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いつもより散歩の気分が乗って外に出てしまった。
それが俺の死を引き起こした原因だろう。
横断歩道を渡っているところをとてつもない速さで突っ込んでくる高級スポーツカーに体を空に飛ばされてしまった。
着地をしたと思ったときにはもう死んでいたのだろう。
⋯⋯青信号で渡ってるんだから信号ぐらい守れや!!金持ちクソ野郎!
まぁ、そんな感じで死んだ⋯⋯はずなんだけどなぁ。
俺の目の前にいたのは若い青髪で黄色のドレスを身に着けた女性とスーツに身を包んだ黒髪の男性の2人がそこにいた。
「え?アパリィめっちゃかっこ良すぎないかしら⋯やっぱあなたに似てるのね?」
「いやいや、目元なんて美しい君そっくりじゃないか」
俺の名前アパリィって言うんだ。
それにしても親バカップルだなぁ⋯⋯嫌われてるよりも好かれすぎてる方がいいか。
まぁ、こうなったならしょうがないや⋯⋯眠いし寝よ。どうせ、こんなバブバブ状態じゃ喋れないしな。
そうして、俺は自分の気分が思いついたままに眠っていった。
はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜めっちゃ寝たわ〜。
つい、いつものクセで背中を回してゴキゴキと音を鳴らそうとし、そのあとに腕を伸ばしているとある事に気づいた
体が俺の考えのまま動くぞ!!
すげぇ⋯⋯ジャンプできる!!ジャンプ!!
そうして、俺がしばらく家の通路でぴょんぴょん飛んでいると⋯⋯壁で体を隠してはいるがその派手な髪色でわかりやすくなっている母親がこちらをじっと見ていることに気づいた。
気づいたとき⋯⋯今まで飛べていた俺の体はまったく飛べなくなっていた。
「あ、あのぉ〜」
母親からの返答はない⋯⋯答えて?怖くてキレるよ?
なんとも言えない母親との距離⋯⋯今まで短く感じていた時間が何倍にも長くなったように感じた。
まぁ、さっきまで寝てて多分10年くらいが一瞬で流れたけど。
「アパリィちゃん!!もう体はいいの?というかあなた生まれてからずっと寝てたんだもの⋯⋯すごいわねぇ」
壁で隠れていた体を死因を思い出させるような速度で母親が近づいてくる。
「ゴファ!」
こう、あそこまでの速さでぶつかられると、たとえ人間の体の固さだとしても⋯⋯もう一度体が空に弾き飛ばされた。
ただ、死ぬときと違うのは俺の体が地面にぶつかることがなかったことかな。
ナイスキャッチ!マイマザー!
「はぁ、はぁ⋯ごめんねアパリィちゃん?今まであなたの声を聞いたことがなかったのに⋯⋯こんな美声を聞いたら抱きつきたくなっちゃった」
もし、彼女が俺の世界にいたのなら、テヘペロ⋯⋯とでも言っていただろう。
まぁ、10年も愛する息子が寝たきりなら、親バカの二人は心配で仕方なかっただろうな。
それにしても、俺の体を捕まえるためにあの太ももを完璧に隠した黄色のドレスで全力
ダッシュをしたんだから⋯⋯疲れるよなぁ。
もう一度言うよ?せえの⋯⋯ナイスキャッチ!マイマザー!
そうして、俺を抱きかかえながら、母親はしばらく走る。
「あなた!!アパリィの目が覚めたわよ!」
俺を片手で抱えながら大きな扉を開けるのと同時に大きな声で俺の父親らしき人に声をかける。
あの時見た黒髪だし⋯⋯まぁ、父親だろう。
「なんだって!アパリィ⋯⋯パパだよぉ〜こっちおいで〜」
そうして、俺の体を父親が抱っこしようとしたとき⋯⋯俺の体が後ろへとバックしてしまった。
まぁ、バックしたのに、俺の意思があったわけじゃないけど。
「何をするんだ!アリックス!どうして、僕にアパリィを抱っこさせてくれないんだい!」
そう、片手で抱えていた母親が父親の手から遠ざけるためにバックしたのだ。
「まだ、私がかわいがってるでしょうが!そのあとならいいわよ?ねぇ、ダニール?」
そこから、両親の可愛らしい夫婦喧嘩が始まってしまったが⋯⋯目的のはずの俺は全然スルーされてる。
切れ散らかしそう。
可愛らしい夫婦喧嘩は晩御飯の開始とともに終了した。
やっぱ飯の力は偉大だなと思いました。
本日の献立はなにかのスープとパン⋯そして、肉!
そして、俺が肉をパンの上に乗せながら食べていると、今まで可愛らしい喧嘩をしていたのが嘘みたいな雰囲気で父親が話し始める。
「アパリィの意識が戻ったことだし⋯⋯君が生まれたアンゴスで今起こっていることを話そうか」
へぇ、日本とは思っていなかったけど、まさか、俺の住んでいた世界ですらなかったとは⋯⋯肉ウマァ!
「この世界はね、我らが神⋯⋯アスヒモス様の力を欲している部族で争い合っているんだ」
アスヒモス?どっかで聞いたような?でも、神様の名前だったかなぁ?
「それで、僕達の部族は僕とアリックスそして⋯⋯アパリィ、この3人だけだ」
「元々はたくさんいたんだけどね⋯⋯これはを10歳に言うにはキツすぎるね」
まぁ、10歳じゃないから想像はできるな⋯⋯全員殺されたんだろう。
その、アスヒモスをめぐる争いで。
そこまで話すと父親は今までの雰囲気をすべてなくしたように1つの笑顔を浮かべる。
「まぁ、真面目な話はこんなところかな⋯⋯あ、アパリィ!君の目覚めを祝してケーキもあるから安心してね?好きかわからないけど」
最後の言葉を話しているときにシュンとしているな。
「大丈夫だよパパ!僕はそのケーキ?っていうのは多分好きだよ!」
まぁ、何も知らずに10年間寝てたんだからこんな感じだろ。
しらんけど。
晩御飯を食べてからベッドに転がる。
ケーキなんて久々食べたなぁ⋯⋯うめぇ。
そんな風にベッドに転がりながら眠りにつくのを待っていると⋯⋯突然、俺の部屋の壁にある大きな窓ガラスがパリーンという窓の割られた音とともに入ってきた、黒いコートを身につけている1人の色白の男性がベッドの横で佇む。
「え、あの⋯⋯何でしょうか?」
そうして、コートの男性に手を近づけようとしたとき⋯⋯窓の割れる音を聞きつけた父親が階段を駆け上りながら大きな声で俺に叫ぶ。
「アパリィ!だめだ!⋯⋯今すぐ離れろ!!」
そう父親は叫ぶがなぜだ⋯⋯動こうとしても動けない。
体が竦んでしまう。
俺が動けないのを察したのか俺の体を窓ガラスの外に放り投げたかと思うと、コートの男性に斬りかかりに行く。
「アリックス!頑張ってキャッチしてくれ!」
コートの男に剣を突きつけながら叫ぶ。
空中でくるくる回っている俺の体をキャッチするために、黄色いドレスで全力で走っているのが見えてくる。
「取ったわよ!ダニール!!」
しかし、父親からの返答はない⋯⋯しかし、母親は気にもとめた様子はなく⋯⋯お城みたいな家から全力で走っていく。
母親に抱えられながら走っていっているときになにか赤いナニかが俺の部屋に舞ったのには気付けた。
その瞬間は自分の顔が強張り、手が震える。
まるで時間が止まっているかのようにその一瞬だけは今までのどんな瞬間よりも長く感じた。
「はぁ、はぁ⋯⋯アパリィちゃん1つ聞いて」
城から何分全力で走っているのだろうか⋯⋯休まず走り続けている母親からのお願いだった。
しかし、これほどの速さで動くことに慣れていなかった俺は、首を縦に振るのが精一杯だった。
「アスヒモス様の力をめぐって部族で争ってるってダニールは言ってたでしょ?」
「それは、昔アスヒモス様がこの世界にやってきたときにこの世界の種族の頂点にたった部族の願いを1つ叶えると約束したの」
自分たち以外いない世界で願いを叶えてもらったところで何ができるんだ。
理解ができないな。
「みんな、その1つの願いのために争っているの⋯⋯あなたは私達の部族の唯一の救い」
「だから、あなただけは何があっても生き残ってね?」
そうして、俺を岩と木でできた空洞に押し込む。
母親は俺から距離を取るために走り出そうとしたとき⋯⋯母親の足から血が吹き出したかと思えば、コートの男が上からやってきた。
「2人しかいなかったのに、どうしてそこまで抗うんだ?」
コート男が見下しながら母親に話しかける。
「それは、私の⋯私達の英雄が生まれたからよ!!」
「あのガキを英雄とは⋯⋯お前達と昔は同格となっていたことがこの一生での唯一の恥だな」
そうして、母親は全身を小さな物で貫かれたような後だけが残っていた。
しかし、それが具体的にどんなものかを確認する度胸は今の俺は持ち合わせていなかった。
母親を始末し、次はお前だと言わんばかりにこちらを見続ける。
「ガッ!ガハ!あ、あの子を殺したいなら焦らさず私を殺しなさいよ!」
放置してたら死ぬような大怪我⋯⋯それでも、俺を救うために必死に足止めをする。
「その根性に免じてあのガキは殺さずにおいてやろう」
そうして、俺の目の前で体を真っ二つにされ死んだ俺の母親。
母親の死を見届けたのかあのコート男は俺の目に映るところからはいなくなっていた。
泣き叫びようなことは今すべきじゃない。
今すべきはあの二人に誓うことだ。
俺は決めた。これは気分どうこうの話じゃない。
俺がしなきゃいけない。
あの2人の復活そして⋯⋯俺達の同胞たちを蘇らせるために俺が⋯⋯。
「この種族の頂点に成り上がってやる!」
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最終更新:2025年08月30日 10:03