ペンタグラムエキスパンション(ストーリー16)

ララモ党の港、「クライム」につくルアルネ傭兵団
飛空挺で港に近づくと大騒ぎになるので、沖のほうで一旦小型船に乗り換えて港まで漕ぎ着く。

「嘘付きだ… タカラードさんは嘘をついた…」
ギシギシと軋む体でタカラードに向かって、そう話すのはヒッキー
このクライムに着くのに2週間といっておきながらその実、3週間近くもかかった。その一週間の超過分もヒッキーにとっては地獄の筋トレが続いたのだ。
「何時までそんな恨めしそうな顔をしてるんだい。 まだ、しごき足りなかったかな?」
「もう無理です! 次は本当に死にます!!」
トレーニングの後、熱を出して寝込んだヒッキーをギィは平然、何事も無かった様に訓練を行おうとしたときには戦慄した。 あの時はさすがに皆の大反対を受けて何とか助かったが、熱の下がったその後もずっと船の上では筋トレが続いた。
筋肉痛で痛む体で何度も泣いた事を覚えているがギィの鬼教官振りが彼にとっては一番恐ろしかった。

(とうとう来ちゃったのか…)
自分の居た町とは違うがララモ党統制下の場所に戻ってきた事にギャシャールは深いため息をつく。 本音を言うと戻ってきたくなかった…
とは言え、ララモールを助け出したらすぐに出て行けば良いか… と、頭を掻きながら考える。

「それじゃあ、ここでお別れだな!」
皆いきなり元気良く別れの挨拶をするタカラードに驚く。

「あれ、仕事を手伝ってくれるんじゃないのかい? 何か用事でもあるのか、おかしら。」

「あー… コンヴァニア財団襲撃について、ララモ党の議員達の前で理由を述べないといけないからな。」
それに俺は潜入任務は嫌いだ と継ぎ足すとギィは面倒くさそうにな顔をしてタカラードに文句を言う。

「んなもん無視すりゃあいいんだよ… 大体、コンヴァニアの野郎だってホモンクロスで浮遊島を襲撃したじゃないか… おあいこ、ってことじゃあ駄目なのかい?」
ホモンクロスって… おそらくホムンクルスのことを言ってるのか? あの場合、報復といっても十分向こうも「侵略行為」であると愚痴を言うが、タカラードは難しい顔をして首を横に振る。 

「うう、ごめんなさい…」
目を真っ赤に腫らしたニーダはいきなり謝罪する。 彼はヒッキーがしごきを受けている間、柱の影でずっとヒッキーを見守っていた。
必死に頑張っていたヒッキーにとっては少しキモかったのだが。

「いちいち反応するんじゃないよ! たく、めんどくさい…」
気にするなっと、頭を抱えて謝る軽くコンっと叩くギィ。 彼としては、自分の研究が悪用され迷惑をかけたことがトラウマに近いものになってるんだろう…

「祝和会議か… こういっちゃあアレだけど、ララモ党とコンヴァニア財団はルアルネ傭兵団よりずっと友好な関係だから、おそらく弁護の余地なく根掘り葉掘り突き詰められると思うよ。」
何かむすっとした様子でギャシャールが感心のなさそうにそう答える。
祝和会議は要するに裁判に近く、タカラードは被告人のようなものである。 ララモ党に完璧に加害者として、そして犯罪者として認識されてしまったようだ。

「ぶっちぎりのアウェイって所ニダ、タカラード殿は気を引き締めないと… 下手したらとんでもない冤罪まで突きつけられて犯罪者ニダ。」
「アハハハハ!そりゃいい! けつの穴引き締めてがんばらにゃあな!!」
敵地上等! っとタカラードは陽気に笑う。 この人ほんとうに事の重大性を理解しているのか?

「コンヴァニア襲撃も何だかんだで依頼で行ったんだ。 いっその事、そいつの名前を出しちまえばいいんじゃないかい?」
「おめえ… 俺が毎回も言ってんだろ? 依頼主に対しての情報はこちらに秘匿義務があるから明かせないって。」
「あれ、依頼だったの!?」
初めて明かされた事にびっくりする。 一言も聞いてなかった事実に皆驚きを露にする。

「ああ、要人救出だよ。 こう言っちゃあ、あれだけど、あんた達は助けたのはそいつのおまけなんだよね…」
「効果としては高いニダ! 一人だけ救出したら、その助けた人の身元が分かった時に依頼主を特定されやすいニダ。 それだけ大勢居るのを丸ごと救い出しちゃえば、依頼主も特定不可能ニダ。」
「そこまでは考えてなかったさ。ただ、あの時は何やってんのか知らないけど、奴隷、罪人集めてすること何ざ悪い事に決まってるからね。 それに放っとけないし助けたんだ。」

職人石のために色々圧力をかけてきやがったコンヴァニアに報復… って言うのもあるかもな。 …っと、そろそろ行くか」
自分達とは反対方向の会議場へ向かおうとする。 それを見て皆は一同に頭を下げる。

「何はともあれ、お頭、ありがと。」
「「ありがとうございました」ニダ」
「…」
そんな中ギャシャールだけはあさっての方向を向いてお辞儀しようとしない

「お辞儀位しなって!」
「かまわん、かまわん。 図星つかれるて、ヒス起こしてるだけだからな。 それじゃあな、ガサール 「根性据えて」がんばれ」
「こいつ…」
ギィが怒鳴りつけるがタカラードはその態度を意にも止めていない用に様子でギャシャールに意味深な言葉を投げかける

「ホルホールとガキンチョも頑張れ! ギィ、まかしたぜ…」
「あいよ!」
元気良く挨拶するようギィの横で、ギャシャールは明らかに機嫌を悪くしていく

「何か一気に静かになったニダね…」
「はい。でも、ああ言う人嫌じゃないです。」
「僕は物凄い苦手、信じられない位苦手。あのおっさん…」
「あんた、ニーノみたいなこと言うね…」

「ニーノ?」
「2番隊長の猛獣乗りさ。 とにかく気性が荒くて、戦いたくてうずうずしてるような奴さ。 お頭とソリが合わなくて、ガチンコで戦った事がある。ガチンコ中にお頭をマジで怒らしちまって、それ以降は口でお頭の悪態つくだけになっておとなしくなったけど… その戦いに居合わせなかったあたいは何が原因か知らないんだがね。」
「やっぱり怒ると怖いんだタカラードさん…」
そのニーノという人物も大概だが、あのがたいの良いタカラードが激怒する姿を思い浮かべると正直身震いしたくなる。

「実はコンヴァニア襲撃… じゃなくて、要人救出の仕事も、あの戦闘狂の二ーノの野郎が引き受けやがったのさ。 お頭は最初はその仕事を断ったんだが、何度も頼まれようやく引き受ける事にしたんだ。そのかわり、ただ戦いたいだけのツーノでなくあたいを仕事に向かわせたって事さ。」
クククク… と邪悪に笑うギィをみて思わず後ずさりをしたくなるヒッキー。 なんとか根性で耐えるが… それにしても邪悪だ。
うっぷん晴らしに大いに暴れたけどね と心の中でほくそえんでいるんだろうか? ある意味、彼女でもニーノという人物、どちらでもコンヴァニアの被害は変わらなかったんじゃないのか? 

「さて、とにかく依頼人に会いに行くよ。って、何やってんだいニーダ! 置いていくよ!」
「待ってニダ~ 大きい荷物がいっぱいで中が気になったにからニダ、観察してたらいつの間にか、荷物の山に囲まれて身動き取れなくなっちゃったニダ~」
凹むのも早いが立ち直りはもっと早いニーダは、興味がそそられたという箱を観察していたようだ。

「目を放した隙にこのおっさんは… ガキと一緒だな。  この大通りをまっすぐ進んでるからさっさと追いついてきな。」
「ひどいニダ! って、臭い! この箱、大きいし凄い臭いニダ! ヒッキー、ヘルプニダ!」
臭い臭いと言いながら助けを求めるニーダ。あろう事にどこかに名も亡き者がいるかもしれないのに、実名でヒッキーの名前を叫ぶ。

「ボケナス! 名前を呼ぶんじゃないよ、馬鹿ニート!」
「ちょっと、待っててくださいニーダさん! って、わわわ!ちょっと、おさないで…」
これ以上騒ぐと面倒な事になりかねないと感じたヒッキーはニーダを助けようとするが後ろからギャシャールに押される。

「放っとこ 放っとこ。」
叫ぶニーダをほっといて皆は先に進むことにした3人だった

ニーダをほっといて後、数分歩いて人通りのある活気な大通りに差し掛かる。
 そこのいくつもある裏路地の一つが依頼人の待つ、待ち合わせ場所のなのだが
「ここが待ち合わせか…」
待ち合わせ場所の裏路地を見て、4人は猛烈に嫌な予感に襲われた。 絶対になんかある。
大通りの明るさとは対照的に真っ暗な裏路地。 ララモ党の平和の統制があったとしても、完全には行き届かないような狭くて暗い道…

しかし、行かなくては話しにならない。

「ぜぇぜぇ… もう、港なんて大嫌いニダ!」 
後ろから息をまき走ってくるニーダは憤慨しながらそう答える。

「ゲェ~ また狭いところニカ? 怖いニダ。」
「っていうか、十中八九試されてるねこれは…」
こう言う袋小路にはチンピラや物取りが跳梁跋扈している。 もしかしてそいつらを倒せなんていわれないよね?
ヒッキーは不安そうにギャシャールとギィを見るが、ハニャン連邦の港で数十人の男達を地面に転がっていた図が思い出され安心する。

「名も亡き者を従えてる党率議員の屋敷に忍び込むんだから、腕が立たないと話にならないよ。 任務失敗するとおそらくララモールごと粛清されるし。」
ここで話していても時間の無駄だと思ったのかテクテクと裏路地へ入っていくギィ。 それに続いてみんなは後を着いていく。

「暗くて狭いところ… すごいリラックスします…」
暗くて狭くて静かな裏路地にヒッキーは、引きこもっていたときの事を思わず思い出して羽毛布団に包まれた気持ちになる。
「っていうか、ギャシャールもヒッキーもなんか怖いニダ。 頭から足の先までフードに覆われてて不気味ニダ…」
「名前を呼ぶなって、言ったよねあたいは?」
「ごめんなしゃい!」
胸倉を掴まれるニーダは半べそになって謝る。

「僕達はララモ党の奴らと面識のあるんだから、顔を隠さないとすぐに正体がばれちゃう。それに今は僕の名前は一号、こっち二号だよ。」
(それなら声も変えてくれニダ…)

裏路地を進んで中腹に差し掛かった頃、突如一人の人影が目の前に立ちはだかる。
「君達は何者だ? 応えろ」
暗くてよく見えないが… この声、女性?


「悪いが本人と確認できるまで、口には出来ない。 顔をみせてくれないかい?」
「君ってもしかして女? フッ… 女の癖にララモールをあの屋敷から助け出そうって言うの?」

女の癖に…という言葉で彼女から怒りが染み出ていくのが分かる。
おそらくのギィは女性という理由でなめられるのが嫌いなのだろう…青筋を立てるギィからは ビキビキ! っといった擬音が聞こえてきそう。
そんな彼女の近くにいて、強い殺気を受けたヒッキーは思わず叫び声が出そうになる。

「何ニカ? いきなり…」
「それに、貧弱そうなおじさんと、何考えてるか分からなそうなフードの二人組み。 こんなメンバーであの人を助けられるなんて到底思えないな… もっとまともな人間を従えて出直して…」
散々中傷して来るその依頼主? の人に気分を悪くする皆…
そんな中でギャシャールだけ深いため息をつくとポツリと呟く。

「うるさいんだよ。 この魚肉ソーセージが」

「!!!」
その言葉を聞いた瞬間に雷でも打たれたかのようにその女性はビクンと体を大きく動かす。

「ギャシャ… じゃなく、一号! いきなりどうしたの?」
「魚肉ソーセージ? いきなりどうしたんだい…」
「いきなりに何ニカ? 魚肉ソーセージ?」
魚肉ソーセージ… いきなり彼女は何を言い出したんだ? 真意が見えずに困惑する3人。

「説明しよう! 魚肉ソーセージとは 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
魚肉ソーセージ(ぎょにくソーセージ)は、マグロなど魚肉すり身をケーシングに入れ加熱した、ソーセージに似た魚肉練り製品。フィッシュソーセージとも言う。まれに魚ソ、ぎょにそ などと略されることがある。外見がソーセージに似ていることから付けられた名称であり、ソーセージとは別物である。
つまり魚肉ソーセージはソーセージでありながらソーセージとは別物の存在! つまりイレギュラーソーセージである!!」

「「「???」」」
余計分からない… 一瞬彼女がイかれてしまったのかと本気で心配する傍らで、大声で叫びだす依頼主の声が聞こえてくる。

「その名でボクを呼ぶなバカ!! しかも、その声…! お前はギャシャール=エイフだな!?」

「名前を知っているって事は知り合いなの? 魚肉ソーセージって名前なのこの人…」
思わずその魚肉ソーセージさんを哀れんでしまう。 親御さんは何を考えてこんな名前を付けたんだ? こんな名前、皆からいじめられるに決まって…

「んな訳あるか!」
とりあえずそんな名前ではない事を全力で否定される… 良かった… 本当に良かった。

「この人は 魚肉ソーセージとは平和 を座右の銘にしてる魚肉殿下。」
「お、おお、お前は! そうやっていもつボクを馬鹿にして!!」

「冗談だよ。 久しぶり、ナタリア。」
「帰れ! 今すぐクライムから出て行け、このララモ党の面汚し! いますぐ居なくなれ!!」
「ギョニクソー=セージさんは、僕の事が大嫌いなんだったね…」

そういってギャシャールは目線を下に落とすと残念そうな顔をする。その顔とは裏腹になおもその口からは蔑む?言葉を発し続ける。

「絶対に許さないからな!」
「よく見えないけど、おそらくあの人顔が真っ赤ニダね…」
指を差して怒りを露にするナタリアと呼ばれる依頼人にニーダを思わず率直な感想を述べる。


「魚にk… ナタリア殿。 この馬鹿にはあとできつ~いお仕置きをしておくんで、許してもらえますか? とりあえず、依頼人と確認できたんで一安心だよ。」
「うるさい! 汚職者のギャシャールなんかに助けてもらうくらいなら死んだほうがマシだ! っていうか、今言おうとしただろ!?」
「落ち着いてください、コイツを任務からはずすんで、それでOK? っていうか、騒ぎすぎると事になるんでとりあえず、ゆっくり話を出来るところで。」
依頼人である事が確定したので、仕事の話をしようとするが頭に血が上ったナタリアは差し出された提案を聞き入れようとはしない。


「帰れ! お前らなんかには絶対にララモールを助けさせないぞ!」
それどころか追い返そうとされる… バカにされ続けた依頼人はギャシャールに対して変な意地を張ってしまった。
っていうか、このままじゃあ話が進まないと懸念するヒッキーに、ギィは依頼人の態度が気に入らないのかどこか機嫌が悪そうである。そして、突如方向転換してあろう事に大通りに戻ろうとする

「あっそう! じゃ、あたい達は勝手にララモールとやらを助けに行こう。 行くぞ皆!」

「「「うぇ!?」」」
依頼人とヒッキー、ニーダはその言葉を聞いて素っ頓狂な声を上げる。
当のギャシャールはギィの言葉にポンと手を合わせると彼女と共に道を戻ろうとする。

「そうだね。 失敗したらララモールごと皆死ぬけど、彼女が協力できないって言うならしょうがないよね… カスムの屋敷の場所なんだけど…」
わざわざナタリアに聞こえるようにそういうとヒッキーとニーダを連れて帰ろうとする。

「彼女って、あの人女の人なの? でも、自分の事を「ボク」って…」
「ギャシャールに継ぐ、「僕っ子」ニダ!貴重な存在ニダね!」
手を引っ張られながらそんなやり取りをするニーダとヒッキーだが、置いてけぼりを喰らいそうになったナタリアは我に返るとそんな4人を慌てて止める

「ちょちょちょ、ちょっとまて、お前達! そんな勝手は許さないぞ!」
クライアントの自分を差し置いて何を言ってるんだ! っとつけ加えて言うが、先ほどのナタリア同様に聞く耳を持たないといった感じに、さっさと来た道を逆走する。

「カスムの屋敷の場所は町の中央にある大きな建物… ララモールが居る部屋の確率は200分の1くらいかな?」
「0.5%って事は一か八かニダ!? ナタリアさんが協力してくれないと即死ニダ! そんなので死んだら化けて出るニダ!」
ニーダから言わしてみればハニャン連邦以上の苦労が予想される。 こうなったのも全部クライアントのせいだ! っと言わんばかりに恨めしそうな顔をして彼女を見る

「ば、化けて出るだって!?」
ニーダの言葉になぜか過敏に反応した彼女を、ヒッキーを除く三人は見逃さず一斉に振り返る。

「(ニヤ)そうだね~ 毎日誰かさんの枕元にたって、その口から呪詛の言葉を…」
「(ニヤ)お前のせいで… お前が協力さえすれば…」
「(ニカ)そういえば、ある人は体中から干からびるまで体液を吐き出し続けたって話をどこかで耳にしたニダ。」
ニヤニヤと夢に出てきそうな嫌な笑い(っといってもギャシャールは分からないが)を見せる三人。 何もそこまで怖がらせることないような…

「わ、わかった! 分かったよ! 協力するから~!」
「ありがとうございますナタリア殿。 さすがお心の広い! じゃあ、詳しい話をもっと落ち着いた場所で…」
朗らかな笑顔にかわるギィの後ろでニーダとギャシャールはハイタッチをして喜んでいる。依頼人がわなわなと悔しそうに震えているのはヒッキーの目から見ても明らかに分かる…

(こんなの 脅迫 だ…)
いくら聴きわけがない人だからって、脅かして言う事を聞かせるなんてめちゃくちゃじゃないか… ルアルネ傭兵団に… そして、この3人に絡まれた彼女に心底、同情する

「…僕の家で話をしよう。 でも、お前らの事まるっきり信用してないからな!」
「エライ嫌われようニダ。」
相変わらず指を差してくるクライアントである彼女は自分達を仲間と言うよりは敵として認識しているような気がする…
こんな非協力的な関係で任務が成功するとは到底思えないヒッキーだった。
最終更新:2009年05月03日 10:45
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