないままこうして飛行機に乗っている。
そもそも昨日の事は更に先日、セシリアのお願いを聞いたが為にそうなったわけで、自分に非は無い。いや、頼まれたからって実行したのは自分だけれど。

(やっぱチラ見安定だな)

それが、ムッツリスケベの代表的行動であることに、一夏はまだ気付いていなかった。



453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/05(火) 01:16:25.47 ID:ghJ8Yr7J0

――――


(一夏さん……見てらっしゃいますの?先程からチラチラと……ま、まるで、いけないものを見られているようですわ……ぁぁ……)

薄目を開け早鐘を打つ鼓動を胸に感じながら、セシリアは眠ったふりをし続ける。
自分のしたお願いで、独房に放り込まれ千冬の地獄の折檻を受けた一夏は、きっと自分に近付くのも怖いに違いない……。
こうして見られるのだって、結局は一夏の中の欲が具現化したものに過ぎないんだ。

見知らぬ男たちにどこまでされたのかは自分にもわからない、無事に助かったのだと、昨夜は喜んだものの、冷静になればなるほど、本当に無事だったのか、疑念が沸き続ける。
少なくとも、膝抱っこバージンは奪われてしまった。これは大変な事だ、淑女として有るまじき事だ。出発前に鈴に泣きながら言ったら物凄い冷めた眼で睨まれてしまったが、きっと重大なことだ。
穢れてしまった、穢されてしまった。

でも、一夏が見てくれる限り、それも浄化されていく気がする。
この人が好きなんだと、改めて自覚する。だから、辛い……。

一瞬、鈴の寂しそうな顔が過ぎる……もっと辛い……。

(……鈴さん…………)

今頃鈴はどうしているのだろう。
時折、熱そうなふりをして胸元のボタンを外してみたりしつつ、チラ見の喜びを噛み締める。
その喜びは淑女として大いに間違っていることを、セシリアはまだ気付いていなかった。



460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 01:09:01.83 ID:kR1NWqSe0


チラ見した時に入ってきたその景色は、息を呑むほど一夏にとっては驚愕の光景だった。
むかしこんな事を聞いて来た友がいる。

『一夏、おまえおっぱいは好きか?』

愚問だ。

『どっちでもいいよ。ただ、原則的におっぱいが嫌いな男子はいないだろ』

嘘だ。本当は大好きだ。風呂上りの箒と遭遇したときはやばかった。アレは本当にやばかった。箒のブラを一本釣りしたときもやばかった。幼馴染の成長に内心大興奮した。
シャルが当ててきたときはそのまま理性の向こう側へ離陸しそうだった。

おっぱい、大好きです。

チラ見どころか、凝視する。ブラウスのボタンを一つ一つ、ゆっくり外していくその指の動きを。

(あ、暑いのか?セシリア……す、すごい寝相だな……ん?)

寝相にしては、ずいぶん正確にボタンを外していないだろうか……心なしか肩にかかる重さも弱くなっている、これは…

「せ、セシリア…………起きてるよな?」

流石にそう露骨に動かれると、起きてる事は嫌でも判るのか、それとも、確認なのか。一夏の声が聞こえて、セシリアはぎくりと体を一瞬強張らせる。
反応する事が実に起きてると回答しているようなものだけれど、さも『今起きましたわ!』と言わんばかりの仕草でもそりと寄りかかった体を離し、ぐっと背筋を伸ばすしぐさで欠伸をかみ殺す演技。

「――――ぁふ、一夏さんはまだ起きていましたの?」


461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 01:10:21.07 ID:kR1NWqSe0

現在時刻は23:15。離陸したのは21時前だったから、もう2時間くらいになる。
尚、この旅客機と座席チケットは英国の政府が用意してくれた。
完全な専用機では無いけれど、英国の政府関係者と、今回はIS学園の関係者や倉持技研の技術者が乗っているらしい。
フランスとドイツ、同じ欧州の強豪国を破っての3on3勝利はイギリスでもちょっとした話題になっているらしく、
ブルー・ティアーズの修理と帰省の日程の中にはあちらで取材を受ける予定も組まれているらしい。
一夏も先日箒と二人でモデルの真似事のようなことはしたし、鈴やセシリアがそういった仕事もしているとは聞いてはいたが、海外でとなると随分一気に話が大きくなった気もする。
とはいってもセシリアにとっては地元での話だから一夏のそれと大して際は無い。むしろ国家代表候補生でもないのにインタビューを受ける一夏と箒の方がよっぽどすごいのだが。

「ああ、あまり時間も掛からないみたいだしな、確か……ロンドン着が01時05分だから半分ってとこか」

一夏がチケットを取り出して着時刻を確認して笑いながらそう答えるが、一夏の言葉を聞いた直後から、セシリアは無表情になって無言で一夏をじっと見つめる。かるく目のハイライトが消えているような、錯覚だろうか?一夏が首を傾げる。

「一夏さん……イギリスと日本の時差はおよそ9時間になりますわ」

「なんだよ?時差くらい知ってるよ。でもそうか、今はサマータイムってやつなのか……じゃあ今は一時間を英語で言うと、ワンサマータイム、俺時間だな」

突然時差の話を始め、眉間に手を添えるセシリアを、一夏は軽く笑いながらそんな風に返す。


(――――……おかしい、今のは爆笑してもいいところなんだぜ!?セシリア!ワン、サマータイム、ワンサマー、ひと夏、一夏、俺。俺時間……完璧すぎる)、


(……どうしたんだ?セシリアが無表情になった、また目のハイライトが消えてる、俺知ってるぜ、それレイプ目って言うんだろ?でもどっちかといえば怖いよな。)


ちょっとしたドヤ顔でセシリアの反応を待つ一夏に、深い深い溜息の後、意を決したようにセシリアは笑いながら、片手を口に添え。やだもう一夏さんったら♪の仕草でゆっくりと、ハッキリと言う。

「…………う、うふふふっ……一夏さんったら♪ロンドンまでの 所 要 時 間 は、およそ 12 時 間 ほどでしてよ♪冗談がお上手ですのね」

「………えッ!?」

『冗談で言ってるんですのよね?』と問う事で『あたりまえじゃないかHAHAHA』と返すチャンスを与え、そんなキャッキャウフフな会話を楽しみたいという願望もあったが、彼のプライドを傷つけまいとしたセシリアの努力は、どう見ても本気で驚いている一夏のリアクションで無駄に終わった。

「……」


「……」


セシリアは笑顔のまま固まり、一夏は驚いた恰好のまま固まっている。
嫌な沈黙だ、ファーストクラスの居心地のいい空間が何とも言えない空間と化していた。



「ははっ、またまたぁ!セシリアは冗談がうまいな、一瞬本気で信じそうになったぜ!」



462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 01:17:15.40 ID:kR1NWqSe0


「この! エ キ サ イ テ ィ ン グ 大 馬 鹿 者 が!!!!」

空気に耐えきれなかったのか、マジで言ってるのか、笑いながらそう答える一夏の頭が、後ろの座席から伸びてきた腕に物凄い力で窓に叩き付けられた。
そのあまりの衝撃に一瞬機体が揺れる程の一撃だった。

「…………織斑ァ……いや、一夏ァ……発着時間の差に時差を足してみろ……」

窓は割れてはいないけれど、叩きつけたまま一夏の頭をがっしりとアイアンクローで掴む千冬の指に力が籠る。この人リンゴどころかヤシの実素手で潰すんだぜ!と言われても信じられそうだった。万力はまだ優しい、対方向からしか力がかからないからだ。
アイアンクローは痛い。辛い。

「GYAAAAAA!!!!」

「答えられないか?ンー?20時55分発01時05分着、およそでみれば25ひく21。で?4だな?それに時差を足したらどうなった?ンン??」

「割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる割れる!!!!」

「13だな?実際の所要時間にだいぶ近くなったな?グリニッジ子午線に向かう時は足せ、逆は引き算だ、正確とは程遠いが大体の所要時間と覚えておけ。また、その誤差は両地点の緯度、経度などから算出される純粋な距離が大きくなるほど大きい。一般常識だ。貴様の馬鹿さ加減に流石の温厚な私も本気で呆れたぞ」

「せ、先生!それ以上は一夏さんが死んでしまいますわ!?」

セシリアが惨劇を止めようと一夏を締めあげている千冬の腕にすがりつく。
…………けれど。

「…………オルコットォ……貴様はなぜそんなに胸元を肌蹴ている?」

「はっ!」

千冬の目がセシリアを見据える。何事かと様子を見に来た乗務員が思わずヒッ!と声を上げてしまう程の鬼気迫る威圧感。

「ほほう、確かに今は非番扱いだ、教師の前で淫行を期待するなと言った言葉は無効かもしれんな……では言いなおそう……姉の目の前で淫行未遂か貴様らァ……ンー?」

「いえっ!こ、これは、眠っていたら暑くて!つい!!」

「…………そうか」

ふっと笑みを浮かべる千冬を見て、セシリアの心が一気に穏やかさを取り戻す、助かった、助かった、生きていられる!

「ところでオルコット」

「はい!」


「どれくらい期待していた?」

「うふふ……ちょっとだけ、ですわ♪ ―――――――― っは!!」


致命的なミスだった。



463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/06(水) 02:45:58.36 ID:kR1NWqSe0


―――――― 一方その頃、日本


「何だと!?付き添いだと!?」

セシリアのベッドの上でジュースを飲みながらでラウラが教えてくれた内容は、本来なら即刻一夏のところへ殴り込みに行く内容だけれど、付き添いでいないとなれば、今頃は機中だろう。道理で今日の夕方見かけたときにはバタバタと慌しかったわけだ。

「な、なんで、どうして一夏がセシリアの付き添いでイギリスなのに私達は日本で留守番なのだ!?こういうときはセオリーとして私達も着いて行って、セシリアがどーしてこーなりますのーって展開だろう常識的に考えて!!」

「そうは言っても、もう行ってしまった以上は……我々に出来るのは、無事を願うことだけだ……」

「しかし……!」

箒は焦る。セシリアは今回実家にも寄ると言う。
一夏が一緒に行くかは知らなかったが、付き添いということはきっとそうなのだろう。

「これではまるで……まるで……」

「……アンタたちさー……」

ラウラと箒の会話を聞いていた鈴は、頬杖を着いたまま会話に割り込む。

「何がそんなに心配なわけ?」

「お前はどうしてそんなに落ち着いていられるんだ!鈴!」

「落ち着きなさいって、箒……今回の事ってセシリアも当日まで知らなかったのよ?空港まで見送りに行ったらカート引っ張って付き添いって現れたときはアタシもセシリアもそりゃぶったまげたもんよ」

「確かに私だって今ラウラに聞いたばかりだが……セシリアも知らなかったというのか!?」

「そ、セシリアはまったく準備をしていない。それに"あんな状態"で変なこと出来るわけ無いじゃん」

あんな状態とは、つい昨日のお仕置きという名の見せしめにされた事のこと、
あの状態でGOが出せるほどセシリアも暴走はしない筈だ。きっと、たぶん。

「しかし鈴!私は普段からあんな状態だぞ?」

ラウラがさらりと爆弾発言をし、部屋の中に沈黙が走る。
皆のリアクションの不思議そうに首を傾げるラウラは寝間着の着ぐるみをいそいそと脱ぎ始めた。

「見るか?」

「いや!ラウラ!いい、見せんでいいッ!!」

「……と、とにかく……何より、一夏だけじゃなくて……千冬さんも一緒よ?」

「……」

「……」

再び静寂。とっくに豪華なベッドに気持ちよさそうに眠ってしまったシャルの寝息だけが微かに聞こえる。

「なら平気だな」

「教官の姿も見えないと思ったら、そうかそうか」

箒もラウラも途端に穏やかな表情になる。
むしろ今心配なのは、強引な色仕掛けに走ったセシリアが無事かどうかの心配だけだ。



―――― 機中

「GYAAAAAAAAA…………」

「NOOOOOOOOOO……deathわ……」

高校生二人が頭を掴まれて吊り上げられる。

「少しは眼をつぶろうと気を利かせてやれば貴様ら……限度を知れ!限度を!!このまま到着まで仲良く寝ているがいいッ!!」


みしり、嫌な音がして、二人の体がダラリと弛緩した。


――――




468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:25:43.94 ID:J4gNwXVv0


――――



雲海を見下ろして、飛行機はイギリス首都ロンドンの西部、英国空軍のノーソルト空軍基地へと向かう。
あと4時間ほどもすれば目的地だろう。出発してからこれまで、窓の外は常に夜だ。当然といえば当然なのだが、こうも長く日を見ていないと、太陽が恋しくなる。
うすく鏡のように自身の姿を映す窓越しに見える雲の上の空は、何にも遮られない星空を見せてくれる。千冬はこの景色は好きだった。

「初めてISで飛んだときだったか、あれは……」

懐かしさに眼を細め、小さく笑っていると、寝かせて、ブランケットをかけておいた生徒の一人が眼を覚ましたようで、ブランケットがもぞもぞと動き、やがて金色の髪と青い眼をした少女が顔を出す。

「――っぷぁ……し、死ぬかと思いましたわ……」

「殺すか馬鹿者」

「お、織斑先生……!?  ずっと……起きていらしたんですか?」

アレからずっと起きていたのかと眉をハの字にセシリアが問うのを聞いて、千冬は肩を揺らしてクツクツと喉を鳴らした笑いを浮かべ、パチンと指を鳴らして客室乗務員にシャンパンとサイダーを頼む。

「別に畏まらんでいい。どこかの色狂いのおかげでな、おちおち眠れもせんよ」

「……も、申し訳ございません。面目ございませんわ……」

しゅんとなって謝るセシリアを見て、千冬の笑みは更に深くなる。



469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:36:15.04 ID:J4gNwXVv0


「いい、気にするな……まあ、そんなに気になるならオルコット……こっちへ来て酌の相手をしろ」

「は、はい……って、酌!?お、お酒ですの!?」

離陸した後から何か頼んでは飲んでいるのは気付いていたが、まさか酒とは思っていなかったのか、セシリアは大きな驚きの声をあげる。

「静かにしろ、一夏が起きる。それにしても、なんだ?私が酒で驚くか?……っくっくっく、お前も気付いていると思っていたぞ?」

「ぁ……っ」

一夏はまだ寝ているのだから起こしてはいけない、慌てて声を潜め、座席をするりと抜けると、早速とちびちびやっている千冬の隣へ移動する。

「……も、とは、一夏さんは気付いて居られたんですのね。さすが、ご姉弟です」

「単に、生活習慣から行動パターンまでお互いに知っているというだけだ。悪いところもな。ほら、お前も飲むといい」

ずいと千冬は、運ばれてきたグラスの一つをセシリアに差し出す。

「……えっ?い、いえ……その……よろしいのですか?」

「ぁん?別にいけないとは言っていないだろう。飲みたくないのならば無理にとは言わないが」

「いいえ!い、いただきます……って、先生……これ……サイダーではないですわ??」

意を決してぐいとグラスのものを飲んだセシリアは、思っていたものと違うと気付いて、千冬に向けて首を傾げる。

「当たり前だ、未成年に飲ますか馬鹿者……なんだ、酒のほうが飲みたいなどとは言うまいな?」

にやりと笑ったまま、窓から顔を離してセシリアの顔に近付け、からかう様に問う。
別に千冬自身、未成年のうちに酒をちょっと飲んだことくらいはあったし、ましてや相手はイギリス人。

イギリスでは未成年というくくりではなく、18歳になれば堂々と酒を嗜む事が出来る。
それだけでなく、家で食事中に大人と一緒にビール、サイダー、ワインを飲む事は5歳以上であれば良いとされている。
16歳、丁度セシリアの年齢であれば、パブでも大人と一緒に食事中ならビール、サイダー、ワインを嗜むことも出来るようになる歳だ。

ましてや、セシリアは会食の席やパーティへの出席も多い貴族の生まれ、当然のようにアルコールは経験済み。
それを知っている上での、千冬の悪戯だった。

サイダーといえば甘いノンアルコール炭酸飲料を想像しがちだが、イギリスとフランスではサイダーといえばリンゴ酒の名称。フランス語のシードルと言えば響きが違う為日本人でもリンゴ酒であることは判るが、日本では戦後炭酸飲料としてのサイダーが爆発的に普及している為、第二次世界大戦後以降はサイダーといえばそれをさす単語となってしまった。
イギリスでは前述の通り、サイダーは子供でも飲めるお酒として親しまれている。

「サイダー、そ、そっちのサイダーですのね……もう」

「はっはっはっは、怒るな怒るな。なんだ、お前さては結構飲むのか?」

イギリスのサイダーは、発泡性のあるリンゴ酒、実はフランスのシードルは発泡性がないもののほうが多い。
日本ではリンゴ酒は発泡性のものが売れており、ほぼ全てシードルと呼ばれている為、シードル=発泡性のリンゴ酒なんて認識の人もいる。

「そ、それは……私もオルコット家の一人娘として、嗜む程度には」

「嗜む程度だと?ふん、そういう事にしておいてやる」



470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:38:29.68 ID:J4gNwXVv0


そして千冬は、ぱちんと指を鳴らして客室乗務員を呼ぶと、流暢な英語でリンゴ酒のほうのサイダーを注文する。
甘く、発泡性のある飲み物であるサイダーは、セシリアにとって初めて飲んだお酒であり、実は好物でもあった。

「せ、先生……よろしいので……すか?」

「何、今は非番だ、先生はやめろ。もう日本国内ですらない。それに少々嬉しくてな……。ただし!寮では飲むなよ?」

何が嬉しいのか、千冬は問われないように最後に付け足す。
そんな気恥かしい事聞かれてはたまらない、相手は弟と同い年の小娘なのだから。

「の、飲みませんわ!」

実はセシリアは入学前、寮に入っても食堂でなら、先生もいるしいいのではないかと、お気に入りの銘柄のサイダーを持ち込もうとした事があった。
勿論入寮前に全てイギリスに送り返されたが。

千冬はやってきたグラスをセシリアに渡し、シャンパンのグラスを掲げる。

「では、いただきますわ……その……千……千冬……さん」

先生と呼ばなければ何と呼べと言うのか、千冬の意図はわからないけれど、
ぶっちゃけお義姉様と呼びたいくらいだが流石にそれを口走ると危険な気がして、精一杯の願いを込め、
千冬さん、と、呼ぶ。

「ああ……セシリア。乾杯だ」

それを受ける千冬の表情は、一瞬寂しそうなものに見えて、セシリアは戸惑うけれど、
すぐにその表情は満足げな物にかわって、オルコットではなくセシリアと名前を口にし、乾杯と言葉にした時にはとても優しい笑顔だった。


「乾杯。でも何に乾杯しますの?」


「目の前にいる馬鹿な生徒にでもしておくさ」


「では、わたくしも一夏さんの………………お姉様に」


二つのグラスが、小気味のいい音を周囲に響かせた。




471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:51:36.47 ID:J4gNwXVv0


――――――

ノーソルト空軍基地はロンドンの西の端に位置する英国軍の基地で、現在は英国のIS関連の拠点の一つとなっている。
セシリアはIS学園のいつもの制服に着替え、一夏や千冬とは一旦別れ、メディアの前に降りてそのままホテルに向かう段取りになっている。

流石に現在どこの国にも所属していない唯一の男性IS操縦者である一夏を堂々とその付き添いとして出すのは国際問題に発展する。
特に先日の3on3では、国家所属無しの二人が一応のチームリーダーとされていたが、実質英中vs仏独の4国家の戦闘ともいえた。
その結果、コンビネーションと数多くの偶然もあったろうけれど、2対0で英中の勝利となった。

敗北した仏独としては次のモンド・グロッソは勿論のこと、その他の面でも英中二国にはより負けたくない。
その状況でまたイギリスが欧州を刺激するような事があれば……それは戦争にすらなりかねない。

「では一夏さん、千冬さん、また後ほど」

「うむ、セシリア、堂々と胸を張って行って来い」

「はい!」

千冬と一夏に見送られ、セシリアは昇降タラップの方へと移動する。
外でこの深夜と言うのに待機していた報道の焚くフラッシュが大量に瞬いて、その中を美しい金髪をなびかせ、セシリアが悠然と歩く。窓からその光景を見る一夏には、まるでセシリアが別の世界の人間の様な気がして、少しだけ、心がさざめいた。

「立派なものだな、セシリアは……それに比べてお前と着たら……」

隣で千冬が口元に笑みを浮かべてその姿を見ている。
何でか判らないけれど、それもほんの少し一夏に些細な影を落とす。

「……あぁ…………」

「ふん、浮かない顔をしおって……セシリアが他の男に愛想を振りまくのは嫌か?」

「な、違ッ……!第一俺とセシリアはそんなんじゃないし」

千冬の言葉に、一夏は慌てて否定する。その否定が、完全否定で無い事は千冬には手に取るように分かる。
これは行く前と全く同じだ、何も進展していないし、そんなんじゃないと言い切れる踏ん切りもついていない。

「……貴様、さっきまであれだけの時間二人きりにしてやったというのに…………」

「二人っきりッて!?千冬姉ずっといたよね!?むしろ俺はほとんど寝てたんだけど!?」

今回の付き添い、千冬は正式に付き添いとして、学園の仕事があってイギリスに訪れている。
それに一夏が突然連れてこられたのは勿論理由がある。
一つは、千冬が付き添いに行っている間、篠ノ之、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識姉妹、これらの一夏に対する暴走を止めるのが山田だけになってしまう。むしろアレも暴走しかねない。その予防としての教師としての理由。
もう一つは、姉として、現時点で最もオススメ物件であるところのセシリア・オルコットと二人で過ごさせ、仲を進展させたいという理由。なんならキメてしまえるものならそれでも構わない。日本残留組の思惑と違い、今回は千冬が危険な起爆剤と言う状況だった。

そんな好条件の結果としては、初日からいきなりアクセル全開でトバシ過ぎなセシリアといつも以上にいいところでズレる弟に千冬はアイアンクローを決め、セシリアとの仲を進展させたのはむしろ一緒に飲んだ自分という事になってしまった。



472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 00:57:55.14 ID:J4gNwXVv0


――――――

ノーソルト空軍基地はロンドンの西の端に位置する英国軍の基地で、現在は英国のIS関連の拠点の一つとなっている。
セシリアはIS学園のいつもの制服に着替え、一夏や千冬とは一旦別れ、メディアの前に降りてそのままホテルに向かう段取りになっている。

流石に現在どこの国にも所属していない唯一の男性IS操縦者である一夏を堂々とその付き添いとして出すのは国際問題に発展する。
特に先日の3on3では、国家所属無しの二人が一応のチームリーダーとされていたが、実質英中vs仏独の4国家の戦闘ともいえた。
その結果、コンビネーションと数多くの偶然もあったろうけれど、2対0で英中の勝利となった。

敗北した仏独としては次のモンド・グロッソは勿論のこと、その他の面でも英中二国にはより負けたくない。
その状況でまたイギリスが欧州を刺激するような事があれば……それは戦争にすらなりかねない。

「では一夏さん、千冬さん、また後ほど」

「うむ、セシリア、堂々と胸を張って行って来い」

「はい!」

千冬と一夏に見送られ、セシリアは昇降タラップの方へと移動する。
外でこの深夜と言うのに待機していた報道の焚くフラッシュが大量に瞬いて、その中を美しい金髪をなびかせ、セシリアが悠然と歩く。窓からその光景を見る一夏には、まるでセシリアが別の世界の人間の様な気がして、少しだけ、心がさざめいた。

「立派なものだな、セシリアは……それに比べてお前と着たら……」

隣で千冬が口元に笑みを浮かべてその姿を見ている。
何でか判らないけれど、それもほんの少し一夏に些細な影を落とす。

「……あぁ…………」

「ふん、浮かない顔をしおって……セシリアが他の男に愛想を振りまくのは嫌か?」

「な、違ッ……!第一俺とセシリアはそんなんじゃないし」

千冬の言葉に、一夏は慌てて否定する。その否定が、完全否定で無い事は千冬には手に取るように分かる。
これは行く前と全く同じだ、何も進展していないし、そんなんじゃないと言い切れる踏ん切りもついていない。

「……貴様、さっきまであれだけの時間二人きりにしてやったというのに…………」

「二人っきりッて!?千冬姉ずっといたよね!?むしろ俺はほとんど寝てたんだけど!?」

今回の付き添い、千冬は正式に付き添いとして、学園の仕事があってイギリスに訪れている。
それに一夏が突然連れてこられたのは勿論理由がある。
一つは、千冬が付き添いに行っている間、篠ノ之、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識姉妹、これらの一夏に対する暴走を止めるのが山田だけになってしまう。むしろアレも暴走しかねない。その予防としての教師としての理由。
もう一つは、姉として、現時点で最もオススメ物件であるところのセシリア・オルコットと二人で過ごさせ、仲を進展させたいという理由。なんならキメてしまえるものならそれでも構わない。日本残留組の思惑と違い、今回は千冬が危険な起爆剤と言う状況だった。

そんな好条件の結果としては、初日からいきなりアクセル全開でトバシ過ぎなセシリアといつも以上にいいところでズレる弟に千冬はアイアンクローを決め、セシリアとの仲を進展させたのはむしろ一緒に飲んだ自分という事になってしまった。



475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:14:05.79 ID:J4gNwXVv0



「……ハァ……全くお前達はどうしてこう……では、お前とセシリアはどんなのだというのだ、話してみろ」

「い、いや!そこは、話してみろって言われたって……ただ千冬姉、セシリアの事セシリアって呼ぶようになったんだなって……それが気になって」

千冬が珍しく目を丸くして一夏を見ている。まじまじと、気恥かしそうにそう言う一夏の目を覗き込み、それから声を上げて笑った。

「なんだお前!それで?私がセシリアに取られて寂しいとか、そう言う事か?あははは、ははははは」

こんなに声を上げて笑うのはいつ以来だろう。
弟というものがシスコンになるのは当たり前だと思っているし、実際にうちの弟は重症だ。
小さなころからずっと後ろをついてきたし、自ら姉の為にと料理の腕を磨き、家事もこなす。
自慢の弟だ、どこに出しても恥ずかしくはない、まだまだ出す気もないが。

(私はブラコンでは無い。一夏がシスコンすぎるのだ)

「まったくバカ者め、心配せんでも未来永劫私の弟はお前一人だ。さっさとホテルに行くぞ。たまにはマッサージさせてやろう」

「……は?何言ってるんだよ千冬姉、逆だよ……セシリアも千冬さんとか呼んでるし、俺が寝てる間にセシリアと何があったんだよ……!?」

「…………ほぅ、心配なのはセシリアの方か」」

「…………い、いや……今のは……ちょっとした言葉のあやと言うか、も、もちろん千冬姉の事だって心配してたんだぜ?」

真っ青になって否定する一夏に、千冬は冷たい視線を投げる。

「嘘なら殴る。が、今なら許してやるかもしれ「すいませんでしたッ!!!千冬姉のことは全く心配してませんでしたーッ!」

ゴン、と重い音が響いて、一夏は再び意識を手放した。



480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/07(木) 01:34:15.79 ID:J4gNwXVv0


数十分後、一夏を荷物とまとめてカートで引き摺る千冬が入国手続きを終え、
今夜の宿泊先である外見からして立派なホテルに到着した、千冬の給与はかなり高い、何しろ元世界一だ。
その給与にして丸一月分を一日でとる部屋、いわばスイート。

さらさらと署名して、意識のない一夏をそこに放り込むのは実にイージーなミッションだった。

「あとは、セシリアが帰るのを待つばかりか……ふっふっふ……フゥーハハハハハ!!!」



486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 00:58:12.26 ID:zM2r5eXa0


「……ふう、深夜だと言うのに皆様お元気ですこと」


白いリムジンの座席で、歓迎の嵐を抜けて一息吐きつつ呟く。
こういう歓迎ムードは決して嫌いではないけれど、実に12時間ぶりに降りた地上ではやはり疲れもたまる。
出来る事なら、早く実家に帰って寛ぎたい所だが今回はそうもいかない。

ブルー・ティアーズは無事だろうか。
強烈な体当たりを受けてブルーティアーズは見た目以上に深刻なダメージを負っていた。
満足に飛行もできない状態になっていたのに、その状態でシャルロット、ラウラとの激戦を繰り広げたパートナー。
深刻なダメージを負ったまま無理を重ねた事で後遺症のように障害が残ってしまう事もある。
体当たりをしたのが一夏というのも、無理をさせたのも自分の為複雑な気分だが、心配は当然だ。

「お嬢様」

チェルシーの声が目的地への到着を教え、車が停まり、ドアが外からゆっくりと開かれる。
するりと開けられたドアから降車しながら、セシリアは先に下りて控えている専属メイドで幼馴染のチェルシーに笑いかける。

「オルコットの家には明日の夕方ごろに戻ります。迎えはそのようにお願いしますわ」

「かしこまりました……ではお荷物は私どもが織斑千冬様に確認をしてお部屋にお運びいたします。……それと、お嬢様」

「なんですの?」

「流石に黒のシースルーは織斑様もドン引きかと思われます」

「――」

「以前申し上げましたが、派手すぎる下着は却って逆効果です。しかも前回より悪化しておられます。完全に逆効果どころでは済まないかと……。是非織斑様にお会いになられる前にお召し換えを」

「あ、あの、これは――」

「では、これで……」

セシリアが言い訳のように何かを言おうとする前に、チェルシーは恭しく一礼を残して他のメイドと共にホテルへと荷物を運び込んでゆく。
なぜ今着けている物を彼女が把握しているのかは判らないけれど、セシリアは恥ずかしさに顔を真っ赤に染めてホテルの入り口前で震えていた。



488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 03:15:04.07 ID:zM2r5eXa0


――――


「ま、まったく、どうして知ってますの……!?」

使用人たちと別れたセシリアはホテルの廊下を少し早足で歩く。
わざわざ一度着替えた為、思ったよりもアレから時間は経ってしまっている。

化粧室へ駆け込み。勝負も勝負、決戦下着を素早く脱ぎ、着替え自体はさっさと終わったのだが、
一つがそうだと、今度は他のものが気になってくる。具体的には服の乱れや髪の乱れ、化粧が気になる。

入念なチェックをしている最中に、あまりの遅さに心配したチェルシーから電話を受けて、もう午前三時になると聞いて慌てて化粧室を出てきたところだ。

「…………」

どうせ千冬もいるのだし、二人きりというわけには勿論行かない。
それでも、心臓は激しいビートを刻み、一夏との一時間少々ぶりの再会を、体が待ち焦がれている。

目的の部屋、このホテルのスイート・ルームの前にやってくると、心臓は更に鼓動を強くし、手が震えてしまうかのような錯覚さえ覚える。
喉がひどく渇く、サイダーが飲みたい。今すぐ一夏に会いたい、一夏、一夏さん、私は、あなたの事が…………。

扉はスムーズに大した音もなく開き、薄暗い室内が眼に入る。

「……ただいま戻りましたわ?……一夏さん?……千冬さん?」

反応はない、もしかして部屋を間違えたんじゃないかと周囲を見回せば、チェルシーに任せた自分のスーツケースを見つけた。近くには一夏のスーツケースも見える。
ここで部屋は間違いない……しかし、千冬と一夏の姿は見えない。どうしたのだろう、
それとも……二人はもう眠ってしまったのだろうか?

ベッドに近付くにつれ、そこに誰かが横になっているのが眼に入った、ほっとしてセシリアはそこへ近付いていき……

「……」

そこには一夏が無防備な寝姿を晒していた。

「…………一夏さん……」

周囲の様子を伺う、いつものパターンだとこの辺りで千冬がやって来ている筈だ。
そして暴走した自分は鉄拳によって意識を失う、そのパターンの筈だ。
きょろきょろと周囲を見回しながら、そろそろと一夏の体にかかるシーツをめくり、するりと体をそこに滑り込ませ、そろっとめくりあげたシーツを自分と一夏にかける。

(そそそそそそ、添い寝成功ですわァァァァァァァァ!!!!)

心中では一つの山を踏破したかのイメージで雄叫びを上げる。



489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 03:15:46.05 ID:zM2r5eXa0



「う……ん……」

「えっ!ちょっ!?」


一夏が小さく呻きながら寝返りを打ち、シーツを手繰ってゆく。
背中を向けられてしまったセシリアは体の半分がシーツから出てしまった。

「……い、一夏さん……っ!ひ、ひどいですわ」

ぐいぐいとシーツを引っ張るけれど、
一夏は思ったよりも確りとシーツを掴んでしまっており、軽く引いたくらいではびくともしない。

「……はっ!?」

一瞬、セシリアは視線を感じて部屋を見回す。暗い部屋は、しんと静まり返っており、自分たち以外に気配はない。

「…………き、気のせい……ですの? いえ、それよりも……」

この如何ともしがたい現状を打破しないと。
とりあえず……IS学園の制服のままというのは色気がない。

セシリア・オルコットは勝負に出た。
制服を脱ぐ。丁寧に脱いだ制服を畳み、下着姿になって背中を向けている一夏の背中に寄り添おうと再びベッドの上に上がる。

(密着してしまえば……こちらのもの……ッ)

ぎゅっと眼を閉じながら、一夏の背に後ろから体を添える。これは添い寝よりも難易度が高い筈だ。
このまま眠ってしまえば、起きた一夏はこの状況に何を思うだろう。明日自分を起こすのはどんな状況だろう


(し……幸せですわ……)




492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 04:46:25.73 ID:zM2r5eXa0


一夏の背にぴったりと体を沿え、体を覆うべきシーツは無くて、心なしか背中は寒い。
でも、早鐘を打つ心臓のせいでむしろ体感温度は暑い。
自身の心音さえ聞こえてきそうな静寂の中で、早く眠ってしまおうと思っても眠れやしない。
一夏の背中から伝わる彼の呼吸のリズム、響く彼の心音。

(や、やはり地味ではないかしら……笑われないかしら……はしたないと思われる……?でも、でもわたくしは……わたくしは……)

背伸びしたそれから、いつものお気に入りでもある、シルクの白い上下に着替えたセシリアは、不安そうに眉尻を下げる。
もうここまできたら後戻りはできない。
あとは天の采配と一夏の判断に全て委ねる。

(…………鈴さん……祝福してくださるかしら)

自分の心が、セシリアにはわからなかった。
なぜ?ここで?どうして鈴の顔が浮かぶのだろう。同じ男性を好きになった、中国からの(二組への)転入生。
一夏のセカンド幼馴染で、中国の国家代表候補生。
IS学園で出会った、対等な、親友と呼べる少女。


きゅっと一夏の服の背を白い指が掴みながら。涙が、勝手にぽろぽろとこぼれた。

(どうして、わたくし……涙なんか…………)



497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:39:36.82 ID:zM2r5eXa0



「……せ、セシリア…………」

突然かけられた一夏の声に、びくっと全身が震える。
起こしてしまった。
応え様にも、声が擦れてうまく喋れない、本当にもう後戻りはできない。
セシリアだってまったく知識がないわけは勿論ないし、一夏とそうなることは望んでいる。
男の矜持、強い意志、家族の為に、仲間の為に、滾る魂を持ち、どこまでも真剣な。

自分の全てを委ねて甘えることができる男性。


「…………泣いて……るのか?」

「……ま……せんわ」

泣いてませんわ、そう言おうとした唇は、うまく言葉を紡ぐことができなくて。


「…………」


長い沈黙のなか、さめざめと嗚咽を漏らすセシリアの息遣いだけがスイートルームに響く。

「……その……セシリア。泣かないでくれないか」

「泣いて……なんか……ッ……そんな……言い方」

ぼす、と片手を握り、一夏の背中を叩く。
好きで泣いているわけではない、自分でも涙のワケがわからない。

「俺は…………俺は誰にも泣いて欲しくない、誰にも涙なんか似会わない……特に……セシリアには泣いて欲しくない。……言ったろ?セシリアには笑ってる顔が一番似合う。」

一夏の声が、セシリアの耳に届く、でも、涙は止まらず。とめどなく溢れてはシーツを濡らす。
このまま背中に寄り添い、セシリアが涙を流し続けるのが耐え切れず、一夏は無理矢理にセシリアのほうを向こうとするけれど。

「此方を……向かないでくださいまし……っ!」

「うわっ……っと、判ったよ……」

セシリアが、そうさせないよう、背中から一夏の胴に腕を回してしがみつく。
密着した体がセシリアの体の感触を一夏の背に伝えるものだから、一夏はその感触に心臓が飛び出るくらいに驚いて。
以前にシャルロットが湯船の中で体を押し付けてきたこともあったけれど、その時以上に、鼓動は早くなっていた。

「…………で、でもセシリア……」

「泣き顔なんて、もう見られたくありませんの。一夏さんには、わたくしの一番をいつも見ていて欲しいから。だから、このままで」

彼が笑顔を望むなら、涙はもう見せちゃいけない。
彼の包容力が、甘えさせてくれる強さが好きならば、甘えてはいけない。
セシリア・オルコットとして、彼の傍で咲き続けなければ、パートナーとはいえない。
それは、鈴もそう。
思えば、いつも鈴に頼っていた。
辛いときも、何も言わずにただ、欲しい言葉をくれた。ずっと一緒だと、そう言ってくれた、それを失いたくなくて泣いた。
もし、今夜文字通り身も心も一夏のものになったのなら……それを知った鈴が悲しむことを想像して涙を流した。
鈴が自分から離れて行ってしまうかも知れない。



498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:47:15.64 ID:zM2r5eXa0

でもそれは違う。間違っている。

「わたくし、間違っていましたわ」

まだ、その声は震えている。それを感じて、一夏は体に回されたセシリアの手に自分の手を添えた。

「セシリア……」

「わたくしは……わたくしとして……鈴の傍にも居続けますわ。例え、どんな事があっても……だから……」


何かセシリアが小声で紡いだその先の言葉は、一夏の耳には届いていなかった。
えっ?と間抜けな声で聞き返してしまいそうになるのを必死で抑える。聞き返したいのは聞こえなかった言葉ではない、鈴のことだ。
重ねた白い手は、すべすべで、背中に感じる大きな二つの柔らかさは、眼を向けずとも少なくとも制服は着ていないことは判る。
弾に言ったら確実に首は絞められるであろう状況。数馬に言ったらそれどこのメーカーの新作?と聞かれそうな状況。
16歳の誕生日を過ぎ、10代も半分を過ぎていわゆるハイティーンになった、

自覚は最近までなかったが、セシリアが自分を好きでいてくれていると思っていた。
それが正直嬉しかったし、セシリアの事ははっきり言ってしまえば好きだ。これってひょっとして両思いなんじゃないだろうかなんて思うと、自然と心が弾んだ。ひょっとしたらこの旅行でという淡い期待もあった。





499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/08(金) 23:48:01.24 ID:zM2r5eXa0




(……り、鈴……?え?鈴???セシリアが好きなのは…………鈴……!?)

カタカタと奥歯が鳴る、一夏は、自分がとんだ勘違いというやつをしていたのではないか。
そう考えると、心が軋む音を立てる。期待という城に無数の亀裂が走る。

(セシリアは鈴が好きで、流されそうになっていた自分に泣いていたのか!?う、うそだろ……だから、間違ってるって!?だから、こっちを向くなって!?それって……それってつまり……俺は……?)

弾と数馬が二人でプギャーと指を差して笑う姿が脳裏に浮かぶ。
3on3の戦場で言えなかった時は、後から考えればあんなところで言うのもおかしいと思った。
飛行機で起きてるかの確認をしたときには、眠ってるセシリアに向ける独り言ということで言ってしまうべきだったんじゃないかと後悔した。

言っておけばよかった、気持ちを伝えて置けばよかった。
そうしたら、振り向くな何ていわれずに、そのまま大人の階段を駆け上っていたかもしれない。

(な、なんだよ……なんだよ俺……告白もする前に…………ふられたのか……?俺 ……なんだよこれ……こんなに辛いのかよ……!?)

この程度の肩透かし、今まで自分がしてきた事とは知らず、
そして、セシリアの言葉が、鈴の傍に も であったことにも、その意味にも気付かず。


一夏は初めての失恋をした。



504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/09(土) 23:42:21.12 ID:FbjyHVG40



「―――ちかさん?一夏さん……?」


 心配そうなセシリアの声で、現実に引き戻される。

(……やめてくれ)

 セシリアの声は優しくて、とても安らいでしまう。その対象が自分であっても、セシリアの優しさは隔てなく与えられる。それがとても、とても嬉しくて。好きになったのがセシリアで良かった、そう思えた。

 そして、とても惨めで。


 いっそ、欲望の赴くままにセシリアを、その体を自分のものにしてしまおうか。男にはその力と能力がある。男の寝床に滑り込んできたのはセシリアだ、泣いても喚いても……
 セシリアを自分のものにしてしまいたい、自分の女にしてしまいたい。

(たとえ……セシリアの思い人が鈴でも?)

 ぐっと、セシリアの手を握る腕に力が入る。

「い、痛いですわ……一夏さん……?」

 セシリアの声色が体の柔らかさが、脳を痺れさせる。そして何かが、一夏の中で弾けた。

―――― この女が欲しい。

「せ……セシリアッ!!」

 突如、強引にセシリアの抱擁を解いた一夏の顔が眼前に迫る、体勢を入れ替えさせられた。組伏せられて下着姿を晒すことになったセシリアは、真っ赤に頬を染めて、それから。惑う声を上げる。

「……えっ……い、一夏さん……!?」

「セシリア……俺ッ!!俺は!!!」

 セシリアは一夏の眼が、初めて怖いと感じた。覚悟はしていた、けれど、それが真実となるとそれはまた別の話で……一夏の手が下着に伸びる。

 そこに愛情は無い。

「い……いや……一夏……さん」

「セシリア……畜生……ちくしょう……セシリアぁぁああ!!」

「…………ぁ」

 強引に抑えつけられ、下着を引き剥がされんとしている恐怖に体が震える。でも、それでも尚愛しい人。乱暴に、欲望のまま花を摘もうとする一夏の声に、悔しさの色を感じたセシリアは、これが一夏の本意ではない事を悟る。

(一夏さん……苦しいの……ですのね)

 だから……セシリアは受け入れる事にした。そこに愛情が無くても構わない、自分を見ていなくたって構わない。そんな事で揺らぎはしない。一夏が苦しむなんて、その方がよっぽど嫌だ。抵抗の力を弱めたセシリアの腕は、スイートルームの柔らかなベッドの上に抑えつけられ、肩ひもが背中に一瞬食い込んで、ブチっという音と共に解放感が胸元に訪れる。

(お気に入り、でしたのに)




505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:05:27.01 ID:t1RbcGVx0



 視界の隅へ、白いそれが放り捨てられて落ちていく。金具が弾け飛び、ワイヤーもひしゃげていた。スローモーションのようにそんな光景を見てから、もう着れないなんて思いながら、最後に残った恐怖を硬く目を閉じて押し込めると。ゆっくりと目を開き、一夏に微笑みかける。戸惑いの中に獣の本能が覗く一夏の瞳を見つめるセシリアの目の前で、どこに隠れていたのか、突然現れたフリース姿の千冬のストレートが一夏の顔面にめり込んだ。

「ぶふあ!?」

「!?」


「そこまでだこの……大馬鹿者!!!!」


 先程感じた視線の気配は間違いではなかった。吹っ飛んだ一夏に馬乗りになって追い討ちを決めている千冬を見て、シーツで体を隠しながらセシリアはそう実感するのであった。

(あれ?これって……次はわたくしの番ではございませんの?)

 上下フリース姿の鬼神がゆらりと立ちあがる。倒れ伏した一夏はピクリとも動かない。否、恐らくはもう、動けない。千冬は、途中で壊れてしまったブラを拾い上げながらゆっくりと近づいてくる。

 パン、と、渇いた音が室内に響いた。

「――――…………粗末にするな!馬鹿者……ッ」

 顔以外への拳も覚悟していたセシリアには、意外な一撃。頬への掌打、ビンタ一発。そして、体が大人の女性に抱き締められる。7つ以上は年上だ、正確な年齢差は聞いていないが、一夏の持っているアルバムの一番小さい頃の写真では既に中学のものと思われる制服姿の千冬が写っていたと鈴に聞いた事がある。鈴も正確な年齢は確認していないらしい。そりゃ命は惜しい。それはさておき。

「怖かったろうに……お前は……どこまで……どこまで……ッ」

 こんなものは、もう暴行と変わらない。まさか、弟がそんな行動に出るなど俄かには信じられなかった。そして、そんな弟の暴走さえ受け入れてしまうほどセシリアが弟を想っているとは、思っていなかった。自分の判断ミスを千冬は深く悔やんだ、この夜の出来事が、二人の心に深い傷を残してしまうんじゃないかと思うと、情けなくて涙が出そうになる。

「怖くなんて……わたくしは……」

 怖くなんかない、怖くなんかないと言い聞かせた心の蓋から溢れたものが、体を震わせる。それでも、セシリアは決して泣く事は無かった。だから千冬も、泣いてはいけないと、強く唇をかみしめ、セシリアが疲れから眠りにつくまで、ずっと背中を撫で続けるのであった。




506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:12:08.86 ID:t1RbcGVx0



――――――




「い、一夏さん?大丈夫……ですか?」

 翌日、ISの研究施設へ三人で赴いた後、セシリアのブルー・ティアーズは無事、セシリアの元に帰ってきた。青い守護騎士は今はイヤカフスの形態でセシリアの耳元で輝いている。キャノンボール・ファストでの大破からそう日を空けていないうちに、ここまで深刻なダメージを負ったことに、セシリアは結構担当官に絞られたようだが、BT偏向制御射撃【フレキシブル】をフル活用しての実戦データは、セシリア・オルコットにブルー・ティアーズが与えられた事に間違いがなかったことを確信させるに至った。
 フィードバック機であるサイレント・ゼフィルスをテロリストに強奪されるという失態で一時はBT計画が凍結される恐れもあった。しかも現在サイレント・ゼフィルスは各国の研究機関を襲撃し、ISの強奪を次々に行っているという。奇しくも、望まざる状況ではあったにせよ、イギリスのIS開発技術の高さとBT兵器の優秀さを大々的に世界各国へ知らしめる事になっていたが、同時に、サイレント・ゼフィルスが"活躍"すればするほど、本来の成果を生み出せないままのブルー・ティアーズの存在を疑問視する声も多く出始め、BT研究機関の首は絞まってゆく。今回のセシリアの成果は自身の、そしてBT兵器計画の生命線を繋いだと言えた。

 そこで今後、本来ならばサイレント・ゼフィルスで行われる筈だった実験の一部もセシリアとブルー・ティアーズが行うようになる。単純に言えば、ブルー・ティアーズが運用するBT兵器が更に増設されるという。相変わらず実弾兵装は腰部ミサイルしかないが、それも改良された。その吉報を、施設の屋上でようやく見つけた一夏に嬉しそうに話すセシリアだったが……

「……あ、ああ」

 今日の一夏は覇気がない。無理もない、昨夜、よりにもよって一夏はクラスメイトに、想いを寄せる相手に暴行を加える所だったのだから。結局あの後、一夏は強制的にシャットダウンさせられたまま目を覚まさず、セシリアが目を覚ました時には千冬共々既に出発した後だった。
 セシリアにとっても、昨夜は想いを寄せる相手に、その想いを受け止められるのではなく、ただ欲望のままに純潔を散らされる所だった。初めて見る一夏のそんな一面に、恐怖さえ抱いた。もしかしたら、想いが絡み合うかもしれなかった一夜だっただけに今にして思えば残念という感情もある。

(でも……全くの無駄ではございませんでしたわ)

 昨夜の一件は、自身の気持ちを、本当の意味で明確にしてくれた。今なら鈴にだって、本当の意味で堂々と言える、一夏と結ばれたい。一夏を、愛している。その為なら、何も怖くない。

(きっと、一夏さんも……)

「……セシリア……」

 一夏が、重い口を開く。目線はセシリアの瞳を見ようとしては彷徨い、そこには悔恨の色が濃く浮かんでいる事に気付いて、淡い期待をよせていた一夏の心が自分とは違う事を感じ、セシリアの心にもその影が暗くかかる。



507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:23:08.63 ID:t1RbcGVx0

「セシリア……ごめん……な。謝って済むような事じゃないのは、判ってる。だけど……」

「……あ、謝らないで…………くださいまし……」

(そうですわよね、そんな都合のいい事ありませんもの……)


「すまない……一時の感情で……あんな事……」

 想い人に全てを捧げる時を、覚悟を、その行為を。恋人同士が行き着く終着点、Make Love. 愛の交わり。未遂に終わったけれど、確かに一夏との間に生まれたと思っていた絆。それを一夏の口から改めて否定される、謝罪される。

「――――ッ……」

 謝罪するという事は、昨夜の一夏がオスとしての欲望をぶつけようとしただけという事を意味している。セシリアもそれを判っていた。それは告白でも、想いを受け入れてくれた事でもない。だとしても、その欲望さえもセシリアは受け入れようとした。それで一夏が満たされるならそれでも良かった。
 それが、間違いだという事は、セシリア自身がよく判っている。それが"既成事実"という卑怯な方法に繋がる事も自覚している。きっと、あのまま"既成事実"が作られてしまっていたなら、否応なしに形式上の恋人となり、結果として両者の心にどうしようもない程に深い罪悪感を残して想いは受け入れられたのだろう。

 否定よりも、謝罪よりも、一夏の謝罪はその事をセシリアに突き付けている気がして、それがとにかくつらかった。

 今自分はとても醜い顔をしている筈だ、セシリアは一夏にそれを見られたくなくて顔を背ける。考えても見ればそれは昨夜の時点では当然だ、セシリアと一夏はそもそもまだ恋人同士ですらない。セシリアは一夏を愛しているけれど、一夏がどう思っているのかの確認をセシリアはしていない。だからこそ、一夏の中に自分という存在を焼き付けたかった。この期に及んでかもしれないけれど、告白は、最後の意思表示は一夏にして欲しい。一夏がそういうことに鈍感なのも判っているし、あえて無意識に避けようとしているフシさえある事もセシリアは承知している。

 だから最後の決断を一夏がする事に意味があるし、そうであってはじめてこちらの想いを受け入れてくれたという事になる。

(……謝るのは、卑怯なわたくしの方ですのに)

 きっと千冬は、全て判っていたのだろう。だからこそ、二人が罪悪感を抱く事になる結果は、殴ってでも阻止したかった。結果として罪悪感は小さなもので済んだのかもしれない。一夏は、一時の感情に溺れそうになった事。セシリアは、それを利用しようとしてしまった事。

「わかりましたわ、ですから……」

「……すまない、もう……できる限り、近づかないようにした方がいいなら、そうするから……」

「そっ……! それは絶対ダメですわ!?」



508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage saga]:2011/07/10(日) 00:36:39.32 ID:t1RbcGVx0



「……え、ダメって……」

(ダメとかそういう事なのか?それ以前に、離れるなって事は……近くで、苦しめって事なのか……?許してもらえるわけ……ないよな……見ちゃったもんな、おっぱい)

 どうしたらいいのか、今日、姉に起こされてから一夏は一夏で本気で考えていた、こんなに異性の事を考えるのは初めてかもしれない。異性という括りを考え、一夏はそれを否定する。異性では無い、セシリアだと。彼女の為に何が最も良いのか。セシリアは鈴が好き、ならば、未練を捨てて二人を応援するべきか。鈴はたぶん弾が好き、ならば弾を誰かとくっつけてしまう手伝いをするべきではないか、姉とか。

 何れにしても、自分はセシリアの傍にいてはいけない、昨夜の事を思い出させてしまう事は、セシリアの笑顔を曇らせてしまう筈だから。好きだから、離れる事が正解なんだ、おっぱいは思い出の中に永遠に。そう思っていた。

「ダメったらダメですわ!! 近付かないなんて絶対に許しませんわ!!」

 結果として、物凄い剣幕で怒られてしまっている。

「……居ても……いいのか……?」

「居なければ……絶対に……許しませんわ……わたくしは……わたくしは……一夏さんを……」

 そう言いながら、セシリアの体が、一夏の胸元にそっと飛び込んでくる。一夏の胸元に手を添え、西日を背に受けたセシリアの金髪が、一夏の目の前にで風に泳ぐ。何も言葉は無く、二人は互いの目を見つめ…………。




「―――― 茶 番 だ ね 。 反 吐 が 出 る 。 」



 スターブレイカー≪星を砕く者≫のレーザーが、二人めがけて上空から降り注いだ。



512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/07/10(日) 04:54:30.76 ID:7S2XWMfUo
ほらお前らがヘタレヘタレ言うから彼暴走しちゃったじゃないかー
大切なシーンの筈なのに「おっぱい」と言う単語が見えるんだけど…これは錯覚なんだろうか

セシリアだけじゃなくて、弟の事まで心配する千冬姉が良い
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東日本) [sage]:2011/07/10(日) 08:06:35.78 ID:BeMhZ2pMo
おっぱいワロタwwww




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