第2話『傭兵』
敵の本拠地目前へ迫る二つの彗星。
次々と消失する敵の反応を前にして、司令部は勝利を確信しつつあった。
『あのバカ弟子共め・・・勝手に飛び出しおって・・』
男の話によれば、彼らは石田幹久の下で修行し、今はほとんど使い手のいない
桜剣弐式を受け継いだ者だと言う。
『しかし、二人でこの数を圧倒するとは。』
その言葉が漏れたときだった。
レーダーに高次元物質の反応が一つ。
光学映像で映し出される、その姿に誰もが絶句した。
アナトリアが保有する、精鋭部隊はその全員が『
執行者』である事実を知っている石田は弟子に通信を入れるが・・・。
時はすでに動いていた。
『我が名は禄識。・・・傭兵よ、好き勝手やってくれるじゃないか』
剣を天に掲げたその瞬間。
光が降り注ぎ、ニーベルングの大地を焦がした。
地図の書き換えが必要なほど、それは凄まじい光景だった。
立ち込める煙から飛び出すのは、
樋川国重と
野田光一。
銃の咆哮と、銀の軌跡は敵を切り裂こうとその牙を剥く。
されど、力の差は歴然だった。
当時まだ執行者でなかった彼らに、その強大な存在は決して届くものではなかった。
『ク・・・ソ・・・光一・・・生きてるか』
ボロボロの身体で、血で濡れて見えない眼で相棒を探す。
『・・・・・』
声はしない。
ただ、聞こえるのは。
自分達の最後を告げる、審判の声だった。
『若き傭兵よ・・・オマエたちは成長する、その芽が牙を剥く前に・・・私が狩る』
再び剣が咆哮を奏でる。
厳しい修行を乗り越えても、届かない者。
『待て、カーテナの騎士。』
真っ白なローブに身を包んだ人が国重の前に立つ。
女?
『エストの魔女・・・!桜木に加勢するのか・・・!!』
『これ以上、この子達に手をかけようとするのであれば・・・』
挙げられた手に収束する蒼き光。
これが、執行者同士の戦い。
『・・・クッ。全軍に告ぐ、撤退だ』
『賢明な判断ですわ、悠』
『千鶴・・・次はないと思え』
そして、ニーベルング戦役は幕を閉じた。
二人の若き傭兵に、絶望を刻みこんで・・・。
最終更新:2007年06月19日 13:26