変態×変態×変態×人形◆SqzC8ZECfY



吉良吉影はようやくくつろげる場所まで辿り着くことができた。
なぜか全てのバンガローに明かりがついていた洋式のキャンプ場。
その無数のバンガローの一つに入り込み、椅子に腰を下ろして一息。
やっと手に入れた平穏な一時を噛み締める。
広瀬康一が死んだ。残りは仗助だけだ。
なるべく他者との接触は最低限にして人数が少なくなるまでやり過ごしたいところだ。

「ふぅ……」

温かみのある木材を組み合わせた調度に、やや心を落ち着かせることができた吉良は長い一息を宙空へと吐き出す。




――その時、その息が爆発した。




「何ィィィィ――――――――――――――――――!!!!?」




新手のスタンド使いか!? と、ソファから転がり落ちるようにして爆発から距離を取る。
辺りを見回すが敵の姿は見えない。
それがボムボムの実を食べたことによって目覚めた、自身の能力だということに吉良はまだ気付かない。
コントロールできれば意図せずと息が爆発などということは防げるだろうが、そもそもコントロール以前の自覚の問題だ。
今の吉良は、完全に新手の敵から攻撃を受けたと思い込んでいる。

「やっと平穏を手に入れたと思ったら……クソッ、どいつもこいつも私の邪魔ばかりするッ!!」

荷物を引っつかんで乱暴にバンガローの扉を開ける。
完全に日が昇ったキャンプ場。
挙動不審者そのものといった風情でギロリと視線をあちこちに向けるが、やはり敵の姿は見えない。
何度も何度も平穏を求めては邪魔をされる。
吉良の苛々は頂点に達しようとしていた。

「爪が……くっ、私は平穏な人生を生きるのだ……私は人を殺さなければ生きていけない人間だが、幸せに生きてみせるぞッ!!」

殺人鬼である吉良は衝動が高まると爪が伸びる傾向がある。
錯覚ではあるのだろうが、ぎしぎしと音を立てて爪が伸びようとしている感覚があった。
そして吉良は苛々がつのるあまりに指の爪を歯で齧ってしまっていた。
がじがじと苛立ちに任せて噛むあまりに深く歯を立ててしまい、その爪の間から赤い血が垂れ落ちる。


そしてその血のしずくが地面に落ちた瞬間、再び爆発。


「うおおおおおッ!!?」

足元が爆発を起こし、吉良は驚いて無様に飛びすさる。
明らかに狙われている――吉良は今、そう思い込んでいる。
本当はここには他に誰もいないにもかかわらず。

――ここはまずい……気に食わんが撤退、もしくは場所を変えるべきかッ……!

どこから狙われているのかも不明だが、吉良はとりあえず障害物に隠れるように、身を低くして移動を始める。
そしてやがてキャンプ場の南側、道路が続く入り口へと到達。
警戒するだけ実は無駄なのだが、どうやらこれ以上の攻撃がないことにほっとする吉良。

「ふぅ……どうやら追撃にはこなかったか……うん?」

眼前に文字が浮いていた。
なんの比喩でもなく、空中にクレヨンで書いたような文章が浮かんでいる。
吉良の側から見て左右逆の文字だったが、ぐるりと回りこんでから改めてみると、それは佐山という人物が残したメッセージだとわかった。
原理は不明だが、そのような支給品にはもう慣れた。
もとからスタンド使いといった特異な能力を所持していた吉良である。
ともかく、確かそのような名前が名簿にあったはずだ――吉良はぼんやりと思い出すと、そのメッセージを読む作業へと移る。


『Dear新庄君。または新庄君を見かけた貴方は至急、連絡を。

 ああ、君はまるで夜の海を覆うさざなみのようでぞわぞわするね?
 ――君の笑顔はまるで朝の一杯のコーヒー。少しどきりとさせて、甘くはなく、
 しかし魅力的でカフェインのせいか鼓動がバクバクいって何か派手に我慢ならなくなり
 ああっ君にクリームをええいまだるっこしい盛り上がってきたねきたね? もはや止めようが――』

 (中略)

 ――さて、難しい話はこれまでにして、いや、もう少しいいだろうか』








「…………なぜ最初から用件のみを書かんのだ、こいつは……」

文章の七割が新庄君とやらへの脳内妄想だだもれ感ただよう戯言で埋め尽くされている。
それを華麗にスルーしつつ、用件のみを抽出する。


佐山・御言という人物は、当面殺し合いはせず、何人かのグループを作るつもりらしい。
※ここから南のG-7駅へ向かい、電車を使いながら会場をめぐって同志を集める。
※新庄君という人物は佐山の知り合いらしく、行方を捜している。他に翆星石、伊波まひると言う人物も探しているとのこと。


「ふむ……」

吉良はしばし熟考。
一人になれる平穏を求めてさまよってきたが、この六時間以上もそれができずにいる。
それに何より、自分は必ず八時間以上は睡眠をとる生活スタイルを厳守している。
現状ではそれもままならない上に、いつ何処で寝込みを襲われるか分からないとなれば、おちおち寝ることなどできはしない。
そう考えれば、多少のことは我慢しても、殺し合いをするつもりのない人間に寝ている間の番をしてもらう方がいいのかもしれない。
もしも仗助と出会うことになり、奴が私を殺人鬼と言おうが、現状それを示す証拠はない。
厄介極まりない空条承太郎も名簿を見る限り、ここにはいない。
広瀬康一と二人がかりなら一人で反論するのは不利だが、奴一人で何を言おうが何とでも言い逃れは可能と判断。
吉良はここにきて他者と組むことを決断する。
この奇妙な文章を見る限り、まともとは言い難い人間のようだが、殺人者よりはよっぽどマシだ。
と、吉良は自分のことを盛大に棚に上げて結論を出す。
デイパックからゴルディアスホイールを取り出し、戦車に乗り込む。
牛車にのるサラリーマン風の男という珍妙な組み合わせが出来上がった。
しかも走り出すとこれが速い。
そこらの自動車より速い。
誰かが見かけたら、そこらじゅうで怪奇伝説が人々の話題を席巻するであろうほどの、ある意味奇妙きわまる恐ろしい光景であった。
そんな珍妙戦車が猛スピードで南へと駆けて行く。
殺人鬼を乗せて、悪役の下へ。


   ◇   ◇   ◇


「さて、新庄君があれを見て迅速に私の元へやって来てくれるといいのだが……」
「むしろ、よけいに来たくなくなりそうですけど」
「僕もそう思う」
「……どうやら君たちの間に私たちへの認識に対する若干の誤解があるようだ」

そんな会話を続けながら佐山、小鳥遊、蒼星石の三人は、G-7駅へと向かう道の途上にいた。
キャンプ場という場所は、ある程度拠点としては有利だが、やはり地図の端に位置するのが人を集めるのには向かない。
そんなわけで駅を目指すということになったわけだ。
天気は快晴。
空気は朝方のため、ややひんやりしているが、かえって心地よい。

「ふむ……殺し合いということを忘れてしまいそうなるね。さすが蒼星石君の尻だ」
「……何食わぬ顔でお尻を撫で回すのはやめてくれないかな」
「何を言う。私はこう見えて常にこの殺し合いの打破について思考しているのだよ?
 つまり脳は常時フル稼働。その疲れを癒すためにも君のまロい尻を愛でてリラックスさせなければならないのだぐあっ!」

相変わらず、すっ飛ばしまくる佐山の奇行に蒼星石が待ったをかけた。

「ふ、ふふ……鋏で手を突き刺すとはなかなかにシュートな突っ込みだね?」
「……今度は血が出ても知らないよ?」
「ふむ、確かに君の同意を得ずに勝手に撫でたのは謝ろう――では撫でてもいいかね?」
「君、人の話聞かないとか言われない?」

そんな不毛な会話が繰り広げられるなか、小鳥遊宗太があらぬほうを見つめているのを、ようやく佐山が気付いた。

「小鳥遊君……どうしたね?」
「いや……なんか地響きがしませんか」
「ふむ、そう言われれば確かに」
「次にあれを見てもらえませんか」

自分たちが歩いてきた北のほうを指差す小鳥遊の指先のほうへ視線をやると、そこには――、


「…………変態かね?」


お前が言うなという蒼星石の無言の突っ込みに佐山は気付いているのか、いないのか。
ともあれ牛が二頭、猛スピードでこちらに向かってくるのが見て取れた。
その後ろの御者らしきサラリーマン風の男の姿も。
佐山をはじめとする三人は思わず身構える。
だが、向こうがだんだんとスピードを落としながらこちらに接近してくると分かると、完全にではないが若干警戒を解く。

「……すまない。佐山というのは君たちのことかね」

佐山たちのそばに戦車を停めて降りてきたサラリーマン風の男は三人からやや距離をとったところに立ち、そういって話しかけてきた。
ずい、と佐山は一歩前に出て応対する。

「私が佐山・御言だ。どのようなご用件かね?」

見れば着ているスーツはなかなかの高級品で、本人も気品を感じる物腰をしている。
私ほどではないが――と佐山は心の中で付け加えるのを忘れない。

「ふむ、キャンプ場であのメッセージを見た者だが……できることがあれば共に行動したいと思ってね」

その言葉を聞いて小鳥遊は味方が増えた、とほっとした表情を浮かべる。
佐山はならば――とその男の名前を聞いて、更に情報交換を行おうと持ちかける。
どうやら名前は吉良吉影というらしい。
そして最後の一人、蒼星石はこの男を見て何を感じたのか。
一番はじめから、ずっと蒼星石に向けて――正確にはその手に向けられていた視線。
べっとりと張り付くようで怖気を感じる類のもの。
ゆえに根拠はないが直感的に彼女はこう判断するのだった。




ああ――――また変態が増えた、と。






【E-8南端 橋の上/一日目 朝】




【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:右腕に痺れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、空気クレヨン@ドラえもん、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
0:目の前の男に対処する。そのあとG-7へ向かう。
1:新庄くんと合流する。
2:協力者を募る。
3:本気を出す。




【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、精神的疲労
[装備]:チックの鋏×2@BACCANO!
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1、天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース
[思考・状況]
0:なんだか寒気が……。
1:翠星石と合流する。
2:佐山、小鳥遊と行動する。
3:翠星石、真紅、水銀燈の動向が気になる。
【備考】
※参戦時期は少なくとも死亡以前。




【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:健康
[装備]:秘剣”電光丸”@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式、獏@終わりのクロニクル
[思考・状況]
1:佐山たちと行動する。
2:伊波まひるを一刻も早く確保する。
3:ゲームに乗るつもりはない。



【共通備考】
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。




【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]右手指軽傷、軽度の疲労、動揺、能力者<ボムボムの実>
[能力]スタンド「キラー・クイーン」
[装備]ニューナンブM60(残弾4/5)、GPS
[道具]支給品一式×3、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾15発)@BLACK LAGOON、スチェッキンの予備弾創×1(20発)、神威の車輪@Fate/Zero、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
 0:この人形……美しい手をしている……。
 1:なるべく戦闘には参加しない。どうしても必要な時において容赦なく殺害する。
 2:東方仗助は始末する
 3:「平穏」に過ごせる場所を探す
 4:亀の鍵を見つけたら「部屋」に入ってみる
[備考]
※参戦時期は単行本39巻「シアーハートアタックの巻」から。シンデレラによる整形前の顔です。
 また第三の爆弾「バイツァ・ダスト」は使えません
※キラークイーンの能力制限にまだ気が付いてません。(視認されてるとは考えています)
※悪魔の実を食べた事に気付いていません。


※キャンプ場に佐山の残した空気クレヨンによるメッセージがあります。




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最終更新:2012年12月02日 17:42